おはようセックス@小説まとめ
旅立ちのnull
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ohayousex
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よく寝たものだ…。
私は監禁されていた。数々の陵辱と、拷問と、殺害を繰り返された。
私は監視されていた。と言っても、脱出を企む勇気も気力も、なかったが。
ここは監獄のようだった。私は発狂したかった。廃人になりたかった。
だが、精々、私にできることは、怠惰になることぐらいだった。
私は監禁されていた。数々の陵辱と、拷問と、殺害を繰り返された。
私は監視されていた。と言っても、脱出を企む勇気も気力も、なかったが。
ここは監獄のようだった。私は発狂したかった。廃人になりたかった。
だが、精々、私にできることは、怠惰になることぐらいだった。
あれから、どれぐらいたっただろうか。
飽きられて、放置されて、飲まず食わずで……退屈と思うことも忘れていたぐらいだが。
相も変わらず、鉄臭さが充満した部屋だ。
あるものといったら、薄暗さと錆びた拷問器具と血痕と、あとはなんだこれ。見覚えのないものが。草?雑草?んっ…まぶしい。
あるものといったら、薄暗さと錆びた拷問器具と血痕と、あとはなんだこれ。見覚えのないものが。草?雑草?んっ…まぶしい。
「………光?」
斜め上方。光が差している。珍しいこともあるものだ。
そうか、ここは地下だったんだな。連れて来られたときのことなんて全然覚えてなかった…。
そうか、ここは地下だったんだな。連れて来られたときのことなんて全然覚えてなかった…。
でも、残念。もう私自身が錆びついてしまっているようだ。
腕を自力で動かそうとすると、身体の内側から怠さが染みわたる。
消極的な自由感が私を支配していた。
そもそも身体を動かして、ここを出たところで、次にどうするというのだ。
好きだった人もきっとみんな死んでしまったし、お父さんもお母さんももういない。
そもそも、その周辺はもうまともに覚えてすらいない。
誰の子だったのかも、説明できない子になってしまった。
消極的な自由感が私を支配していた。
そもそも身体を動かして、ここを出たところで、次にどうするというのだ。
好きだった人もきっとみんな死んでしまったし、お父さんもお母さんももういない。
そもそも、その周辺はもうまともに覚えてすらいない。
誰の子だったのかも、説明できない子になってしまった。
でも懐かしい匂いがするんだ。
土と草の匂いだ。
錆と血と、自分の体臭以外のにおいを、私の鼻腔は久々に捉えたから。
そしてそのにおいが、とてもおいしかったから。
きっかけはそれだけ。
起き上がろうとして、両腕に力を入れてみることにした。
でも、力が入らない。
再試行。まだまだ。
再試行。再試行…再試行……。
頭が冴えてきたからか、今度は少し力が入る。
ベリベリッ…と、何かが剥がれる音がする。
でも、力が入らない。
再試行。まだまだ。
再試行。再試行…再試行……。
頭が冴えてきたからか、今度は少し力が入る。
ベリベリッ…と、何かが剥がれる音がする。
うつ伏せに倒れていたからか、唾とか血とか、……尿とか、色々なものが風化して張り付いていたようだ。
…起き上がろう。
自由になった両腕を使って、ベリベリッという気持ち悪いような小気味良いような音を木霊させ、起き上がる。
いきなり立つのは無理なので、取り敢えず胡座をかいてみる。
「……いま、何時?」
ボケてみた。
答えは当然ない。
答えは当然ない。
ちなみに、私は全裸だ。
開放感。
それにしても…よく見ると、この獄内にもところどころ、草が……生えてるな。
ずいぶん寝ていたとか、そういう問題ではないぐらい、風化している。
まあ、ずいぶん寝ていたんだろうが。
ずいぶん寝ていたとか、そういう問題ではないぐらい、風化している。
まあ、ずいぶん寝ていたんだろうが。
しかし…立つのはもっと体力いるな。頑張るか。
よいしょ。
あ、無理。
本気を出そう。
ふぬぬぬぬぬ!!
よいしょ。
あ、無理。
本気を出そう。
ふぬぬぬぬぬ!!
立てた!
って、やばい!転ぶ!
って、やばい!転ぶ!
「ブッ!」
うつ伏せに倒れたせいで鼻血が出た。
立つということがこんなにっ、大変なことだったとはっ!
慣れとは恐ろしいものだ…。
なーんてことを考えながら、光に向かって歩き出す。
ふらふらした足取りで、頑張って高い位置の光を目指し、よじ登る。
瓦礫をどかして、身体にいくつか傷がつくが、気にしない。気にならない。
ふらふらした足取りで、頑張って高い位置の光を目指し、よじ登る。
瓦礫をどかして、身体にいくつか傷がつくが、気にしない。気にならない。
やっぱりまぶしいな…。
小柄でなければ通れない、僅かな光の隙間から、私は外へ出ることができた。
思わず、数秒間思考が止まる。
太陽が、本当にまぶしくて、しょうがない。
そしてなにより、この光景。草木だらけだ。人の気配などは一切感じさせない、廃墟。
昔は町だったのだろう。ところどころに、人工物らしきものがある。が、今は緑の割り合いのほうが多い。
少し人工物には見覚えのあるものもある気がするが、やっぱりよく思い出せない。
そしてなにより、この光景。草木だらけだ。人の気配などは一切感じさせない、廃墟。
昔は町だったのだろう。ところどころに、人工物らしきものがある。が、今は緑の割り合いのほうが多い。
少し人工物には見覚えのあるものもある気がするが、やっぱりよく思い出せない。
ああ…でも。
風が気持ちいいな。
…少し寒い。
服があったらいいな、と思った。
町を、町を探そう。
そこから始まるんだ。
何が?
旅とか…何かが、だ。とりあえず、今は深く考えないでいい。
町を、町を探そう。
そこから始まるんだ。
何が?
旅とか…何かが、だ。とりあえず、今は深く考えないでいい。
でも、そうだな………ここでもう一晩は寝よう。
私は、隙間の出入口が塞がらないように、慎重に…薄暗い監獄の中へ戻る。
愛着は、時間が経てばどんな場所にも湧くものなんだ。
例え嫌な思い出しかなくても、私は、私にとってはもう、ここが私の家だったから。
愛着は、時間が経てばどんな場所にも湧くものなんだ。
例え嫌な思い出しかなくても、私は、私にとってはもう、ここが私の家だったから。
「明日、ここを出て行きます」
心の内を、元監獄に発表することにした。
「今まで、お世話になりました。でも…もう一晩だけ、語り明かしましょう。
私は、そうしたいんです。貴方も、そうしたいでしょう?長い付き合いなんだから…なーんて」
私は、そうしたいんです。貴方も、そうしたいでしょう?長い付き合いなんだから…なーんて」
独り言だけど、独り言じゃない。
私は確かに監獄さんの声を聞いたのだ。そんな気がした。無論、幻聴である。
その日の夜、私は一晩中賑やかに、少し騒がしいぐらいに、しゃべり尽くした。
思い出せないことのほうが全然多くて、話はすぐに行き詰まったけれど。
それでも沢山。無理にでも喋った。
思い出せないことのほうが全然多くて、話はすぐに行き詰まったけれど。
それでも沢山。無理にでも喋った。
これが私なりのけじめであり、別れの挨拶だったから。
「またいつか、ね」