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梅重納戸の受難 第四話
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梅重納戸の受難 第四話
~梅重家(借家)にて~
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要するに、こういうことだ。
俺は殺した男の孫娘と同棲しなきゃならないらしい。
俺は殺した男の孫娘と同棲しなきゃならないらしい。
アホか。
「据え膳食わぬはなんとやら、よ?」
「いきなり出てくるな。」
「いきなり出てくるな。」
俺が羊羹とかいう前述した殺した男の孫娘を担いで家に帰ってみると、呪術師今様がご丁寧に迎えに来てくれた。
趣味の悪い事に、既に家の中に入っていて、俺が玄関の扉を開くと、満面の笑みでそこに立っていた。
それでこの台詞である。いい加減にしろ。
趣味の悪い事に、既に家の中に入っていて、俺が玄関の扉を開くと、満面の笑みでそこに立っていた。
それでこの台詞である。いい加減にしろ。
「あらら、冷たいのねぇ。友達の作れなさそうな梅重くんのために折角連れてきてあげたのにぃー」
「そういうのを余計な世話とかお節介だとか無駄だとか言うんだよ。」
「でも、殺さなかったわよね?」
「……………」
「その時点で、もうアンタとこの子の同棲は決まってんのよ。諦めなさいな」
「……チッ」
「そういうのを余計な世話とかお節介だとか無駄だとか言うんだよ。」
「でも、殺さなかったわよね?」
「……………」
「その時点で、もうアンタとこの子の同棲は決まってんのよ。諦めなさいな」
「……チッ」
付き合ってられん。
とりあえず羊羹を寝室のベッドに降ろす。なるだけ乱雑に扱ったつもりだったが、別に目を覚ます事もなかった。精神的に余程疲れてでもいるのだろうか。
とりあえず羊羹を寝室のベッドに降ろす。なるだけ乱雑に扱ったつもりだったが、別に目を覚ます事もなかった。精神的に余程疲れてでもいるのだろうか。
「はーいそのまま梅重ちゃんもゴートゥーベーッド」
「まだいたのか」
「だってぇ、こんな夜更けによ?若い男女がフ・タ・リ・キ・リ……うふ、うふふふふ………」
「まだいたのか」
「だってぇ、こんな夜更けによ?若い男女がフ・タ・リ・キ・リ……うふ、うふふふふ………」
俺は戦慄した。
肌が粟立つようだった。
キモい。壮絶に。
肌が粟立つようだった。
キモい。壮絶に。
「おばサンの発情期ほど気持ちの悪いモンもそうそうないな……」
「いいからさっさとヤることヤっちゃいなさ…」
「失せろ。」
「いいからさっさとヤることヤっちゃいなさ…」
「失せろ。」
玄関の扉を開けて蹴り飛ばすと、呪術師は「いやん」とかいうキモい悲鳴を上げて外に放り出された。
とりあえず鍵をかける。無駄だろうが。
とりあえず鍵をかける。無駄だろうが。
「はァ……」
気が重い。
具体的に言えば、この妙な世界と妙な連中に疲れた。
腹が減った。
具体的に言えば、腹から筆舌に尽くし難い音がしているということだ。
何か食えるものはないか、冷蔵庫を漁くってみたが、特に何も食えそうなものは入っていなかった。
具体的に言えば、この妙な世界と妙な連中に疲れた。
腹が減った。
具体的に言えば、腹から筆舌に尽くし難い音がしているということだ。
何か食えるものはないか、冷蔵庫を漁くってみたが、特に何も食えそうなものは入っていなかった。
「……学園の食堂からパクってくるか…………」
「食べ物がないなら羊羹ちゃんを食べればいいじゃ」
「しつこい。」
「食べ物がないなら羊羹ちゃんを食べればいいじゃ」
「しつこい。」
今様が今しがた閉めた冷蔵庫から出てきた。
神出鬼没すぎる。
神出鬼没すぎる。
「あいたたた、わかった、わかったから玄関から放り出そうとすんのはやめて」
「なんなんだよお前は……」
「なんなんだよお前は……」
溜息をつく。
全く、ここまでアレな大人も珍しい。
いや、この世界のスタンダードって寧ろコッチだったりすんのか?
全く、ここまでアレな大人も珍しい。
いや、この世界のスタンダードって寧ろコッチだったりすんのか?
学園で見てきた教師の顔が思い浮かぶ。
……
「──話をしましょう」
いつの間にやら今様は台所の椅子に優雅に腰掛けていた。
もともとこの家の持ち主だけあってか、その服装と内装は見事に溶け込んでいて、ある種優雅さすら醸し出している。
先程まで痴態を晒していた助平ババァとは思えない。
もともとこの家の持ち主だけあってか、その服装と内装は見事に溶け込んでいて、ある種優雅さすら醸し出している。
先程まで痴態を晒していた助平ババァとは思えない。
「……また下ネタだったら刺し殺すぞ」
「うつけめ。そういう話じゃあないよ。空気くらい読みなさい」
「…………」
「分かればいい。
…話ってのはね、とある生徒の話よ。」
「生徒?…夢幻学園の?」
「そう。貴方なら大概は大丈夫でしょうけど、絶対に戦っちゃいけないコがいるの。」
「へぇ……そんだけ危険な異能者ってことか?」
「危険ね。能力もそうだけど、それ以上に異常なのは“性格”。」
「…性格ゥ?」
「……生成纁(きなり そひ)っていうんだけどね、毎日学園に来ずに好き放題して回ってる。」
「…ただのサボりがなんで危険なんだ?」
「好き勝手、っていうのはね、貴方が元居た世界でやってたことと同じことよ。」
「うつけめ。そういう話じゃあないよ。空気くらい読みなさい」
「…………」
「分かればいい。
…話ってのはね、とある生徒の話よ。」
「生徒?…夢幻学園の?」
「そう。貴方なら大概は大丈夫でしょうけど、絶対に戦っちゃいけないコがいるの。」
「へぇ……そんだけ危険な異能者ってことか?」
「危険ね。能力もそうだけど、それ以上に異常なのは“性格”。」
「…性格ゥ?」
「……生成纁(きなり そひ)っていうんだけどね、毎日学園に来ずに好き放題して回ってる。」
「…ただのサボりがなんで危険なんだ?」
「好き勝手、っていうのはね、貴方が元居た世界でやってたことと同じことよ。」
頭を巡らせる。
…殺人強盗脅迫誘拐強姦窃盗……
向こうの世界の事がもう曖昧になってきている。
それだけ、この街は強烈な個性に満ちているということか。
俺が言うなら、“非日常”。
…殺人強盗脅迫誘拐強姦窃盗……
向こうの世界の事がもう曖昧になってきている。
それだけ、この街は強烈な個性に満ちているということか。
俺が言うなら、“非日常”。
「…………粗方の犯罪には手を染めたが」
「粗方の犯罪に目がないみたいね。いや、彼はむしろ、善悪の区別がないって言った方がいいかしらね。
鳥を愛でていたと思ったら、それを手で握り潰したり、
子供が遊んでいる所に混ざっていって、公園を血の海にしたり、
遊園地で遊んでいたと思ったら、いきなり観覧車を落としたり、
困っている老人を助けたと思えば、駅のホームから何の関係もない人を突き落としたりとかね。
夢幻の街にだって、規律はあるわ。管理側の政府が『問題有リ』とすれば警察にも捕まるし、死刑にもなる。
酷い時は蘇生も出来ないように、魂に至るまで処分するそうよ。私は詳しくないけれど。
で、その彼がやってることは、政府の目にも余る。」
「粗方の犯罪に目がないみたいね。いや、彼はむしろ、善悪の区別がないって言った方がいいかしらね。
鳥を愛でていたと思ったら、それを手で握り潰したり、
子供が遊んでいる所に混ざっていって、公園を血の海にしたり、
遊園地で遊んでいたと思ったら、いきなり観覧車を落としたり、
困っている老人を助けたと思えば、駅のホームから何の関係もない人を突き落としたりとかね。
夢幻の街にだって、規律はあるわ。管理側の政府が『問題有リ』とすれば警察にも捕まるし、死刑にもなる。
酷い時は蘇生も出来ないように、魂に至るまで処分するそうよ。私は詳しくないけれど。
で、その彼がやってることは、政府の目にも余る。」
聞くだけで怖気が走った。
俺も最低のクズ野郎を自負していたが。
何か、本能的な気持ち悪さを感じて、身震いした。
俺も最低のクズ野郎を自負していたが。
何か、本能的な気持ち悪さを感じて、身震いした。
「…性格は確かに最悪らしいな」
「ええ。ちなみに彼は稀に学園に来ることもあるし、見つからない訳じゃない。政府が彼を捕まえられないのは、その異能の所為。」
「どんな能力だよ」
「……否定」
「はァ?」
「否定、らしいわ。あらゆる事象の否定。彼が望めばどんなモノでも否定して、まるでそこに初めから無かったように消すことが出来る。」
「お、オイオイ、なんだソリャ。勝ち目がねぇじゃねぇか」
「そ。理解が早くて助かるわ。だから忠告。もし彼を見たら、無関心を装うこと。興味を持たれたら、全力で逃げる事。いい?」
「…………チィッ」
「ええ。ちなみに彼は稀に学園に来ることもあるし、見つからない訳じゃない。政府が彼を捕まえられないのは、その異能の所為。」
「どんな能力だよ」
「……否定」
「はァ?」
「否定、らしいわ。あらゆる事象の否定。彼が望めばどんなモノでも否定して、まるでそこに初めから無かったように消すことが出来る。」
「お、オイオイ、なんだソリャ。勝ち目がねぇじゃねぇか」
「そ。理解が早くて助かるわ。だから忠告。もし彼を見たら、無関心を装うこと。興味を持たれたら、全力で逃げる事。いい?」
「…………チィッ」
駄目だ。
暫く考えもしたが、俺には確かに、その否定に打ち勝つ可能性が0.0000000001パーセントほども見えない。
俺のナイフなんか一瞬で消されちまうだろうし、その後はきっと遊ばれるだけだ。
第一、学級委員にも勝てない俺が相手になるものか。
暫く考えもしたが、俺には確かに、その否定に打ち勝つ可能性が0.0000000001パーセントほども見えない。
俺のナイフなんか一瞬で消されちまうだろうし、その後はきっと遊ばれるだけだ。
第一、学級委員にも勝てない俺が相手になるものか。
強く。
なる必要が迫られている。
そうだ、強くならなければコイツにも…今様にも勝つことなど出来ない。
なる必要が迫られている。
そうだ、強くならなければコイツにも…今様にも勝つことなど出来ない。
「……それじゃ、わたくしはそろそろ御暇致しますわ」
「そうかい。…忠告ありがとよ。」
「礼には及ばないわよ。それじゃ、同棲生活楽しんでね~☆」
「そうかい。…忠告ありがとよ。」
「礼には及ばないわよ。それじゃ、同棲生活楽しんでね~☆」
今様は、またしても空間を歪ませたように、その場から一瞬にして消え失せた。
…魔法か。使えたら便利そうだが……
…魔法か。使えたら便利そうだが……
「才能、か。」
ふと部屋の時計を見やると、もう丑三つ時になろうかという時間だった。
しぶしぶ、寝室へ向かう。
しぶしぶ、寝室へ向かう。
「っと……忘れてた。」
寝室には、コイツがいたんだった。
静かに寝息を立てて、羊羹が眠っていた。
今動かして起きられると面倒だ。俺にだって睡眠は要る。
静かに寝息を立てて、羊羹が眠っていた。
今動かして起きられると面倒だ。俺にだって睡眠は要る。
「……仕方ねぇ、こっちのソファで…………」
「ん…ぅ……うめ…かさ、ね………んぬぅ…………」
「ん…ぅ……うめ…かさ、ね………んぬぅ…………」
思わず振り返った。
しかし、見えたのはベッドの上でごろごろ気持ちの良さそうに寝返りを打つ羊羹の姿だけだった。
しかし、見えたのはベッドの上でごろごろ気持ちの良さそうに寝返りを打つ羊羹の姿だけだった。
「…寝言か」
紛らわしい。
…寝返りを打つ羊羹。
いや、やめだ。全く面白くない。
…寝返りを打つ羊羹。
いや、やめだ。全く面白くない。
頭も冴えていない。
こんな時はサッサと寝るに限る。
寝室の電気を消灯し、ソファに適当に転がる。
こんな時はサッサと寝るに限る。
寝室の電気を消灯し、ソファに適当に転がる。
…ああ、なんであっちがベッドなんだ。
数刻前の自分に文句を言いたくもなったが、しかし野宿よりは遥かにマシだ。
梅重納戸は、ゆっくりと瞼を閉じた。
二人分の寝息だけが、部屋に広がっていった。