バトルフィーバーJの第33話

市街パトロール中のバトルコサック・白石謙作が、バトルフィーバー隊本部の連絡員・中原ケイコに連絡を取る。

謙作「こちらコサック」
ケイコ「はい、こちら本部」
謙作「東京E地区異常なし。これから、D地区へ回ります」
ケイコ「了解」

謙作「そうだ、あそこへ回ってみるか」



コサック_
_愛に死す




民家の庭先で幼い少女・マユミがシャボン玉で遊んでいる。庭の竹薮をかき分け、謙作が現れる。

マユミ「白石のお兄ちゃん!」
謙作「やぁ、マユミちゃん。驚かせてごめんね」
マユミ「どうしてお兄ちゃんは、いつも竹薮から出て来るのぉ?」
謙作「え? ハハッ、それはね、お兄ちゃんが宇宙人だからだよ」
マユミ「えぇ?」
謙作「あ、ほら、かぐや姫も竹薮の中から産まれて、そして月へ帰っていったろ?」
マユミ「まぁ!」
謙作「いるかい?」

家の中を訪ねる謙作。

謙作「白石です」

謙作の知人・三村教授と、その助手の(じん) (まこと)

三村「おぉ、白石くん。ついに完成したよ、『ドリルミサイル』!」
謙作「やりましたか!」
三村「うむ。これはね、標的の内部に食い込んでから爆発する仕組みになっている。いやぁ、自宅を研究室にして良かった。警備兵もいなくて、目立たずに済んだからね」
謙作「でも…… もしもの場合は、この非常ベルを」

謙作がポケットから、携帯用の非常ベルを取り出して見せる。

神「その必要はないだろう。夕方には、国防省の金庫の中さ」
謙作「そうですか。じゃ、僕はこれで」
三村「白石くん。いつも、気遣ってくれてありがとう」
謙作「ハハッ、当然の任務ですから」
神「ヒマになるから連絡する」
謙作「じゃ、トローリングでも行きますか?」
神「いいねぇ!」

謙作が帰ろうと部屋のドアを開ける。
そこには秘密結社エゴスの女幹部サロメ。傍らでは戦闘員カットマンたちがマユミを捕らえている。

三村「マユミ!?」
マユミ「いやぁ! お父様ぁ!」
三村「マユミ!」
サロメ「動くな! 設計図を頂戴する」
三村「何の話だ!」

カットマンが部屋の照明の上に仕掛けられていた、小さな機械を示す。

謙作「盗聴マイクか!?」
三村「10年かかって、やっと完成したんだ。渡さん!」

カットマンたちの銃が火を吹き、三村たちに浴びせられる。
一瞬にして謙作が強化服を装着し、バトルコサックに変身。マユミを救うが、サロメは姿を消す。

コサック「マユミちゃん!」
神「設計図を盗まれた…… 取り返してくれ!」

家を飛び出すコサック。しかし、すでにサロメの姿はない。

コサック「しまった……」

家の中。虫の息の三村教授。

神「先生…… すみません」
コサック「逃げられました……」
三村「そうか……」
マユミ「お父様ぁ!」
三村「マユミ……」
マユミ「お父様ぁ! お父様ぁ!」
三村「頼みますぞ、マユミを……」
神「先生!?」
コサック「教授!!」

三村教授が事切れる。

マユミ「お父様、死んじゃイヤ! 死んじゃイヤぁ!!」
神「先生…… 先生!!」

そのままマユミも気を失う。

コサック・神「マユミちゃん!?」「マユミちゃん!?」


病院のベッドの上。マユミが放心状態で宙を見つめている。

神「……マユミちゃん」
謙作「マユミちゃん」

マユミは全く反応を返さない。沈痛な面持ちの2人。
謙作以外のバトルフィーバー隊員はそれぞれエゴスの足取りを探す。

ドリルミサイルが完成するまでに摘発しなければ大変なことになる。
バトルフィーバー隊は、懸命に捜索を続けた!

エゴス基地では、ヘッダー指揮官とエゴスの御子・イーグル怪人が、サロメの持ち帰った設計図に目を通している。

ヘッダー「でかしたぞ、サロメ! このドリルミサイルが完成すれば、バトルシャークを攻撃し、バトルフィーバーごと粉砕できる!」
イーグル怪人「早く完成させるんだ!」
ヘッダー「24時間の突貫作業で完成を急げ!」

再びマユミの病室を訪ねる謙作。神の姿はない。

謙作「ご機嫌いかが、マユミちゃん? 神お兄ちゃん、どこ行ったかな? トイレかな?」

テーブルの上に、神から謙作宛ての置き手紙がある。

設計図がエゴスに奪われたことで、国防省は俺にスパイの嫌疑をかけてきた。
盗まれたタイミングが良すぎたこと、先生は射殺されたのに俺はかすり傷で
済んだことなど、疑われても仕方のない状況だ。
潔白を証明するためには、自分で設計図を奪い返すしかない。
マユミちゃんを頼む! できるだけそばにいてくれ。

謙作「……バカな!」

国防省時代、謙作と神 誠は射撃のライバル同士であった。
神の腕前は、謙作を凌ぐものがあった。

謙作「何も心配しなくてもいいからね。お兄ちゃんがついてるぞ!」
マユミ「帰って!」
謙作「今…… 何て言った?」
マユミ「人殺しは嫌いよ! 帰ってよ!」
謙作「僕は人殺しじゃない! エゴスと戦っている、バトルフィーバーの隊員なんだ」
マユミ「殺し合いするんですもの、同じよ!」
謙作「おいおい、そんな寂しくなるようなこと言わないでくれよ。笑顔を見せておくれ」
マユミ「血の臭いがするわ……」
謙作「……血の臭い? おいおい」
マユミ「寄らないで! あっち行って!」

肩を落として病室を去る謙作。

謙作「血の臭い……」

バトルフィーバー隊本部基地・ビッグベイザーに戻った謙作は、洗面所で丹念に手を洗う。
連絡員のケイコと上野トモコは、隊員たちとの連絡に余念がない。

ケイコ「ジャパンとマリアは、東京A地区の埠頭一帯」
トモコ「フランスとケニアは、奥多摩地区一帯を捜索中」

そこへ謙作が現れ、両手を差し出して見せる。

謙作「どうだ? ……どうだ、臭うか」
ケイコ「……まだ気にしてるの?」
トモコ「その子、ショックだったのよ、お父さんを殺されて……」
ケイコ「そうよ」
突然の声「コラ、コサック!」
謙作「はいっ!?」

謙作を叱咤するロボット九官鳥の九太郎。

九太郎「設計図ヲ取リ返シテ来イ!」
謙作「なんだ、またお前か。このボロ九が!」

ようやくいつもの調子に戻ったと安堵するトモコとケイコ。
捜索の合間に再びマユミのいる病院を訪ねる謙作だったが、その脳裏を再びマユミの言葉がよぎる。

(『あっち行って! 血の臭いがするわ!』)


エゴス基地ではサロメたちが、バトルフィーバー隊の捜索を察知する。

サロメ「ヘッダー指揮官、バトルフランスとバトルケニアです」
イーグル怪人「よ~し、わしが叩き斬る!」


バトルフランス・京介とバトルケニア・四郎が、1台のジープが停められている廃屋を発見。

四郎「ジープだ」
京介「怪しい……」

建物の中へ入ると、銃声が響く。
慌てて物陰に隠れる京介たち。
銃撃の主は神。

四郎「神隊員!」
京介「捜してたんだ」
四郎「謙作から事情は聞いた」

一同がジープとバイクで荒野を突っ切り、次第にサロメたちの潜伏先へと接近してゆく。

サロメ「やって来ます」
イーグル「よぉし……」
ヘッダー「慌てめさるな!」

一同の前に作業員が現れ、制止する。前方では工事が行われている。

「おぉい、止まれ! これから発破が始まるんだ。悪いけど、迂回してくれないか」


一方、謙作も捜索を続けている。

エゴス秘密基地の捜索を続けながら、
なぜかマユミのことが気にかかる謙作であった。

謙作が、マユミの入院している病院に立ち寄る。マユミの病室から看護師が出てくる。

謙作「どうですか? マユミちゃん」
看護師「元気になりましたよ」

謙作が病室を覗く。シャボン玉を飛ばしているマユミ。

看護師「お父様のお顔が映るんですって」
謙作「えっ?」
看護師「シャボン玉に……」


謙作の幼い頃の回想──
孤児だった謙作が、子供たちとともに牧場で牧場で子牛を可愛がっている。

謙作たち「可愛いなぁ」「可愛いね」「早く大きくなれよ」

その様子を嬉々と眺める神父。
そこへトラックがやって来、暴力団員たちが暴挙を働き始める。

神父「何をする!? やめろ! 子供たちの牧場だぞ!」

暴力団員たちの銃撃が、神父を襲う。

謙作たち「あっ、神父さん!?」「神父さん!」


みなし子だった謙作を引き取って、育ててくれた神父は、
地元の暴力団の立ち退き命令に従わなかったために射殺されて
しまったのだった。
謙作にとっては、父のような神父であった。
謙作は、自分と同じ境遇のマユミをこのまま放ってはおけないと
思った。

ケイコの弟のマサルが友達と一緒に公園で遊んでいる。謙作が声をかける。

謙作「マサル! ちょっと、ちょっと来い」

謙作とともにマユミの病室を見舞ったマサルが、マユミに剣玉を勧める。

マサル「やってごらん」
謙作「──あぁ、残念だなぁ! もうちょっとだぞ!」

何度か試した末、剣玉が成功する。

マユミ「わぁ……」
マサル「やった!」
謙作「うまいっ!」


エゴス本部。

ヘッダー「サタンエゴス様! 最近、バトルフィーバーの捜索が一段と厳しくなって参りました」
サタンエゴス「ヘッダーよ、敵は5人揃えば強力だが、1人の敵はたった5分の1の力だ」
ヘッダー「5分の1……」
イーグル怪人「5分の1の力か!」


ビッグベイザー。謙作が鏡に向かい、丹念に身だしなみを整える。

四郎「デート? 相手はガキだろ?」
謙作「うるさい。 ……これで良し、と! じゃ、行って来ようかな」
四郎「行ってらっしゃい!」
九太郎「忘レモノ!」
謙作「……何を?」
九太郎「武士ノ魂ジャ!」
正夫「強化服だよ!」
謙作「あぁ、あれか! あれね…… あれ、クリーニングセンターに出してあるんだ」
一同「!?」
謙作「今日はいらないよ」
正夫「持って行けよ!」

(『血の臭いがするわ!』)

マリア「コサック……?」
謙作「……まぁ、十分気をつけるよ。じゃあな」

一同の制止を聞かず、謙作がビッグベイザーを発つ。

正夫「危険だぞ、あれじゃ。ケイコ、強化服だ!」
ケイコ「はい!」

謙作は、マユミの気分を変えようと、湖へ連れ出した。

謙作「マユミちゃん、これがダムなんだ。そして、東京の水瓶だよ。どうだ、気分爽快だろ?」
マユミ「うん。向こう行きたい」
謙作「よぉし、さぁ!」
マユミ「わぁ、きれい!」
謙作 (良かった、元気になってくれて)

急いでダムへ車を走らせるケイコとトモコ。
一方、飲み物を買いに、謙作がマユミのもとを離れる。
戻ってみると、エゴスに捕らわれたマユミの姿。

マユミ「助けてぇ! お兄ちゃん!」
謙作「マユミちゃん!」
マユミ「お兄ちゃあん!」
サロメ「さぁ、どうする!?」
イーグル怪人「かかって来い、バトルコサック!」
謙作 (しまった…… 俺は強化服を持っていない)
サロメ「どうした!」
イーグル怪人「気後れしたか!?」

マユミが泣き出す。せせら笑うサロメ。

謙作「卑怯者!!」

カットマンの銃撃。謙作は傍らの塀を飛び越え、姿を消す。

イーグル怪人「捜せぇ!」

彼らの隙を突いて謙作が飛び出し、マユミを救い、イーグル怪人にキックを見舞う。
カットマンたちの銃撃。謙作は自分を盾にして、必死にマユミをかばう。
意を決して謙作が突進。カットマンたちの銃撃が唸る。

謙作「うわああぁぁ──っっ!!」

変身をしていない生身の謙作に容赦ない銃弾の雨が浴びせられ、謙作が倒れる。

サロメ「とどめを刺せ!」

しかしそこへ、神がマシンガンを唸らせつつ突進して来る。

サロメ「退けぃ!」

エゴスたちが退き、神が謙作のもとへ駆け寄る。

神「白石ぃっ!!」

懸命に起き上がる謙作。

神「白石!」
謙作「先輩……」
神「動くんじゃない! あとは俺に任せろ」

そこへ、強化服を手にしたケイコとトモコが駆けつける。

ケイコたち「コサックー!」「コサック!」

謙作が力を振りしぼって近づくものの、足がよろめき、ついに倒れてしまう。

トモコ「早く来て! コサックが大変よ!」

通信を受け、変身したバトルフィーバー隊の4人と神が駆けつける。

一同「コサック!」「コサック!」
ケニア「しっかりしろ!」
フランス「白石!」
謙作「ついてねぇよなぁ……」
ジャパン「コサック……」
マユミ「お兄ちゃあん!」
謙作「マユミちゃん…… 楽しかったかい?」

マユミが謙作の胸に顔を埋め、泣きじゃくりながら頷く。

謙作「そりゃ良かった…… 先輩……」
神「しっかりしろ! 白石!」
謙作「申し訳ない…… 設計図は……」
ジャパン「コサック、大丈夫だ。俺たちがやる!」
謙作「あ、あぁ…… カキ氷、食いてぇな…… 体中がカッカするぜ…… エゴスの野郎、今度会ったら承知しねぇぞ…… 今度、会ったら……」

謙作が息絶える。

一同「謙作!!」「コサック!?」「謙作……」
マユミ「お兄ちゃあん! お兄ちゃあん!!」

動かなくなった謙作の胸の上にバトルコサックの強化服が置かれ、ジャパンたちが敬礼を捧げる。
それを見ていた神が決意の表情で、その強化服を手にし、一同のもとを去る。

ジャパン「神隊員!?」

振り向かず、突き進む神──。

神(お前の仇は俺が討つ。きっと俺が討つ! 見てろ、白石!)


神は単身、捜索中に工事作業員たちから制止を受けた場へとやって来る。
銃撃とともに神が突進。作業員に化けていたカットマンたちが、正体を現しつつ倒れてゆく。
そこへイーグル怪人が登場。

イーグル怪人「やれ!!」

カットマンやイーグル怪人の攻撃で、神の銃が叩き落とされる。そこへバトルフィーバーが駆けつける。

ジャパン「大丈夫か!?」
神「あぁ」

バトルフィーバー隊4人が、イーグル怪人に立ち向かう。

ジャパン「コサックの弔い合戦だ!」
一同「おぅ!!」
イーグル「たわけ! 4人で何ができる。今日こそお前らの息の根を止めてやるぞ! かかれ!!」

声「待てぃ!」

そこへ颯爽と現れたのは、コサックの強化服を身に纏った神。
神はコサックのマスクを被って自ら新生バトルコサックとなり、名乗りポーズを決める。

コサック「バトルコサック!!」
イーグル「おぉ…… またしても5人揃いよったかぁ!?」
ジャパン「バトルジャパン!」
フランス「バトルフランス!」
ケニア「バトルケニア!」
ミスアメリカ「ミスアメリカ!」

再び5人揃ったバトルフィーバーが、次々にカットマンたちを蹴散らす。

イーグル怪人「弟よ~!!」

巨大なイーグルロボットが登場。

サロメ「まだドリルミサイルの装置が完了していません」
イーグル怪人「構わん! こやつらを踏み潰せ!」
ジャパン「バトルシャーク、バトルシャーク!」

ビッグベイザーの倉間鉄山将軍が応答し、バトルシャークを出動させる。

鉄山「バトルシャーク出動!」

ジャパン「弟は俺に任せろ。ジェット・オン! 行くぞ、イーグルロボ」

ジャパンが単身バトルフィーバーロボに搭乗し、イーグルロボットに挑む。
地上ではバトルフィーバー隊とイーグル怪人の戦いが続く。

フランス「ジャパン、ペンタフォースだ!」
ジャパン「OK!」
一同「ペンタフォース!!」
イーグル怪人「ぐわぁ──っ!」

ジャパンが地上目がけてコマンドバットを投げつけ、合体武器のペンタフォースが炸裂。
イーグル怪人が爆死し、最期を遂げる。

一同「やった! やったぞぉ!」
ジャパン「よし! 行くぞ、イーグルロボ」

バトルフィーバーロボとイーグルロボットの一騎討ち。
バトルフィーバーロボは謙作を失った怒りをぶつけるかのように素手で殴りかかり、イーグルロボットの首を180度捻じ曲げてしまう。

ジャパン「電光剣・唐竹割り!!」

とどめの必殺剣が炸裂。イーグルロボットが真っ二つに斬り裂かれて大爆発、もうもうと爆煙があがる。


一同「謙作ぅぅ──っっ!」

夕陽の照らす中、バトルフィーバー隊が十字架に花輪を捧げる。

ケニア「謙作、ゆっくりと眠れよ……」



バトルコサック・白石謙作は
1人の少女の命を守るために壮烈な戦死を遂げたが、
彼の遺志を継いで、ここに新しい戦士が現れた。
その名は、神 誠。
無口だが行動力のある、ニュー・バトルコサックである。




つづく

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最終更新:2024年03月26日 23:06