ガールズ&パンツァー 戦車道ノススメの第1話

MISSION01 敢闘戦車・Ⅳ号を強化します!

優花里「西住殿~!ただいま戻りました!」
沙織「自動車部から工具借りてきたよ~!」
華「それでⅣ号の調子はいかがでしょうか?」
麻子「だいぶ損傷していたが・・・」

みほ「うん」
Ⅳ号のハッチから、みほが出てきた。
みほ「転輪もエンジンも問題ないみたい。私達のⅣ号は元気だよ!」
優花里「ヒャッホオッ!さすがはⅣ号です!」
沙織「ホッとしたね~」
麻子「・・・安心したら眠くなった」
華「それではⅣ号の整備を始めましょうか」


みほ達がⅣ号の整備をする。
華「まるで初めて出会った頃のようにボロボロですね・・・」
優花里「それはそうですよ」
激闘の連続だった第63回戦車道全国大会に・・・圧倒的な実力差の大学選抜チームとの一戦・・・」
みほ「このⅣ号と一緒にいくつもの激戦をくぐり抜けてきたもん。私たちにとってかけがえのない存在だよ」
沙織「うんうん♪例えるなら頼れるバディだよね!」
麻子「ベットだ。よく眠れる」
華「砲撃のじんじんする感覚は私に足りない何かです」
みほ「バディとベットで・・・じんじん?」
沙織「み・・・みほりん!組み合わせちゃダメ!」
みほ「あ!私にとってのボコみたいな存在ってことだよね?」
沙織「・・・・・」
優花里「そんなわけで大切なⅣ号を私たちでピカピカにしてあげましょう!自動車部の皆さんはほかの戦車の修理で連日フル稼働ですしね!」

沙織「ふう!最初より装甲が増えたぶん洗車も大変だねー」
麻子「だいぶ傷ついてチームマークが剥がれてきてるな」
「あんこうをリペイントしてみた」
麻子がリペイントしたあんこうのチームマークは、リアルなものだった。
沙織「怖っ!!」

華「でも追加装甲のおかげでライバル校の威力の高い砲撃を凌げたんですよね。さらにⅣ号を強くすることはできるのですか?」
優花里「シュルツェンはゾーリンゲンの刃物業者が制作した優秀な装甲ですが、やたら増しても機動力が落ちますし・・・これ以上強くするのは無理かもしれません。Ⅳ号は初期のA型からJ型まで改良を続けましたが、実質的な最終仕様は私たちも乗ってるこのH型なんです。H型の次のJ型の改良点は補助エンジンの廃止など仕様の簡略化が主でしたし。I型は規格倒れみたいです」

A~F型 短い主砲が特徴的
F2-G型 長い主砲で火力強化
H―J型 シュルツェン標準装備

沙織「え~?そんなに種類があったんだ!」
優花里「種類だけでなく生産台数もすごいですよ!派生型を除いても約9000輛も生産されましたから!」
華「大洗女子学園の高等部の生徒数も約9000人ですから・・・生徒の一家に一台、Ⅳ号が行き届きますね!」
みほ「華さんのお母様また卒倒しちゃうよ?」
麻子「おばあも危ないな・・・」
沙織「でも私たちのⅣ号がH型になる前はF2型だっけ?じゃあ最初のⅣ号ってダメな戦車だったの?」
優花里「ふふ・・・それはですね。順を追って説明したほうがよさそうですね」

あんこうチームは資料室に移った。
優花里「私でよかったらⅣ号の歴史教えちゃいますよ!」

優花里「第一次世界大戦の敗戦後、ドイツはベルサイユ条約により軍備を制限されました。しかしトイツは秘密裏にトラクター(牽引車)と称し、試作戦車を開発しました。のちのⅠ号戦車の原型です」
「しかしこのⅠ号戦車、実戦で使える代物でないことは開発段階から明らかでした」

Ⅰ号 7、92mm機関銃搭載
優花里「そこで装甲部隊の創設者であるグデーリアン中佐(当時)は二種類の戦車の開発を提唱しました」
「敵戦車と正面から撃ち合う主力となる「小隊長車」(のちのⅢ号戦車)、強力な砲で火力支援を行う「大隊指揮車」(のちのⅣ号戦車)です」
「Ⅲ号・Ⅳ号の完成までの繋ぎとしてⅡ号戦車も開発されました」

メインⅢ号 37mm砲搭載
サポートⅣ号 75mm砲搭載
ピンチヒッターⅡ号 20mm機関砲搭載

優花里「ちなみにⅢ号よりはⅣ号の開発がスムーズだったので、その影響か大戦開始時には支援のⅣ号が主力のⅢ号に数で勝るという事態に・・・」
「とはいえ当時としてはⅢ号・Ⅳ号ともに優秀な戦車であり、ポーランド侵攻や西方電撃戦では大いに活躍しました。同時並行的にⅣ号戦車の改造計画も進んでおり、ポーランド戦終戦時にはD型が登場しています」
「しかしⅣ号がF型まで進化した頃、ドイツ軍の前に―――とんでもない敵が出現しました」
「ソ連軍の新鋭戦車T-34です!その圧倒的な装甲にⅣ号戦車の砲はまったく効かず、ドイツ陣営は騒然となりました。Ⅲ号よりも強力なⅣ号の砲でさえ力不足だったのです」

優花里「そこで比較的強力なⅣ号戦車を主力にするべくG型の開発が始まりました。事態は急を要したので、Ⅳ号F型に新開発の43口径75ミリ砲が搭載されました」
「そう!それこそがⅣ号F2型!全国大会準決勝での対プラウダ戦を前に私たちが改造した仕様なのです!Ⅳ号は火力ではT-34と渡り合えるようになりました。Ⅳ号は生産数が大幅に上昇して支援戦車から主力戦車となったのです」
「Ⅳ号はG型へと進化し、対ソ戦の序盤から中盤にかけて活躍しました。北アフリカでは対英戦でG型長身砲が最強クラスとして恐れられたほどです」
「しかし各戦線は次第に苦境に陥っていきます。敵の戦車も進化しⅣ号戦車は次第に性能不足に・・・」
「一時、新たな主力戦車Ⅴ号戦車バンターの生産に集中するためにⅣ号戦車の生産を停止する計画も出ましたが」

Ⅴ号 70口径75ミリ砲搭載40トン級

グデーリアン「生産ラインを切り替える余裕はない!」

優花里「グデーリアンの猛反対でⅣ号生産は続けられました」
「結局Ⅳ号戦車は最終発展型のH型まで改良を続けつつ、生産され続けました。Ⅴ号戦車バンダーやⅥ号戦車ティ-ガ-、ティ-ガ-ⅡなどⅣ号戦車より強力な戦車も登場しましたが、Ⅳ号戦車こそが大戦末期まで事実上の主力戦車まであり続けました」


優花里「・・・以上だいぶはしょりましたが、Ⅳ号戦車の歴史でした。ご静聴ありがとうございました!」
「・・・って聞いてませんね!?」

麻子は寝ていて、沙織は携帯を見ていて、
みほはボコの本を、華はドイツ料理の本を読んでいた。
沙織「・・・だって歴史苦手だし、F2について聞きたかっただけなのに・・・」
みほ「あ・・・ごめん、ボコの本が面白くて」
華「頭を使うとお腹が空いてきますね」

沙織「ふ――ん、プラウダ戦のとき、私たちのⅣ号がF2型だったのは歴史通りなんだね」
麻子「よくそんな都合のいい装備が部室棟に眠ってたな」
みほ「・・・でもそれならこの学園内にはまだまだ強力な装備が」


みほ「以前は森の中で38(t)発見したよね・・・」
麻子「あの一番高い所から探してみるか」

みほ「やっぱり・・・戦車の装備なんてなかなか落ちてないね」
沙織「!、あれ・・・戦車の仲間っぽくない?」
「ほら!あのドリル!カッコいい!!」

沙織が見ていたのは、ドリルの付いた船だった。

みほ「・・・あれは船じゃないかな」
優花里「砕氷船ですね。アルキメディアン・スクリューと呼ばれるドリルですね」
沙織「あ!あっちには装甲に使えそうなのが落ちてるよ!」

沙織が今度見付けたのは、複葉機だった。

優花里「あれも装甲でなくグライダーではないでしょうか?」
沙織「うう・・・なんかスゴイの色々落ちてるよね・・・」
華「戦車道もある意味スポーツのようなもの。部活の道具をうっかり落とすのと同じではないでしょうか」
沙織「うっかりしすぎでしょ!」
麻子「・・・む?あれは・・・あの形は、もしや!」

麻子が見付けたトーテムポールは、戦車砲だった。
みほ「回収車でひと通り集めてきたけど・・・まさかトーテムポールが150ミリ砲だったなんて!」
華「なんて立派で威力の高そうな砲なのでしょう・・・」
沙織「ホテルを全壊させた、あのプラウダの怪物、KV-2と同レベルの破壊力ってことだよね?」
華「まあ♡」
優花里「150ミリ砲なんて重量オーバーで積めませんよ~」
みほ「そうだよね・・・会長たちは38(t)を無理矢理ヘッツアーにしてたけど・・・」

麻子「・・・秋山さん、ウソはいけないな」
優花里「!?」
麻子「オープントップにして自走砲とやらに車体を改造すれば可能だ。このフンメル自走砲の試作車はⅣ号が車体のベースだったと記述がある!」
優花里「う・・・!?どうしてそれを!?で・・・ですが自走砲は戦車とは戦い方が根本的に違うんです!自走砲の装甲は極めて薄くて安全な後方からの間接射撃しかできません!砲塔は旋回しませんし、接近戦は一切できないんですよ!?」
麻子「フ・・・望むところだ!できるだけ戦車を動かしたくないしな!」
沙織「麻子ぉ・・・あんなに操縦スキル高いくせに・・・」
優花里「ダメですよぉ~~~隊長車が自走砲なんて!」
麻子「リーダーはなにもせずふんぞり返るものだ。この学園の生徒会長のようにな」
杏「冷泉ちゃん呼んだ~~~?」

カメさんチームこと、杏と桃と柚子の3人が来た。
優花里「か・・・会長!?と生徒会!」
杏「あはは!150ミリなんてずいぶんアツいものを発見したね。フンメル改造計画面白そうじゃん、本格的に検討してみよっか」
みほ「え!?」
優花里「ちょ・・・ちょっと会長!?それだと戦い方がメチャクチャに・・・」
杏「‘戦いは正を持って合い奇を持って勝つ‘だよ。じゃあ自動車部呼んどくから説明よろしく~~~」

優花里「Ⅳ号が自走砲にされてしまう・・・自動車部を説得してやめさせないと・・・」
「いや・・・自動車部がくる前にてっとり早く全部まとめて廃棄してしまいましょう!」
優花里が昨日集めた部品に、「廃棄品」の札を付けた布を被せたところに、
レオポンさんチームこと、自動車部の4人が来た。
ツチヤ「やあ秋山さん、会長に聞いたよ。Ⅳ号を改造するんだって?」
優花里「すみません自動車部のみなさん・・・実はそのことで話が・・・」

ナカジマ「お!?その廃棄物ってのを付ければいいの?」
優花里「え!?いや・・・これは」
ホシノ「まあちょっと見せてみてよ!」

ツチヤ「おお!」
スズキ「こ・・・これは凄い!」
優花里「あの・・・やっぱりこの件はなかったことに・・・」
ナカジマ「安心してよ秋山さん!」
「連日フル稼働でちょっとハイだけどこんなもの見せられちゃね!」
スズキ「整備屋魂がイグニッションしちゃうよ!」
ホシノ「スターターもヒューズもキレッキレだけどね!」
ツチヤ「ドリフト♪ドリフト♪」
レオポンさんチームの目は、ヤバイ感じに輝いていて――――


沙織「今日から私たちが乗るのはⅣ号じゃないんだね・・・なんかさびしい・・・」
麻子「悪いことしたかな・・・」
みほ「新しい戦術考えなきゃ・・・」
華「フンメル・・・すごく・・・じんしんしそうです」

みほ「!」
華「こ・・・これは!?」

優花里「に・・・西住殿!私には止められませんでした。整備屋魂に火が点いた自動車部は恐ろしく・・・」
「我々のⅣ号が珍戦車にされてしまいました――――!!」

Ⅳ号には、昨日見付けたグライダーの翼や砕氷船のドリルなどが全て取り付けられていた。

杏「ドリル戦車、グライダー戦車。へー・・・こんなのが実在したんだ。うーん・・・でも、やっぱり普通が一番かな?」

すぐにⅣ号は元のH型に戻されました。


(続く)

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最終更新:2020年01月20日 18:54