ドクター 06
会場を闊歩するチャイナ風ドレスの美女
その銀髪碧眼から日本人ではないのは確実だが、何処の誰かを知る者はこの会場にはほとんどいない
大半の者は、自分の知らない誰かの知り合い程度にしか考えないだろう
その程度の視線を身に浴びながら会場の奥へと向かおうとしたところ
「……ふむ?」
殺気とまではいかないが、やや程度に敵意を含んだ視線
いや、敵意というよりも――
(面倒事は御免だ、とでも言いたげな顔だな)
服の着付けと一緒に持たされた扇子で、挑戦的に歪みかけた口元をついと隠す
「お互いのため、これ以上はお引取り願えませんでしょうか」
「ふむ……そのお互いとは『組織』と『我々』かね? それとも『首塚』と『我々』か。はたまた『首塚』と『組織』だろうかね?」
「贅沢を言うなら、その全てです」
黒服Dのその言葉に、ドクターはくっくと喉を鳴らせて笑う
「君達は割と勘違いしているようだがね? ボク達は別に『首塚』と仲良くしたいわけじゃあない」
チャイナ風ドレスの裾からすらりと覗く足が、会場の奥から黒服Dへと向けられる
脚線美を隠そうともしない優雅な足取りで黒服Dの眼前まで近付くと、いつもと変わりない敵意の欠片もない満面の笑顔を浮かべ
「ボク達はただ、この町に『いる』事を告げ、できれば相互不干渉の立場を取りたいだけなのだよ」
「この町であなた達がやる事を見過ごせ、と?」
「端的に言えばそうだが?」
あと数歩近付けば吐息すら感じられる距離
あくまで声を抑える目的ではあるが、本人の自覚の有無はさておいて女性を意識させる距離である
「ああ、勘違いしないで欲しい。ボク達はこの町で何かやらかすつもりは毛頭無い。人間と、都市伝説とその契約者の医療行為に従事したいだけなのだがね」
「例えば、我々に敵対する都市伝説が戦闘の結果負傷して、あなたに助けを求めたら?」
「世間一般から見て善良なら助けるし、害悪ならお引取りいただくがね? 君達の組織とボクの価値観の相違は多少あるかもしれないが」
黒服Dは僅かに思案する
多分、この女性と自分の価値観は一致するだろう
だが――『首塚』『組織』という集団との価値観はどうだろうか
「まあ、いきなり尋ねて会えるとは思っていなかったがね。この会場にいて、ここで足止めをしてるところから見ると、それなりに将門公に近しい者なのだろう?」
「お答えできかねます」
「ならばそれでもいいさ。できれば将門公に、ボク達がいる事と相互不干渉の意思を伝えて欲しい」
「それは私に対する依頼ですか?」
「いや、ただ顔見知った君に対するお願いだ、無視しようと構わんよ。伝わったとしても将門公がどう考えるかはボクにわからないしね」
そう言うとドクターは踵を返す
「とりあえず会場にいる事ぐらいは許してもらえるかね? ボクが治療した患者が来てるんだ、腕には自信があるが心配は心配でね」
「出来れば将門公の目が届かないうちにお帰り願いたいところですが」
「患者は未成年だからね。程々で帰らせてもらうよ。まあ無理にでも帰れというのならボクに抵抗の手立てはないわけだが」
肩越しに苦笑を浮かべながらドクターはそう告げる
「ボクは戦闘能力は皆無だ。邪魔だというのなら追い出す事も……消すのも簡単だろうさ」
そう言って会場の喧騒の中に紛れていくドクター
目立つ体躯とドレス、そして何故か羽織っている白衣から会場の何処にいても見つけ出すのは容易だろう
「悪人ではないんでしょうが……むしろ悪人であってくれた方が扱いが楽なんでしょうね」
また厄介事が一つ増えたと、溜息を漏らす黒服D
一応はこの会場内で気を配ってさえおけば、あとは黒服Hに任せる事も可能なのだろうが、真面目な彼にそんな考えをしろというのも酷だろう
「本当に、この町には集まり過ぎている。何も起こらないで欲しいというのは、贅沢な願いなんでしょうかね」
その銀髪碧眼から日本人ではないのは確実だが、何処の誰かを知る者はこの会場にはほとんどいない
大半の者は、自分の知らない誰かの知り合い程度にしか考えないだろう
その程度の視線を身に浴びながら会場の奥へと向かおうとしたところ
「……ふむ?」
殺気とまではいかないが、やや程度に敵意を含んだ視線
いや、敵意というよりも――
(面倒事は御免だ、とでも言いたげな顔だな)
服の着付けと一緒に持たされた扇子で、挑戦的に歪みかけた口元をついと隠す
「お互いのため、これ以上はお引取り願えませんでしょうか」
「ふむ……そのお互いとは『組織』と『我々』かね? それとも『首塚』と『我々』か。はたまた『首塚』と『組織』だろうかね?」
「贅沢を言うなら、その全てです」
黒服Dのその言葉に、ドクターはくっくと喉を鳴らせて笑う
「君達は割と勘違いしているようだがね? ボク達は別に『首塚』と仲良くしたいわけじゃあない」
チャイナ風ドレスの裾からすらりと覗く足が、会場の奥から黒服Dへと向けられる
脚線美を隠そうともしない優雅な足取りで黒服Dの眼前まで近付くと、いつもと変わりない敵意の欠片もない満面の笑顔を浮かべ
「ボク達はただ、この町に『いる』事を告げ、できれば相互不干渉の立場を取りたいだけなのだよ」
「この町であなた達がやる事を見過ごせ、と?」
「端的に言えばそうだが?」
あと数歩近付けば吐息すら感じられる距離
あくまで声を抑える目的ではあるが、本人の自覚の有無はさておいて女性を意識させる距離である
「ああ、勘違いしないで欲しい。ボク達はこの町で何かやらかすつもりは毛頭無い。人間と、都市伝説とその契約者の医療行為に従事したいだけなのだがね」
「例えば、我々に敵対する都市伝説が戦闘の結果負傷して、あなたに助けを求めたら?」
「世間一般から見て善良なら助けるし、害悪ならお引取りいただくがね? 君達の組織とボクの価値観の相違は多少あるかもしれないが」
黒服Dは僅かに思案する
多分、この女性と自分の価値観は一致するだろう
だが――『首塚』『組織』という集団との価値観はどうだろうか
「まあ、いきなり尋ねて会えるとは思っていなかったがね。この会場にいて、ここで足止めをしてるところから見ると、それなりに将門公に近しい者なのだろう?」
「お答えできかねます」
「ならばそれでもいいさ。できれば将門公に、ボク達がいる事と相互不干渉の意思を伝えて欲しい」
「それは私に対する依頼ですか?」
「いや、ただ顔見知った君に対するお願いだ、無視しようと構わんよ。伝わったとしても将門公がどう考えるかはボクにわからないしね」
そう言うとドクターは踵を返す
「とりあえず会場にいる事ぐらいは許してもらえるかね? ボクが治療した患者が来てるんだ、腕には自信があるが心配は心配でね」
「出来れば将門公の目が届かないうちにお帰り願いたいところですが」
「患者は未成年だからね。程々で帰らせてもらうよ。まあ無理にでも帰れというのならボクに抵抗の手立てはないわけだが」
肩越しに苦笑を浮かべながらドクターはそう告げる
「ボクは戦闘能力は皆無だ。邪魔だというのなら追い出す事も……消すのも簡単だろうさ」
そう言って会場の喧騒の中に紛れていくドクター
目立つ体躯とドレス、そして何故か羽織っている白衣から会場の何処にいても見つけ出すのは容易だろう
「悪人ではないんでしょうが……むしろ悪人であってくれた方が扱いが楽なんでしょうね」
また厄介事が一つ増えたと、溜息を漏らす黒服D
一応はこの会場内で気を配ってさえおけば、あとは黒服Hに任せる事も可能なのだろうが、真面目な彼にそんな考えをしろというのも酷だろう
「本当に、この町には集まり過ぎている。何も起こらないで欲しいというのは、贅沢な願いなんでしょうかね」