陽光の差し込む水中を、1人の主人公がゆっくりと沈んでゆく。
どこかの部屋。
主人公の青年・ジンが、眠りから目覚める。
顔は汗でびっしょりと濡れている。
体をまさぐると、懐には光線銃・ウルトラガン。
手首にはブレスレット型通信機・ビデオシーバー。
カーテンを開ける。
そこは建物の十数階の部屋で、外は雨の夜。
街の上空に浮かぶ巨大モニターが、報道を伝えている。
『今夜はあいにくの雨ですが、市民の皆さん、いかがお過ごしですか?』
『昨日、デルタエリアに不法侵入していたエイリアンたちが一斉検挙された問題で、滝沢行政官が会見を行いました』
『凶悪なエイリアンは、残らず一掃されました。市民の皆さん、安心して、平和な夜を満喫してください』
ジン (ここはどこだ? まさか、夢の続きなのか?)
いつの間にか背後に、謎の女性・冴木エレアが立っている。
ジン「君、いつからそこに?」
エレア「……」
ジン「教えてくれ。俺は誰だ?」
突如、建物の奥から爆発音。
エレア「奴らだわ。逃げて!」
ジン「奴ら?」
エレア「急いで!」
エレアがジンに、眼鏡型アイテム、ウルトラアイを手渡す。
さらにジンのビデオシーバーを操作。
画面に「ANTI GRAVITY」の文字が表示される。
エレア「下に車がある。あなたの車よ」
ジン「待ってくれ! 俺は一体……」
エレア「お願い。あなたにこの世界を救ってほしいの」
ジン「……?」
エレア「私だけを信じて。さぁ!」
爆発音が迫る。
ジンはエレアの眼差しに心を動かされ、意を決して窓から飛び出す。
ビデオシーバーの反重力機能で、ジンは無事に地上に降り立つ。
今までいた部屋から爆炎が吹き出す。
ジンは駐車場の車に乗り、走り去る。
ジン (何がどうなってる? 俺の身に何が起きたんだ?」
カーナビの表示が、車の持ち主の住所を示している。
ジン (デルタエリアK7、906号室…… これが、俺の自宅か?)
マンションのその部屋へ辿り着く。
生体認証でロックされているが、確かにジンの認証で開く。
室内は、生活に必要な最低限度の家具しかない。
戸棚の引き出しや鞄を漁るが、どれも空っぽ。
写真立ての写真すら、抜き取られている。
外を見ると、街の上空では相変らず、巨大モニターが報道を伝えている。
『βエリアのオフィスビルで発生した爆発事故の続報です』
『報道局の発表によりますと、爆発の原因はガス漏れと見て、引き続き現場検証を行なっています』
『外出の際は、ガスの元栓は必ず締めましょう。報道局からのお報せでした』
ジンのビデオシーバーから、通信の声が響く。
通信『エージェント・ジンへ。新たなミッションだ。17分後、クラブ・デルフィンにて、エージェント・ケイと落ち合え』
ジン「あんた、誰だ!?」
返事は返らず、指定されたクラブの住所が表示されるのみ。
ジンがその店を訪れる。
客たちで賑わっており、女性店員がジンを迎える。
店員「いらっしゃいませ。お連れ様がお待ちです」
その青年・ケイがソファで、グラスを掲げてジンを席に招く。
ケイ「雨男のジンってのは、お前か? 噂には聞いていたが、本当、ひっでぇ雨だな。ケイだ」
ジン「……」
ケイ「どうした? 女にフラれたみてぇな顔して」
ジン「教えてくれ。俺は誰だ?」
ケイ「はぁ?」
ジン「気がついたら、見知らぬ部屋にいた。若い女が現れて、部屋が突然爆破されたが、ニュースではガス漏れ事故ってことになってる。それに、家には俺の素性にまつわるものは何一つない」
ケイ「二日酔いか? それとも、俺をからかってるのか?」
ジン「違う。本当に記憶がないんだ」
ケイがジンのビデオシーバーを操作すると、エージェントとしてのジンのプロフィールが表示される。
ケイ「それがお前だよ。コードネームは『ジン』」
ジン「コードネーム? 本名は?」
ケイ「知るか! 俺たちは、互いをコードネームで呼び合う。『DEUS』のエージェントは皆そうだ」
ジン「デウス?」
ケイ「はぁ…… お前、頭でも打ったのか? 一度メディカルセンターで、脳ドックでも受けて来い。あそこのナースはもう、スラ~っとしてんだけどボン、ボン!って、最高に美人だぜ!」
ジン「頼む。順を追って話してくれ」
ケイ「……あぁ。いいか? 俺たちDEUSのエージェントは、地球に侵入したエイリアンを捜し出し、密かに抹殺するのが仕事だ」
ジン「どうして、俺たちだけ?」
ケイ「俺たち2人だけじゃない。エージェントは素性を隠して、世界中に散らばっている。もしかしたら、この中にも」
ジン「で、ミッションっていうのは?」
ケイ「この店の常連客にエイリアンが混ざってるっていう情報が入った。そいつらを押さえるのが、俺たちのミッションだ。わかってると思うが、奴らは人間に擬態している。油断するなよ」
ジン「……」
ケイ「おい、大丈夫か?」
ジン「わからない…… 俺は、何を信じたらいいのか」
ケイ「少なくとも、俺はお前の味方だ。何でも話せよ。ほかに憶えてることはないのか?」
(エレア『お願い。あなたにこの世界を救ってほしいの』)
ジンは懐から、エレアに渡されたウルトラアイを取り出す。
ジン「彼女は俺に何かを伝えたがっていた。こいつに何か、秘密があるはずだ」
ケイ「女からのプレゼントか? 洒落てんじゃん」
ジン「俺がこの世界を救う……?」
ケイ「俺も彼女ほしいなぁ~」
店員「お待ちどう様で~す」
ジン「頼んでいないが?」
店員は飲み物と共にメッセージカードを残し、去る。
ケイ「かわいい~!」
メッセージカードには「11時の方向、モニター前の女」とある。
ジンがそこを見ると、1人の女がこちらを睨みつけている。
ジン「あいつだ!」
ケイ「おい、本当かよ!?」
女は男2人と共に店を出る。
ジンがそれを追い、ケイも続く。
店外では、女を守る数人のサングラスの男たちが、行く手を阻んでいる。
ジンとケイが体術で彼らと交戦、格闘戦となる。
あの女は人間離れしたジャンプ力で一同を飛び越え、逃走する。
ジン「人間か!?」
ケイ「だから、人間じゃねぇよ」
サングラス男たちが銃を構える。
ケイ「ジン、先に行け」
女はとあるビルへと入っていく。
ジンも彼女を追い、ビルの中へ。
ビル内の一室で、壮年の男性がチェス盤に向かっており、あの女がそばに寄り添っている。
周囲には数人の男女。
女「諸君。この惑星のルールにも、すっかり慣れたことだろう。世界はいわば、壮大なチェスゲームだ。我々は巧妙に駒を忍ばせ、勝利の機会を窺ってきた」
男「チェックメイトは目前だ。我々はこの世界に溶け込み、主要権力をも掌握した。世界は、間もなく我々の手に落ちる。今宵、この星に散らばる同胞たちが、すべて集結した! ともに、勝利を見守ろう」
夜のビル街に、怪獣ガルキメスが出現、周囲に光弾を放ち、火の手が上がる。
巨大モニター『巨大生物です。デルタエリアに巨大生物が出現しました』『近隣の市民の皆さんは、速やかに批難してください』
ジンは物陰で、エイリアンとおぼしき男女の様子を窺っている。
男「そこの男。さぁ、中へ入りたまえ」
すでにジンの背後に、サングラス男が詰め寄っている。
彼に促され、ジンが室内へ進み出る。
男「お前は、自分がどこにいるのか、わかっていないようだな?」
ジンの侵入したビルが巨大宇宙船に変形し、地上を離陸し始める。
ケイ「くっそぉぉ!」
ジン「お前らか? 俺の記憶を消したのは」
男「何の話だ?」
ジン「……誰か教えてくれ。俺は一体、誰なんだ?」
男「それはこっちが聞きたい。お前、一体何者だ?」
声「ジン! あなたはこの世界の救世主よ!」
声に振り向くと、エレアが銃を構えている。
エレア「さぁ、戦いなさい!」
銃撃戦が始まる。
ジンとエレアは一同を銃撃で牽制しつつ、部屋を退散する。
エレア「無事で良かった……」
ジン「教えてくれ。救世主とはどういう意味だ?」
エレア「あれを使えばわかるわ」
サングラス男たちが追いかけてくる。
エレア「早く!」
銃撃の雨がジンたちをかすめ、突き当りの壁に大穴があく。
見下ろすと、すでに宇宙船は地上高く舞い上がっており、地上ははるか下。
ジン「行くぞ!」
ジンがエレアと共に、壁の大穴から外へと飛び出す。
空中で落下しつつ、ジンがウルトラアイを目に装着。全身が光に包まれる。
光の柱が立ち昇り、ジンが変身した赤い巨人・
ウルトラセブンが地上に降り立つ。
手の中で守っていたエレアを、優しく地上に下ろす。
巨大モニター『新たな巨大生物が現れました』『あれは一体、何でしょう?』
ウルトラセブンがガルメキスに挑み、巨大戦となる
宇宙船も戦いに加わり、セブン目がけて砲撃を放つ。
セブンの宇宙ブーメラン・アイスラッガーがガルメキスに炸裂する。
巨体が無数の光の粒子と化し、消滅する。
宇宙船が空へと昇ってゆく。
セブンの必殺光線・エメリウム光線が宇宙船に炸裂、宇宙船が爆発消滅する。
勝利を収めたウルトラセブンが、空の彼方へと飛び去る。
変身の解けたジンが、地上に降り立っている。
(エレア『あなたはこの世界の救世主よ!』)
ビデオシーバーから、ケイの声が響く。
ケイ『おい、ジン! 無事か? 返事しろ!』
ジン「……あぁ」
街の上空に浮かぶ巨大モニターが、状況を報道している。
巨大モニター『あの巨人は、私たち人類を救ってくれたのでしょうか?』『だとすると、まさにこの世界の救世主なのかもしれません』
俺はすべてが信じられなかった。 しかし、これは決して夢なんかじゃない。 この力で、俺はこの世界を守り抜く。 そう、心に誓った
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最終更新:2017年06月04日 06:01