「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 合わせ鏡のアクマ-19

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合わせ鏡のアクマ 19


「・・・ここか?」
姫さんから、ある噂を聞いた。それは最近街で商売しているある占い師の話だったのだが・・・
その話を聞くうちに、もしかしたら今の俺が求めているものが見つかるかもしれないと思い、
こうして夜の繁華街を歩いて探し始めたわけだ。個人的なことなのでアクマだけ連れてきている。
問題の占い師の店は路地裏であっさり見つかった。小さなテントに『タロット占いの館』という看板。
中に入ると甘い匂いが充満しているテントの奥で、紫色のヴェールを被った女性が座っていた。
「・・・何か、お悩み事でも?」
「えーっと俺は・・・噂を聞いてちょっと来てみただけというか・・・じゃあ、未来について占ってもらえませんか?」
「はい、わかりました」
女性はタロットカードを取り出すと、カードをシャッフルし始める。
「・・・俺、この間妹と友達を危険な目に遭わせてしまったんです」
独り言のように呟いた言葉には答えず、女性はタロットをシャッフルし続ける。
「だから・・・強くなりたいんです。馬鹿な考えかもしれません、でももし俺に力があれば・・・
 二人を、危険な目になんて遭わせなかった・・・!だから力が欲しい・・・人を守れる力が・・・」
 ・・・女性がタロットを並べ始めた。構わずに言葉を続ける。
「そんな・・・自分を強くするような、自分の限界を超えさせてくれる・・・そんな『パワーストーン』はありますか?」
女性がタロットを並べ終わった。並べられたカードに目を向けてみる。
「正義」の正位置、「隠者」の逆位置、「戦車」の正位置・・・

そして、「死神」の正位置。カードの意味合いは・・・

「・・・あなたは、近い未来ひとつの決断を迫られます。それを助けてくれる者は誰もいません」
結果が見えたのか、女性が話し始める。
「その決断によって、あなたは・・・・・・死の運命を迎えることになるでしょう」
「・・・・・・・・・」
「しかし、それが、勝利への道とも出ています・・・・・・おそらく、死といっても本当の死ではないと思いますよ」
「・・・でも、あなたの占いでは死が訪れると出ているんですよね?」
「占いは、当たらないこともありますから・・・」
沈黙がテントを支配する・・・が、しばらくして女性がフェルト製の袋を渡してきた。
「・・・これを、どうぞ」

*


袋を受け取ると、中に石のようなものが入っているのがわかった。
「開けても?」
「どうぞ、ご自由に」
開けてみると、中から出てきたのは白い石・・・いや、これは見覚えがある。
「これって・・・もしかして、サンゴですか?」
「はい、コーラルと言います・・・自身の潜在能力を、引き出してくれます」
「なるほど・・・」
自分の内にある力を引き出してくれる石か・・・
「ありがとうございました・・・頑張ります」
代金を支払い、テントから出ようとすると「あの・・・」と呼び止められた。
「・・・また、いつでもどうぞ」
「大丈夫ですよ、そんな簡単に死ぬつもりはありませんから」
振り向いてそう答え、出ようとする・・・が、
「ねぇ契約者、僕も占ってもらっていーい?」
 ・・・アクマ、お前そういうことは先に言え。
「いーじゃん、突然占ってもらいたくなったんだから!お姉さんもいいでしょ?」
「はい」
・・・・・・しかたない。
俺は女性にもう一人分お金を払うと、アクマを残しテントを出た。人の占いなんて見るもんじゃない。

「・・・・・・から、昔を・・・・・・・・・そうすれば、・・・・・・」
「・・・って、・・・・・・・・・だね?じゃあ・・・・・・」
中から声が漏れてくるが、内容はほとんど聞こえない。まぁ、聞く気もないけどな。
テントから出てきたアクマは、複雑な表情をしていた。
「・・・なんか嫌な結果でも出たか?」
「あながち、そうとも言い切れない・・・かな?」
妙に歯切れが悪いが、詳しくは聞かないでおこう。しかし、沈んでるアクマは見てて違和感しかないな・・・
「・・・よし、アイス買ってやる」 「本当っ!?」 「よし、いつものアクマだな」
手の中の袋を弄りつつ、アイスを買うため俺はスーパーへと足を向けるのであった・・・

*


深夜、東区墓地付近

夜の道をガチャリ、ガチャリと音を立てて鎧姿の武者が歩いていた。
『首塚組織』を束ねる長、首塚に住まう祟り神・・・平将門である。
今日も彼は街を歩き、組織へ勧誘できる都市伝説がいないか探していた。
リリリリリン!リリリリリリリン!
「む?」
将門が音のする方へ振り向くと、そこには多くの墓石。おそらく墓地なのだろう。
近づくと、墓地の敷地の入り口に黒い取っ手のついた物が置いてあった。それが音を出しているらしい。
試しにその取っ手を持つと・・・取れた。なにか細長いものが片側から伸びている。
将門はそこで、これが「電話」なのだということに気がついた。試しに取っ手の片方を耳に当ててみる。
『あ、違います。そっちは口に当てるほうです。耳に当てるのは逆!』
「・・・む?」
口元から聞こえる若い女の声の言うとおりに取っ手を逆にしてみると、細長いものが邪魔にならなくなった。
『はぁ・・・まさかここまで世俗を知らないとは思いませんでした・・・』
「くくく・・・随分と世の中が変わったことよ」
聞こえてきた相手の呆れを将門は笑い飛ばした。
「それで、お主は誰だ?我に用があるのだろう?」
『あ、これは失礼。私は名も無き『怪奇同盟』の代表者。本日は『首塚』組織の長に頼みがありまして』
「頼みとな」
『ええ、近々『夢の国』との大規模な戦いが起きますから。万が一の場合を考えて策の練り合わせを、と』
「必要ない」 『え?』
提案を一蹴した将門は言葉を重ねる。
「『怪奇同盟』だと?ふん、そんなもの聞いたこともない。名が知られないということは、
  実力も大したことないのではないか?そのようなわけのわからんところと協力・・・笑わせてくれるわ」
『え、あの・・・そんなことは・・・』
「どうした?何か言いたいのであれば、はっきり言えばいいであろう」
将門がそう言った途端、周囲の空気がはっきりと変わった。

『・・・調子に乗るなよ、新参風情が』

*


「なに?」
『我々が大したことない・・・ならば、目の前の墓地に入ってみるがいい』
「なに、その程度のこと・・・」
将門は取っ手を置くと敷地へ足を踏み入れ・・・・・・
「む?これは・・・」
 ・・・られない。見えない壁のようなものが将門が入ることを阻んでいる。
『わかりましたか?たとえあなたが本来の首だけの姿になろうとも・・・私はあなたを阻む自信があります』
「・・・くっくっく」
再び取っ手を手に取り、将門は笑う。
「くっかかかかか!!面白い、我を阻むとな!!・・・良いだろう、話を聞いてやる」
『ありがとうございます』
周りの張り詰めた空気は、いつしか元に戻っている。
『まぁ、話すことなんてほとんどないんですが・・・
 もし『夢の国』が暴れでもしたら連携が取れるようお仲間に伝えてください』
「くくく・・・よかろう。『怪奇同盟』と言ったな?その頼み聞き届けてやる!」
『ありがとうございます・・・あ、戦いに疲れたなら近くの墓地にお入りください。その間は攻撃を防いでみせましょう』
「ほう、それはなかなか心強い話だな・・・伝えておこう」
『・・・伊達に何十年も町を守ってませんから。それではよろしくお願いします』
「待て」
将門が呼び止める。
「聞き忘れておった・・・貴様ら『怪奇同盟』は、組織の仲間か?」
『なにを言い出すのかと思えば・・・我々は組織に敵対することもありませんが、仲間になることもありません』
「くっくっく、本当に面白い奴よ。今後も話してみたいものだ」
『勘弁してください・・・大昔の偉人と話すなんてどれだけ疲れることか・・・』
「くくく・・・では、な」
『はい、ご武運をお祈りしております』

将門は取っ手を置くと、再び夜の道を歩き始めた。
(・・・・・・武運、ときたか・・・くっくっく)
こうして、将門と『怪奇同盟』初の邂逅は、静かに終わりを迎えたのである・・・






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