死線
おっちゃんに例の硬貨を見てもらっている間に、俺とフェザで夕飯の仕度をする事にした。
「フェザ、そこの野菜切ってくれる?」
「わかった」
俺の方も、冷蔵庫からスウィートモアイという、見てくれのゴツいイモを取り出して調理を始めようとしたその時、スパンッという手応えのある音が聞こえ、振り返ると、そこには剣を片手に野菜を切るフェザの姿が…
「ギャ―――!!」
俺のいきなりの叫び声に驚くフェザから素早く剣を取り上げる。
「あ!返せよ、おま…ッ!!」
鈍い音と共にフェザが床にしゃがみこむ。(殴った)
「お前、何て物で切ってるんだ!ここに包丁があるだろ!!」
と、包丁を軽く持ち上げて言う俺の頭に、何かが押し当てられた。
「君…何のつもりだ…」
「フェザ、大丈夫ですか?」
魔術師風の女がフェザに駆け寄る。
俺を見る目は実に冷ややかだ…
しかし、さっきの事で興奮していた為か、まったく気配を感じる事が出来なかった…
などと考えていると、前方からは先程の女性から杖で殴られ、後方からは物凄い音と共に、何かが俺の頬をかすめていった。
「二人共何してるの?ボルは?」
そのフェザの声を最後に俺の意識は遠退いていった。
「どうぞ」
先刻自分が殺されかけていた相手にお茶を出すお人好しな俺。
…誰一人として口を開かず、重々しい空気が漂う。
「頭と頬は大丈夫?」
声をかけてきたのはフェザだ。
「ああ、もう大丈夫だよ」
そう答えてふと気付く。
もしかして、この人達は俺につけた傷の事を気にして黙っているのでは…
ここはひとつ!
「あ、あの!全然平気ですから、気にしないで下さい!」
「…別に気にしてませんが」
寒…
そんな沈黙を破るように、乱暴に扉が蹴破られた。
最終更新:2011年07月04日 18:04