KIT
宿屋にて

イスに座りなおし、
「フェザの事はもう知ってるよな」
と口を開いたのは先ほどの大男であった。
「俺の自己紹介もさせてもらおう」
とイスから立ち上がるとますます大きな背に驚いてしまう。
身長二mは越えてるだろう。
体つきもしっかりしていていかにも戦士、という雰囲気が漂っている。
「俺はボルバータ。さっきは何も知らず攻撃しちまってごめんな」
愛嬌のある顔で少し笑うとなかなかもてそうな顔をしている…
青く澄んだ目をしていながら、腰にある剣の柄には緑色の何かが装飾されている。
真中に黄色い瞳の目をして白眼が赤に染まったオブジェというのだろうか…なかなか怖いものがある…
俺の視線に気がついたのか、フェザが横から口をだしてきた。
「ボルの剣って怖いんだよね…」
俺も同感といわんばかりにフェザと苦笑いをし、ボルはフェザに言う。
「怖くないだろう。かっこよくないか?」
と言いながら鞘から抜き出す剣には恐ろしい数の人を殺したのだろうか、真っ赤に染まった刃が姿を表した。
ギョッとする面持ちにボルは弁解を入れた。
「ああこれって珍しい鉄なんだよ。確かレッドスティールって言ったかな…?」
あぁ良かった血の色ではなかったのか…
「これに魔術を吹き込んだらいいって勧めてるんですけどね…」
残念そうな声でロッカが呟いた。
「いいだろー?」とイスに座るボル。
俺は一通り皆の紹介を聞いてイスから立ち上がった。
「ケンといいます。フェザとはさっき市場で困っていたのを声掛けたというのが縁でしょうか。ここの宿屋の者です。ところで…一ついいですか?フェザの持っていたコイン、あれは一体なんですか?」
「………フェザ!!!」
跳ねるような声を出したロッカにフェザは尚小さくなってロッカに謝っている。
「うわぁぁごめんなさい~~」
「ちょっと来なさい!!」
そうロッカは言うとフェザを連れて外に出て行ってしまった。
…一体なんだったんだろう…
あ~あ、といわんばかりの顔でロッカとフェザを見送るボル、部屋は嵐が過ぎ去ったような雰囲気が残っていた。
最終更新:2011年07月04日 18:05