KIT
お客

右手に最高級肉(結構重い)、左手に傘と少年の持っていた金貨を手に、もと来た道を歩いていく。
しかしこの金貨一体どこの国のものだろう…。
まじまじと見つめる僕に、少年は見透かすように話し掛けてきた。
「エルヘブンから来たんだよ。あんたなら聞いた事あるだろ」
少年を見ると強い目がはっきりと見える。
「あんたココの人じゃないでしょ。喋りになまりが無い。どこの人?」
年上に失礼な奴…。と思ったがここはグッと抑えて優しく答える。
「俺は三年位前に来たからな…」
「出身は?」
言いたくない事をずけずけと聞いてくる少年に、話題を変えて聞き返す。
「君はどうやってココに来たの?関門を通ってれば通貨は変えてくれるはずだよ?」
途端に口を閉ざしてしまう少年に普通では無いものを感じる。
やっぱり密航者か…。
この頃国が景気に乗ってきたのを期にちょくちょく増えてきている。
こんな十歳やそこ等の子供さえも入ってしまう程の警備なのか、と思うと溜息がでる。
下を向いたまま黙ってしまい気まずい空気が流れて行くが、まだまだ宿屋まで距離がある。
このままでも仕様が無いので気軽に名前を聞く事にした。
「ねぇ君、名前は?」
「…フェザ」
警戒してしまったのか先ほどの元気はもうない。少年を元気付けようと、笑顔で話し掛ける。
「そっか。じゃフェザ、今日は僕のところで泊まりなよ。滅多に無い最高級の肉があるんだぜ」
おっちゃんの財布で買ったとびっきりの肉を少し持ち上げて悪戯っぽく笑う。
「…うん。わかった(苦笑)」
少しだけ笑顔を見せてくれてほっとした。
お互いの自己紹介をしながら歩いていくとようやく広場まで戻ってきた。
ココに行きに針で眠らせたおっちゃんが転がっているはず…
と、いるはずの場所にいない。
うるさいいびきは聞こえるのに一体どこにるのだろうと辺りを見回していると、道の真中で寝ていたおっちゃんは隅の草むらの中へ移動していた。
寝相の悪さ、いびきに関してはピカ一だと思う…
俺達はおっちゃんを起こして久々のお客を紹介し、肉と共にほくほく気分で宿屋に向かった。
最終更新:2011年07月04日 18:04