冥王計画ゼオライマー(アニメ版)の第1話

夜の街。

主人公・秋津マサトが、何かに怯えて逃げ回っている。
数人の男たちが、マサトを取り囲む。

マサト「何ですか!? なぜ、僕の跡をつけ回すんですか!?」

1人の男がマサトを殴り飛ばす。
謎の美少女・氷室美久が、冷ややかに見下ろしている。

美久「どうして抵抗しないの? 男の子でしょう? 秋津マサトくん」
マサト「ど、どうして、僕の名前を?」
美久「『ゼオライマー』が、覚醒するのよ」
マサト「ゼ……オライマー…… ゼオライマー!?」



鉄甲龍──
ハウ・ドラゴンの異名を持つ、
世界を掌握せんとするこの巨大な結社は、
八卦衆と呼ばれる
巨大なロボット軍団を作り上げた。

だが、その内の一体は
ある人物によって盗み出され、
密かに日本に隠されていた。

その名は、天のゼオライマー!

ゼオライマーが自分の操縦者と認める人物は
たった2人の男女だけである。
秋津マサト、氷室美久。

だが、ゼオライマーには
ある恐るべきプロジェクトが
プログラムされていた。

それは、自らを冥府の王とせんとする、
冥王プロジェクトであった──




プロジェクトI

─ 決 別─



国際電脳。
その名を知らぬ者はない。

独自に開発したコンピューター技術によって、
たちまち世界のエレクトロニクス産業の
シェアを塗り替えた、一大企業である。
今や全世界のコンピューター業界、
その70パーセントが国際電脳に占有されていると
言っても過言ではないだろう。

だが、これほどの企業でありながら、
その本社が中国にあることを除き、
実体はほとんど知られていなかった。

国際電脳本社ビルのもとに、鉄甲龍からの通信が入る。

国際電脳「な、な、何ですと!? つ、ついに浮上されるのですか!?」
鉄甲龍「隠れ蓑としてきた国際電脳も、今日を持って無用のものとなる」
国際電脳「えぇっ!? そ、それは!? 我々は鉄甲龍に終生、忠誠を誓って……」
鉄甲龍「くどい!」

国際電脳本社ビルが煙を吹き、大地に沈んでゆく。

洋上に嵐が巻き起こり、龍を思わせる巨大な鉄甲龍要塞が出現する。


鉄甲龍の若き女帝、幽羅帝(ゆうらてい)
8人の精鋭・八卦衆(はっけしゅう)耐爬(たいは)、双子姉妹シ・アエンとシ・タウ、(りつ)、ロクフェル、祗鎗(ぎそう)塞臥(さいが)
ロボット兵器開発者のルラーン。

幽羅帝「我らが鉄甲龍、復活のときは来た! 思えば15年前、1人に裏切りから地に潜らねばならなかった我ら、そして、地の底で命を落とした前皇帝他多くの民人(たみびと)。だが我らは再び機を、力を得た! 今こそ鉄甲龍が総力を挙げて世界を冥府と化し、そしてこの幽羅帝はその王となる。即ち、冥王!」
ロクフェル「だがその前に、裏切り者を処断せねば!」
葎「木原マサキを──」
祗鎗「15年前、我が帝国より天のゼオライマーを奪い、要塞の中枢部を破壊した大罪人、木原マサキ!」
耐爬「だが、その木原はすでに鬼籍に入ったことが明らかになった」
葎「奴が、死んだ!?」
アエン「のたれ死んだか」
タウ「ふさわしい」
耐爬「残された使命は、天のゼオライマーの奪還あるのみ!」
幽羅帝「鉄甲龍が誇る八卦衆が強者どもよ! 誰ぞ使命を果たす者はないか?」
祗鎗「その役目、山のバーストンが!」
アエン「いいえ。火のブライストと──」
タウ「水のガロウィンに」
2人「賜りたく存じます」
ロクフェル「我が地のディノディロスにかからば、天のゼオライマーも敵ではありません!」
耐爬「鉄甲龍の初勝利は、風のランスターがもたらしましょう」
葎「木原が造りしゼオライマー、完膚なきまでに破壊せよとの仰せならば、月のローズセラヴィーが必ず」
幽羅帝「塞臥はどうか?」
塞臥「(いかずち)のオムザックは未だ未完成なれど、今のままでも十分に他の八卦ロボを凌駕いたしましょう」
ルラーン「オムザックは未完成の物、その力は未知数にして他との比較は……」
幽羅帝「──風のランスター。ゼオライマーは現在、日本政府の管理下にある。奪還、あるいは破壊を命じよう」
耐爬「はっ!」

幽羅帝が、八卦衆のもとを去る。

塞臥「冷たいお方よ。わざわざ死ぬかもしれぬ戦に、己が愛しき人を選ぶとは」
アエン・タウ「ククク……」
葎「できれば、私まで廻して頂きたいものだな、耐爬殿」
耐爬「できぬ相談だ」

耐爬も去る。

ロクフェル「ご寵愛を受けていると、驕りおって!」
祗鎗「幽羅帝のお言葉には逆らえまいよ」
アエン「だが相手が──」
タウ「噂のゼオライマーか」


マサトは、どこかの独房に閉じ込められている。

マサト「出してくれ! なんで、僕がこんな…… 出せぇ!」

扉の窓が開き、マサトを捕えた男の1人・沖 (いさお)と、マサトの両親の姿が見える。

マサト「父さん、母さん…… どうして、ここに?」

父が手にした鞄を開くと、中には大量の札束が詰まっている。

マサト「僕を…… 売った!?」
父「馬鹿を言うな。これは養育料さ。今日までお前を預かって育て上げた礼金を、やっと貰ったんだ」
マサト「嘘だぁ!!」
父「元から俺たちは他人なんだ。それがまた、他人に戻っただけなんだよ」
マサト「嘘だ…… 嘘だ……」

両親が独房の前から去る。

マサト「父さん…… 母さん…… 母さぁぁ──ん!!」
沖「満足したかい?」
マサト「僕が貰われた子だったとして、なんでこんなところに入れられなくちゃいけないんだぁ!?」
沖「お前── 人を殺せないだろう?」
マサト「え……?」
沖「それが理由だ」

沖の隣に、美久もいる。

マサト「あの子!?」

窓が閉ざされる。

マサト「出せぇ! 出してくれぇ!! 出せよぉ!! 出して……くれよ…… 何でもするから、ここから出してくれぇ!! 出せぇ!! なんでだぁ!! なんでなんだよぉぉ!!」

何日かが過ぎてゆく。

マサト「出してください…… 何でもします…… 何でも…… 秋津マサト、1984年3月6日生まれ、本籍、静岡県富士第3区2-8、父・秋津シゲハル、母・秋津タキコの長男として…… う、うぅっ、長男として、預けられる……」

粗末な食事が出されるが、マサトはそれを壁に叩きつける。

マサト「うわああぁぁ──っっ!!」

美久「大丈夫なの? 本当に」
沖「あれで狂えるぐらいの奴なら、幸せですよ。これからのことを思えばね」

マサト「ぼ、僕は…… 秋津……マ…… 違う! 秋津…… 秋津……マ……」


鉄甲龍要塞。幽羅帝の部屋に、耐爬が招かれている。

耐爬「お気持ちは、わかっているつもりです。鉄甲龍の長を愛するに足る男かどうか、身を持って証明せよと仰るのですね? 私は必ずや、使命を全ういたします。ただ一言『そうだ』と、この身を愛するからこそ出撃を命ずるのだと、仰ってください」
幽羅帝「……思い上がるでない! 誰に申しておるつもりじゃ!?」
耐爬「ゆ、幽羅帝……?」
幽羅帝「八卦衆は我が手足。我が命に従っておれば良い」
耐爬「……はい」

耐爬が去る。

幽羅帝「お前たちも」

幽羅帝に仕える侍女たちも去る。

耐爬 (ご覧あれ。鉄甲龍が八卦衆が内、最高の戦士は誰かを、きっと証明してみせる──)

八卦衆の巨大ロボットである八卦ロボの1体、風のランスターに耐爬が乗り込む。
侍女たちを退かせた後の幽羅帝は、1人となった部屋で泣き崩れる。

幽羅帝「私は鉄甲龍の皇帝…… あなただけに『生きて帰って』とは、言えなかった…… あなただけに『行くな』とは…… 耐爬!!」

耐爬「風のランスター、参る!」


マサトの独房の扉が開き、沖が現れる。

沖「秋津くん。ドライブにでも行こうか」


沖と2人の男に囲まれ、マサトは車に乗せられ、どこかへ運ばれてゆく。
顔はすっかり痩せ細り、両手は手錠で封じられている。

沖「どうだい? ダイエットにはなったようだな」
マサト「……」
沖「少しは骨身に応えたか。だが今から行くところには──」
マサト「……どこへ連れて行く?」
沖「言えないね」
マサト「ここは、どの辺だい?」
男A「あまり話すな」

マサトがいきなり、その男を殴りつけ、手錠の鎖で首を絞め上げる。

男B「貴様ぁ!」
マサト「気をつけた方がいい。今なら、僕は何人でも殺せそうな気分だ。お望み通りになぁ!」

マサトが扉を蹴破る。

沖「秋津くん、逃げられるつもりかね?」

マサトは、首を絞めていた男を放り投げ、車内の別の男に叩きつけ、自らは車外へ飛び降りる。

別の男「待てぇ!」

別の男が銃で発砲。
手錠の鎖が千切れ、マサトはそのまま逃走する。


マサト「逃げられたんだろうか?」

彼方に富士山が見え、周囲はうっそうとした木々が茂っている。

マサト「ここは…… 青木ヶ原の、樹海!? 出口は……」

突然、足元に穴が開き、マサトは地中へと落ちてゆく。

マサト「わ、わぁぁ──っ!?」

次第に穴の底が見えてくる。

マサト「ぶ、ぶつかる!?」

真下にある球体から光があふれ、マサトの体は宙に浮く。
そこは機械に覆われ、人工物に囲まれた空間。

マサト「機械!?」
美久「ようこそ、ラスト・ガーディアンへ。秋津マサトくん」

頭上の窓から、沖と美久の姿が見える。

マサト「お前たち!? 一体、ここは!? 僕をどうするんだ!?」
美久「あなたはゼオライマーのパイロットとして招かれたの」
マサト「ゼオライマー? どこかで…… どこかで聞いた言葉だ」
美久「見てごらんなさい、ゼオライマーを」

照明が灯り、3つの巨大な機械のパーツが姿を現す。

マサト「あれが、ゼオライマー……? 僕がパイロットだって!?」
沖「君は、そのために生れてきたのだ」


耐爬の駆るランスターは、沖らの擁する秘密基地、富士の樹海のラスト・ガーディアンの上空へと辿り着いている。

耐爬「日本政府め、いつの間にこのような基地を。──風よ!!」

ランスターの肩からの竜巻が木々を裂き、森を砕く。

美久「ハウ・ドラゴン!」
マサト「ハウ……ドラゴン?」
美久「時間がない! マサトくん、私を信じて!」
マサト「そんなこと言ってもぉ!?」

眼下の機械から光球が膨れ上がり、マサトを包み込む。

マサト「うわぁぁっ!?」
美久「ゼオライマーが、マサトくんに感応したわ」
沖「ついに、目覚めの時は来た!」

マサトを包んだ光球が、巨大な機械の中へと吸い込まれる。
気がつくとマサトは、周囲を機械に囲まれた操縦席の中にいる。

マサト「こ、ここは?」
美久「マサトくん!」
マサト「その声…… どこにいるんだ!?」
美久「私たちは今、巨大ロボットの中にいるの」

操縦席の画面の中、3つのパーツが合体し、巨大ロボットの姿となる。

マサト「何だ!?」
美久「2人でゼオライマーを操縦するのよ!」
マサト「な、何のために!? 第一、僕にそんなことが……」
美久「行くわよ!」


ランスターが地上に降り立ち、地下を探知する。

耐爬「フン、そこか。モグラめ」

ランスターのさらなる攻撃で、大地が斬り裂かれる。
そのとき。砕かれた大地から光の柱が立ち昇り、巨大ロボット・ゼオライマーが出現する。

耐爬「天の…… ゼオライマー!」

マサトの正面のスクリーンに、ランスターの姿が見える。

マサト「ロ、ロボット!?」
美久「ハウ・ドラゴンの八卦ロボよ。私たちの敵よ!」
マサト「敵? あれと戦えっていうのかい!? 無茶だ!」
美久「できるわ! 今の君なら」
マサト「なぜだぁ!?」

耐爬「15年かけて、完璧に造られたこの風のランスター、裏切り者のガラクタとは違う! 行け! ボーン・フーン!!」

ランスターの両肩からの竜巻が、ゼオライマーを襲う。
マサトはとっさに操縦桿を引き、ゼオライマーは攻撃に持ち堪える。

マサト「なぜだ? 僕はこれを操縦したことがある。いつか……」
美久「いいわ! その調子で!」
マサト (そんなはず、ないのに……?)

耐爬「動くのか!? ブレイウェイン!」

ランスターの放つ風が刃となり、大地を裂く。
またもマサトは無意識の操縦し、攻撃を避ける。

耐爬「おのれぇ!」


沖は誰かと、電話で話している。

沖「えぇ、もちろん自衛隊の出動の必要はありません。独房に監禁して、殺意と戦意を高めた甲斐がありましたよ。とても中学生とは思えない戦闘バランスです! (優しさなど、戦いには邪魔なのだ)」


ゼオライマーとランスターの戦いは、格闘戦へと移行している。

耐爬「何というパワー…… これが天の力ということか! 負けるわけにはいかん。退くわけにはいかん。我が愛のために、この戦、負けられん! デッド・ロン・フーン!!」

ランスターのひときわ強力な風の攻撃が、無数の龍のようにゼオライマーに炸裂する。

耐爬「このまま機能を停止して、運び去ってくれるわ」

戦いの中、マサトの表情が次第に険しく変貌してゆく。

美久「マサトくん、マサトくん!」
マサト「勝てる……!」

ランスターがゼオライマーを目がけて、突進してくる。

ゼオライマーが両手を天に掲げるや、膨大な光があふれ、ランスターを飲み込む。
ランスターの装甲が次々に砕かれる。

耐爬「負けられない! この戦だけはぁぁ!!」

ランスターが全身を砕かれながら、なおもゼオライマーに突進する。
その手がゼオライマーに届く寸前、その機体が木端微塵に砕け散り、大爆発──!

沖「成功だ! 我が国は最強の兵器を手に入れた!」

マサト「ククッ! 勝ったぞ、勝ったぁ! ……はっ!? なぜだ!? なぜ僕は、これに乗っているんだ!?」
美久「マサトくん、ケガは!?」
マサト「お、教えてくれ…… ゼオライマーとは……? ゼオライマーとは何だあぁぁ──っ!?」


己の意思とは関りなく、
秋津マサトは狂気の戦いに身を投じた。

果たして、ゼオライマーとは?
美少女・美久とは?
そして、ゼオライマーとマサトを結ぶ因縁とは何か?


ゼオライマーの出現、耐爬の敗北の報せが、鉄甲龍に届く。

ルラーン「まさか、あやつがあれほどの力を……」
祗鎗「次こそ私に、出撃の命を!」
ロクフェル「どうか、このロクフェルに!」
葎「奴の首は、私が!」
幽羅帝「皇帝として選ばれるまでは、我も八卦衆が1人であった。天のゼオライマーは我が乗機となるはずであった…… 我が参る!」


(続く)

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最終更新:2019年05月14日 17:49