おはようセックス@小説まとめ
擦り減らす幸不幸、為す術無く怒濤
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匿名ユーザー
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夜の公園には名も知れぬ虫と鳥の声ばかりが響き、田舎の静かな夜という幻想はとうの昔に打ち砕かれていた。
ライトアップされたベンチに座った私を客観視すれば、舞台上でスポットライトを浴びたいと切望する訓練生か何かを想起したかもしれないが、どうあれ私にはそんな視点はなく、そして周囲にもまた視線は無かった。
私が耽る思索は深く、そしてうすっぺらだった。幸福とか、不幸とか、いわゆる人生の価値とか、生き甲斐とか呼ばれたりするものへの、果てしない疑念が渦巻いていた。その存在を疑い、終いには人生を疑い始めた。私の堂々巡りは浅はかで愚かだ。少なくとも、夜更けにこんな思索に励む人間が幸福でないことだけは疑いようもなかった。
レールに乗って生きることは人類の知恵だった。同胞を優しくレールに乗せて導いてやることで、種の繁栄を望んだのだ。しかし今それはまるきり反転し、人類は暴走特急と化してレールの上を猛スピードで走行、進路上の人間を皆殺しにするべく車体を無尽蔵のエンジンで動かす悪逆無道の殺人機械となった。
私は危機を感じてそのレールから降りた。しかし、降りた先はまた別のレールだ。そこを降りても、また別のレール。気が触れそうな気持ちになる。
降りる度に老朽化し、あちこちが不安定になっていくレールを見て、私はどこへ行けども逃れ得ぬ死を悟った。
幸福も、不幸も、満足に活きているという前提から発生するものだ。それ以下の人生に、何の価値も求めることは出来そうになかった。
「人にされて嫌なことをするな」父の言葉がフラッシュバックする。頭の中で残響音となって何度も私を震わせる言葉だ。私は、確かに父の教えを守った。しかし、彼らが私にしたことはなんだ?私は、私が嫌がることばかりを、他人にされている。むごすぎる仕打ちだとは思わないのか。
ほう、とため息を吐いた。こんな事を誰に訴えたところで何にもならない。だからこそ公園で一人、このヘドロのような感情の消化に勤しんでいるとも言えるが、もう辞めた方が身のためだというのもまた自明だった。
私は懐から百円玉を二つ取り出し、公園の薄ぼんやりとしたライトの下で仰いだ。そして、自身の生が丸い形の金属の小さな円盤に変換されていく様を想像して、異様な嘔吐感を覚えて、よろよろと立ち上がり、背を丸くして公衆トイレへ向かった。どうも、人目につくところで出してしまうほどに人間性を捨てたわけではないようだ。私はトイレの臭い水で口を漱ぎながら、一人自嘲した。
ライトアップされたベンチに座った私を客観視すれば、舞台上でスポットライトを浴びたいと切望する訓練生か何かを想起したかもしれないが、どうあれ私にはそんな視点はなく、そして周囲にもまた視線は無かった。
私が耽る思索は深く、そしてうすっぺらだった。幸福とか、不幸とか、いわゆる人生の価値とか、生き甲斐とか呼ばれたりするものへの、果てしない疑念が渦巻いていた。その存在を疑い、終いには人生を疑い始めた。私の堂々巡りは浅はかで愚かだ。少なくとも、夜更けにこんな思索に励む人間が幸福でないことだけは疑いようもなかった。
レールに乗って生きることは人類の知恵だった。同胞を優しくレールに乗せて導いてやることで、種の繁栄を望んだのだ。しかし今それはまるきり反転し、人類は暴走特急と化してレールの上を猛スピードで走行、進路上の人間を皆殺しにするべく車体を無尽蔵のエンジンで動かす悪逆無道の殺人機械となった。
私は危機を感じてそのレールから降りた。しかし、降りた先はまた別のレールだ。そこを降りても、また別のレール。気が触れそうな気持ちになる。
降りる度に老朽化し、あちこちが不安定になっていくレールを見て、私はどこへ行けども逃れ得ぬ死を悟った。
幸福も、不幸も、満足に活きているという前提から発生するものだ。それ以下の人生に、何の価値も求めることは出来そうになかった。
「人にされて嫌なことをするな」父の言葉がフラッシュバックする。頭の中で残響音となって何度も私を震わせる言葉だ。私は、確かに父の教えを守った。しかし、彼らが私にしたことはなんだ?私は、私が嫌がることばかりを、他人にされている。むごすぎる仕打ちだとは思わないのか。
ほう、とため息を吐いた。こんな事を誰に訴えたところで何にもならない。だからこそ公園で一人、このヘドロのような感情の消化に勤しんでいるとも言えるが、もう辞めた方が身のためだというのもまた自明だった。
私は懐から百円玉を二つ取り出し、公園の薄ぼんやりとしたライトの下で仰いだ。そして、自身の生が丸い形の金属の小さな円盤に変換されていく様を想像して、異様な嘔吐感を覚えて、よろよろと立ち上がり、背を丸くして公衆トイレへ向かった。どうも、人目につくところで出してしまうほどに人間性を捨てたわけではないようだ。私はトイレの臭い水で口を漱ぎながら、一人自嘲した。