残りの命があと3時間と迫った ブライを利用して、バンドーラが一気に ジュウレンジャーを潰すべき作戦を開始した。
一方、ゴウシとダンはブライを助けるべく、 命の水を取りに 聖なる大地に向かい──
そしてブライは……
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ドーラモンスター・ドーラガンサクの攻撃で、瀕死の重傷を負った耕太少年。
病室を見舞ったブライは、耕太の母親に追い返されている。
母親「帰ってください!」
ブライ「お願いです、一目でいいから耕太くんに会わせてください。お願いします!」
母親「帰ってください。お願いです…… 帰ってください。あなたたちのせいで、耕太があんなことに…… 帰って!」
耕太「う──ん…… マ、ママ…… お兄ちゃん、悪くないんだ…… お願い、入れてあげて……」
ブライ「耕太くん! しっかりするんだ、耕太くん!」
耕太「だ、大丈夫だよ…… 僕、きっと…… 元気に、なれるよね……」
ブライ「大丈夫だよ!」
その様子を見守るゲキに、母親が言う。
母親「あの子…… 傷が重くて、助からないかもしれないの……」
ブライ「そうだ、お守りをあげよう」
ブライが自分のドラゴンバックラーからメダルを外し、耕太の手に握らせる。
ブライ「これを握っていれば、きっと良くなる!」
耕太「ドラゴン……レンジャーの…… メダル…… ありがと、お兄ちゃん…… とても、楽しかった…… ドラゴンシーザーの、頭に乗れて…… また…… 乗りたいな……」
ブライ「乗れるとも! 元気になったら、いつだって乗せてあげるからね」
耕太「う…… うぅ、うぅっ……!」
ブライ「耕太くん!? しっかりするんだ、耕太くん! 耕太くん、しっかり!」
母親「耕太……!? 先生、先生!!」
病院の外に出たブライが、時計を見つめる。
ブライ (この時計が2時を指すとき、俺は死ぬ……)
ゲキ「兄さん……」
ブライ「ドラゴンシーザーは?」
ゲキ「1人で懸命に戦ってる……」
ブライ「夢を見たんだ…… 死神が俺を迎えに来る夢を。その夢の中に…… あの子もいたんだ! 俺は死ぬ。でも……」
ゲキ「……」
ブライ「わかってくれ、ゲキ。俺は…… 生きてるうちに、何かしておきたいんだ。だからあの子を……」
ゲキ「兄さん……」
ブライ「いや、本当は…… 俺は、生きていたいんだ! 生きて、お前と一緒に暮したいんだ!」
ゲキ「兄さん…… 兄さん!」
ブライ「ゲキ…… ゲキ!」
ゲキ「でも兄さん、ひょっとしたら、兄さんもあの子も助かるかもしれないんだ! ゴウシとダンが今、命の水を取りに行ってる。それさえあれば!」
ブライ「本当か!? 本当なのか!?」
ゲキ (兄さんの命はあと1時間。ゴウシ、ダン、間に合ってくれ!)
ゴウシとダンが、聖なる大地を急ぐ。
目指す先に泉があり、剣を携えた騎士の像が、片手に壷を抱えている。
ゴウシ「ダン!」
ダン「やった、あったぁ! やったぁ!」
ゴウシ「急ごう! あの壷の中に、命の水が入ってるんだ!」
ダン「じゃあ俺、馬になるから」
2人が泉に駆け寄り、ダンが馬になり、その上に乗ったゴウシが、壷に手を伸ばす。
突如、騎士像が動き出し、ゴウシを殴りつける。
ゴウシ「うわぁ!」
ダン「ゴウシ!?」
ゴウシ「後ろ!」
騎士が剣で斬りかかり、ダンが危うくかわす。
ゴウシ「ダン!? お前は命の水を守ってる精霊か!?」
ダン「冗談じゃねぇよ! その水が必要なんだぁ!」
ドーラガンサクが大獣神に化けて、街で暴れ回る。
ゲキ、ボーイ、メイ、ブライが駆けつける。
ドラゴンシーザーが単身、ドーラガンサクに立ち向かっている。
ブライ「ゲキ、俺は戦うぞ。あの子のためにも」
ゲキ「兄さん!」
ブライ「ドラゴンシーザー! 俺をお前の中に入れてくれ。一緒に戦いたいんだ!」
ブライがドラゴンシーザーの上に飛び乗り、内部に乗り込む。
ブライ「俺は戦うぞ! 行け、ドラゴンシーザー! ドーラガンサクを倒すんだ!」
ゲキたちのもとには、グリフォーザーとゴーレム兵たちが現れる。
ゲキ「兄さんに遅れをとるな! 俺たちも戦うんだ!」
ドラゴンシーザーの攻撃で、ドーラガンサクの変身が解ける。
ドーラガンサク「剛龍神!」「ティラノザウルス!」
ドーラガンサクが剛龍神、ティラノザウルスと巧みに姿を変え、ドラゴンシーザーを翻弄する。
一方でゴウシとダンは、騎士と戦い続ける。
ダン「壷を、壷をよこせ!」
病院では、耕太のために医師たちが奔走している。
医師「急ぐんだ、注射の用意を!」
耕太「お兄……ちゃん…… う、う──ん……」
ブライ「耕太くん、がんばるんだ!」
ドーラガンサクの攻撃がドラゴンシーザーを直撃する。
ゲキ「兄さん!? あと10分しかない……」
命の水の在処を突き止めるための儀式により、ゲキたちのダイノバックラーは失われている。
ボーイ「だ、駄目だ! 変身できないなんて…… くッ! このままじゃ、やられる!」
メイ「ゴウシとダンは、まだなの!?」
ダン「ゴウシ、もう時間が!」
ゴウシ「おのれぇ、ダイノバックラーさえあれば!」
メイ「──あと5分!? ゲキ、ブライの命はあと5分しかないわ!」
ゲキたち「兄さん!」「ブライ!」
ゲキたちは必死に、ゴーレム兵たちを蹴散らす。
ドラゴンシーザーは、ドーラガンサクの前に劣勢を強いられている。
ゲキ「兄さん!! ……神よ、これでいいのか!? 俺たちは懸命に戦っている! 人の命を救うために、地球を守るために! それなのに…… まだ俺たちを試すつもりか!? 守護獣たちよ、現れてくれ!!」
ブライ「俺の命はどうなってもいい! でも、耕太くんの命を、地球を救いたいんだ!」
耕太「お……お兄ちゃん…… ドラゴン……シーザー……」
耕太の握り締めるメダルが、次第に光を放ち始める。
ブライ「神よおぉぉ──っっ!!」
突如、空から降り注いだ光がドラゴンシーザーを包み込む。
ブライの体が光に包まれ、ドラゴンレンジャーへと変身を遂げる。
ドラゴン「大──獣──神──っっ!!」
必死の叫びに応えるかのように、空に雲が立ち込め、大地を割り、落雷とともに大獣神が出現する。
ボーイ「ゲキ、大獣神だ!」
大獣神の放った光により、ゲキたちのダイノバックラーが元に戻る。
ゲキたち「ダイノバックラーが戻った!」「バックラーが戻ったぞ!」「行くぞ!」「ダイノバックラー!」
ゴウシたちもダイノバックラーを取り戻す。
ゴウシたち「ダイノバックラー!」
ゲキたちがジュウレンジャーに変身し、大獣神に乗り込む。
ドラゴン「ゲキ、一気に究極大獣神になって、ドーラガンサクを叩き潰すんだ!」
ティラノ「わかった! 究極合体!!」
大獣神、ドラゴンシーザー、獣騎神キングブラキオンが合体して究極大獣神となる。
ティラノたち「行くぞ!」「おぅ!」「究極大獣神!!」
ドーラガンサクが突進して来る。
ティラノ「時間がない。ドーラガンサク、これでも食らえ! グランパニッシャー!!」
最強技のグランパニッシャーが炸裂。ドーラガンサクが爆発四散する。
ティラノたち「やった!」「やったぜ!」
ドラゴン「やった……」
喜びのつかの間、ついに2時の鐘が鳴り響く。
ドラゴン「うわぁ、うわぁぁ──っ!!」
ティラノ「兄さん!?」
ドラゴンレンジャーの姿が忽然と消える。
プテラ「ブライ!?」
ティラノ「兄さん、兄さん!?」
マンモスレンジャー、トリケラレンジャーが騎士と戦い続ける。
騎士の手から壷が放り出され、泉の中へと落ちる。
マンモス「命の水が!?」
トリケラ「もう駄目だぁ……!」
騎士が光となって泉の上に降り立つ。
ゴウシとダンの変身が、ひとりでに解ける。
泉の上に立つ騎士が、女神の姿となる。
女神「聞け、ジュウレンジャーよ── ゴウシ、ダン」
ゴウシ「あのナイトは女神だったのか!」
女神「ドラゴンレンジャー・ブライの寿命は── すでに尽きた」
ゴウシ「何ぃっ!?」
ダン「そんなぁ!?」
女神「これは定められた運命なのです──」
女神がまた姿を変える。
その正体は、命の精霊クロト。
ゴウシ「クロト!?」
クロト「ブライお兄ちゃんは、一度死んで甦った戦士。これ以上、私たち神でもどうすることもできない」
ダン「ひでぇよ…… そんなのねぇよぉ!」
ゴウシ「守護獣たちよ…… 何のために、俺たちはここまで戦ってきたんだ!?」
クロトが再び、女神に姿を変える。
女神「でも聞きなさい── ブライの最後の願いだけは、叶えてあげます。この命の水を持って帰りなさい──」
女神の手に壷が現れ、キラキラと光る水が、壷から宙に注がれる。
ゴウシが咄嗟に、小瓶で受け止める。
女神「そして子供に飲ませなさい── ブライのメダルだけでは、あの子は助からない── その命の水で生き返り、ブライの魂は救われる── さぁ、急いで!」
女神の姿が消える。
ダン「あっ、クロト──!」
ゴウシ「ありがとう──!」
ゲキたち「兄さ──ん!」「ブラ──イ!」
ゲキたち一同がブライを捜し続ける。
海岸の砂浜に、ブライが倒れている。
ゲキたち「兄さん!?」「ブライ!?」
ゲキたちが、動かないブライに駆け寄る。
ゲキ「兄さん!」
メイ「ブライ!」
ゲキ「しっかりして、兄さん! 兄さん!」
ブライ「……ゲキ……」
ゲキ「兄さん……」
ブライ「俺は…… 幸せだった…… 永い眠りから、目を覚まし…… 短い時間だったが、弟のお前や、ジュウレンジャーの仲間たちと、一緒に戦えたこと……」
メイ「ブライ……」
ゲキ「そんなこと言わないでくれ、兄さん! 今にも、ゴウシとダンが水を持って来る! だから……」
メイ「そうよ、あきらめないで!」
ブライ「いや…… いいんだ…… それより、その水が来たら…… あの子に、耕太くんに、飲ませてやってくれ…… うぅぅっ!」
ゲキ「兄さん!? 兄さん!」
ボーイたち「ブライ!?」「ゴウシ──! ダ──ン!」
ブライが力なく手を伸ばすと、その姿がドラゴンレンジャーに変わる。
ドラゴン「ゲキ……」
ドラゴンレンジャーの手をゲキが握り返すと、ゲキの姿もティラノレンジャーに変わる。
ティラノ「兄さん……」
ドラゴン「ゲキ……」
ドラゴンレンジャーが、ティラノレンジャーの手を自分の胸に触れさせる。
ティラノレンジャーの胸に、ドラゴンレンジャーの纏っていたドラゴンアーマーが装着される。
ティラノ「兄さん……」
ドラゴン「これを……」
ドラゴンレンジャーが獣奏剣を抜き、ティラノレンジャーの手に託す。
2人の変身が解ける。
ゲキ「兄さん……」
ブライ「ありがとう…… ゲキ…… みんな……」
ボーイたち「ブライ、がんばって!」「ブライ!」
ブライ「ゲキ…… 最後まで、地球を守って…… 子供たちを、守って……くれ……」
ゲキたちが頷く。
ブライ「頼む……」
ブライの目が、静かに閉じる。
ゲキ「兄さん!? 兄さぁ──ん!」
ボーイたち「ブライ!」「ブラ──イ!」
遠くから、クロトが様子を見守っている。
掌の上で、ブライの寿命を示す蝋燭が燃え尽きる。
クロト「ブライお兄ちゃん…… お兄ちゃんの使命は終ったわ。さぁ、永遠の世界に旅立つのよ!」
ブライの体が消え去る。
ボーイとメイが、がっくりと泣き崩れる。
ボーイ「ブライ……」
ゲキ「兄さん…… 兄さぁぁ──ん!! 兄さぁぁ──ん!!」
ゴウシたちが耕太のいる病院に、命の水を届ける。
母親「ありがとうございます! 耕太、命の水よ」
耕太の母が、耕太に命の水を飲ませる。
死に瀕していた耕太の目が開く。
母親「耕太……?」
耕太「ママ…… ママぁ!」
母親「耕太ぁぁ!!」
耕太が飛び起き、母と抱き合う。
ゴウシたち「良かった……」「ブライ……」
耕太「ママ、ブライお兄ちゃんは?」
母親「……」
耕太の握っていたブライのメダルが、忽然と消える。
耕太「あ……!? お兄ちゃん!? お兄ちゃあん!」
どこかの世界。
死神が、車にブライを乗せて走っている。
ブライ「なんて気持ちのいい風なんだ……」
ブライの夢の中で耕太のいたはずの場所に、耕太はいない。
耕太が死なずに済んだことがわかり、ブライが微笑む。
ブライを乗せ、車が光の中へと走り去って行く。
ゲキ「兄さん……」
夕暮れの岬の上に立つゲキが、獣奏剣を構えて奏で始める。
笛の音が悲しげに、夕焼けの空に流れてゆく。
ゲキの目からとめどなく、涙があふれ続ける。
ゲキ「兄さん…… 兄さん…… 兄さああぁぁ──ん!!」
ドラゴンシーザーの咆哮がこだまする……。
最終更新:2014年07月13日 21:50