21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

チャオ ソレッラ

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チャオ ソレッラ◆x/rO98BbgY


明滅を繰り返す、朽ち果てた街灯の下。
社会福祉公社の職員、ジョゼッフォ・クローチェは穴が開くほど、ルールブックのただ一文を見つめていた。

 優勝者の帰還は保証し、ありとあらゆる願いを一つ叶える(死者の蘇生を含む)

その一文を読み、何を考えているのか。
陰鬱に俯く、その表情は窺い知れない。
ジョゼは策謀と硝煙、弾丸と血の飛び交う現実を生きてきた男だ。
テロリズムに斃れた家族の復讐を誓う事はあっても、これまで蘇生など考えた事もなかった。
そのような魔法じみた夢は、高度な医療技術を獲得するに至った公社に置いても議論された事すらない。
ニンゲンは、死んでしまえばそれでお終い。
しかしそんな当たり前の理を、この一文は平然と、あっさりと否定してくれている。

 優勝者の帰還は保証し、ありとあらゆる願いを一つ叶える(死者の蘇生を含む)

おとぎ話の世界ならば、ありきたりとも言えるありふれた報酬。
常のジョゼなら、鼻で笑って否定するであろう妄想。
その妄想を――なぜか、今のジョゼは否定しきれずにいる。

チカチカと、街灯は明滅を繰り返す。
周囲は薄気味が悪いほど、静寂に包まれていた。
やがて、ブゥ――ンという虫の羽鳴りめいた音と共に。
街灯の明かりが、ぷっつりと切れてしまう。

そうして、暗闇に包まれた街の片隅で、ジョゼは――



海辺に面したホテルのロビーで、三人の男女が会合していた。

一人はブロンドの髪の上にベレー帽を乗せた、小学生ほどの年頃の女の子。
一人は風紀と書かれた腕章を身に付けた、気が強そうなセーラー服の少女。
一人は髪の毛を目のあたりまで伸ばした、どことなくホストっぽい印象をしたブレザーの少年。

話し合いは、最初の自己紹介から大荒れ模様を見せている。

「はぁ!? 諸葛孔明って……大昔の中国の有名な軍師じゃないっ! 自己紹介しようって時に、そんなすぐにバレる偽名を使うなんて……
 巡が社会の常識(ルール)教えてあげよっか!?」
「は、はわわ……ぎ、偽名じゃありませんよぅ。真名は朱里と申しますが……孔明は本当に私の字ですぅー」
「孔明って言ったらあれでしょ。ちょび髭で、知的なダンディーなおじ様で……偽名を使うんだったら、もうちょっとマシな――」
「まぁまぁ。落ち付けって。あながち偽名とも言い切れないかもしれないぜ」

ヒートアップしているセーラー服の少女、銭形巡を、その場で唯一の男性である日向秀樹がなだめに入る。
日向の言う論拠は、支給されたルールブックに付属する名簿であった。
そこには確かに諸葛亮という姓名と、劉備や関羽、曹操といった、誰もが知る三国時代の英傑たちの名が記されている。
まともな人間なら、そんな有名人の名を騙ろうとなどするはずもないし、これだけ揃っていては同姓同名とも思えない。

「だから、本当に私の名前は諸葛亮で間違いありません」
「ど、どういう事なのよ……」

日本の中学生なら、大概は図書室などに置いてある横山○輝の三国志を一度は読む機会があるだろう。
巡もそう詳しいわけではなかったが、劉備や関羽、諸葛亮といった主人公クラスの面々は知っており、脳内のイメージはそれに準じた物だ。
こんなちびっ子が、孔明だと言われても――激しい違和感を感じてしまう。
そもそも、三国志と言ったら西暦200年頃の話で、巡の時代からすれば遥かな太古の話である。
――まさかそれが少女として現世に転生したとか、そんなC級漫画みたいな話をしないでしょうね……
そんな巡の思いを余所に、少し年上の少年が納得したように呟く。

「ふうん。三国時代の英雄たちを、今の時代に生き返らせたってわけか……あの孔明が実は女の子だったってのには驚いたけど。
 とすると、俺たちも生き返ったって事か?」
「貴方、そんな話を信じるワケ!? て言うか、貴方“も”生き返ったってどういう事!?」



ベレー帽の少女に負けず劣らず、妙な事を言い始めた日向を、巡は驚愕の眼で見る。
最初に集められた人たちの中ではまともな外見をしていた日向だけに、巡の眼には裏切られたかのような色合いが混ざっている。
日向は、そんな巡に人好きのする笑顔を向けると、説明を始める。
彼とて、自分の置かれている特殊な立ち位置は理解していたから。

それは、青春時代をまともに過ごせずに死んだ者たちの世界。
死んでも死なない――そんな世界で繰り広げられる「死んだ世界戦線」
――ゆりや日向を中心とする、転生を拒む者たちの戦いの話だった。

「ほら、あの変な男が言ってただろ? 死んだ人間は生き返らないとかなんとか。
 ありゃ多分、俺たち戦線メンバーに向けて言ったんだろうな……孔明ちゃんも、自分が死後の世界から生き返ったって自覚あるの?」
「……いいえ。私には自分が死んだ自覚なんてありませんけど……確かに、あの于吉にはそんな力があるのかもしれません。
 だって、彼は――私たちが、確かに倒したはずなんですから」

朱里が語るのは、太平要術の書によって動乱を起こそうとする于吉の野望と、それを止めた諸侯たちの物語。
その結末は、劉備の持つ竜の爪が于吉を滅ぼしたというものであった。
その彼が再び現れたという事は、生き返りの術の実在を証明するものなのかもしれない。

「生き返ったのは嬉しいけど……ここで死んだらそれまでか。理不尽もここまで来るとキツいぜ」
「ちょ、ちょっと待ってよ……じゃあ、あの于吉って奴は死人たちを生き返らせて戦わせようとしてるって事なの?
 ……巡たちも、もう死んでるっていうの?」

次々に突きつけられる常識外の話に、巡の表情は青褪める。
初めて目にした人の死。そして最後の一人になるまでの殺し合いを命じられた時点で、気が強い巡の精神も参り切っていた。
警視総監の娘とはいえ、巡自身は当たり前の14歳の少女に過ぎないのだ。

「いや……でも諸葛孔明って結構長生きしたはずだしな。この年で死んだって事はないと思う。
 さっきは生き返らせたのかって言ったけど、生き返らせてまで参加させられたのは、俺らくらいなんじゃね?
 知んねーケド、タイムスリップしたとか……」
「自分が万能の力を持つ事を、参加者たちに見せつけているのかもしれませんね。
 少しでも情報交換すれば、それぞれの認識の差に気付くはずですから」

三人集まっただけでこれなのだ。
最初に集められた場所にいた車椅子の少女の力や、素早く動く男の力。下着を丸出しにした少女たちの一団の事など、文殊の知恵を絞っても
説明出来ない事はまだまだある。
どうやら想像以上におかしな事に巻き込まれてしまったという事に三人は気付き、暗澹とした気分になった。

「あの……ゴメンね? 孔明ちゃんの言う事疑っちゃって……巡の悪い癖なんだ。疑ってかかるの」
「いえー。判って頂ければいいんですよ。呼びにくければ朱里と呼んでください。
 でも私って、後世ではそんなに有名になっているんですか?」

しかしそれでも、少女たちが和解し、それぞれの事を喋り出すのを日向は微笑みながら見つめていた。
どんな企みがあるのかは知らないが、人生これからというような女の子たちを殺し合わせるなんて間違っている。
だから日向は、あの世界で神に反抗したように――この殺し合いにも、どこまでも反旗を翻すつもりだった。
その為にしなければいけないのは――

「おーい、ちょっといいか? 支給された武器の確認しようぜ」

この先、生きのこる為の戦力の確認である。
幸い、ここに集まった三人には殺し合いに乗る意思はなかったが、参加者たちの中には乗る者もいるかもしれない。
女子供が多いこのチームに必要なのは銃器による火力だ。
天使のような超常的な力を持つ者でもなければ、銃で武装された集団には手が出せないだろう。
勝ちのこる為というよりも、生きのこる為の抑止力として日向はそれを期待する。

果たして二人の少女の荷物の中に銃器は――あった。

「おおっ! 巡ちゃんのはスコーピオンじゃん。当たりだなこれは」


Vz.61。別名スコーピオンの名の通り蠍の尾のように折り畳まれたストックが特徴的なこのサブマシンガンは、コンパクトな外装と扱いやすさが売りである。
とはいえ、流石に初心者の女の子がぶっぱなすのは危なすぎるので、日向は自分に支給されたシグザウアーP232との交換を提案する。
装弾数は少ないが、その分コンパクトに設計されたこの自動拳銃なら、女の子の手にもしっくりくるだろう。

「銃……」

巡は、手渡された銃を恐る恐る握る。
将来警視総監を夢見る少女にとって銃と手錠は、法を守る正義の象徴であった。
だが、この島ではそれもただの殺人道具。
初めて手にしたその銃は、意外なほど軽かった。
それでも引き金を引けば人が死ぬ。
巡は、唾を呑みこんだ。

「孔明ちゃんのは……ハハ、こりゃいいや。エアガンか」

朱里の鞄に入っていたのは、これまたコンパクトな自動拳銃であるワルサーP99。
そのエアガンモデルであった。
実質的な戦力としては期待出来ないが、驚くほど精巧に出来たその外見は、抑止力としてだけなら期待出来るだろう。
元よりこんな幼い少女に、人殺しの道具を持たせるのは抵抗がある。
日向は秘かに胸をなでおろす。

「マガジンを入れてスライドを引けば初弾が薬室に装填されるから、扱いに気を付けろよ。
 撃つ時は、そこのセーフティを解除して……」

「死んだ世界戦線」の一員として、様々な銃器を扱った経験のある日向が、二人にとりあえずのレクチャーを施す。
形だけでも様になっていないと、抑止力にもならない。
危惧するのはせっかく銃を突きつけたのに、安全装置がうんぬんと突っ込まれて逆転されるパターンである。

「んで、銃を両手で構えたら照準具で狙いを付けて――ドンッ」

ドンッ

日向が、発砲の擬音を口にした瞬間、ホテルのロビーにそれと同種の重低音が鳴り響いた。
胸を貫く衝撃。
一瞬で視界が暗転する。
日向の肉体が床に倒れて、溢れる鮮血が絨毯を真っ赤に染めた。

「キッ、キャアアアアアアーーーーーーーーーーー!!!」

それにワンテンポ遅れて少女たちの悲鳴が轟く。
その悲鳴を聞いて、日向はようやく、自分が敵襲を受けた事に気付いた。

「に……げろ……」

そんな日向の掠れた声が聞こえたのかどうか。
巡が、朱里の手を掴んで逃げだした。
追撃は――とりあえず、ないようだ。

少女たちを心配する必要がなくなり、日向は自分の身体のチェックを行う。
攻撃を受けた胴体には、感覚もない。
傷口を触ろうとして……もう手も動かない事に日向は気付いた。
ある意味慣れた、死の感触。
だが、もう生き返る事はない――らしい。

(ハハ……せっかく生き返ったのに、もう死ぬのかよ……)

僅かに顔を横に向けて、口から血の塊を吐き出す。
確保した気道から空気を吸い込んだ。

(まぁ……死んだのに生きていた今までのほうが特別だったんだよな……)



青春に未練を残した物の為に用意された世界。
そこでバカな奴らと、思いっきりバカ騒ぎを楽しんだ。
だから実は、もうほとんど未練なんて残ってなかった。
思い残したのは、音無のやろうとした事を手伝えなかった事くらいだろうか。

(チクショー。音無……お前、うまくやれよな……。ゆりっぺ……ガンバレよ……)

最後に浅く呼吸をして、日向の肉体は、それで永久に動かなくなった。

【日向秀樹@Angel Beats! 死亡】
【【残り54人】



「はぁっはぁっはぁっ」

心臓が激しく脈を打つ。
背中を伝う冷や汗が気持ち悪かった。
銭形巡は、生まれて初めて経験する死の恐怖を前に――朱里の手を引いて夢中で逃げていた。

息を吸うごとに、鼻腔に残った血の匂いがぶり返す。
吐きそうになる感覚に耐えながら、巡は廊下に備え付けられた緑色の誘導灯の案内に従い、非常口を目指す。
銃の音は玄関の方からした。
だから、逃走の方向としてはこれで正しいはずだが――

(日向さん、ゴメンなさいっ!)

見捨てて来てしまった。
胸を撃ち抜かれて、大量の出血をしていた日向は、助からないように見えた。
だが、すぐに手当てをすれば助かっていたのかもしれない。
巡が上手く敵を撃退し、すぐに処置していれば――

(ゴメン、無理っ!)

そんな事は、出来るはずもない。
だから自分の判断は正しいのだと、朱里を守って逃げた自分の判断は正しいのだと思いたかったのに――
朱里を引く手に、抵抗が掛かる。

「――えっ?」
「巡さん、どこに――向かっているんですか!?」

自分の判断を、責められるのかと思ったが、違った。
この時代に疎い朱里は、ホテルという建物には、玄関の他に非常口がある事を知らなかったのだ。

「だ、大丈夫だよ、朱里ちゃん。この案内に従って歩けば、非常口があるからね。そこから逃げよ?」
「巡さんも、この建物には初めて来たはずですが……そういう構造は、この時代での常識なんですか?」

世界各国での標識の形は異なるが、ホテルに非常口を設置するのは世界の常識であろう。
日本の消防法に置いても、ホテルには最低二か所の非常口の設置が義務付けられている。
それを口早に説明すると、朱里は力強く、こう断言した。

「では、それは罠ですっ!」



ジョゼは手にしたThompson Center コンテンダーの銃身から、5.56mmのライフル弾の薬莢を排出し新たな弾を籠める。
小型のライフルめいた銃身を持つこの銃は、狩猟用のシングルショット・ピストルである。
ジョゼに支給されたコンテンダーはライフル弾をも装填出来る威力抜群の銃ではあるが、代償として装填出来る弾の数は単発であり、
銃同士での撃ち合いともなれば敗北は必至という極端な銃だった。


故にジョゼはまず短機関銃という最大火力を保持し、銃の知識もあった日向を狙ったのであるが……どうやってそんな事を知ったかと
言えば、答えはロビーの机の下に仕込まれた盗聴器にあった。

あの大勢いた広間から、このホテルのロビーへと転送されたジョゼは、そこに人がやってくる気配を察知して盗聴器だけ仕掛けて
とりあえず外へと退避したのである。
そして三人の会話の全てを盗聴し――この奇襲を計画したのだった。

国家公務員であるジョゼがこのような無法を決意したのも、実はその会話内容に原因があった。
人間の蘇生。
もし、それが本当に可能なのであれば、ジョゼには生き返らせたい人間がいた。
かつてイタリアを席巻した五共和国派によるテロリズム。
世にクローチェ事件として有名な、そのテロによる犠牲者の名前はエンリカ・クローチェ。
ジョゼの妹である。
法曹家である父や母だけなら、政治闘争が過激なイタリアの法曹家としてしょうがないとも言えたが、兄ジャンの婚約者や、
妹エンリカの死を、このクローチェ兄弟は許容出来ずにいる。
それが高じて公社というテロリストへの復讐が出来る仕事に就いたのだが、もし彼女たちを生き返らせる事が出来れば
そんな不毛な戦いからも解放されるだろう。

ジョゼはそんな情報をもたらしてくれた日向という少年の元に赴き、少年の遺体を確認する。
当然だが、死んでいる。
言葉通り、本当に死を迎えた様である。

盗聴器を回収し、少年の荷物を奪う。
短機関銃が確保出来たのは幸いであった。
コンテンダーだけでは、この先どうにもならない。

逃げた二人については、予め非常口に設置しておいた最後の支給品。対人地雷クレイモアで始末出来ると思っていたのだが
中々その爆発音がしない。

「仕損じたか? 意外と冷静だな……」

さすがに二階以降の非常階段などには仕掛けていないので、そこから逃げたとすればお手上げだった。
まぁ今回はこの成果で我慢するかと思った時。

ジョゼのいるロビーに、クレイモアの破裂音が響いた。

【一日目 G-5 ホテルロビー 深夜】

【ジョゼッフォ・クローチェ@GUNSLINGER GIRL】
[状態]:健康
[装備]:T/C コンテンダー(1/1)@現実、Vz.61 スコーピオン(20/20)@GUNSLINGER GIRL
[道具]:基本支給品×2、5.56NATO弾×18、スコーピオンの予備弾倉×4、盗聴器@GUNSLINGER GIRL、M18クレイモア@現実×2、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:優勝して、エンリカを生き返らせる
1:優勝する
2:公社の人間は利用出来る



「では、それは罠ですっ!」

一瞬立ち止まり、巡は朱里を見る。
罠って……伏兵でもいるというのだろうか。
流石にそれはないと、巡は思う。
きっと、社会常識の違いから来る誤解だろう。
第一、逃げずにどうしろと言うのか。
襲撃者がいたロビーに戻り、玄関から逃げろと?


「ゴメン、急ぐからっ!」

巡は小柄な朱里を肩に抱きかかえると、再び走り出す。
こうしている間にも、襲撃者は追ってきているかもしれないのだから。

「ま、巡さんっ!」

問答を避け、今はただ逃げる事に専念する。
巡も小柄ではあるが、担ぎあげられた朱里は更に小さい。
学校でも足の速さで有名な巡は、その身体能力を持ってホテルの廊下を疾走する。

「あったっ」

そこには伏兵などおらず、静かに避難客を待ち受ける重そうな鉄の扉だけがあった。
巡は、そのドアノブを捻ると、一気に引っ張る。
糸の切れたような、僅かな違和感。
開けたドアの向こうにあったのは、三脚のような足に支えられた小さな箱だった。

閃光。

爆発の兆しを感じた瞬間、巡は身体に、柔らかな何かが背中にぶつかるのを感じた。

「え……」

小さな呟きを残し、爆炎と強力な殺傷兵器がその空間を蹂躙する。
破壊の納まった後、その場には何も残されていなかった。



気付いた時、巡たちは見知らぬ森の中にいた。
あの時、巡たちを待ち受けていた死のトラップ。
そこからどうやら生還出来たらしい事を知り、巡の全身から力が抜ける。
脱力しきった肉体には、全然力が籠らない。
ただ、ブルブルと痙攣するように、身体が震える。

「ハッハッハッ。危ないところだったな、少女たちよ!」

そんな巡を鼓舞するかのような頼もしい笑い声が、夜の森に木霊する。

「だ、誰? どこにいるの!?」

ビクリと弾けるように反応したのは巡である。
朱里はなぜかげんなりしたような表情で、黙ってそれを見ている。
かさりと、わざとらしい物音がした。
釣られて視線を向けた先に居たのは、グラマラスな肉体を露出の激しい白い衣に包んだ女性。
まるで蝶のような妖しい仮面を付けた女性が、木の枝の上に立っている。

「あ、貴方は……っ!」
「正義の華を咲かせる為に、美々しき蝶が悪を討つ! 美と正義の使者、華蝶仮面……推参!」

華蝶……仮面様。
噛みしめるように巡が呟くと、華蝶仮面と名乗った女性がうむりと頷く。

「悪人たちは、いずれこの華蝶仮面が必ず討ち果たす。それまではその命――くれぐれも、大切にな!」

それだけ言い残すと、華蝶仮面は跳躍した。
巡が当たりを見渡しても、その姿はもはやどこにもない。
ただ、反動に揺れる枝だけが、そこに残されていた。

「華蝶仮面様……一体何者なの……?」



夢見る少女のように呟く巡に隠れて、朱里はこっそりと溜息をつく。
朱里としては、こんな時まで、そんなお遊びに興じていないで趙雲(華蝶仮面)に一緒にいてもらいたかったのだが……
あんな人の知り合いだと思われるのも、それはそれで嫌だった。

【一日目 C-3 森 深夜】

【銭形巡@瀬戸の花嫁】
[状態]:健康
[装備]:シグザウアー P232(8/8)@現実
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:巡がみんなに社会の常識(ルール)教えてあげなきゃ、だけど……
1:みんなを探す
2:華蝶仮面様……

【諸葛亮@真・恋姫†無双】
[状態]:健康
[装備]:ワルサー P99(エアガン)@CANAAN
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~2
[思考]
基本:再び于吉を倒す
1:とりあえず、戦力集め
2:趙雲さん何してるんですか



次の瞬間、趙雲は見知らぬ道路に降り立っていた。
どうもこのヘルメスドライブというレーダーの武装錬金を扱い切れずにいる。
だが、朱里を間一髪助けられたのは運が良かった。
きっと今頃、麗しき華蝶仮面の活躍の数々を同行している少女に伝えている事だろう。

「それにしても、なんと美しいマスクだ……」

趙雲は自らに支給されたマスクをうっとりと眺める。
自作のマスクも気に入っていたが、このマスクの美しさもまた格別だ。
この騒動を片付けたら、製作者に是非会ってみたいものだと、趙雲は思わずにはいられなかった。

【一日目 B-2 道路 深夜】

【趙雲@真・恋姫†無双】
[状態]:健康
[装備]:ヘルメスドライブ@武装錬金、パピヨンのマスク@武装錬金
[道具]:基本支給品×1、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:美と正義の使者として振る舞う
1:ヘルメスドライブの扱いに慣れる

※ヘルメスドライブを上手くコントロールする事が出来ません



021:DANCING JUNK 投下順に読む 023:doll
時系列順に読む
000:胎動 ジョゼッフォ・クローチェ 037:我が良き友よ
諸葛亮 048:ドキッ乙女だらけのいらん子中隊
銭形巡
趙雲 032:Inner Light
日向秀樹 GAME OVER

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