特級厨師試験も大詰めにさしかかり、
受験者も、マオ、フェイ、ハンの3人に絞られた。
そして受験者自身が他の受験者の料理を評価する相互採点形式によって出された結果は――――
レイカ「ハン十点!!マオ九点!!フェイ九点!!」
ハン(オ、オレが首位・・・・!!)
レイカ「ハンよ!!前へ出よ!!」
ハンがレイカの方へ踏み出した。
レイカ「『東江館』のハン・・・・・!!そなたの‘あんかけ牛肉麺‘――――実に見事であった・・・・!!‘麺にして麺にあらず‘の課題に応え、なおかつ単純明快な発想の中に新しい味の真理を見い出し――――予備試験、本試験、いずれにおいても非のうちどころなき実力は証明された」
ハン(つ・・・・ついに・・・ついにオレも・・・・!!)
レイカ「ハンよ・・・これまでの試験御苦労であった。帰り仕度をするがよい」
フェイ「・・・・・」
マオ「!?」
ハン「お、おいどういうことだレイカ師傅。試験合格の手続きは・・・・・」
レイカ「聞こえなかったのか。その方は残念ながら特級厨師試験不合格だ。速やかに退散せよ」
ハン「ちょっと待て・・・・!!オレはこの二人に勝ったんだぞ・・・・!!説明しろ何故不合格なんだ!!」
レイカ「愚か者め!!‘相互採点制‘が採用されている理由を頭を冷やして考えよ!!」
ハン「!?」
レイカ「・・・・・点数の内訳を見るがよい」
ハン「!?」
点数の内訳は、
ハン―――マオから五点、フェイから五点。
マオ―――ハンから一点、フェイから八点。
フェイ―――ハンから一点、フェイから八点。
となっていた。
レイカ「マオもフェイもハンの料理には五点入れている。しかるにハン、おまえは二人の料理に一点ずつしか入れておらん」
フェイ(オレの料理が一点・・・・!?)
マオ(僕の料理が一点・・・・・!?)
レイカ「即ちおまえは自らの合格という利害に目がくらみ、二人に対し明らかに判断を誤った不当に低い点数を下したのだ・・・他人の料理を正当に評価できない者に特級厨師の資格は無い。四年後に出直して参れ」
ハン「・・・!!」
ハンが自分の包丁を地面に叩きつけた。
マオ「!!」
ハン「うおおおおお」
「おおおおおおおお」
空に吠えた後、ハンは試験場から去って行った。
ハン「・・・・・」
(四年後は、必ず・・・・!!)
そして、マオとフェイの2人が残された。
レイカ「よくぞここまで勝ち残った。そなたたち二人に最後の課題を出そう・・・・・!!」
マオ(最後の課題・・・・?)
レイカ「そなたたちが他人の料理を冷静に判断できることは分かった・・・最後に自分の料理を自己採点してもらおう」
マオ「!!」(自分の料理を・・・・!!)
メイリィ(自分の料理の採点・・・・!?最後の最後にいちばん難しい課題じゃない・・・・!!)
「マ、マオ・・・・・!!」
フェイ「・・・・・・」
マオ「・・・・・」
レイカ「まずはマオ!!評点を十点満点で発表せよ!!」
マオ「十点です!!」
メイリィ「!?」
(マオ大丈夫なの!?満点なんかつけて・・・・!!)
マオ「確かに僕はまだ料理人として半人前かもしれない。でも自分の舌と技術と心の限界で作り最高と信じて出す料理に――――料理人として満点以外なんてつけられません!!」
レイカ「フェイよ・・・その方はいかに・・・・!?」
フェイ「全く同じだ・・・・・!!オレの料理も十点・・!!そして言いたいことは全て彼に言い尽くされてしまった・・・さすがは・・・オレの見込んだ好敵手だ・・・」
レイカ「・・・よろしい・・・それでは今回の特級厨師試験合格者を発表する」
「フェイ、そしてマオ――――二人の麺―――私の見る限り全くの互角、特級厨師として充分の腕と見なす。また最後の問いは料理人として何より大切な‘誇り‘を試すものであったが、二人とも見事にそれに応えた。よって今回は――――そなたたち二人両名とも合格とする」
マオは、大いに喜んだ。
メイリィ「マオ―――――!!!」
マオ「やったよ!!やったよメイリィ。これで母さんに一歩近づいたんだ!!」
フェイ「・・・・」
(不思議なヤツだ・・・どう見たってオレより二歳も年下の汗くさいただのガキなのに・・・あいつも・・・そしてあいつの料理も――――人をひきつけてやまない・・・
(それはきっとあいつがすることなすこと全部本気で――――料理だって手先で作ってるんじゃなくて――――‘魂‘で作ってるからだ!!だから―――今決着がついたばかりなのに・・・あんなに冷めてたオレの中にこんなに熱い闘志が・・・)
マオ「フェイさん!!ねぇフェイさん!!さっき言ってた‘母さんに恩義‘ってどういうことなの!?僕のお母さんをどうして知ってるの?」
フェイ「・・・・・・・そうだな。とりあえず・・・オレはおまえと同門にあたるとだけ教えておこう」
マオ「え!?ど、どういうイミ!?」
フェイ「フン・・・詳しく知りたければ、改めて味勝負をしてオレに勝つことだな」
マオ「ええッ!?そ、そんな――――!!」
レイカ(・・・我が好敵手、亡き‘仙女‘パイよ・・・未だ若輩とはいえ見事な弟子を二人も持ったものだ・・広州のフェイ、四川のマオ――――パイ門下の宿星二人―――)
マオ「おしえてよ-」
フェイ「だめだ!!」
レイカ(彼らがしのぎを削るとき、この国の料理はまた大きく一歩前進するかもしれぬ・・・)
「よいか!!フェイ!!マオ!!‘特級厨師‘の資格は放っておけばただの飾りにすぎぬ。そなたたちにとっては試験突破など通過点にすぎぬ。さらなる躍進のためたゆまず精進するがよい・・・・・!!」
マオ「・・・・フェイさん、今回は同点だったけど――――、次は負けないよ!!」
フェイ「その言葉を待ってたんだ」
マオ「好・・・!!好!!」
(新しい目標ができたよ!!フェイさんよりおいしくて人を感動させる料理を作ってみせるよ!!)
メイリィ「マオ!!みんなが・・・!!」
マオ「!!」
チヨウユ、カリン、ルオウ大師たちが試験場に来ていた。
ルオウ「ふふ・・・ヤツめやりおったわい・・・!!」
マオとメイリィがカリン達の方に駆け寄っていった。
(つづく)
最終更新:2019年06月19日 22:06