有言実行三姉妹シュシュトリアンの第1話

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1993年1月。主人公3姉妹の長女、高校生の山吹雪子が街中を行く。 道の向こうから、カメラ好き小学6年生、荒木・加納・篠山の3人組がやって来る。 雪子「あれは妹のクラスメイト。よぉし!」 雪子が物陰に身を隠す。 加納「お年玉が良ければ、もうちょっといいインスタントカメラが買えたのにな」 荒木「加納、しょうがないよ。不景気だから」 篠山「そうだよ。ところで『妖怪・ザ・お正月事件』、知ってる?」 加納「知ってる、知ってる!」 荒木「子供たちが、お正月のお供え餅や、松飾りやおせち料理に襲われたっていう事件だろ」 |カメラ店の前で、双眼鏡を持った少年が、空飛ぶお供え餅に襲われる。&br()地面に落ちた双眼鏡を、お供え餅が叩き壊す。&br()&br()「わぁっ、僕の双眼鏡が!?」&br()&br()ラーメン屋。少年がワンタンメンをすすっている。&br()注連飾りが襲いかかり、ワンタンメンが床にぶちまけられる。&br()&br()「俺のワンタンメンが!?」&br()&br()ゲームセンターで少年が遊んでいる。&br()おせち料理の重箱が襲いかかり、口に鼻にと料理が突っ込まれる。| 荒木「原因は不明なんだってな」 加納「俺、妖怪・ザ・お正月の正体、このカメラで撮りたいなぁ~」 雪子が髪を咥え、お化けの真似で3人組を脅かす。 3人組「わぁっ!?」「妖怪・ザ・お正月だぁ!」 加納がカメラで雪子を捉える。 雪子「妖怪・ザ・お正月?」 加納「撮ったぞ」 荒木「やったじゃん!」 加納「──おい。これ、山吹んちの姉ちゃんだよ」 篠山「つまんねぇの」 雪子「つまんない!? つまんないとは何よぉ!?」 3人組「怒ったぁ!」 3人が逃げてゆく。 雪子「もう!」 #center(){|BGCOLOR(blue):COLOR(white):CENTER:&br()&big(){&big(){&bold(){涙の妖怪・ザ・お正月}}}&br()&br()|} 雪子は神社の前を通りかかっている。 雪子「あの3人ったら、私のこと『つまんない』なんて言って…… あっ、今年まだ初詣してなかった!」 神社に駆け込み、神様に手を合わせる。 雪子「どうか今年こそ、お父さんとお母さんが仲良くなりますように!」 自宅の山吹家。 次女で中学生の月子、三女で荒木たちの同級の花子が、母・恵の作った雑煮を食べている。 恵「月子、花子、どう? おいしいでしょう?」 月子「うん、おいしい」 花子「まぁまぁね」 恵「えっ?」 花子「……おいしい」 恵「でしょう? 隠し味なんだからぁ!」 父の英三郎が、風呂から上がって来る。 英三郎「あ~、さっぱりした」 恵「いつまで入ってるんですか!?」 英三郎「すいません…… あ、また雑煮かぁ」 恵「また!?」 英三郎「いえ、私はただ……」 恵「いけませんか!?」 英三郎「あ、あの……」 恵「あなたって人は、いつだって、そうなんだから!」 英三郎「いえいえ、そうじゃなくて」 恵「私が丹精込めて一生懸命作ってんのに!」 英三郎「わかってます、わかってます!」 花子「また始まった……」 雪子「神様、お願いね!」 雪子が神社から帰ろうとすると、突如、空中に注連飾りが現れる。 雪子「えっ!?」 注連飾りが宙を舞い、雪子に襲いかかる。 雪子「きゃっ!」「やだぁ!」「嘘ぉ!?」 雪子は必死に逃げ回る。 雪子「助けてぇ!」「来ないでよぉ!」 雪子はようやく、山吹家の前までたどり着く。 雪子「はぁ、はぁ…… あれが妖怪・ザ・お正月!?」 月子と花子が、防災頭巾をかぶって家から飛び出してくる。 雪子「月子、花子!?」 月子・花子「雪子お姉ちゃん!」 雪子「その頭巾、また夫婦ゲンカ!?」 花子「そう!」 月子「というより、夫婦戦争」 家の中では英三郎と恵美の夫婦ゲンカが豪快に行われている。 恵が手当たり次第に物を投げつけ、部屋は戦場と化している。 恵「絶対に許しませ──ん!!」 英三郎「わぁっ!? もう、乱暴はやめてぇ!」 花子「お姉ちゃん、行こ」 雪子「どこ行くの?」 花子「避難!」 雪子「避難!?」 3姉妹はカラオケボックスへとやって来る。 雪子「はぁ…… どうしてお父さんとお母さん、仲良くなれないんだろう」 花子「両親の仲の悪さに悩む山吹雪子、月子、花子の3姉妹。その不幸な3姉妹を代表して、真ん中の月子お姉ちゃんが歌います。歌は『氷雨』、どうぞ!」 月子が歌い始めると、突然、カラオケのテレビがひとりでに動く。 月子「見た!?」 雪子「見た!」 さらにテレビから火花が飛び散る。 3姉妹「嘘ぉ!?」 画面にニワトリの姿が映ったかと思うと、ニワトリのようなトサカを持つ中年男が映る。 「私の名は、&ruby(とり){酉}!」 画面から光があふれ、煙と共に、その男「お酉様」が画面から飛び出し、現実に現れる。 お酉様「『子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥』の干支の、お酉様である! 古来干支には、その年の平和と幸福を守る義務がある! 今年は1993年、私が平和と幸福を守らなければならな~い」 3姉妹「……?」 お酉様「しかし私は、昨年クリスマス、正月と──」 回想。お酉様はクリスマスも正月も、カラオケ三昧の日々を送っていた。 お酉様「カラオケに夢中になり、今ではカラオケなしでは生きられない鶏肉になってしまった…… そんな私には、酉年の平和と幸福を守れない。山吹雪子、月子、花子! 3姉妹よ、私の代わりに今年度の平和と幸福を守ることを命ずる!」 3姉妹「……?」 お酉様「わからん?」 3姉妹は頷く。 お酉様「よし! 条件として、ケンカばかりしているお前たちの両親を、仲良くさせてあげよう! 注目!」 画面に英三郎と恵の様子が映る。 2人は「講和条約 突然ですが私たちは仲良く手を取り合って生きていくことを誓います」と書かれた紙に判を押し、すっかりラブラブの雰囲気となっている。 3姉妹は、あり得ないといったふうに首を横に振る。 お酉様「嘘ではなぁ~い!!」 ニワトリの泣き声と煙ととともに、一同が姿を消す。 仙人の修行場を思わせる滝のそばに、一同が現れる。 3姉妹「ここ、どこぉ!?」 お酉様「ありがたいところじゃ~。酉!」 3姉妹の手に宝珠が現れ、変身ペンダント・バルミラクルとなる。 3姉妹「これは?」 お酉様「酉!」 さらに3姉妹が変身、和風の戦闘コスチュームに身を包んだ少女戦士、シュシュトリアンとなる。 3姉妹「何、この格好!?」 お酉様「有言実行&ruby(シスターズ){三姉妹}、シュシュトリアン!!」 3姉妹「有言実行三姉妹シュシュトリアン!?」 花子「冗談じゃないわよ!」 月子「私、お嫁に行けない!」 お酉様「聞け! 妖怪退治シスターズの秘密が社会に漏れたとき、シュシュトリアンはローストチキンになぁ~る!」 3姉妹「ローストチキン!?」 お酉様「酉!」 3姉妹「きゃあっ!?」 煙と共に、3姉妹は本当にローストチキンとなってしまう。 3姉妹「何すんのよぉ!?」 花子「このままじゃ、誰かに食べられちゃうわよ!」 雪子「冗談じゃないわよぉ!」 月子「お姉ちゃん、私たちどうなっちゃうの!?」 お酉様「うるさぁい! シュシュトリアンよ、3人力を合せて、酉年の平和と幸福を守るのじゃぁ~っ!!」 お酉様が姿を消す。 雪子「待ってよ!」 花子「ちょっと、待ちなさいよ!」 月子「このままにしないでよぉ!」 煙と共に、3姉妹がカラオケボックスに戻る。 3姉妹「あれ、カラオケボックスに戻った」 3姉妹がローストチキンから人間の姿に戻る。 花子「お姉ちゃん、こんなことってあるの!?」 雪子「私にもわかんないわよぉ!」 突如、カラオケボックスの部屋内に、ニワトリの着ぐるみの何者かが飛び込んで来る。 着ぐるみ「コケ──ッ! コケッ、コケッ!」 3姉妹「きゃあっ!」「何これ!?」」 3姉妹が思わず着ぐるみを蹴り飛ばす。相手は壁を砕いて吹っ飛んでしまう。 雪子「私たち、結構強い……!」 着ぐるみ「あぁ、痛かったぁ……」 雪子「ところで、何者?」 その者が着ぐるみを脱ぎ、奇妙な男「フライドチキン男」となる。 フライドチキン男「ご紹介が遅れました。私、今年の干支のお酉様の使いの、フライドチキン男でございます。コケッ! 早速ですが、お酉様からの司令がございます」 カラオケのテレビにお酉様が映り、歌い出す。 お酉様「♪妖怪・ザ・お正月を退治せよ、シュシュトリア~ン♪」 雪子「妖怪・ザ・お正月?」 フライドチキン男「はい。それと、これが、悪者を退治するときに使うマニュアルと、グッズです」 3姉妹が山吹家に帰って来る。 月子「私たち、悪い夢を見てるのよ……」 花子「私もそう思う」 雪子「あの離婚寸前のお父さんとお母さんが、仲良くなるわけないわよ」 家の中には、両親がいない。 雪子「あれ? いないわ」 花子「私、おなかすいちゃった」 花子が台所で、置き手紙を見つける。 花子「お姉ちゃん、大変!」 雪子「『愛し合うお父さんとお母さんは、仲良く初詣に行って来ます。幸せな2人より』──」 月子「あの離婚寸前のお父さんとお母さんが、愛し合っちゃった!?」 花子「どうしよう!」 雪子「初詣? もしかしたら……」 雪子は、先ほど初詣をしていた神社へと駆けつける。 雪子「あれ? いないわ。きっと、違う神社へ行ったのね」 謎の声「許せん! 許してはならぬ!」「そうだ、そうだ! 絶対許してはならんのだ!」 雪子がその妙な声を追い、境内の祠を覗きこむ。いくつものお年玉袋が声を張り上げている。 「不景気で、今年のお年玉が少ないと、お年玉袋を粗末に捨てた子供たちを!」 「粗末に捨てられたお年玉袋の怨念!」「お年玉袋の怨念!」 「妖怪・ザ・お正月となって成敗してくれよう!」「妖怪・ザ・お正月となって成敗してくれよう!」 雪子「そうか。妖怪・ザ・お正月の正体は、粗末に捨てられたお年玉袋の怨念…… そう言えば、今年は不景気でお年玉が少なかったから」 |冒頭で妖怪・ザ・お正月事件に遭っていた少年たちの、それより少し前の回想。&br()カメラ店で襲われていた少年。&br()&br()「天体望遠鏡が欲しかったのに……」&br()&br()お年玉袋の中から金だけを抜き取り、袋を捨てる。地面に落ちた袋が、自転車に轢かれる。&br()&br()ラーメン屋で襲われていた少年。&br()&br()「チャーシューメン食べたかったのに……」&br()&br()同じく、お年玉袋の中から金だけを抜き取り、袋を捨てる。&br()&br()ゲームセンターで襲われていた少年。&br()&br()「ディスニーランド、行きたかったのに……」&br()&br()同じく、お年玉袋の中から金だけを抜き取り、袋を捨てる。&br()地面に落ちた袋が、通行人に無残に踏まれる。| 雪子「それで、ここで呪っていたのね」 雪子が誤って、物音を立ててしまう。 「誰だ!?」「誰だ!?」 慌てて雪子が逃げ出すが、宙に注連飾りが現れる。 雪子「また出た!?」 さらにお供え餅、コマ、羽子板、凧、おせち、破魔矢、獅子舞が次々に出現し、雪子に襲いかかる。 雪子は必死に逃げ惑うものの、無数の正月グッズに次第に取り囲まれてゆく。 (お酉様『シュシュトリアンよ、3人力を合せて、酉年の平和と幸福を守るのじゃぁ~っ!!』) 雪子がとっさに、変身ペンダント・バルミラクルを手にし、思念を込める。 雪子「お年玉……!」 山吹家では、月子は電話をし、花子は手紙を書いている。 月子「そうなのよ! うちのお父さんとお母さんたら、突然愛し合っちゃって、まるで夫婦みたい」 花子「仲の良い夫婦の子供として、花子はどう生きていけばいいのでしょう? 川崎のおばちゃん、教えてください』──これで良し」 突如、月子と花子の脳裏に、通信音とニワトリの鳴き声が響く。 花子「雪子お姉ちゃん!? 行くよ!」 神社で襲われている雪子のもとに、月子と花子が駆けつける。 花子「雪子お姉ちゃぁん!」 雪子「月子、花子!」 3姉妹がバルミラクルをかざす。 3姉妹「シュシュトリアン!」 一瞬にして3姉妹がシュシュトリアンに変身する。 3姉妹「有言実行三姉妹! シュシュトリアン!!」 3姉妹の初の名乗りが決まる。 雪子「酉年の平和と幸福を守るため、あなたたちと戦います」 獅子舞「何ぃ!? やっちまえ!」 お正月グッズが次々に襲いかかる。 シュシュトリアンはバトンを振るい、お正月グッズと戦い、それらを残らず、地面に叩き落とす。 やがて祠から、奇怪な扮装の男、妖怪・ザ・お正月が現れる。 お正月「よくも仲間をやっつけてくれたな!?」 雪子「お前が悪の根源、妖怪・ザ・お正月ですね」 お正月「その通りだ!」 倒されたお正月グッズが、巨大な姿となって甦る。 「大きく復活~!」「同じく復活~!」 巨大お供え餅が雪子にのしかかり。巨大かまぼこが花子を、巨大羽子板が月子を叩きのめす。 雪子「きゃあっ!?」 お供え餅「どうだ、重いだろう!」 花子「痛ぁい!」 シュシュトリアン3姉妹は苦戦しつつも、巨大お正月グッズを倒す。 残るは本体、妖怪・ザ・お正月ただ1人。お正月が暴れ回り、シュシュトリアンに襲いかかる。 シュシュトリアン3姉妹は軽やかな舞い、華麗な身のこなしでザ・お正月を翻弄する。 3姉妹の渾身のキックが決まる。 3姉妹「シュシュファイナル!!」 シュシュトリアン3姉妹がバトンを組合せ、強力な必殺技が妖怪・ザ・お正月に決まる。 雪子「古人曰く『過ぎたるは猶、及ばざるが如し』」 月子・花子「過ぎたるは猶、及ばざるが如し」 |フライドチキン男「『過ぎたるは猶、及ばざるが如し』。行き過ぎて限度を超えることは、足りないのと同じぐらい、良くない事を言う。何事も、ほどほどが大切!」| 雪子「良い行ないでも、度を過ぎると悪い行ないになるのです」 お正月「……?」 雪子「まだわからない?」 お正月「はい」 雪子「妖怪・ザ・お正月よ。粗末に捨てられたあなたたちの気持ち、わかります。でも、子供たちを襲うことは悪い行ないです。これが、『過ぎたるは猶、及ばざるが如し』です。お年玉が少なくて、欲しい物が手に入らなかった子供たちの気持ちも、わかってあげてください」 |カメラ店で襲われていた少年。&br()&br()「本当は天体望遠鏡が欲しかったんだけど、双眼鏡で我慢しよう」&br()&br()ラーメン屋で襲われていた少年。&br()&br()「本当はチャーシューメンが食べたかったけど、足りないや。ワンタンメンで我慢しよう」&br()&br()ゲームセンターで襲われていた少年。&br()&br()「本当はディズニーランドへ行きたかったけど、仕方ないや。ゲームセンターで我慢しよう」| 雪子「──ということだったのです」 お正月「そうだったんですか!? 子供たちがそんなに意地らしくこの正月を生きていたとは、知らなかったです」 3姉妹「わかってくれたのですね」 お正月「はい。本当にごめんなさい」 妖怪・ザ・お正月の目から、涙がポタポタと落ちる。 その姿が、元のお年玉の姿に戻り、燃え上がり、消滅する。 その灰の中から魂が飛び出し、空へと昇ってゆく。 雪子「わかってくれて、ありがとう!」 シュシュトリアン3姉妹が空を見上げ、手を合わせる。 #center(){&big(){(続く)}}

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