IS<インフィニット・ストラトス>(コミックアライブ版)の第1話

「それに触れると同時に膨大な情報が入ってきた。動かないはずのそれを動かせると確信した。だから俺は―――」

第零話 その前夜


キャスター「はい始まりました、朝まで煮テレビ。今日は話題の織斑一夏君についてです」
コメンテーター「私よくわからないんだけどねえ。やっぱり大変なことなのコレって」
キャスター「そりゃ世界で初めてですから、男にISが動かせるなんて」

その番組を少女、篠ノ之箒が見ていた。
箒「一夏・・・!!なんで一夏がTVに出てんの?」

キャスター「まずはISについてまとめた映像をどうぞ」
「インフィニット・ストラトス、通称「IS」平たく言うとパワードスーツです。6年前篠ノ之束博士が開発したISは現代兵器を著しく上回るスペックをもつものの、そのメカニズムは―――」

箒「ISはいい、一夏を映せ!!」

キャスター「そして重要なことはISは―――女性にしか反応しません」
コメンテーターたち「でも織斑君は動かした・・・と」
「彼はこれからどうなるんだろうね」
「政府としてはあそこに行かせるでしょうね―――IS学園に」
箒「え・・・?一夏も・・・」
箒の部屋の壁に、IS学園の制服が架かっていた。

コメンテーター「初の男子生徒ってことになりますね」

チェルシー「お嬢様、話題の少年が同級生になりそうですね」
メイドのチェルシーがそう話しかけた相手は、専用IS「ブルー・ティアーズ」を装着した少女、セシリア・オルコットだ。
セシリア「興味ありませんわ。IS学園へ行くのはサーカスを見るためではありません」
チェルシー「そうですね。それにしても男性なのにすごい方ですね」
セシリアがチェルシーの持ってきた缶ジュースを取った。
セシリア「生意気にもほどがありますわ。男がISなんて。その男子がどこで何をしようと構いませんが・・・もしわたくしの邪魔をするなら・・・」
セシリアが缶ジュースを飲み、缶を握り潰してから放り投げて、ライフルで撃ち抜いた。
セシリア「潰してやりますわ」

コメンテーター「生体データにも注目が集まりますが――――」


軍服を着た少女、鳳鈴音が軍の高官に抗議していた。
鈴「だっ、かっ、らっ!!なんでアタシがIS学園に入れないのよ!!」
高官「君が受験しなかったからでしょ、鳳君」
副官「そのようで」
高官「受けるよう言ったのに無視したのは君だよ」
副官「そのようで」
鈴「そんな昔のことはどうでもいいの!!何とかアタシが入れるようにしなさいよ!!」
高官「軍にも予定があるしねえ・・・」
副官「そのようで」
そう言う高官の顔のすぐ横の壁に、右手にISを部分展開した鈴のパンチが叩き込まれた。
鈴「お願いします、おじさま♡」
高官「わ・・・わかった。できるだけ早い時期に転入手続きをしておこう」
副官「そ・・・そのようで」
鈴「いつもありがと、話がわかるわね。んじゃよろしく~」
そう言って鈴は去って行った。
高官「・・・最近の若い子はよく―――わらんな・・・」
副官「そのようで・・・」

鈴「待ってなさいよ!!一夏!」


コメンテーター「ではこの先、織斑君はどうすべきか―――」
そこでTVを消したのは、当の一夏本人だった。

一夏(他に考えることないのかよ・・・さて、どうするべきかねえ・・・)
一夏の頭にビニール入りの服が投げかけられた。
一夏「何だコレ」
千冬「制服だ」
一夏の姉の千冬が帰ってきた。
一夏「千冬姉!帰ってたのか!」
千冬「ここは私の家だ。そりゃ帰ってくる」
一夏「制服って?どこの?」
千冬「IS学園のに決まってるだろ」
一夏「え!?だって俺まだ行くなんて・・・」
千冬「入学手続きもすませといた。あそこにはどこの国も手出しできない。入学すれば少なくとも三年間は安全だ。それとも実験動物の方が好みだったか?」
一夏「う。はあ―――――なんでこうなっちゃったかなあ・・・」
千冬「そう気を落とすな。IS学園も普通の高校と大差ない。どこで過ごそうと日々を充実させるのはお前自身だ」
「求めよ、さらば与えられん―――そういうことだ」
一夏「さすが千冬姉、詳しいな」
千冬「まあな」
一夏「?」
「IS学園かぁ・・・・」


{Infinite stratosu 00 END START UP…


真耶「はいっ、副担任の山田真耶です。みなさん一年間よろしくお願いしますね。えっとじゃあ、最初のSHRは皆さんに自己紹介をしてもらいましょう」

一夏(今日は高校の入学式。新しい学校、新しい教室。だが俺を緊張させているのはそんなことではない。では何か?決まっている)
一夏の周りのクラスメイトは全員少女だった。
一夏(クラスメイトが全員女なのだ。これは想像以上にきつい―――)
真耶「―――くん、―――くん、織斑一夏君」
真耶が一夏の席の前に来ていた。
一夏「はっ、はいっ」
一夏が慌てて立ち上がった。
真耶「ひゃっ!?あ、あの、お、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介って「あ」から始まって今「お」の織斑君なんだよね」
一夏「いや、あの、そんなに謝らなくても・・・しますから、自己紹介しますから」
真耶「ほ・・・本当ですか?」
そう言ってる間に、教室に千冬が入ってきた。
千冬「新学期早々騒々しいぞ、織斑」
一夏「へ?」

クラスメイトは全員女

織斑千冬、第一世代IS操縦者の元日本代表。
現役時代、公式戦無敗の記録を残したままある日突然引退。
以後その舞台から姿を消した。

一夏(―――その千冬姉がなんでここにいるんだ?)
千冬「聞いているのか織斑」
一夏「なっ・・・んで・・・・」
真耶「あ、織斑先生、もう会議は終わられたんですか?」
一夏「えっ!?」
千冬「ああ、山田君。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな」
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが私の言うことは聞け、いいな」

クラスメイトたち「・・・・・き・・・」
「キャ――――――!千冬様、本物の千冬様よ!」
「美しすぎます!」
「愛してます!」
「恐れ多くてお顔を見られません!」
「ずっとファンでした!」
「お姉様に憧れてこの学園に来たんです!」
「私お姉様のためなら死ねます!」

千冬「・・・・毎年よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる、それとも私のクラスにだけ集中させてるのか?まあいい、織斑、続けろ」
一夏「え?ああ」
(う・・・・)
「えー、えっと織斑一夏です。よろしくお願いします。あれ?」
一夏がクラスメイトの中に箒を見つけた。
一夏「箒?」
千冬が出席簿で一夏の頭を叩いた。
一夏「痛ッ」
千冬「お前は自己紹介もまともにできんのか」
一夏「いや千冬姉・・・俺は・・・」
千冬「学校では織斑先生と呼べ」
千冬が再度、出席簿で一夏の頭を叩いた。
一夏「・・・はい織斑先生・・・」

クラスメイトたち「・・・今のって・・・」
「織斑君って・・・」
「ひょっとして・・・」
「じゃあIS―――」
「いいなあ、代わって・・・」
「そういえば苗字も一緒だし・・・」

一夏(やべ・・・バレた)

千冬「さあ!!SHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう」
一夏(なんという鬼教官、姉は人の皮をかぶった悪魔だろうか)
千冬「その後実習だが、基本動作は半月で体に染みこませろ」
一夏(いや、なまじ人間性能の限界を知っている分、悪魔よりタチが悪い)
千冬「いいか、いいなら返事をしろ。よくなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」
一夏(っていうか教師なんてしてたのかよ)
千冬「席に着け、馬鹿者」
一夏(・・・心配した俺が馬鹿でした)

一夏(―――2ヶ月前、2月の真ん中、俺は中学三年、受験の真っ只中、その受験会場の公共施設で俺は――――迷った)
「何だよここ。ほとんだ迷路じゃねえか・・・ええい、次に見つけたドアを開けるぞ、俺は。それでだいたい正解なんだ」

一夏(よしドアだ、入っちまえ)
「すいませーん」
試験管「ん?ああ君、受験生だよね」
一夏「え、あ、はい」
試験管「向こうで着替えて。時間押してるから急いでね。ここ四時まで借りれないから」
一夏「はっ、はい」
(今日日の受験は着替えまでするのか?カンニング対策か、大変だな)
一夏の入った倉庫には、待機状態のISがあった。
一夏(IS・・・?)
(―――知っている、これは『IS』だ。宇宙空間での活動を想定して作られたマルチフォーム・スーツ。しかし宇宙進出は進まずスペックを持てあました機械は『兵器』へと変わり――――各国の思惑から『スポーツ』に落ち着いた―――所謂、飛行パワードスーツだ。しかしこの『IS』には致命的な欠陥があって俺にとっては意味をなさない)
(男には使えない―――はずだった)
一夏がISに触れると、そのISが起動した。
一夏「な・・・なんだ!?まさか・・・動くのか・・・?」

IS「皮膜装甲展開」
「推進機正常作動」
「近接ブレード展開」
「ハイパーセンサー最適化」
一夏がISを展開し、装着した。
一夏(すべてがわかる。知りもしないのに、習ってもいないのに―――わかる。ISから送られてくる情報を通して見る世界は、まるで―――)


一夏(公立IS学園)

ISの操縦者育成を目的とした教育機関であり、
その運営及び資金調達は、
原則として日本国が行う義務を負う。
ただし、当機関で得られた技術などは
協定参加国の共有財産として公開する義務があり、
また黙秘、隠匿を行う権利は日本国にはない。
また当機関内におけるいかなる問題にも
日本国は公正に介入し、協定参加国全体が
理解できる解決をすることを義務づける。
また入学に際しては協定参加国の国籍を持つ者には
無条件に門戸を開き、また日本国での生活を保障すること。
―――IS運用協定
『IS操縦者育成機関について』の項より抜粋

一夏(要するに―――)
A国大統領?「てめー、日本人の作ったISのせいで世界は混乱してるから、責任もって人材管理と育成のための学園作って技術はよよこせや。あ、運営資金は自分で出してね♡」
一夏「ということ。ヤクザだな、A国」

一夏(俺は今、世界で唯一『IS』を使える男としてIS学園にいる)
(女しかいないはずのIS学園に男が現れると当然好奇の目で見られる。元日本代表・織斑千冬の弟というプロフィールまでつくと、ますます話はややこしい。誰か助けてくれ・・・)
箒「一夏、話がある」
箒が一夏に話しかけてきた。
箒「・・・・・・」
一夏「箒?なんだ話って」
箒「いいから早くしろ」
一夏「お・・・おう」

箒と一夏が教室の隅に移った。
一夏「ふー」
箒「・・・・」
一夏「久しぶりだな箒」
(こいつは幼馴染みの篠ノ之箒、小学校四年以来6年ぶりの再会だ)
「すぐ箒ってわかったぞ。髪型昔と同じだしな」
箒「・・・・・よく覚えているものだな」
一夏「そりゃ覚えてるって」
(うっ、睨まれた。6年の歳月はこうも人を変えるのか。いや、箒は昔からこんな感じだ)
「そういえば去年、剣道の全国大会で優勝したってね。おめでとう」
箒「なっ、なんでそんなこいと知ってるんだ!?」
一夏「なんでって、新聞で見たし・・・引っ越して以来それっきりだったけど、親父さんは元気か?あと・・・束さんも」
箒「・・・・あの人は・・・私とは関係ない・・・」
一夏「?、束さんと何かあったのか?」
ここでチャイムが鳴った。
箒「時間だ、戻るぞ」
一夏「あっ、おい!!・・・なんだあいつ」


千冬「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明を・・・ああその前に、再来週のクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」
クラスメイト「は―――い!!織斑くんがいいと思います!」
一夏「おっ、俺!?」
クラスメイトたち「そーね、せっかくだしね」
「ナイスアイディア!」
「私もそれがいいと思います」
一夏「ちょっと待った。俺そんなの」
千冬「自薦他薦は問わない。他に候補者はいないか?無効票当選になるぞ?ちなみに他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」
一夏「い、いやでもっ」
セシリア「納得できませんわ!!」

セシリアが立ち上がって、異議を申し立てた。
セシリア「そのような選出は認められません!大体、男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?実力から行けばわたくしがクラス代表になるのは必然です!」

一夏(正直この手合いは苦手だ。今の世の中、ISのせいで女性はかなり優遇されている。優遇どころか、もはや女=偉いの構図にまでなっている。つまり、そういういかにも現代の女子が目の前にいた。まあ俺としてはクラス代表とやらを引き受けてくれるというなら嬉しい限りだ)

セシリア「何せわたくし、入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートですから」
一夏「?」
セシリア「イギリス代表候補生であるわたくし以上に相応しい人間はいないはずですわ」
一夏「入試ってあれか?IS動かして戦うやつ?」
セシリア「それ以外に入試などありませんわ」
一夏「俺も倒したぞ、教官」
セシリア「なっ!!あなた!あなたも教官を倒したって言うの!?」
一夏「えーと落ち着けよ、な?授業中だぞ」
セシリア「これが落ち着いていられますか!!わざわざこんな島国にまで来たうえに極東の猿と比べられるなんて・・・このような屈辱耐えられませんわ!!」
一夏「イギリスだって島国だし大したお国自慢ないだろ」
セシリア「なっ!?あ、あっ、あなたねえ!?わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
セシリアが両手を机に叩き付けた。

セシリア「決闘ですわ」
一夏「いいぜ、四の五の言うよりわかりやすい」
千冬「おち」
セシリア「いたっ」
千冬「つけ」
一夏「った」
千冬「馬鹿ども」
千冬が出席簿で一夏とセシリアの頭を叩いた。
千冬「とにかく話はまとまったな。勝負は一週間後の月曜、放課後、第三アリーナで行う。それぞれ用意をしておくように」
一夏・セシリア「「はい!!」」

それから、一夏は一人教室に残って、テキストを読んでいた。
一夏「うーむ」
(ISのこと何も知らないからとりあえず勉強しようと思ったが・・・意味のわからん専門用語ばっかりだな。誰かに教えてもらわないとどうにもなりそうにないか―――)
そこへ真耶が入ってきた。
一夏「あ、山田先生」
真耶「よかった。織斑君、まだ教室にいたんですね。えっとですね、寮の部屋が決まりました」
一夏「え?」
真耶が一夏に鍵を渡した。
真耶「確か一週間は自宅から通学するって聞いてましたけど、事情が事情なので無理矢理ねじ込んだそうですよ」
一夏「でも荷物とかあるんで一度家に帰らないと・・・」
真耶「あっ、それなら」
千冬も教室に来た。
千冬「それなら私が手配してやった。着替えと携帯の充電器があれば十分だろう、ありがたく思え」
一夏「はあ・・・どうもありがとうございます」

一夏「えーっと1025・・・1025・・・お、ここか」
一夏が部屋に入った。
一夏「おお、さすが国立というか。そこいらのビジネスホテルよりよっぽどいい部屋だな」
「ふー、ベットもいいもん使ってやがんなあ・・・しっかし疲れた。これからどうしたもんかね」

ルームメイト「?、誰かいるのか?」
「ああ、同室になった者か。一年よろしく」
シャワーを浴びていたルームメイトが一夏の前に出てきたが・・・
箒「こんな格好ですまないな。私は篠ノ之ほ・・・!」
バスタオル姿の箒だった。
箒「い・・・いちか・・・」
一夏「お・・・おう」
箒「みっ、見るなあ―――――――!!」
箒が竹刀を取り、振りかぶった。
そして寮にその一撃の音が鳴り響いた。

Infinite stratos 01 END.

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最終更新:2020年04月28日 19:35