危機に陥ったマリアは、カナンにより救出された。
父・大沢教授が、気絶しているマリアを背負って運ぶ。
大沢「はっ… はっ… はァ… く……」
目の前を有刺鉄線が塞ぐ。
千晶が現れ、力ずくで鉄線をこじ開ける。
千晶「だ… 大丈夫ですか!?」
大沢「キミは…?」
千晶「わ…私は、マリアさんの友人で磯千晶と申しますぅ~ カ…カナンさんに頼まれてココに馳せ参じましたぁぁ! じき警察も来ると思います。カナンさんは?」
大沢「ああ、彼女は……」
カナンとリャン・チーが、廃病院の屋上で、戦いを繰り広げている。
リャン「キサマの…… キサマのせいで姉さまがぁぁ…!!」
リャンの振るう大剣を、カナンは軽々とかわす。
リャン「! な… はぁ はぁ こ…… この…… 化物の分際で……!! 人間をバカにしやがってェ──!!」「死ね!! 死ね!! 死ね!! 死ねェ──!!!」
カナンがリャンの腕を掴み、剣を止める。
リャン「! な!」
カナン「淋しさ… 孤独… 怒り… 落胆… そして狂おしい程の愛… あなたはアルファルドと同じ… 愛憎の塊なのか……」
リャン「あああああ… だまれエェ──!!」
リャンが逆上し、激しく剣を振り上げるが、カナンはリャンの腹に蹴りを入れる。
リャン「がは… がは… ほご… ふ… ふざけるなよ……!! しゃべるな…… フ──… しゃべるなよ、もう…今… フ──… フ──… こ……殺してやる… 今すぐ… ブチ殺して…… 黙らせてや…」
カナンの腕に、リャンがしがみつく。
腕を覆っていた布がずれ、刺青が露になる。
リャン「!!! こ… この腕…… 姉さまと同じ腕── なぜだあ!! なぜお前がその腕を…… なぜェェ…!!」
カナンがリャンを、当て身で気絶させる。
リャン「な… ぜ……」
カナン「ふぅ… これ以上は、知らない方がいい…」
パトカーのサイレンの音。
カナン「ふ──… ……終わった… かな──…」
マリア「ん……」
大沢「──マリア、気がついたか!?」
マリア「お父…さん… あれ…? 千晶さんも…」
千晶「ゔぅ… 御無事で良かったですぅ~」
マリア「──そうだ… 私…確か何者かに襲われて…」
大沢「ああ… でも、彼女が助けてくれたよ」
マリア「──…!! カナン……」
マリアが、カナンの取り残された廃病院を見つめる。
マリア「今… カナンの声が聞こえた気がした… “またね”って──…」
何日か後、ヘブン出版。
頭山編集長が、他社の雑誌記事を読んでいる。
頭山「“怪奇!! 一瞬にして消えた幽霊病院の謎” いったい誰が… 何のために…!! か。面白い記事だ……」
千晶「ホ… ホントですよねェ~ あはははは…」
頭山「感心してる場合か、千晶。オレ達は、コレに負けない位の記事を書くんだよォ。──で、どうなんだ!? 大沢マリア身辺の調査は!!」
千晶「そそそ それは…」
頭山「既に日中首脳会談が肩透かし喰って、残るネタはソレだけなんだよ」
千晶「それは えーと…」
千晶 (実は… 実は私、知っています… 日中首脳会談含めた赤坂での不穏な動きと大沢さん御一家のピンチ… そして、それと合わせて消えてしまったその病院の事を突きつめれば428に通じる大スクープになるという事を… ──でも あの時…)
カナンとかわした電話の回想─
千晶「カ… カナンさん、大丈夫ですか!? マリアさんは…?」
カナン『千晶さん、お願いがあります』
千晶「ハイ?」
カナン『マリアを迎えに来て下さい。依然お会いした廃病院に。そしてマリアを救ってやってほしい──』
千晶 (カナンさんは── 私がゴシップ雑誌の記者であり、赤坂での動きを探っていると知りながら、警察ではなく、この私にマリアさんを救って欲しいと言ってきた… それは私に、マリアさんの友人でいて欲しいという願いだったと思うんです… だから…)
千晶「編集長…」
頭山「──あ゙?」
千晶「大沢さんの身辺には特に変わった事はありませんでした!! ──だから、編集部に入った電話は、単なる“イタ電”であり、“スナイパーによる中国首脳暗殺計画”は編集長の妄想だったという事です!! 私はこれから恐怖心は恋愛に発展するのかの記事に取りかかります!!」
頭山「な… なんだと キサマ──!!」
「妄想とは思わんが…… 今回の一件は一度見送るべきかもしれん」
日本を離れていた御法川が現れる。
千晶「!!」
御法川「よっ」
千晶「ミノさん…!!」
御法川「オレが居ない間に随分たくましくなったじゃないか、千晶」
千晶「わあ──!! お久しぶりです、ミノさん!!」
頭山「御法川──… なぜだあ~ なぜ妄想を否定しながら、この一件を見送ろうと言うんだ お前は~ お前程の男が、ネタのデカさにおじけづいちまったんじゃねェだろうな~」
御法川「カン違いすんなよ オレは“一度見送る”と言ったんだ。あきらめたわけじゃない。そして、こいつは別の角度から見直す必要がある。──だからこそ、オレはココに戻ってきた」
頭山「──何っ…」
御法川「なあ頭山さん。この件… オレに任せてもらえませんか」
頭山「お…お前…」
御法川「そう… このネタはいつか この御法川実が、ゴシップ雑誌『噂の大将』のどでかいスクープにしてやりますよ」
頭山「み… 御法川 大好きだあ──」
御法川「うあああ やめろぉ 頭山あぁぁ…」
千晶 (ミノさんならうまくやってくれそうです… うん)
御法川 (──しかし、このネタはマジでヤバイ… このネタの裏には、世界的犯罪組織が関わっているのかもしれないからだ。だが…既にオレのジャーナリスト魂は恐怖を遥かに凌駕している… オレはいつか 中国へ行く事になるかもしれない……)
民間軍事会社・ダイダラ社のカミングス社長が、電話をしている。
カミングス「いやあ、今回は本当にありがとうございましたァ。御社から御紹介頂いた“鉄の闘争代行人”…… 彼女は日本政府の要求にみごとに応えてくれました。先ほど銃の返却が済んだとの連絡もありました… 万事うまくいきましたよ」
カミングスの手にしている書類には、カナンの写真。そして通話相手はアルファルド。
アルファルド『それはよかった…』
カミングス「では早速、成功報酬を……」
アルファルド『ああ… それは結構だ、社長…』
カミングス「は?」
アルファルド『──あなたのその経営者としての高い能力…… 私のモトで生かすつもりはないかな?』
カミングス「こ…これは、ヘッドハンティング……ですか?」
アルファルド『──まあ そういう事だ。今、うちの者をそちらに向かわせたので… 一度検討してみてほしい』
カミングス「いやあの… それはその~…」
そこへ、リャン・チーが現れる。
リャン「失礼します。こんにちは。お話をお伺いに参りました。リャン・チーと申します」
カミングス「あ…これはどうも──」
カミングスの手にしているカナンの写真を見た途端、リャンが逆上。
リャン「ブチ…殺すっ…」
突然の蹴りで写真を吹き飛ばし、さらに転倒したカミングスの顔を踏みつける。
カミングス「ヒイイイイ…」
リャン「姉さまの指示に従い、本日より、あなたの秘書を勤めさせてもらう事になった…が、その前に、カナンについてキサマの知りうる情報を伺おうか…」
カミングス「いや…その 急にそう色々…言われましても…」
リャン「口答えするんじゃないよ!」
カミングスは虐げられながらも、心地良さそう……
ヒトは──
恐怖であれ恋愛であれ、
胸のドキドキをどこかで求めている──…
マリアの家。
マリア「だから私──… 報道カメラマンを目指す事にしました──♪」
大沢「えーと… 草花とか景色じゃなくて…?」
マリア「そう!! 人が撮りたいの… ──というか… 実は… 今回カナンを撮れなかったのが動機で…… 自分がなぜこんなにもカナンが撮りたいのかを考えたの」
マリアがカナンを想う。
マリア「カナンを見てるとね、全身が脈打ってドキドキするの。胎内に居る赤ちゃんみたいに… 全身全霊で“生きてる”という事を感じるの。それはまさに、命の輝き… あの子は体全部で辛い事、苦しい事、痛み、恐怖…… 全てを感じて、そして乗り超えてきた… だからこそ、人としての感性が研ぎ澄まされ、その命は人一倍激しく輝いてる。」
マリアがカメラを構えてみせる。
マリア「私はもうその光に魅入られてしまっているの。私もカナンと同じものを見て、感じたい。そして、このカメラに焼きつけたい。カナンを…… カナンと共に躍動している命の世界を、この…私の第二の目に…」
大沢「…… 私は、ずっと安息の地を求めていた… だが、カナンを知って思ったよ… 我々は、なんと危機に疎い、緩い人種なのかと…」
大沢は飲んでいたコーヒーをテーブルに置き、ため息をつく。
大沢「これが“可愛い子には旅をさせろ”ってやつだ。辛く残酷な現実にたくさんぶつかるだろうが、それは必ずやお前の力になるハズ… やれるだけやってみなさい、マリア。私も何か困った事があれば全力でサポートするから、マリアはもちろん、カナンもな」
マリア「うん、ありがとう、お父さん!!」
──カナン…
カナン……
私…あなたを追いかける事にしたの──
見たい…知りたい…
あなたの全てが…
あなたは今──…
この世界のどこかで……
輝いていますか──…
どこかの国。太陽の照りつける砂漠。
カナンが、好物のスティックシュガーを咥え、ローブをまとって寝転んでいる。
1台のトラックが通りかかる。
カナンがシュガーを吐き捨て、銃を構え、ローブを脱ぎ捨てて立ち上がる。
「Go!!」
最終更新:2018年10月30日 08:14