地球製の空飛ぶ円盤、
TFOが空を行く。
操縦しているのは『
マジンガーZ』の主人公、兜 甲児。
甲児「あと30分で、富士山が見えるはずだ」
目の前を、別の空飛ぶ円盤、UFOが飛来する。
甲児「おっ…… UFO!? 間違いない。追跡するぞ、TFO!」
しかしそのUFOは、周囲を自在に飛びかい、TFOはその動きについて行けない。
甲児「えぇい、どうしたんだ! これ以上、出ねぇのかよ!」
やがてUFOは、彼方へ飛び去ってしまう。
甲児「くそぉ! だが見たぜ、UFO。宇宙人は、この地球に来ているんだ」
眼の前に、富士山が見えてくる。
甲児「こんにちは、マウント・フジ! 思い出すなぁ……」
かつてマジンガーZを駆って戦っていた時の思い出──
甲児「いけねぇ、今の俺はマジンガーZの操縦者じゃねぇ。地球人の手で初めて作られた空飛ぶ円盤、TFOのパイロットなんだ」
宇宙の様々な現象を調査する民間施設、宇宙科学研究所。
所長の宇門源蔵と、職員たち。
職員「所長! 西南西20キロメートルの地点に、レーダー反応があります」
宇門「恐らく、兜くんのTFOだろう。よし、誘導してやれ」
職員「はっ。こちら、宇宙科学研究所。TFO、応答願います」
甲児「こちら、TFO。宇宙科学研究所、どうぞ」
職員「着陸地点は、スカイポイント035を北進、15.7キロの地点です。どうぞ」
甲児「了解」
シラカバ牧場。
主人公の宇門大介のもとに、牧葉ひかる・吾郎の姉弟が、子馬を連れて来る。
吾郎「おぉい、大介さぁん! 見て、こんなに大きくなったよ」
大介「おぉ。こりゃ、素晴しい馬になるぞ」
ひかる「お父さんは?」
ひかるたちの父、牧場主の牧場団兵衛は、塔の上で天体望遠鏡で空を見つめている。
ひかる「呆れた、また上がってる。お父さぁん! そんなとこでさぼってないで、大介さんを手伝ったらどうなのよ!?」
団兵衛「さぼってるとは何じゃい!? わしゃ、「宇宙人と仲良くなる会」の会長なんだぞ。UFOを追跡することも、大事な仕事の一つじゃ!」
ひかる「ふん! 宇宙人だの円盤だの、夢みたいなこと言っちゃってさ。そんな暇があったら、馬小屋でも掃除すりゃいいんだわ!」
団兵衛「あ~あ、女子と子供は 養いがたしとはよく言ったもんだ、まったく! 夢が無いんじゃよ、夢が。だが、わしは違うぞ! 壮大な宇宙にロマンを賭けるぞよ! 何としても、UFOを── ありゃりゃ!?」
望遠鏡のレンズの中に、甲児のTFOが見える。
団兵衛「やっはは──っ! 来た来た! カモン、UFO! こちら団兵衛! カモン、UFO! カモン、カモン」
TFOが次第に接近して来る。
団兵衛「あ~っ、本当に来たぞぉ! 来たぞぉ、円盤だ!」
吾郎「えぇっ!」
シラカバ牧場のそばに、TFOが着陸する。
吾郎「そ、空飛ぶ円盤が、降りた!」
団兵衛「へへっ、大変だ! 急いで着替えて来なくちゃ!」
団兵衛は、西部劇さながらのカウボーイ衣装に着替えて来る。
ひかる「近づかない方がいいわよ」
団兵衛「大丈夫。わしゃ、宇宙語が話せるんじゃよ。ハリメンタリトントンチン? タリメー・タリトントン・ノータリントン?」
TFOから、甲児が降りて来る。
団兵衛「やや、タコに似とらんぞ。こりゃ、火星人じゃないな」
吾郎「宇宙人は化けるのが上手いんだから。ほら、よくテレビでやってるでしょ?」
団兵衛「あ、なるほど。地球人そっくりに化けたってわけか」
甲児「何言ってるんですか。僕はれっきとした日本人ですよ」
団兵衛「こりゃまた、日本語も達者ときよる。感心な宇宙人じゃ!」
甲児「困っちゃうなぁ、まったく」
宇門博士が、職員たちを連れてやって来る。
宇門「やぁ。太平洋をはるばる、ご苦労だったね」
甲児「博士、こちらこそ、よろしくお願いします。兜甲児です」
宇門「こちらこそ。紹介しよう。うちの職員で林くん、山田くん、大井くんだ。こちら、兜甲児くん」
甲児「よろしく」
団兵衛「宇門先生? こりゃ、どういうことになっとるんじゃ? 宇宙人じゃないのかね、この男?」
宇門「ははは! 兜くんはアメリカ航空宇宙局のUFOセンターで、円盤の研究に打ち込んでいたんです。このTFOも、兜くんの設計で出来たものなんです」
団兵衛「はれぇ~!」
宇門「こちら、牧場団兵衛だ。この牧場を、私と共同経営でやってもらっているんだ。こちらが、お嬢さんのひかるさん。そして、吾郎くんだ」
ひかるたち「よろしく」
団兵衛「わしの本職は、牧場の経営ではない。わしの本職は、宇宙人と仲良くなる会の会長だな」
甲児「えっ、宇宙人と仲良くなる会?」
団兵衛「さよう」
ひかる「私、牧場ひかるです。本当に宇宙人かと思っちゃったわ」
吾郎「僕もさ」
甲児「宇宙人の円盤に見えただなんて、本当に嬉しいよ」
団兵衛「百聞は一見にしかずというが、まことにもって不可思議なことじゃな。こんなものが──」
宇門「そうだ、忘れておった。おぉい、大介! ちょっと来なさい」
大介が牧場仕事の手を休め、やって来る。
宇門「私の息子、大介だ。こちら、兜甲児くん」
甲児「兜 甲児です」
大介「よろしく」
甲児「日本にUFOが頻々に出現してると聞きましてね、その正体を見極めにやって来たんです」
大介「仕事が残っているもんで」
大介は仕事に戻ろうとする。
宇門「大介! 少し、話して行ったらどうだ?」
団兵衛「そうじゃよ。少しはわしみたいに、さぼれや」
大介「冬は駆け足でやって来ます。待ってはくれませんからね」
甲児 (まったく、気にくわねぇ野郎だ。俺の円盤を見ようともしねぇ)
宇門博士らは甲児を、宇宙科学研究所に招く。
宇門「あれがこの研究所自慢の、宇宙望遠鏡だ」
研究所内ではスクリーンに、甲児の目撃した円盤が映っている。
甲児「おっ? 俺が追いかけた円盤だ。所長、円盤です」
宇門「うむ……」
甲児「TFOで、追ってみましょうか?」
宇門「それは、やめた方がいい」
甲児「どうしてですか!? 所長は、もしや宇宙人の存在を信じないのでは?」
宇門「ん? いや、そういうわけでは」
甲児「所長! NASAではですね、すでに認めているんですよ!? 現に一般人でも、頻繁にUFOを発見しているじゃありませんか」
宇門「そうだったな。悪い宇宙人でなければ良いが……」
甲児「彼らは、地球と交易をしたいんですよ。そのために、盛んに偵察旅行をしているんです」
宇門「そうであってくれると、いいんだがね」
甲児「地球人もそろそろ、宇宙との交易を考えるべきです。このままでは資源は減る一方だし、絶対に必要だと思うんです」
宇門「甲児くん。君がこの研究所を選んだ理由がわかったよ。君は江戸幕府が鎖国を解いたように、地球の鎖国を解きたいんだね?」
甲児「ははっ、そんな風に言われちゃうと照れちゃうけど、僕の夢なんです!」
宇門「いや、素晴しい夢だよ」
夕暮れのシラカバ牧場に、甲児がやって来る。
一同は馬に乗って、牛たちを追っている。
団兵衛が投げ縄で、牛の1頭を捕える。
甲児「へぇ~! おじさん、投げ縄うまいんだね!」
ひかる「お父さんは、テキサスでカウボーイをやってたんですって、若い頃」
甲児「へぇ~、見かけによらないもんだね」
団兵衛「何言っとる!? これでも当時は、抜き打ちのダンと異名を取ったもんだよ」
甲児「よし。じゃあ僕もおじさんに挑戦して、ロデオと洒落こもうか!」
団兵衛「そりゃいい! 大介くん、馬を1頭頼むぞ!」
甲児「一番の荒馬を連れてくれ!」
団兵衛「おいおい、大丈夫かね?」
甲児「へっちゃら、へっちゃら!」
大介が、いかにも荒っぽそうな馬を連れて来る。
甲児「うっひょお、こりゃいいや!」
吾郎「僕、知~らないっと……」
団兵衛「ありゃりゃ、あいつはシラカバ牧場一の暴れ馬だぞ」
甲児「任しておけって」
甲児「大丈夫かしら、甲児さん?」
甲児「俺が乗るからって、そう興奮しなさんなって、それっ!」
甲児が馬に乗るが、たちまち馬に振り落とされ、尻もちをつく。
団兵衛「大丈夫かね、甲児くん!?」
甲児「へへっ。なぁに、これくらい…… よぉし!」
甲児が再び、馬に飛び乗る。馬は荒々しく走り始め、甲児が必死にしがみつく。
しかし馬は、またもや甲児を振り降ろし、ひかるたちの方へ走って行く。
ひかる「きゃあっ!」
大介「危ない!」
大介が馬に飛び乗り、馬を鎮め、ひかるは難を逃れる。
ひかる「ありがとう、大介さん」
吾郎「いやぁ~、凄いなぁ、大介さんって」
甲児「畜生!」
夜の宇宙科学研究所。
赤く染まった月を、大介、甲児、宇門博士らが見ている。
大介「赤い月…… ベガ星軍の出陣の狼煙だ。こりゃ、国防軍に連絡した方がいい。奴らは必ず攻めて来る」
甲児「攻めて来る?」
大介「そう。地球を侵略するに違いない」
甲児「侵略? どうしてそんなことが言えるんだ?」
大介「赤い月は出陣の狼煙だからだ」
甲児「何を寝ぼけたことを言ってるんだよ!? そんなものは、光線の具合でどうにでもなるだろ!? ウサギの餅つきと同じことじゃないか!」
大介「この際、君は出しゃばらん方がいいな。UFOを甘く見ると、痛い目に遭うぞ」
甲児「何だとぉ!?」
甲児が、大介の胸倉を掴みあげる。
大介「ふん、今度はボクシングで挑戦かい?」
甲児「……」
大介が甲児の腕を払い、去って行く。
宇門「大介、どこへ行くんだ?」
甲児 (なんて生意気な奴だ!)
大介は夜の牧場の片隅で、ギターを弾いている。
最初は穏やかだった音色が、赤い月を見つめている内に、次第に荒々しくなってゆく。
大介 (乗りたくない…… もう、あんなものに乗りたくない!)
やがて弦が切れ、ギターを投げ捨てる。
大介 (もう乗りたくない…… 乗りたくないんだぁ!)
牧場の草原を駆け出す。
大介「(俺にはこの、力強い大地がある! 美しい緑がある! 乗りたくない、乗りたくない! あんなものに二度と乗りたくない!) ……乗りたくない!!」
(宇門『お前はもう、私の息子だ。宇門大介、大介だ!』)
大介「駄目だ! やっぱり俺は…… 俺は!」
宇宙空間。
宇宙からの侵略者であるベガ星連合軍の超大型円盤マザーバーン。
攻撃隊長のブラッキーが兵士たちと共に、TFOのデータを分析している。
兵士「円盤としては、極めて初歩的なものです。恐るるに足りません」
ブラッキー「よし! 明朝を期して、一斉に地球侵略を開始する」
翌朝、シラカバ牧場。
ひかるは牛の乳搾り、大介は、馬に餌をやっている。
吾郎「ひかる姉ちゃん、いつもうまいねぇ!」
ひかる「はい、次」
大介「さぁ、食べたら、思いっきり走ろうな」
団兵衛「UFOだぁ──!! UFOが来たぞ──! 今度こそ本物だぞぉ!」
団兵衛が見たものは、甲児が遭遇した円盤。
それはベガ星連合軍の戦闘用小型円盤、ミニフォーの編隊である。
団兵衛「へへっ、ウェルカム・フレンド、降りて来い」
甲児 (今日こそ正体を突き止めてやるぞ)
甲児がTFOに乗り込む。
大介「お、おい!? 君の手で負える相手ではない!」
甲児「命令するのか!?」
大介「やめろ! 君のためを思って言ってるんだ!」
甲児「偉そうな口をきくな! こんなところで馬の世話をする暇があったら、宇門博士の手伝いでもしたらどうだい! 息子だろ、あんた!?」
大介「……行くのか? どうしても」
甲児「行くなと言われりゃ、行きたくなる性分でね」
甲児のTFOが飛び立つ。
空を舞うミニフォーの群れの中に、TFOが向かってゆく。
甲児「来てくれたな。僕の名前は兜甲児だ! 君たちはどこの星から来たんだ? 僕の言葉がわかるか? わかったら答えてくれ!」
ミニフォーがTFOを目がけ、光線を発射する。
甲児「あぁっ! 何をするんだ!? 僕は敵ではない! このTFOには、武器は積んでないんだ! 信じてくれ!」
甲児はTFOを操って攻撃をかわしていたものの、操縦席を被弾し、額から血が流れ出す。
甲児「し、信じてくれ! 話せばわかるはずだ!」
TFOはさらに被弾し、墜落してゆく。
甲児「何てことをしやがるんだ、こん畜生!」
ひかる「甲児さんの円盤が!」
大介「だから言ったこっちゃない!」
大介がバイクに跨り、駆け出す。
大介「待ってろよ! 俺の気持ちも知らないで」
大介が、湖に面した丘の上から、バイクごと大ジャンプする。
大介「デューク・フリード!」「グレンダイザー、ゲット・アップ!」
大介が、仮面と戦闘服に身を包んだ姿、デューク・フリードに変身し、湖に飛び込む。
宇宙科学研究所。
所員「所長! 研究所近くに、すごい電磁波が!」
宇門「何!? (もしや)」
地下格納庫で、床を突き破り、UFOと一体化した巨大ロボット・グレンダイザーが出現する。
デューク・フリードがグレンダイザーに乗り込む。そこへ宇門が駆けつける。
宇門 (大介……)
デューク「グレンダイザー・ゴ──!」
グレンダイザーが宇宙科学研究所を発進し、ダムに偽装された発進口から飛び立つ。
ミニフォー編隊の攻撃を受け続けるTFOを、デュークが救いに向かう。
デューク「スピンソーサー!」「スピンドリル!」
グレンダイザーがミニフォーらを撃ち落とす。
マザーバーンのブラッキー隊長たちも、グレンダイザーの出撃を察知する。
ブラッキー「むっ! あれはまさしく、グレンダイザー。するとデューク・フリードは、この地球に来ていたのか!?」
兵士「攻撃しますか?」
ブラッキー「よし、円盤獣を出撃させろ!」
マザーバーンから戦闘ロボット、円盤獣ギルギルが出撃する。
ギルギルはグレンダイザーには立ち向かわず、別の方向へ飛んでいく。
デューク「逃げるのか、円盤獣!」「メルトシャワー!」
さらに群がるミニフォーを、グレンダイザーが撃ち落とす。
ギルギルが、TFOの方へと向かっていく。
甲児「くそぉ、しつこい円盤だ」
デューク「円盤獣め、TFOを人質にするつもりだな。シュート・イン!」「ダイザー・ゴー!」
グレンダイザーの円盤部分であるスペイザーから、本体の巨大ロボット・グレンダイザーが分離し、ギルギルに立ち向かう。
しかしTFOは、ギルギルに捕えられてしまう。
デューク「TFO!?」
グレンダイザーがギルギルを蹴飛ばし、TFOを救う。
デューク「しっかりしろ、甲児くん! しっかりするんだ!」
甲児「う、うぅっ……」
甲児は虚ろな意識の中、グレンダイザーを見上げる。
グレンダイザーのコクピットの中に、デューク・フリードの仮面に覆われた瞳が見える。
デューク「甲児くん、甲児くん!」
ギルギルが攻撃を加える。
グレンダイザーはTFOを地上に降ろし、反撃にかかる。
デューク「ハンドビーム!」「反重力ストーム!」
ギルギルは、円盤に怪獣にと変形し、グレンダイザーの攻撃をかわして翻弄する。
デューク「ショルダーブーメラン!」「スクリュークラッシャー!」「スペースサンダー!!」
グレンダイザーの反撃が決まり、ギルギルの四肢が斬り裂かれる。
デューク「ダブルハーケン!」
そしてギルギルの胴が真っ二つに斬り裂かれる。
しかしギルギルは、頭部だけでグレンダイザーに飛びかかって来る。
デューク「ダイザーパンチ!」
グレンダイザーの鉄拳を食らい、ギルギルが大爆発──!
デューク「ダイザージャンプ!」「スペイザー・クロス!」「シュートアウト!」
グレンダイザーが再びスペイザーと合体し、空へと飛び去る。
ブラッキー「よし。円盤獣ギルギルとの戦いで収めたグレンダイザーの電子写真を土産に、まず退却だ」
兵士「はっ!」
後日のシラカバ牧場。
牧場一同のもとに、甲児がやって来る。
左腕が痛々しく、包帯で固められている。
団兵衛「よよっ。来たな、甲児くん」
甲児「おはよう!」
吾郎「おはよう」
ひかる「おはよう。もういいの?」
甲児「あぁ。でも、ひどい目に遭ったぜ」
ひかる「大介さんの言うこと聞かないで、飛び出すからよ」
甲児「大介さん?」
大介は、愛車のバギーを洗車している。
甲児「大介さん。あんた、もしや……」
大介「もしや、何だい?」
大介の眼差しに、グレンダイザー内にいたデューク・フリードの眼差しがだぶる。
甲児「あんた、もしや……」
大介「ははっ。まだ目が覚めないらしいな、甲児くん」
甲児 (宇門大介の目は、あのときの、あのときの……)
大介「いつまで立ってんだ。どいてくれよ」
大介が、ベガ星連合軍との戦いへの決意を胸に秘め、バギーで駆け去ってゆく。
最終更新:2019年05月23日 06:55