超獣機神ダンクーガの第1話
宇宙の彼方から、謎の艦隊が地球へと接近する。
母艦の中に、異形の3人の者が現れる。
「デスガイアー、参りました」「ギルドローム、参りました」「ヘルマット、参りました」
3人の前に、彼らの支配者の姿が現れる。
「前線基地が完成したそうだな?」z
「ご報告が遅れましたが、いよいよ銀河第5区攻略のときがやって参りました」「ただちに我ら3人前線基地へ赴き、作戦を開始致します」「ムゲ帝王は心安らかに、戦いをお楽しみください」
「フフフ…… 貴様たちの戦いを見守っておるぞ」
未確認飛行編隊地球接近の情報は、ここ、
オーストラリア宇宙士官学校にも伝わっていた。
士官学校の飛行場の片隅。
教官であるシャピロ・キーツと、士官候補生の1人の結城沙羅がいる。
シャピロ「俺は必ずやる。それまで待て」
沙羅「えぇ……」
同じく士官候補生の1人・藤原忍が、戦闘機で空を舞っている。
忍「ん? 何だ、ありゃ? あの2人、この忙しいときに…… ちぇっ」
2人の近くに、忍機が着陸する。
シャピロ「藤原忍。無理だな、その腕では卒業などできんぞ」
忍「うるせぇんだよ! 基地内でのラブシーンには気をつけてくれなくちゃ、お2人さん。さすがの俺も、勘が狂うぜ」
沙羅「忍、隊長に向かって何て口をきくの!?」
シャピロ「藤原。貴様まさか、あの高さから我々が見えたと?」
忍「あぁ。だから手元が狂ったのさ」
シャピロ「フン。操縦だけは抜群だと言われて天狗になっているな? しかし、未熟だ……」
忍「何ぃ、未熟だと?」
シャピロ「今の腕では私の足元にも及ばない。すべての面でな」
忍「何だとぉ!? よぉし、及ばないかどうか試してやるぜ!」
忍がいきなり殴りかかるが、シャピロは軽々とかわし、逆に忍を叩きのめす。
忍「ぐぅっ!?」
沙羅「ふふっ、いい気味」
忍「畜生! この野郎!」
突然の警報音が鳴り響く。
士官学校の校長のもとに、候補生たちが集合する。
校長「緊急事態が発生した。地球防衛ゾーンに接近しつつあった未確認飛行物体の編隊が、地球ベースを攻撃。戦闘状態に入った。地球にも、いつ攻撃が及ぶかもしれん。諸君はまだ訓練の途中ではあるが、この非常事態を避けて通るわけにはいかない。いざというとき、いつでも正規軍の援護ができるように」
地球防衛軍もただちに反応したが、
敵の奇襲には、なすすべもなかった。
アフリカ大陸基地、ヨーロッパ大陸基地、
アジア大陸基地と全滅。
敵の地球兵器を超えた武器の数々に、
地球群は最初の攻撃で大きな打撃を受けた。
侵略軍は「ムゲ・ゾルバドス帝国」と名乗り、
地球に全面降伏を求めた──
デスガイアー将軍の乗った艦隊が、月軌道に迫る。
部下「デスガイアー将軍、第3惑星が交信をなお求めていますが」
デスガイアー「放っておけ。すぐ黙らせてやる」
地球の宇宙艦隊が、それを迎え撃つ。
「月を越えることは許さん! それ以上接近すれば、地球艦隊は最大戦力をもって攻撃する!」
たちまち、敵艦隊の攻撃が降り注ぐ。
地球艦隊も反撃するが、あえなく撃沈されてゆく。
その様子を、士官学校で校長や参謀たちがモニターしている。
校長「これではまったく戦いにならん。戦力に差がありすぎる」
シャピロが現れる。
シャピロ「だから『もっと宇宙に目を向けろ』と言ってきたんです」
校長「君は、シャピロ・キーツ?」
シャピロ「そういう私の意見は、国連本部へ届いているんですか?」
参謀たち「シャピロ・キーツ、君は候補生の監督をすべき立場であることを忘れるな!」「我々に口出しすることは許さん!」
ついに地球艦隊が全滅する。
校長「正規軍も、これまでか……」
士官候補生たちに、校長からの出撃命令が下る。
校長「地球の正規軍の戦力には限界がきている。もう諸君の勇気ある戦いを期待するしかない。ただちに正規軍をバックアップして、敵の侵入を阻止せよ」
戦闘機が次々に飛び立っていく中、忍の戦闘機は、整備が終わっていない。
忍「何をモタモタしてるんだ! こっちは急いでるんだ!」
整備兵「お前のいつもの扱いが荒っぽいから、こうなるんだ!」
忍「ちぇっ、連中に先を越されちゃうぜ!」
出撃した候補生たちの中に、シャピロ、沙羅もいる。
シャピロ「素晴しいチャンスが来た! 俺はやる。この惨めな地球人類には愛想が尽きた。この際きっぱりおさらばして、俺は宇宙へと出る。そして、すべての星々を支配し、いずれは、この宇宙の神となってやる」
沙羅「シャピロ、思いがけないチャンスが来たものね」
シャピロ「しかも向こうからな。沙羅、俺は行くぞ」
沙羅「私も行くわ。あなたが行くなら!」
ムゲ帝国の編隊が飛来。戦闘が開始される。
シャピロ「今は相手をしている暇はない!」
沙羅「あっ、待ってよ!」
シャピロ機が敵の攻撃をくぐり抜け、高度を上げてゆく。
沙羅も続こうとするが、敵の攻撃に阻まれる。
沙羅「畜生!」
ようやく忍機が参戦する。
忍「おっ、やってるやってる! 空の戦いってのを、俺が教えてやるぜ!」
敵機の攻撃。
忍機が回避するが、敵機は動きを読んで忍機の前に回りこむ。
忍「ちぇっ、こっちの戦闘フォーメーションをすっかり読まれてら。コンピューターをオフにして、勝手にやらせてもらうぜ! 行くぜ!」
候補生たち「おぉ、忍だ!」「忍が来たぞ!」「よぉし、行くぜ!」
シャピロ「俺は行く。お前たちはこのちっぽけな地球を守るがいい。(だが俺は違う。俺は貴様たちと能力が違う。俺の力は、すべての宇宙を支配するために存在するのだ。俺の力は、絶対の力なのだ) 沙羅、行くぞ!」
沙羅「えぇ!」
忍「あっ、隊長、沙羅? 何考えてるんだ、あいつら?」
シャピロ機が飛び去って行く。
沙羅機が、それを追う。
忍は彼らに気をとられた隙に、攻撃を受けてしまう。
忍「わぁっ!?」
体制を立て直して反撃するものの、目の前の敵に攻撃が通じない。
忍「何だ!? きかねぇ!」
危うく目の前の敵に衝突しかけ、かろうじて回避する。
忍「ふぅ、何て奴だ」
そうしている間にも、シャピロ機と沙羅機が飛び去って行く。
忍「あいつら!? 沙羅、どこへ行く!? 沙羅!」
沙羅「放っといてよ! うっさい!」
忍「敵前逃亡は罪が重いんだぞ!」
沙羅「あんたには関係ないのよ!」
忍「関係ないとは何だ!? 戻らないと撃つぞ! 沙羅、ウソだと思ってるのか? 撃つぞ!」
沙羅「……」
忍「沙羅……!?」
忍がためらいながら放った銃撃が、沙羅機のエンジンを掠める。
沙羅「シャピロ!?」
忍「沙羅、早く戻れ! 戻るんだ!」
沙羅「シャピロ…… あなたなら、きっとやるわ!」
シャピロ機が空の彼方へと消え、沙羅機の高度が次第に下がって行く。
忍「何とか、基地まで帰れよ……」
次々に敵機が数を増す。
忍「こんなに来たんじゃ、やってられねぇ! みんな、引き揚げろ! 命を無駄にするこたぁねぇぞ」
飛行場で、沙羅が空を見上げている。
忍「ちっ、あいつめ」
忍が沙羅に近づく。
忍「沙羅、どうするつもりだったんだ?」
沙羅「……」
忍「シャピロはどこへ行ったんだ? 敵に寝返ったのか?」
沙羅が振り向きざまに、忍に平手打ちを見舞う。
忍「この野郎、自分のしようとしたことも考えねぇで、よくも! 2人してどうするつもりだったんだ!? 隊長は俺たちを裏切ったのか!?」
沙羅「……あ、あんたなんかにわかりっこないわよ!」
忍「何だとぉっ!?」
沙羅が涙をこぼしながら、走り去って行く。
忍「あの女、何考えてるんだ!?」
校長と参謀たちの会議。
参謀たち「このまま、指を咥えて見ているのですか?」「このままでは、地球は完全に奴らに制圧されてしまいます!」
校長「仕方がない…… とにかく、国連の決定を待つのだ」
忍が現れる。
忍「失礼します。報告します。隊長は行方不明。その他、戦死32名です」
校長「そうか…… シャピロ・キーツは、やられたのか?」
忍「……」
校長「どうしたんだ、キーツは?」
忍「隊長は…… 我々を見捨てて、逃亡しました」
校長「何ぃ!?」
忍「校長! どうなるんですか、地球は!?」
校長「国連が緊急会議を開いている。その結果を待つしかない」
忍「ったく、だらしねぇんだから! こんなに地球が脆いとは思わなかったぜ!」
参謀「藤原!」
忍「よく、そう澄ましこんでいられますね。俺は負けるのが大っ嫌いなんだ!」
参謀「藤原!」
シャピロはムゲ帝国に投降し、過酷な拷問を受けている。
敵兵「言え! なぜここへ来た? ただ逃亡して来たわけではあるまい?」
シャピロ「貴様たちに話しても意味がない…… 支配者に会わせろ」
敵兵「口の減らぬ奴、ムゲ帝王にそう簡単に会えると思っているのか? 言え! 逃亡者を装って、我らの軍団を霍乱するつもりだったんだろうが!」
シャピロ「貴様…… 会わせんと後悔することになるぞ」
敵兵「えぇい、捕虜の分際で!」
シャピロ (沙羅…… なぜだ? なぜついて来なかった……?)
デスガイアー「発進準備だ。向こうの軍はどうした?」
部下「地球は抵抗の気配も見せないそうです」
デスガイアー「そうか。完全制圧も目の前だ!」
あくる日。
飛行場に1人佇む沙羅を、忍が見つける。
忍「あっ、こんなところにいたぜ。何すねてんだい? お嬢さん」
沙羅「人のことは放っといてよ!」
忍「そうはいくか! お前には言いてぇことがいくらでもあるんだ」
沙羅「うっさい! 勝手に吠えてな!」
忍「隊長はどこへ行った? お前は確かについて行こうとしたんだ。知らねぇわけがねぇだろ?」
沙羅「あいつは、勝手に行っちまったのさ」
忍「じゃあ、2人で何をしようとしたんだ? ……まさか?」
沙羅「そうさ! その通りさ!」
忍「呆れてものも言えねぇや…… こんなときに、2人でピクニックなんて冗談が過ぎるぜ」
沙羅「馬鹿にするのかい!?」
忍「そんなことはないさ。ただ…… ん?」
突然、忍が沙羅に抱きついて横っ飛び。
沙羅「な、何すんのさ!?」
空から砲撃が轟く。
ムゲ帝国の編隊が飛来し、飛行場に停まっている戦闘機を次々に破壊してゆく。
至急、仕官学校側も迎撃を開始するが、敢無く学校が破壊されてゆく。
最初の一撃で
地球に大きなダメージを与えたムゲ帝国軍は、
アメリカ五大湖付近へと基地を置いた。
破壊されつくした士官学校。
忍たち「閉鎖!?」
校長「残念だが、ここは閉鎖だ。諸君はそれぞれ、正規軍の残存部隊へ加わってもらい、抵抗戦を続けてもらうことになる」
忍「ちっ……」
校長「藤原くん、君は特別機甲部隊に配属だ」
忍「特別機甲部隊?」
校長「スーパーテクノロジーの先進国である日本に、その機甲部隊がある。その名を『獣戦機隊』という」
忍 (獣戦機隊……?)
その夜。
星空を見上げる忍のもとに、沙羅がやって来る。
忍「ん?」
沙羅「助けてもらったことは…… 忘れないよ」
忍「……あぁ」
仲間たちのジープがやって来る。
仲間「忍! 102方面へ行くぞ!」
忍「あぁ! ……じゃ、元気でな」
沙羅「……えぇ」
忍がジープに乗り、荒野へと走り去る。
忍「獣戦機かなんか知らねぇが…… やってやるぜ!」
最終更新:2024年03月26日 21:23