喫茶ルーモア・隻腕のカシマ
この話は、夢の国とクロスしています
ジャックと夢の国(前編)
学校町
─ 11:42 ─
霧が出ていた
3m先は白いカーテンに遮られている
それほどの濃霧
3m先は白いカーテンに遮られている
それほどの濃霧
若い男が霧を掻き分ける様に歩いている
「この辺りから……だな」
辺りには血の匂い
「この辺りから……だな」
辺りには血の匂い
10m程離れた所から複数人の気配がする
人とは思えぬ気配
どこか薄ぼんやりとして実体を掴みづらい
人とは思えぬ気配
どこか薄ぼんやりとして実体を掴みづらい
一瞬、風が抜け足元の霧がわずかに晴れる
大きなぬいぐるみの足が見えた
「着ぐるみ……夢の国か?」
大きなぬいぐるみの足が見えた
「着ぐるみ……夢の国か?」
男は気付かれぬ様に気配を消す
どうやら彼らは人を探している様だった
恐らくこの血の匂いの原因を作っている者を追っているのだろう
返り血か、それとも怪我を負っているのか……
どうやら彼らは人を探している様だった
恐らくこの血の匂いの原因を作っている者を追っているのだろう
返り血か、それとも怪我を負っているのか……
「……行ったな」
複数の気配が離れていくのが判る
複数の気配が離れていくのが判る
血の匂いは、すぐそばから発せられていた
そしてこの濃霧
男は嗅覚と聴覚を研ぎ澄まし探る
そしてこの濃霧
男は嗅覚と聴覚を研ぎ澄まし探る
呼吸音
浅い呼吸をする音
濃密な血の匂い
そして、最も霧の濃い場所
浅い呼吸をする音
濃密な血の匂い
そして、最も霧の濃い場所
「この辺りのはずだが……」
そこに横たわる者がいた
ぐったりとしていて意識は無い
元は白い上質の生地であったろうシャツもダークグレイのスーツも
今は血にまみれ、全身が赤黒く染まっている
ぐったりとしていて意識は無い
元は白い上質の生地であったろうシャツもダークグレイのスーツも
今は血にまみれ、全身が赤黒く染まっている
「やはり……」
予想通りといった体で状況を確認する
予想通りといった体で状況を確認する
外国人
性別は……男そして女
その姿は、男性から女性、女性から男性へと絶えず変化している
「男でもあり、女でもある……か」
性別は……男そして女
その姿は、男性から女性、女性から男性へと絶えず変化している
「男でもあり、女でもある……か」
そう、倒れていたのは───ジャック・ザ・リッパー
「まさか、ジャックがこの様な姿になろうとは……夢の国とは一体」
そう呟き男はジャックを片腕で抱え起こす
すると不安定だった姿が女性で安定した
「んッ…………ハァ……フゥ」
薄っすらと眼を開く──美しい碧の瞳──が焦点は完全には合っていない様だった
「……か……しマ?」
「うむ、今から安全な場所に運ぶ……安心しろ」
「……ア……ハァ……ハァ」
そして、再びその美しい瞳を閉じる
そう呟き男はジャックを片腕で抱え起こす
すると不安定だった姿が女性で安定した
「んッ…………ハァ……フゥ」
薄っすらと眼を開く──美しい碧の瞳──が焦点は完全には合っていない様だった
「……か……しマ?」
「うむ、今から安全な場所に運ぶ……安心しろ」
「……ア……ハァ……ハァ」
そして、再びその美しい瞳を閉じる
─ 16:58 ─
ジャックは目を覚ますと辺りを確認する
外套を下に敷き、寝かされていた
「廃ビル……か」
コンクリートのフロアが広がっているのが確認できた
近くにある窓からは地面は見えない
2階よりも上に位置するフロア
窓から見える風景から高さを考える、恐らく3階
外套を下に敷き、寝かされていた
「廃ビル……か」
コンクリートのフロアが広がっているのが確認できた
近くにある窓からは地面は見えない
2階よりも上に位置するフロア
窓から見える風景から高さを考える、恐らく3階
「意識が戻ったか……まだ、寝ていた方がいいぞ」
「いや……そうですね、素直に横になっていましょう」
起こしていた上体をスーツの上着を丸めて作った枕へと預ける
「ところで……この傷の手当ては……カシマ、貴方が?」
「そうだが?……何か……ぁ!!」
ジャックは横になったまま、片方のヒザ──透ける様に白く美しい足──を立てる
「男物のYシャツ一枚とショーツだけ……」
「いや!待て!これは手当ての為であってだな!」
顔を真っ赤にして声をあげるカシマ
「見ましたか? 私の体……」
柔らかく揺れる金色の前髪が眼にかかり表情は読み取れない
「……す、すまない!……だが、やましい気持ちは無かった!」
「……にん……取って下さい」
「?」
ジャックは肩を小刻みに震わせながら言う
「いや……そうですね、素直に横になっていましょう」
起こしていた上体をスーツの上着を丸めて作った枕へと預ける
「ところで……この傷の手当ては……カシマ、貴方が?」
「そうだが?……何か……ぁ!!」
ジャックは横になったまま、片方のヒザ──透ける様に白く美しい足──を立てる
「男物のYシャツ一枚とショーツだけ……」
「いや!待て!これは手当ての為であってだな!」
顔を真っ赤にして声をあげるカシマ
「見ましたか? 私の体……」
柔らかく揺れる金色の前髪が眼にかかり表情は読み取れない
「……す、すまない!……だが、やましい気持ちは無かった!」
「……にん……取って下さい」
「?」
ジャックは肩を小刻みに震わせながら言う
「責任を取って下さい」
「せき、にん?……責任?!……いや、だが!」
「全身血まみれだったのですよ? しかし、今はこんなに綺麗に……
丹念にふき取ったということでしょう?……なら……当然、私の体を隅々まで……」
「……確かに」
「私……男性に裸体を晒したのは……こんな恥辱を受けるのは、初めてです」
怪我の為か上気した頬がどこか艶かしい
「判った……すこし、考えさせてくれ」
「……」
「……」
「……ッ」
「ん?」
苦しそうに体を抱え込むジャック
「……くっ」
「大丈夫か?! 傷が開いたのか?!」
「いや……ク……大丈夫……ククク……アハハハハハははは!!」
「な?!」
「いや、カシマの真面目過ぎる反応が可笑しくて……つい……ククク」
「……」
「あ~、苦しい……笑い……死にそうです」
「……しかし、ジャック……ワタシは君の裸を見て、触りもした……」
「はぁ……まぁ、そうでしょうね……」
「君が責任を取れというのであれば、ワタシは……独身でもあるわけだし」
「……」
恥ずかしくなったのか、カシマは背を向けている
「その……なんだ……」
ジャックはそんなカシマを見て、きょとんとした表情
そして、あきれたといった様な表情に変わる
だが、それも徐々に穏やかな笑みへと変わっていった
その笑顔は、普段見せる薔薇の様な華やかなものではなく
少女の様に可憐だったが
カシマは背を向けていた為、見ることは無かった
「せき、にん?……責任?!……いや、だが!」
「全身血まみれだったのですよ? しかし、今はこんなに綺麗に……
丹念にふき取ったということでしょう?……なら……当然、私の体を隅々まで……」
「……確かに」
「私……男性に裸体を晒したのは……こんな恥辱を受けるのは、初めてです」
怪我の為か上気した頬がどこか艶かしい
「判った……すこし、考えさせてくれ」
「……」
「……」
「……ッ」
「ん?」
苦しそうに体を抱え込むジャック
「……くっ」
「大丈夫か?! 傷が開いたのか?!」
「いや……ク……大丈夫……ククク……アハハハハハははは!!」
「な?!」
「いや、カシマの真面目過ぎる反応が可笑しくて……つい……ククク」
「……」
「あ~、苦しい……笑い……死にそうです」
「……しかし、ジャック……ワタシは君の裸を見て、触りもした……」
「はぁ……まぁ、そうでしょうね……」
「君が責任を取れというのであれば、ワタシは……独身でもあるわけだし」
「……」
恥ずかしくなったのか、カシマは背を向けている
「その……なんだ……」
ジャックはそんなカシマを見て、きょとんとした表情
そして、あきれたといった様な表情に変わる
だが、それも徐々に穏やかな笑みへと変わっていった
その笑顔は、普段見せる薔薇の様な華やかなものではなく
少女の様に可憐だったが
カシマは背を向けていた為、見ることは無かった
「カシマ……冗談ですから気にする必要はありません」
「いや、しかし……」
「それよりもカシマ、助けてくれてありがとうございました」
「あ……ああ……うむ、どういたしまして」
「傷も脇腹だけでしたし、殆どは相手の返り血を浴びただけでしたから……もう心配はいりません」
「その様だな」
やっと落ち着いたといった表情のカシマ
「いや、しかし……」
「それよりもカシマ、助けてくれてありがとうございました」
「あ……ああ……うむ、どういたしまして」
「傷も脇腹だけでしたし、殆どは相手の返り血を浴びただけでしたから……もう心配はいりません」
「その様だな」
やっと落ち着いたといった表情のカシマ
「しかし……君がそんなにも深く脇腹を抉られるとは、一体何が?」
「一言で言うならば、油断ですね」
思い出し、苦々しい表情
「一言で言うならば、油断ですね」
思い出し、苦々しい表情
─ 03:15 ─
ジャックは霧のステルス機能を使い
"夢の国" の奥深くまで侵入するのに成功していた
目指すは、ただ一箇所
"夢の国" の奥深くまで侵入するのに成功していた
目指すは、ただ一箇所
薄暗い部屋
肌寒い、真夏だというのに息が白くなる
肌寒い、真夏だというのに息が白くなる
精肉工場
こう言えば、より正確に情景が伝えられるだろうか
だが、ぶら下がっているのはもちろん
牛や豚の肉などではない
吊るされているのは───少年や少女
膨大な数
この町の子供達ではないのかもしれない
こう言えば、より正確に情景が伝えられるだろうか
だが、ぶら下がっているのはもちろん
牛や豚の肉などではない
吊るされているのは───少年や少女
膨大な数
この町の子供達ではないのかもしれない
ヤツはそこに居た
子供達の臓器を取り出し、売る───都市伝説
子供達の臓器を取り出し、売る───都市伝説
赤いシャツを着た黄色いクマの様な着ぐるみを着ている
いや、着てなどいない
そのものなのだ
中の人などいない
いや、着てなどいない
そのものなのだ
中の人などいない
─ 03:16 ─
血で赤茶色に薄汚れている手
血の付いた指を、まるでハチミツでも舐めるかの様に
ペロペロと舌で味わっている
本来あるべきはずの場所に眼は無く
ぽっかりと空いた眼窩は深遠へと繋がっているとしか思えない
血の付いた指を、まるでハチミツでも舐めるかの様に
ペロペロと舌で味わっている
本来あるべきはずの場所に眼は無く
ぽっかりと空いた眼窩は深遠へと繋がっているとしか思えない
「誰?ここは関係者以外は立ち入り禁止なんだよ?」
驚いた様な声、だが……表情も何も無い
口元には縫い付けられた笑み
声と共にパクパクとだけ動く
ただ、ただ……笑顔
故に不気味
「醜いな」
ジャックは金色の口髭と口を動かし呟く
「貴様と語る事など何一つ無い」
いつの間にか手に一本のメスを握りクマの眼前に迫る
驚いた様な声、だが……表情も何も無い
口元には縫い付けられた笑み
声と共にパクパクとだけ動く
ただ、ただ……笑顔
故に不気味
「醜いな」
ジャックは金色の口髭と口を動かし呟く
「貴様と語る事など何一つ無い」
いつの間にか手に一本のメスを握りクマの眼前に迫る
─ 03:18 ─
右手が横薙ぎに閃く
クマの左腕が何十にもスライスされる
「うぎゃッ?!」
縦に一閃
腹部が切り裂かれ、中に詰まる得体の知れない臓器の様なモノがこぼれ落ちる
「おうッ?! 僕のお腹が! お腹がッ!?」
「体の痛みは感じるか……」
必死に臓物をかき集め、元に戻そうとする
「だが……心は痛みを感じないのだろうな……」
「痛い! いたぃょッ!! 僕のから゛だがッァ?! あああぁぁああぁぁぁ!!!」
「消えろ」
腕が一振りされると、そこにクマの着ぐるみはなく
赤い霧がゆっくりと地面に降りていくのが見えるだけだ
クマの左腕が何十にもスライスされる
「うぎゃッ?!」
縦に一閃
腹部が切り裂かれ、中に詰まる得体の知れない臓器の様なモノがこぼれ落ちる
「おうッ?! 僕のお腹が! お腹がッ!?」
「体の痛みは感じるか……」
必死に臓物をかき集め、元に戻そうとする
「だが……心は痛みを感じないのだろうな……」
「痛い! いたぃょッ!! 僕のから゛だがッァ?! あああぁぁああぁぁぁ!!!」
「消えろ」
腕が一振りされると、そこにクマの着ぐるみはなく
赤い霧がゆっくりと地面に降りていくのが見えるだけだ