最終更新日
2024-07-0112:08:03



【iteyar fiicuv】 iteyayen magwettaläš! 【kuliyan fëš】(【急募】潜森士、募集!【求む】)

fiyen a fiyiv matrellöš a düš. rukit foa liyär trela a lyav!(待遇、給与は応相談。隊のメンバーがまったく足りていません!)

cutër dumiyu : rukare ï düš fanitör maav rukete lät foav a lyav.(業務内容:未だ誰も到達し得ない潜森ルートの開拓、)
care mär žiföögene ï fiicür cuti, letrör!(内郭よりの帰還路の確保など!)

let lär bista a ta a itete duläš äav! fiyene dumäš a ae car ï fir foav!(フレッシュなやる気が「森」を乗り越えあなたに唯一無二の名誉を与える! 面接いつでも可!)


――『荷物持ち(ポーター)を探す、某潜森隊の募集文』より。





「潜森士(ダイバー)」とは


「森」から出土する「漂着物」、
そしてそれらがもたらす、国家を揺るがすほどの力と価値。

「森」から現れる、通常の生物と比にならぬ力を持った怪物たち。

あるいは森外とは全く異なる道理を有し、得難い神秘をもたらす地域や場所、現象など――。

これらを見つけ出し、あるいは対峙し打ち倒す彼らは、
いつしか「潜森士(ダイバー)」と呼ばれ、讃えられた。

彼らは、「森」という魔境を切り拓き、
あらゆる栄誉と賞賛の先に、自身の真名を見つけんとする人々である。


「社会的価値」


最上位の「星鈴/明星(ステラ―)」ともなれば森辺において知らぬ者は居ない、
位が下がるにつれ、知名度は著しく下がる。万人鈴の一部を除けば、誰もが知る存在に至ることは難しい。
なぜなら、誰しもが憧れ誰しもがその身を投じていくのが「潜森士」だからだ。

だが一つ鈴や十人鈴などは掃いて捨てるほどおり、またそれらの大部分は人知れず死んでいく。
それでも彼らは、「森」へ身を投じることを決してやめない。

進むこと、知ること、あるいは自分の存在を喧伝し、自身の真名を得んとすること。
それこそが彼らの存在理由なのだから。


「なりかた」


ただの潜森士になるなら容易で、
ちょっとした小金と浅瀬の砂を幾らか集め、
加工屋で鈴を作ればフリーの潜森士には一人からでも容易になれる。

しかし、多くの駆け出しは大抵の場合、身近な千、万人鈴や(居るならば)明星に師事し、
潜森宿などで広く公募する潜森隊に所属して「森」で生きる術を学んでいくのが基本的な筋道だ。
獣の餌や糞になりたくないのなら、単独行は可能な限り避けた方が良いだろう。

また、彼らの多くは親のいない子供が成り手であることが多く、
そうでなくても元より潜森士の下に生まれた者たちが志願するところが大きい。

最近は、異国からの潜森士志望も多い。


「鈴」


潜森士が持つ「鈴」は、彼らが彼らたる証のひとつ。
森の浅瀬へと流れ着く特殊な砂を固めて作られるが、これらは鈴同士で集まり固まる力を持つ。
また、その内部の舌(音が出る部分)は、人には聴き取れない音域の音を出している。

持ち主の命や名を失った鈴は、未だ名を持つ主人のある鈴に寄り付き、
一つになろうとするが、昨今の潜森士たちはあえてこの力を使うことはあまりせず、
持ち主を失った鈴をそのまま遺品として持つことのほうが多い。

この原理不明な機能が、後述する階級の呼び名の元となった。

潜森士は鈴の数によって立場が区別されるが、
所有する称号と、実際にその者が持つ鈴が、他の鈴を多く取り込んでいるかどうかは関係がない。

しかし、不心得な潜森士が名無しとなった鈴を骸や他者から奪い取り、
自身の立場の大きさを偽ることは少なくない。


以下は階級の早見表と、概説。

等級 解説
砂さらい 新人、見習いの立ち場。浅瀬に溜まる砂を集めることが始まり。
一つ鈴 駆け出し。潜森士において最も立場が低く、最も死亡率が高い。
十人鈴 半人前。潜森だけでは食べて行けず、他の仕事との両立が基本。
百人鈴 一つ目の壁であり、ここに至ることが潜森士としての独り立ちとされる。
千人鈴 ベテラン。ここから上の階級はほとんどが常軌を逸した超人達である。
万人鈴 最後の壁。到達できる潜森士は一握りで、その実力は一個人ですら驚異的。
星鈴 「明星」とも呼ぶ。全潜森士の宿願たる到達点であり、森辺における希望の星。
黒鈴 黒鈴。反乱分子や極めて危険な獣、現象などを制する力を持つ、国家主導で運用される潜森士。


「黒鈴」


国家に仕える例外的で特殊な潜森士、それが黒鈴である。
彼らについての詳細は同じ潜森士内でもようとして知れず、どのように成るのかも外部からは曖昧で、
と同時に国家の権力の具現であるがゆえ、彼ら自身が名を上げることはほとんどない。

しかし、それでも彼らは力を振るい、森辺の安寧と国家の平穏を守っていく。

その仕事は「森」内における深刻な脅威と考えうる海賊の討伐を始め、
国家存続の危機とみなされる存在の撃滅、もしくは敵国の違法な調査隊の放逐、
違法な漂着物の蔓延阻止、侵略的動植物の繁殖阻止など、知られている限りでも多岐にわたる。


「星鈴/明星(ステラ―)」


「森」の暗がりを切り拓き、森辺に光を灯す――それが星鈴である。
奇人変人猛者剛力揃いの万人鈴の中でも、極めて大きな功績を森辺に刻み、
今もなお自身の名を「森」に置き忘れずにいられる者だけが夜闇を照らす星になれるのだ。

森辺の歴史に変革をもたらすほどの技術発見や、
国家を滅ぼしかねないほどの脅威や魔獣を駆逐せしめる、
あるいは未だ目の届かなかった秘境の開拓による人域の拡大から、
不可能とされていた交易路の開拓など、あらゆる変化の切っ先に必ずその輝きがある。

現在記録に残っている星鈴は数人で、その多くは人生を「森」へと投じ、
やがてその名を忘れられていくことで完成に至るとされている。

しかし、いかにその存在や名が「森」の狭間に失われていこうとも、
彼らが人族の発展に寄与した事実、革命的発展の礎を築いたことに変わりはなく、
今後もその瞬きを目指す潜森士が尽きることはないだろう。

また、正式な呼び名である星鈴よりも、明星(みょうじょう)と呼ばれることのほうが多い。


「潜森士の現実」


誰もが焦がれ、「真名」を手に入れるために乗り込んでいく「森」だが、
皆が上手くいくはずもなく、仲間も含めて命を落とすのは当然で、
糊口をしのぐことすら叶わず、海賊へ身を落とす者も少なくない。

たとえ食らいつき続けたとしても、上手くいくとも限らず、
残ったのは「森」に蝕まれた我が身ひとつ、という顛末を辿ることも珍しくないのだ。


用語


「日誌(ログブック)と栞(ブックマーク)」


「最初の日誌」から始まった文化、それが日誌(ログブック)である。

潜森士は必ず、その日の出来事を日誌に記録することが伝統になっている。
「森」では「名」の喪失が常に付きまとい、
もしも奪われてしまえばそれまでの経験や記憶は「森」の泡沫となって消えてしまう。

その保険のために使われるのが「日誌」で、
これらを用いれば、仮名を喰われ、自身の本質たる真名さえもが失われようとも、
自身の遺してきた足跡は必ず残ると信じられているからである。

現に、「最初の潜森士」は名前も性格も周囲との関係も、
一切誰の記憶にも残っていない(数百年前の人物ゆえというのもあるが)が、
それでもこうして、今日の潜森士たちを森へ導く「最初の日誌」を遺したことで、
今もその影響を鈴の音のように響かせ続けている。

「栞」はさらに信心深い潜森士たちによって使われていて、
それさえあれば、「森」の「歪み」や巨大な「海嘯」に直面したとしても、
その日その時のページに差し挟みさえしておけば、同一の場所と時間に必ず帰還できると考えられている。


「漂着物(ひょうちゃくぶつ/ラック)」


人々が、そして多くの潜森士が「森」に潜る目的の大きな一つ、それが「漂着物」

「森」から出土する不思議な物品の総称で、
道理を越えた力を持つ物から、日常生活に使える物、何の役に立たない物まで様々。

その価値は等級によって大きく左右されるが、上位区分である「青」や「星/黒」ともなれば、
一生食うに困らぬほどの価値があると言われている。

「漂着物」は「森」の様々な場所で見つけることができ、
土の下に埋まっているものもあれば、「森」の中の遺跡のそのまた奥深くから入手できる物、
獣道の奥で木々の毛布に包まれて眠っている物、獣が飲み込んでしまっている物もある。

また、違法な物品も当然存在し、
それらの取り扱いは国家、ひいては黒鈴たちによって厳しく取り締まられている。

「森図(チャート)」


磁石や特殊なピンなどで、ランドマークや特徴的な様相の変化を表せる、特殊な地図。
「森」内では頻繁な変化があるため、地図そのものを編集できるような仕組みになっている。

昨日こうだったものが明日もそうだとは限らない、が森辺における通念なので、
周辺状況を調べ、定期的に森図を起こす仕事も存在している。


「浮標(ブイ)」


「森」の中は非常に不安定だ。前述の森図で多少の対応は可能だが、根本的な解決にはならない。
それを緩和するのがこの浮標で、拠点間に設置すると、
二つの浮標の間を印が結び、「森」内での道標として機能する。

しかし、これ自体もそう頼りになるものではなく、軽微な「森」の歪みで容易く切断されてしまう上、
時折他の浮標同士、特に「より強い力を持つもの」と混線、引き寄せられ、目的地を違えてしまうこともある。

とは言え整備を怠らなければこれほど重用されるものはなく、
幽き樹海の航路開拓は森図や浮標を以て日々続けられている。

浮標の種類はさまざまで、用途に応じて潜森士間での意味が異なる。

「隊長(ベルウェザー)と櫂(オール)」


潜森隊を率いる者、それを隊長(ベルウェザー)と呼ぶ。

潜森隊(ダイバーズ)は、ただ一人でも生き残り、
隊が刻んだ足跡を是が非でも人域へ持ち帰ることが使命であるため、
隊長はその存続を一番に考えて行動しなければならない。


櫂(オール)はその潜森士の武装にもなっていることがほとんどで、
特に隊長は自身の鈴と、道半ばに倒れた仲間の鈴を櫂に括りつけ、
「森」の危険に最前線で立ち向かいながら指揮を執る。

また、一部の厚顔無恥な潜森士には、
名無しとなった者の鈴や、名を持たない鈴を大量に櫂に提げ、
自身の立場を偽る者も居る。


櫂自体は人によって様々な物を持つため、
元となった「櫂」の形状とはまったく異なることのほうが多い。


「時計(ダイバーズウォッチ)」


多機能時計のうち、「森」の不安定な環境にもあまり影響を受けない物を言う。
方位を始め、潮汐値、周囲の状況の変化にも流されず一定の時刻を指す。

しかしどれほど優秀な物でも、大時化や海嘯の前後には狂いがちで、
逆に言えばその兆候が示された場合に進行を止めるなどの判断基準にも使用できる。

精密な物は当然高価であり、潜森士のステータスとしても機能している反面、
高名ブランドの粗悪な模造品なども流通してしまっており、
無知な新人潜森士がこれを付けて事故に遭うことも少なくない。


「錨(アンカー)」


「森」は心身に悪影響を与える様々なものが存在しているが、
「錨」は、携帯版の「骨」とも言える機能を持ち、それらの影響を軽減、あるいは退けることができる。

錨にも等級があり、高ければ高いほどに「骨」の力と見紛うばかりの効果を発揮するが、
本質的には「骨」と異なるうえ、「骨」のように歌を捧げてもその能力を維持し続けることはできない。

基本的には「森」における夜、キャンプを行うための簡易拠点に設置するために運用されているが、
希少なため、使わずに夜を凌ぐ潜森隊のほうが普通。

そのほとんどは「森」から出土するものを利用しているが、
物によっては「森」ではないどこか別の世界から流入してきたアンカーの存在も確認されているという。
最終更新:2024年07月01日 12:08