KIT
おっちゃん

「おっちゃん!!どうしていつも俺の服着るんだよ!!」
今年で18歳になる俺は若づくりをするおっちゃんに毎度手を焼いていた。
おっちゃんは47になるいい年した宿屋の親父さんで、俺とは親と子、師匠と弟子のような関係だろうか、尊敬しているところはある。
「おっちゃん着た服全部のびてんだぞ!」
外で洗濯物を干す大きな後ろ姿に、昨日も言った言葉を叫ぶ。
これで一体何十回目か…
「かたいこと言うな!俺だって心はヤングだぜ!!」
振り向いたおっちゃんの上着には可愛かったはずのうさぎのプリントが原形をとどめられず横にのびきっている。
そこへ近所に住むおばさんが微笑みながら歩いていく。
「仲がよろしくていいですわね」
など何度となく言われるセリフになっている。
苦笑を返すが自分でも顔がひきつっているのが分かる。
「なかなか似合ってるだろ?」
意気揚々と話すおっちゃんに向かって深くため息をついた。
最終更新:2011年07月04日 17:58