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連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛-10

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匿名ユーザー

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 暦の、その呼びかけに
 巣をかけていた蜘蛛の動きが、止まった

『----まぁ、知ってるけどよ』

 頭に響いた声
 直後、蜘蛛の姿は消え、代わりにイクトミが姿を現した
 「ここ、あんま入り込みたくねぇんだよなぁ」とぼやきながら、暦に視線を向ける

「よぉ…こりゃまた、大変な事態になってるな」
「あー、やっぱり世界中の蜘蛛と情報共有してるんだ」
「いつもいつも、って訳じゃないがな。余裕ある時は大体繋がってる。まぁ、今回は予測がついたからっつーか……」

 イクトミが話している、その最中


 -----暦の周囲の風景が、ガラリと一変した


 真っ暗な、上も下もない世界
 何度か入り込んだ事のあるあの場所だ、と暦はすぐに気づいた
 暗闇の中、姿が見えるのは自分とイクトミだけ…

 ……違う

 イクトミの背後に、小さな少年の姿が見えた
 暦に背を向け、座り込んでいる少年
 その少年が、何かを落とすようなしぐさをするたび、空間に波紋が走る

「…今回は、ここである程度確認したんでね。まったく、無茶をするもんだ」

 小さく、肩をすくめてきたイクトミ
 イクトミの背後の少年は、無言で空間に波紋を作り続けている

「あぁ……私が、と言うか、あの子が時間逆行をしてくれた「前」の事、わかってる?」
「おかげ様でな。おせっかいにも、こいつが伝えてきたせいもあるが」

 そう言って、イクトミが指したのは、背後にいた少年
 イクトミのその言葉に、少年はようやく、反応を返した
 ゆっくりと、振り返りながら立ち上がる

「……おせっかいで、悪かったね。でも、お前だって、知り合いがあぁいう目にあっていたのに後で気づくのは嫌だろ?先に把握できるなら把握して、自分ができる事をしたいだろうからね」
「………あぁ、その通りだよ、畜生」

 立ち上がり、振り返ってきた少年……いや、それは、気づけば青年の姿になっていた
 20歳前後、と言ったところだろうか
 少年程度の時間と、それの何十倍何百倍、幾百年もの時を過ごしたような時間
 その二つが混ざり合っているような奇妙な印象を、暦は受ける

 青年の視線が、暦に向けられた
 冷たい…というか、何もかも諦めきっているような、その癖して、まだ何かに必死に抗い続けているような…そうして、その抗うことにすら疲れてきているような、そんな顔
 はて、彼を色に例えるならば、どんな色だろうか

「…悪魔の脚本、ひとまずの回避おめでとう………でも、今はまだ、脚本の途中まで戻っただけの状態。一歩間違えれば、君達はまた、同じ運命をたどるだろうね」

 どこか淡々とした、感情の薄い声で青年は暦にそう告げてきた
 …この青年も、わかっているのだろう
 一度、暦達がたどった、あの運命を

「うん。だから、今度こそ、その方向に進まないようにするつもりだけど………貴方は、誰?」
「……ここでの僕はハッピー・ジャック。そう呼ばれるし、そう名乗るようにしてる」

 ハッピー・ジャック
 その名前を、以前にアンジェリカと名乗る魔女から聞いていたことを思い出した
 なるほど、彼女が言っていた通りに、愛そうと言うものは目の前の青年からは期待できそうになかった

「ハッピー・ジャック。とりあえず、俺は彼女達にワカンタンカの説明をしなきゃいけないんだが?」
「…まぁ、いいじゃない。どうせ、こっちの時間なんて、僕らの現実の時間には、対して関係しないんだから」

 イクトミの言葉に、ハッピー・ジャックはどこか投げやりに答えて……す、と何かを落とすようなしぐさをした

「……悪魔の脚本に抗おうとする君に、ちょっとだけサービスするよ。君のドッペルゲンガーの居場所のヒント」

 足元に生まれる波紋
 その波紋の中に、何かが映し出された
 それは、暦が……否、暦のドッペルゲンガーが、氷の彫像のような悪魔に襲われている光景
 そして、そこから、誰かに助けられている様子
 この二人は…

「…化学の荒神先生、と…」
「その弟だな。よりによって、拾ったのこいつらか」

 波紋の中に映し出されて映像を見て、やや面倒くさそうな声を上げたイクトミ
 …波紋が、静かに消える

「……はい。後はそっちの番。ま、がんばってね。同じ運命をたどらないように、さ」

 きひひっ、とハッピー・ジャックが笑ったのと、ほぼ同時
 辺りの光景が、元に戻った

 …現実へと、戻ってきたのだ
 恐らく、現実では数秒程度しか時間がたっていないはず
 実際、ちらりと見た保健室の時計の針は、ほとんど動いていなかった

「……ま、ちょいと裏ワザ使った、って事で」

 おどけたイクトミの声が、耳に届く
 く、と保健室の窓まで近づいて
 イクトミは、ゆっくりと口を開いた

「ワカンタンカ……俺達精霊の長。世界であり自然そのもの。ホワイト・バッファローウーマンの上司でもあるな」

 そいつの話を聞きたいのか?と
 そう言ったイクトミの声はおどけていたが、しかし


 ヘンペルに一瞬だけ向けられた、その視線は
 どこか暗く、鋭かった






to be … ?








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