「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 合わせ鏡のアクマ-18

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合わせ鏡のアクマ 18


『・・・・・・状況はどうでしょうか?』
電話から聞こえてくるのは若い女性の声。
『南区』
『現在のところ異常はナシ、です。例のポスターが駅前とかに大量に貼られてますけど』
問いに答える小学生くらいの女の子の声が電話から聞こえた。
『西区』
『廃工場で最近、戦闘があったくらいだな。どこのモンかは捜索中だ、たいした奴じゃないだろうけどよ』
『北区』
『秋祭りの準備が始まり、『神隠し』も収束した。ただ、近頃は『黒服』をよく見かけるのぅ』
『東区』
『巡回中、何度か『夢の国』の出没を確認、徐々に北へ向かっています。被害は出ておりません』
続けざまの問いには、口調の荒い青年、古めかしい話し方の老翁、ハキハキとした若い男の声が答えた。
その中で、若い男の声に続けて問いがかかる。
『北へ向かったと言いましたね?ということは狙いは・・・』
『秋祭り、でしょうね。多くの人間が集まるわけですから、』
『やはり機関も動いているということかの?』
『最近は『首塚』達も町を闊歩してますし・・・はぁ、イヤになっちゃいますよ・・・』
『なぁ、やっぱ新参者には一発脅しでもかけた方がよくねぇか?』
『物騒なことを言わない。まぁ、なんとかしておきたいことは事実です』
若い女の声がそこで話をこちらに振ってくる。
『さて、『理解者』さんからなにか情報は?』
「そうですね・・・『黒服』のところで『鮫島事件』って単語が浮かんだんですが、これは?」
『ああ、この間のビル消失の時のあれでしょうね。そういえばそれもありました』
再び会話が電話口の向こうで始まった。
『やはりアレに対抗するには山ノ神の力を借りねばならんと・・・』
『現在、『骨喰い男』が各場所への下準備を・・・』
『やはり組織の一部が過激な動きを?・・・』
『とりあえず『首塚』とは接触を図って、それから『組織』にも・・・』
5人の声が飛び交い、会議は進んでいく。
それを聞きつつ、さすがに眠いのか男はあくびをした。

*


『ところで、『夢の国』の現在地は把握できてんのか?東で見たって言ったがマーキングはしてねぇんだろ?』
『それは大丈夫だ。流れの『人面犬』に、市外から『消えるカラス』の能力者を呼んでもらうことになっている』
『なるほど、カラス避け電波を感知させるんだな?けどよ、人避け電波に変わってて効果があるとは思えねぇ』
『やってみなければ分かりませんよ。それに少なくとも、空から数を使って探すのは有効手段かと』
『そりゃあそうだ!うっかりしてたぜ』
『そういえば『喫茶ルーモア』店主がやられたとか・・・・・・よほど節操のない契約者と見受けられる』
『でも後押ししたのが『首塚』だって情報があるよね?』
『うむ、『首塚』も一枚岩ではないのだろう・・・そういえば、彼等は勧誘を積極的にやっているというが』
『あ、こっちの『ダルマ』ちゃん達が声かけられたって・・・「私達黒服に構う暇ないんで、じゃ!」って言って切り抜けたって』
『それは・・・まぁ、若い娘はそんなものか・・・』
『私ね、よくそれで逃げ切れたね~って言ったら「世の中は見た目と勢いよ」だって。ちょーっと違う気がするけど・・・』

『では、皆さんお静かに。これより当面の行動方針を改めてお伝えします』

若い女性の声が電話の向こうで凛、と響き渡ると静寂が訪れる。
『万一の時、協調できるよう『黒服』達と波風を立てないように、『首塚』に関しては契約者への情報通達を忘れずに』
若い女性の声がスラスラと今後の方針を説明していく。反対や質問は一切聞こえてこなかった。
そして最後に、彼等へもっとも重要な『計画』が伝えられる。
『目下捜索中の『夢の国』ですが・・・・・・発見、補足しだい、全戦闘参加予定者に通達を』
電話口の向こうから、若干のどよめきがあがり・・・それはすぐに収まった。
『発見後は一般人の安全確保を最優先。第二に自身含む関係者の安全を確保するものとお伝えを』
軽く息を吐いたような音が聞こえ、一拍おいて締めの言葉が発せられた。
『秋祭りが、おそらく『夢の国』契約者との全面抗争となります。気を抜かないように・・・それでは、会議を終了します』


 ・・・受話器を置いた男は、また眠気を感じて小さく伸びをした。
「あれ、ひょっとしてもう会議終わった?」
後ろからガッカリしたような女の子の声が聞こえ、男は振り向かずに応えた。
「たった今、ね。残念だったね、他の『声』に話を聞けなくて。そのために何度もここへ来るまで練習を・・・」

*


「せいっ!」ガスッ 
「痛゛っ!?」
「恥ずかしい内容まで口走ってるんじゃねーぞ、このモヤシ野郎が」
「す、少しは言葉遣いを気をつけ「モヤシに必要なのは丁寧語じゃなくて暗い部屋だろ」・・・あ、そう」
とりあえず、言葉遣いの改善要求は拒否されたらしい。
いつになったら打ち解けてくれるんだろうこの子、会ってからもう2ヶ月経つのにつっけんどんな態度だし。
「・・・で、どんな内容だった?」
「細かいことを省くと・・・秋祭りで『夢の国』との全面抗争をやるらしい。一般人の安全確保を最優先だと」
「そっか・・・・・・ついにきたんだな」
『夢の国』・・・過去に北区の祭で子供を大量にさらい、『組織』の構成員を返り討ちにして水面下へ隠れた都市伝説。
長いこと姿を見せていなかった彼等が、少し前から活動を再開して『組織』を翻弄している。
アレはこの街を飲み込もうとしているのだ。それを防ぐ術は、ただの人間達にはない。
彼等に対抗できるのは同じ都市伝説・・・そして、都市伝説と契約した者達だけ。
と、男の右横に女の子が座って肩によりかかる。
「なぁモヤシ」
連日の自主哨戒による疲れの混じった声が右耳をくすぐる。
「絶対、生きてこの街を守りぬこうぜ」
 ・・・男の脳裏に、この間どこかの契約者に襲われて骨すら残らずに死んだという人の話がちらつく。
男は女の子の肩に右手を回すと、強く抱きしめた。
「ああ・・・・・・絶対にな」
夜空には無数の星が瞬いて・・・・・・都市伝説を、契約者を、ただ見下ろし続けている・・・・・・


「・・・って、さりげなく肩に手ぇ回してるんじゃねぇ!」ドスッ
「ぐえ!」
細い左腕から繰り出された渾身の肘打ちに悶絶する男を見ながら、
ハハハハ!、と豪快に女の子は笑う。
「こんな日ばっかりならいいんだけどよ・・・・・・なぁ?」
ニヤリと口元をあげ、女の子は夜空へ語りかけた。
星は男のようには応えず、ただ静かに瞬いていた・・・・・・






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