キバット「幾多の悲しみを超えて、強く成長した渡!」
タツロット「ついに、太牙とのガチンコ対決が始まります!」
キバット「あ~っと邪魔が入った! 何なんだこいつらは!?」
キバとサガが、対決の場に割って入ったファンガイアたちを一気に殲滅する。
サガ「邪魔者は消えた。決着をつけるぞ、渡!」
キバとサガの戦いが再開され、キバの攻撃が次第にサガを圧倒し始める。
ビショップが礼拝堂で、狂ったようにパイプオルガンをかき鳴らしている。
ビショップ「真のキング…… 今こそ復活のとき!」
戦いの末に変身が解除された渡と太牙は、なおも争い続ける。
太牙「渡、いつの間にこれほどの強さを!?」
渡「もうやめよう、これ以上戦っても無駄だよ!」
太牙「何ぃ!?」
渡「キングである兄さんより、僕の方が強い!」
太牙「貴様…… 俺を侮辱する気か!?」
渡「事実を言っただけだよ! でも…… 兄さんは1つ、正しいことを言ったね。ファンガイアとして生きるのも悪くない。僕もそう思えてきたよ。ただし、兄さんと一緒に生きるつもりはないけどね……」
渡が去って行く。
太牙「許さん、許さんぞ、渡…… もうお前を、弟とは思わない……!」
ビショップの集めたライフエナジーが宙へ飛び立ち、墓標の突き立つ荒野に落ちてゆく。
火柱が上がり、咆哮と共に不気味な人影が現れるものの、炎と化して消えてしまう。
ビショップ「足りない…… もっともっと、ライフエナジーが必要だ。甦りし同胞たちよ、襲え、人間を。奪え、その魂を。すべてはキング復活のために!」
カフェ・マル・ダムール。
名護が店に佇み、視界の中で自分の手が次第にぼやける。
先日の戦いで名護は恵をかばい、顔面に攻撃を食らい、目にダメージを負っていた。
そこへ、渡が現れる。
渡「名護さん、どうしたんですか?」
名護「やぁ……」
渡「用って何ですか?」
名護「単刀直入に言おう。君に、『青空の会』の会長になってほしい」
渡「……どういうことですか?」
名護「理由は聞かなくていい。君ならできる。すでに推薦状は書いておいた」
渡「お断りします」
名護「なぜだ!? 君は言ったはずだ。『ファンガイアと人間の架け橋になりたい』と。青空の会のトップに立てば、きっとその道は開けるはず!」
渡「考えがあるんです。僕は僕なりに」
名護「どんな考えだ? 言ってみなさい。……言ってくれ!」
名護の携帯が鳴る。その隙に、渡は去る。
恵「名護くん、すぐ来て! ファンガイアが!」
名護「わかった……」
ビショップの指示により、街中に無数のファンガイアが出現している。
恵がファンガイアに、必死に応戦する。そこへ名護が駆けつける。
名護「ファンガイア!」
視界がぼやける中、必死にイクサナックルを手にする。
音声『レ・デ・ィ』
逃げ惑う人々が名護に衝突し、イクサナックルが地面に転がる。
名護が必死に手を伸ばすが、ナックルの位置を捉えられず、その間に人々は襲われ続ける。
渡「やめろ!」
名護・恵「渡くん!」
渡が駆けつけ、ファンガイアを殴り飛ばし、変身しないままでファンガイアを睨みつける。
その眼力の前にファンガイアがうろたえ、退散していく。
恵に襲いかかるファンガイアに、銃撃が炸裂する。
攻撃の主は、サガに殺されたと思われていた嶋。
嶋「恵くん、その程度のファンガイアに追いつめられるとはな」
恵「……嶋さん!?」
嶋「一から鍛え直さないといけないようだな」
恵「嶋さん…… 嶋さん、死んだはずじゃ?」
嶋「何だ、その目は? 私は幽霊ではない、もちろんファンガイアでもない。昔の私に戻ったんだ。すべて、元に戻ったんだ」
一同がカフェ・マル・ダムールを訪れる。木戸が嶋を見るなり、抱きつく。
木戸「わぁ~、嶋ちゃん! こんな嬉しいこと無いよぉ!」
嶋「痛い痛い痛い! ちょっと!」
木戸「もう二度と会えないと思ってたのに!」
嶋「痛い痛い! ちょっと離れろ! ヒゲが痛いから、もう……」
木戸「今日はね、何でも好きな物サービスするから、何か食べて! ね、何にする?」
木戸が早速、コーヒーを入れる。
木戸「はい、どうぞ。嶋ちゃん、本当に嬉しいんだよ」
恵「信じられない。話がうますぎるわ」
嶋「そんなことよりも大事な話がある。名護くん、すまないが、砂糖を入れてくれないか?」
名護「……」
嶋「砂糖、入れてくれないか?」
木戸「何? じゃあ、僕ちゃんが……」
名護が手探りで砂糖を手にし、入れようとするが、砂糖はテーブルにこぼれる。
嶋「やはりそうか。名護くん、君は、目が見えないんじゃないか?」
名護「……はい」
恵「えっ? どういうことなの? ……私のせいじゃ!?」
名護「違う! 俺が単に戦士として未熟だった。それだけのことだ」
恵「名護くん……」
嶋「こうなった以上、君は青空の会の戦士を……」
恵「嶋さん!」
名護「わかってます!」
恵「名護くん……」
太牙が社長を務める、投資会社D&Pの役員会議。
太牙「もう一度言ってみろ」
役員A「あなたはキバに負けた。よって我々役員会は、あなたの社長辞任を要求します」
太牙「何?」
役員B「もう我々は、敗者について行くわけには行きません」
太牙「お前たち、何を言って……」
役員A「採決を取ります! 登 太牙の社長解任に賛成の方は挙手を」
役員たちの手が一斉に上がる。
太牙「勝手にしろ……!」
橋の上に佇む名護のもとに、恵がやって来る。
恵「名護くん」
名護「これは…… 君が使いなさい」
名護がイクサナックルを差し出す。
名護「君以外にイクサの適任者はいない。俺の代わりに……」
恵「何言ってんの!? 名護くんが使ってこそのイクサでしょ! 何ですぐに諦めるわけ?」
名護「……」
恵「私があなたの目になる」
渡は、母・真夜の潜む洞窟を訪れる。
真夜「渡……?」
渡「教えて、母さん。あれから、父さんは一体……?」
真夜「幸せそうに死んでいったわ。あの人らしく。私の中には今でも、あの人の音楽が流れてる。それは決して途絶えることなく、永遠に…… 渡、お前も立派だったわ」
渡「どうして?」
真夜「悲しみに耐え、笑顔でお父さんと別れた」
渡「母さん、僕はもう嫌だ。あんな悲しみは、もう二度と」
真夜「大丈夫よ、渡。お前には優しさがある」
渡「でも…… 僕はもっと強くなりたい。もっともっと強くなって、人の音楽を、美しいものを守っていきたい。どうすれば、僕は……」
真夜「馬鹿ねぇ、渡。人に優しくできるということは、お前が強いからなんだよ? お父さんがそうだったように」
渡「違うよ、母さん。僕は…… 僕はそんな立派な人間じゃないんだ」
太牙が街外れで、うな垂れている。ビショップが現れる。
ビショップ「惨めなものだな、何もかも失った男の姿というのは。だが、これで終わりではない。最後に残ったキングという立場も、奪われることになる」
太牙「……ふざけるな。俺が生きている限り、キングの座は誰にも渡さない!」
ビショップ「ならば、その命を奪うまでのこと。もうすぐ、真のキングにふさわしいお方が復活する。邪魔者は…… 消えろ」
ビショップがスワローテイルファンガイアに変身、さらに配下のファンガイアたちも現れる。
太牙「……変身」
太牙がサガに変身。
しかし、キバとの戦いのダメージにより戦いもままならず、たちまちファンガイアたちの攻撃の餌食となる。
そこへ、名護と恵が駆けつける。
恵「名護くん、2時方向! 距離20メートル!」
名護「変身!」
音声『レ・デ・ィ』
名護が一気にライジングイクサに変身し、ファンガイアたちに挑む。
恵「5時方向!」「7時!」「12時!」
イクサが恵の指示のもと、どうにかファンガイアたちと渡り合うものの、反撃を食らう。
恵「12時ちょうど!」
ファンガイアたちの連続攻撃の前に、イクサが危機に陥る。
恵「名護くん!?」
参戦しようとした恵がファンガイアに襲われ、イクサも攻撃を浴びて、変身が解除される。
サガもまた、スワローテイルファンガイアの攻撃を一方的に浴び、ついに変身が解除される。
恵「名護くん!」
そこへ渡が駆けつけ、恵を捕えていたファンガイアを叩きのめす。
恵「渡くん!?」
渡「変身」
タツロット「ザンバット!」
渡が一気にキバ・エンペラーフォームに変身。ザンバットソードでファンガイアを斬り捨てる。
スワローテイル「キバ……!」
太牙「渡……!」
キバ「ここに宣言する、今から僕が新しいキングだ!」
太牙「何ぃ……? どういう意味だ?」
スワローテイル「ふざけるな。お前ごときがキングになる資格はない」
キバ「文句があるならかかってこい。ファンガイアの掟は力の掟、強い者がすべてを支配する!」
キバは残りのファンガイアたちをすべて、一刀のもとに斬り捨てる。
スワローテイル「認めない……! 全力で潰すまで!」
スワローテイルがキバに挑むが、ザンバットソードでの剣撃を受け、逃げ去る。
渡が変身を解く。
恵「渡くん、一体どういうことなの!? ファンガイアのキングになるって!?」
渡「言葉の通り、僕が太牙に代わって新しいキングになる!」
名護「何を考えている、渡くん! 考え直しなさい!」
渡が厳しい顔つきのまま、太牙を一瞥すらせず、立ち去って行く。
真夜の潜む洞窟に、太牙が訪れる。
太牙「母さん……」
真夜「太牙!?」
夜の街。渡の前に、嶋が現れる。
嶋「渡くん。君に、話したいことがあるんだ」
真夜「どうしたの? そんな悲しそうな顔して……」
太牙「母さん! 僕にはもう何も残ってない…… 残ってるのは、キングの座だけだ! キングだけは…… 絶対、誰にも渡さない!」
嶋「どうして私が生きてるか、知ってるか? 太牙は殺せなかったんだ、この私を。あのとき太牙は、わざと急所を外した。そして私を救ったんだ。太牙は心の底に、優しさを隠してる。私はずっと、その優しさに気づいてやることができなかった……」
渡「どうして、そんなことを僕に?」
嶋「太牙を…… 君に頼みたいんだ」
太牙「母さん、お願いだ。闇のキバを、僕に……」
真夜は首を横に振る。
太牙「なぜ駄目なんだ!? まさか母さん、渡がキングになることを望んでいるんじゃ!?」
真夜「それは違う! あの子なら人間とファンガイアに、明るい未来を切り開いてくれる、そう信じている」
太牙「なぜなんだ!? 母さんは…… 母さんは、僕よりも渡を愛している……」
真夜「それは違うわ、太牙!」
太牙「なぜ…… どうして僕からみんな去っていくんだ? 渡も、深央も…… そして母さんまで……」
真夜「違う…… 違う、それは違う! 太牙!」
太牙「うるさい! うわぁぁ──っ!!」
太牙が激昂と共に、真夜にジャコーダーの刃を突き立てる。
真夜が、太牙の胸の中に崩れ落ちる。
太牙「うぅわぁぁ──っっ!!」
雷雨の中で絶叫する太牙のもとに、キバットバットII世が飛来する。
キバットII世「どうやら、お前には俺が必要なようだな。お前ほどの悲しみを見せた男はいない。気に入った! お前なら最強のキングになれるかもしれん…… ガブリ!」
太牙「……変身」
稲光の轟く中、太牙がついにダークキバへと変身する。
キバットII世「闇だ。闇の歴史がここから始まる! 闇だ…… 闇だ!」
キャッスルドランの玉座の間。渡が、かつてのキングと同じ衣装を纏って現れる。
次狼、力、ラモンらの見守る中、渡がザンバットソードを荒々しく床に突き立て、玉座につく。
渡「今から、僕がキングだ」
礼拝堂。
ビショップ「甦りし我が同胞たちよ! 真のキング復活のため、さらなるライフエナジーを集めるのだ!」
墓標の突き立つ荒野に、ファンガイアたちが人々から奪ったライフエナジーが、再び飛来する。
火柱が立ち、かつてのキング・バットファンガイアが、咆哮を張り上げつつ姿を現す。
ビショップ「もうすぐだ……! 復活のときは近い……」
ラモン「お兄ちゃんが?」
力「キング……」
次郎「一体どういうつもりだ、渡? お前の父親は、音也はそんなことを望んでない!」
渡「無闇に父さんの話をするな!」
渡の迫力の前に、次郎たち3人が言葉を失い、跪く──
最終更新:2018年08月30日 03:12