「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - パワーストーン-09

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 …その日も、彼女は前二日と同じように、テントの中にいた
 今日は、結界のためのパワーストーンは置いていない
 今日は、秋祭り1日目と同じように…純粋に、占いのためにここにいるのだ

「全く……無茶をしないでおくれ」
「…えぇ…御免なさい…」

 …今、目の前にいる客相手に、彼女は苦笑してみせた
 客の男性が抱いている生物が、くぅ、と小さく鳴き声をあげる
 ……まさか、この人がここに来てくれるとは
 「夢の国」のことは、この人も、やはり、気にしていたのだろう

 …生き残ってしまった、者として

「「夢の国の地下カジノ」の皆さんにも、怒られてしまいました」
「当然だろう…君が死んだら、あの人だって悲しむよ」

 …悲しんで、くれるのだろうか?
 そうだったらいい、と考えてしまう
 あぁ、私はこんなにも、身勝手で自分の事しか考えていない
 あの人を悲しませるなんて、いけない事なのに

「…それじゃあ、僕はこれで……何かあったら、僕を頼ってよ?」
「……その機会が、ありましたら」

 やんわり笑いかけると、男性は困ったように笑って
 抱いていたその生き物を、持っていた鞄の中にそっと入れてやっていた
 …その方がいいだろう
 あの生き物は、都市伝説なのだから

 静かに、目を閉じる
 …私は、役に立てただろうか?
 誰かの役に、立てただろうか?
 今回だって…首なしライダーや、バールを持った少女たちに、迷惑をかけてしまった
 いつだって、私は、誰かに迷惑をかけてばかり
 あの時から、ずっと、ずっと、ずっと

「…………?」

 …ふと
 テントの前に、気配を感じた
 三人ほどで、何か話しているようだ

「……………か?」
「はい………………ますか?」
「………夫なの?」
「………信頼できる方ですから」

 途切れ途切れに、聞こえてきた声
 会話が途絶えると同時に…テントの中に入ってくる、影
 黒服の、男性

「…ご無事でしたか」
「はい」

 その姿を見て
 彼女は、幸せそうに微笑んだ

 あぁ、良かった
 あなたが生きていてくれたなら、私の願いは叶ったようなものなのです

「…「夢の国の地下カジノ」から、聞きましたよ?…ご自分の身は、もっと大切になさってください」
「あなたには、言われたくありませんわ」

 そう言って見せると、黒服は少し困ったような表情を浮かべた
 …そうだ、彼には言われたくない
 いつだって、彼は無茶を、無理をしてばかり
 自分の身なんて、いつだって捨てるようなことばかりして…
 女性がそう考えていると、黒服は静かに、女性を見つめてきた

「あなたには、感謝しています…あなたのおかげで、「夢の国」を悪夢から解放させる事ができました」
「……私の?」

 女性は、小さく首をかしげる

 …私の?
 私などが、何をできたと言うのだろう?
 また、他の人に迷惑をかけてばかりだった、私に
 一体、何ができたと言うのか?

「あなたが渡してくださった、パワーストーン。その力が、役に立ちました」
「…ぁ…」

 …………!!
 あぁ、そうか
 あれらを、使ってくれたのか
 女性は、かすかに笑みを浮かべる

 女性には、戦う力はない
 彼女に出来る事は、パワーストーンに力をこめる事
 彼女の契約している都市伝説の力は、それだけと言っていい
 後は、パワーストーン次第
 そして、そのパワーストーンを使うのは、彼女じゃなければならない、と言う訳でもない
 誰が使っても、同じ事


 だから、彼女は嘆く
 自分には力がないと嘆き続ける
 自分では何もできないのだと、ただただ嘆く

 それが勘違いである事に、気付くのはいつ?


「ありがとうございました」

 優しく、黒服は笑ってくれる
 …あぁ、あの時と、同じ
 まだ、彼が生きていた頃
 子供たちに向けていた笑顔と、同じもの

 命を落とし、都市伝説と同化してしまった、今も
 彼は、以前と変わらない、ままなのだ

「…私などの力がお役にたてたなら、幸いです」

 彼女も、微笑んでそう答える
 ほんの少しでも、彼の役に立てたなら
 彼女は、それで満足なのだ

「……それでは、私はこれで…人を、待たせていますので」
「あなたと、契約なさった方々ですか?」

 はい、と黒服は頷いてきた
 …彼と契約した2人
 彼を解放した二人
 お陰で、彼は人間であった頃の記憶を取り戻した
 …そう、記憶も、取り戻したのだ

「…あの」
「はい?」
「…あなたは、人間であった頃を…どの程度、思い出したのですか?」

 女性の、問いかけに
 黒服は、少し途惑ったような表情を浮かべて…しかし、正直に答えてくる

「…正直、全て、とは言えません。死の間際のものと、それより数週間前後程度、でしょうか」
「……そうですか……」

 …それでも…彼は、友人たちの事を思い出せたのか
 それだけでも、良かった

「…背負っていたものは、晴れましたか?」

 そう、女性は最後に尋ねる
 そうすると、黒服は小さく、頷いて

「大体は……あとは、あの時、私が助けた少女が……無事、大人になって、幸せになってくれている事を、祈るだけです」
「………っ」

 …………まったく
 私は、何を期待していたのだろうか?
 女性は、黒服に気付かれないよう、自嘲するように笑う

 気付く訳がない
 あれから、どれだけの月日が立っていたと思っているのか?
 気付いてくれる訳がない
 あの時の少女が私であったことなど…彼が気付くものか

「……?どうなさいましたか?」
「………いえ」

 顔を、あげる
 女性は、迷いを払った笑顔を浮かべていた

「大丈夫…きっと、その少女も、悪夢から解放されて…幸せになっていますわ」

 ほんの少しの嘘を混ぜる
 私は幸せ?
 …多分、まだ幸せではない
 でも、そのうち…幸せ、と言う物を、見つけようと思う
 そうしないと、この人が安心できないから

 これは、私のわがまま
 私の自分勝手
 私は、今、あなたに嘘をついている

 …気付いていないのならば、気付いていないままの方がいい
 余計な気など、使わせたくない

「…そうですね、それを、祈ります」

 黒服は、そう言って…テントから、出た
 テントの幕が下りる直前、青年と少女の姿が見えて
 …あの2人が、彼と契約した存在なのか
 それを思うと、少し、羨ましかった

「…………」

 独りになったテントの中
 女性は、静かに俯いた

 あぁ、良かった
 彼は、救われたのだ
 生き延びたのだ
 私は、ほんの少しでも、彼の力になれた
 また、私は生き延びた

 …これで満足すべきなのだ
 これ以上は望んではいけない

「…ありがとうございました……そして、さようなら」

 …この日、彼女は望みが叶った事を、確認し
 同時に……己の初恋が散った事もまた、静かに確認したのだった







fin


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