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連載 - 喫茶ルーモア・隻腕のカシマ-20b

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喫茶ルーモア・隻腕のカシマ


夢の国編・秋祭り2日目(後悔)


夢の国が悪夢から解放された夜
全てが終わった後のことである

辺りは静寂に包まれ
少年は疲れ切って眠ってしまっていた

カシマは片腕で器用に輪を背負うと、隠れているはずのサチへと声を掛ける
「サチ殿、もう出て来ても大丈夫だ」
変わらぬ静寂
返事は無い
「?……まさか……」

「貴方の契約者であれば……」

「?!」

突然の気配に驚くのも束の間
「……ジャックか」
安堵の息を吐く

「少し先のところで男性と親しげに話していましたよ」
少し棘のある口調でジャック
「親しげに男性と?」
カシマの記憶では、サチに親しい男などいなかった筈である

──この疑問は程なくして解ける事となるが、それはまた別の話──

「ゆっくりとですが、こちらに向かっている様でしたから問題ないでしょう」
「ふむ、そうか……色々と世話になってしまったな、ジャック」
「ぃ、いえ……私にかかれバッ……コ、この程度のコトッ」
「流石だな……ワタシなどは少年の手を借り、あまつさえ疲弊させて……」

罪悪感を感じている表情の見本になれそうな顔でカシマは云う

「……」

だが、ジャックはそんな顔で迎えられても嬉しくは無い

「……すまない……キミに話す様なことではなかったな」
「その少年……輪のことは知っています」
「?」
「友人です」
「友人?」
怪訝そうにカシマ
「ええ、彼からは……色々な事を……教えてもらっていますから」
カシマの表情を窺いながら、慎重にジャックは応える

「そうか……」
最近、ジャックの雰囲気が柔らかくなり始めたのは
輪の影響があるのかもしれないとカシマは思う
いや、間違いないと確信すら得た様だった

「彼には良い経験になったのではないでしょうか」
「確かに……だが……本当にこれで良かったのだろうか」
「……」
「あの、黄色いクマのマスコットが優しき言葉を残してくれなければ……
 この少年は……相手を斬り続けた少年の心はどうなっていたのだろうか……」

背の少年を気にしながらも、言葉を紡ぐ

「黄色い、クマ……そうですか……あのクマが……優しい言葉を……」
「知っているのか?……あのクマのことを」
「ええ、私がアレの精神を破壊しましたから」
「……そうか……では……」

カシマは思案する……ただひたすらに深く……

*



「もう、考えるのは……そこまでにしましょう」

思考の海から連れ戻す様に、ふいに聞こえた声は優しい響きを孕み……

「?!」

それを発した者の腕は、柔らかくカシマを抱きしめていた

「時には楽観的に考えても良いのではないですか?……」

───吐息と共に、静かな声が鼓膜を振るわせる

「いや……しかし……」
「理由が必要なら、私が理由となりましょう」

───透明で、揺らぎ無く

「……」
「私がアレの精神を壊したから……アレは優しい言葉を残した」

───言い聞かせる様に

「……」
「それで良いではないですか……今回の結末はもう定められたのですから」

静寂……だが、五月蝿いくらいにはっきりと鼓動が聞こえる

「……世話をかけてしまったな……本当に、助けられたよ」

落ち着いたという様子で云う……が、鼓動は高鳴る




「ん~、うるさぃなぁ……」

ゴソゴソとカシマの背で眠っていた少年が身をよじる

「「ぁ」」

一瞬にして空気が凍りつく

バッと腕を解き、距離をとる麗人
そして、その場で直立する軍人

再び動き出す空気

「ん~?……ジャックぅ?……きょうは、もうつかれたからダメだよ」
「そ、そうだなッ……わ、わ、分かったッ……今夜はこれで失礼するッ」
「う、うむッ……それが良い?……そうだな、それが良いだろうッ」

「では、またッ」
「うむ、またッ」

こうして秋祭り2日目の夜は、あわただしく幕を閉じるのであった



*


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