KIT
紹介

二度目のお茶を出す俺。
おっちゃんは食料の調達に出かけていた。
この一行がうちに泊まることになったからだ。
おっちゃんは客の前では怒ったようなそぶりを見せなかったけど、俺はおっちゃんから怒りの波動をひしひしと感じていた。
帰りが怖い。
「…で、私はご覧になられました通り僧侶です」
いきなり初対面で俺を杖で殴った女性はロッカと名乗った。
俺の正面に座ったこの僧侶は、長く見事な金髪をこう・・・くるくると縦に巻いていて、およそ僧侶らしからぬ外見だったが、マントを脱いだその下はまぎれもなく聖法衣だった。
俺は勝手に自分と同じくらいの歳だろう、と見当をつける。
「ケンです。初めまして」
「そしてこちらが…あら?」
「クロスならさっきからずっといなかったよー」
熱心にお茶菓子を口に運んでいたフェザが口をはさんだ。
「ああ、またですか…よくね、勝手にいなくなるんですよ。こんな時にどこ行っちゃったんでしょうか…」
ロッカの目がすがめられる。彼女はややつり目なのでにらむと迫力が…
彼女の隣の席にはすこし放れてさっき扉を蹴破った大男(落ち着いて見るとすごい背が高い)がいて、俺の隣にはフェザが、足をぶらぶらとさせ落ち着きなく座っている。そういえば一人足りなかった。
「クロス…さん、ってあの銀髪の人?銃持ってる…」
「そう!クロスは怒ると一番怖いんだよ!あとねー、俺さっき見つけたんだけど、あそことここのカベの穴、さっきクロスが銃で撃った時のだよ!ほらっ!!」
見つけたんだから誉めろ、といわんばかりにフェザが無邪気に言う。
フェザが指差した場所には確かに丸い銃痕があった。ひとつはドアのすぐ脇、もうひとつはカウンターの下で、明らかに修理が必要と思われた。
一同は沈黙した。わざわざ自分達の弱みになるものを発見しなくても…
くっ…また気まずい雰囲気が!
「あ、あんなの適当にふさいでおけばいいですから!気にしないで下さいよ!」
「もったいないよね!弾が!」
弾……。
最終更新:2011年07月04日 18:05