最強最後の魔王獣・マガタノオロチの前に、ウルトラマンオーブは敗れ去った。
そしてガイの目の前で、ナオミはジャグラーに斬り捨てられた。
ガイ「ナオミいいぃぃ──!!」
ジェッタとシンはSSP専用車・SSP7に乗ったまま、瓦礫の中に生き埋めとなっている。
ジェッタ「やっぱ開かない…… ん? ちょっと待て。なんか焦げ臭いんだけど」
シン「どこかで火事が起きてるのかもしれませんね」
ジェッタ「マジかよ!? 俺たち、あぶり焼きかよ!?」
シン「さっきからこの車、ガソリンが漏れてますからね。案外、一気に『ドカーン!!』と」
ジェッタ「わぁぁ! 誰かぁぁ!! 開けてくれぇぇ──っ!!」
渋川はナオミを捜して、街を回っている。
渋川「おぉい! ナオミちゃん、どこ行ったぁ!?」
ビートル隊日本支部では、菅沼長官と隊員たちが、マガタノオロチの強大さに驚愕している。
菅沼「なんて奴だ……」
隊員「東京タワー周辺、神楽町、坂井橋付近は壊滅。被害が拡大しています」
瓦礫の中に倒れていたガイ。そばにマトリョーシカがある。
開けると、中からビックリ箱のような人形が飛び出し、ジャグラーの声が響く。
「ジャーン! ガイくんに嬉しいお知らせです! ナオミはまだ生きてるぞ。俺たちは第3埠頭にいる。来ないと女は斬る。今度こそ本当にな。ハハハハハ!」
ジェッタは生き埋めのまま、ビデオカメラに向かって語りかけている。
ジェッタ「20年後の、リッチな俺へ。ハハ、どうやら、マリブの別荘もシャンパンもなくなりそうだ。けど、大事なのは20年後の未来じゃない。1日1日を、一生懸命生きることだ。だからみんな、今日を、今を、大切に生きてくれ……」
シン「最後の未来日記、ですか?」
ジェッタ「記録をね、残そうと。誰かの未来のために」
シン「未来ね。──未来? そうか! これは予言だ!」
ジェッタ「予言?」
シン「太平風土記ですよ!」
シンがタブレットで、『太平風土記』でマガタノオロチが雷で打たれたとされる場面を指す。
シン「これは、ミサイルでマガタノオロチを攻撃したことを指すのでは? 昔の予知能力者が未来を幻視した書物、それが太平風土記なのでは?」
ジェッタ「これが予言ってことは…… この先、一体どうなっちゃうんだよ?」
シン「この先はこうです。『陽に向かい、清浄の気を持つ者、オロチの邪気を阻み、鬼門となる』── 陽に向かい、清浄の気を持つ者?」
第3埠頭で、気を失っていたナオミが目覚める。コーヒーと剣を手にしたジャグラーがいる。
ジャグラー「シュワシュワコーヒー、正直、微妙だな。弱い人間を守るために俺は強くなれる、とかなんとか言ってたな。ま、細かい文句は忘れたが。要するにあいつの強さの秘密は、お前だ」
ナオミ「だから何よ?」
ジャグラー「それがあいつの弱点だ」
シン「陽に向かい清浄の気を持つもの……」
ジェッタ「俺にもわかるように言ってよ」
シン「これは、マガオロチが動きを止めたとき、真下にあった神木です。注連縄がついてる。これが太平風土記のいう『陽に向かい清浄の気を持つもの』じゃないですか?」
ジェッタ「あ…… そうなの?」
シン「『陽に向かい清浄の気を持つものマガタノオロチの邪気を阻み鬼門となる』── わぁ、そうかぁ!」
ジェッタ「何なんだよ、もう!」
シン「すぐにサイトを更新してください!」
ジェッタ「え!?」
シン「早く!」
渋川が街を走っていると、懐でスマートフォンが鳴る。
渋川「えっ? SSPのサイトが更新?」
ガイが第3埠頭に辿り着く。ナオミがジャグラーに捕われ、刀を突きつけられている。
ガイ「ナオミ! ケガはないか?」
ナオミ「私は大丈夫! それよりマガタノオロチを……」
ジャグラー「そうはさせない~。お前に、マガタノオロチは倒せない。そして、この女も救えない。お前が愛したこの地球は、消えてなくなるんだ」
ガイ「ジャグラー!」
ジャグラー「お前と俺は色々なものを見てきたな。ダイヤモンド新星の爆発も、黄金の銀河に浮かぶオーロラも」
ジャグラーの目から、一筋の涙が零れ落ちる。
ジャグラー「だがそんな思い出は、いずれ消える。まるで星屑のように、何もかも消える…… 唯一永遠なものが何かわかるか? なぁ、ガイ。それは、何もない暗黒だよ。お前の中にも、俺の中にも、誰の中にもある闇だ。埋まらない心の穴なんだよ」
ガイ「闇は永遠じゃない。唯一永遠なもの、それは…… 愛だ」
ジャグラー「はぁ?」
ガイ「この宇宙を回すもの、それは愛なんだ。暗闇の中に瞬いている、希望の光だ!」
ジャグラー「おい。おい、おい…… おいおいおい! 今さら、愛だ希望だっていうセリフでこの状況がどうこうなると思ってるのか? あぁ? ハハッ! 俺が何もかもぶった斬ってやるよ」
ナオミ「好きなだけ刀を振り回してればいいわ!」
ジャグラー「何だって?」
ナオミ「ガイさん、聞いて! もし私が死んでも、あなたのせいだなんて思わないで。ちょっとの間だったけど、私、あなたと過ごせて幸せだった! 私、私…… あなたのこと忘れない! さぁ、やれば? 私の体は斬れても、心は斬れないから」
ジャグラー「黙れ…… 黙れ…… 黙れぇぇ!!」
マガタノオロチに撃墜されたゼットビートルの1機が、火を吹いて墜落して来る。
ガイ「ナオミぃ!?」
ナオミ「ガイさぁん!!」
ビートルが地面に突き刺さって炎上、瓦礫が飛び散る──
ナオミが気づくと、ジャグラーが自身の体を盾として、瓦礫からナオミを守っている。
ジャグラー「ハァ、ハァ……」
ナオミ「私の、夢の人って……!?」
ガイ「お前の心には、まだ光が残っている。お前なんだろ? ナターシャを助けてくれたのは」
ナオミ「ナターシャ? 私が見てたのは、ナターシャの記憶だったの?」
過去の回想。ガイとナターシャの仲睦まじい様子を、物陰からジャグラーが窺っている。
そして第1話冒頭の、ウルトラマンオーブとマガゼットンの戦い。 マガゼットンの強烈な攻撃がオーブに炸裂し、爆炎が上がる。 その余波がナターシャに及ぶ寸前、ジャグラーが魔人態に変身してナターシャを助け、飛び去る。
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ジャグラー「あのとき…… 気づいたら、あの女を必死に助けていた。あの女は俺に微笑んだよ。訳がわからなくなって、俺は尻尾を巻いて逃げちまった。弱い者を放っておけないのが、ガイの弱点だ。なぜ…… 俺も同じことを」
ガイがジャグラーの胸倉をつかむや、殴り飛ばし、そして抱きしめる。
ガイ「ありがとう」
ジャグラー「……」
ガイ「ナオミを頼む」
ジェッタとシンは、SSP7の中で、もはや虫の息。
シン「ねぇ、ジェッタくん……」
ジェッタ「ん…… 何?」
シン「君が…… 好きでした。君は、おっちょこちょいだけど、僕の数少ない友達です…… 僕がノーベル賞を取った暁には、スピーチで感謝の意を捧げてもいいです」
ジェッタ「もう、ノーベル賞なんて無理だろ……」
シン「まぁ、ノーベルだってノーベル賞取ってませんけど……」
ジェッタ「シンさんも、ときどき左右違う靴下はいてたけど…… 好きだった。俺たち、いいチームだったよな……」
うつろなジェッタの視界の中、光とともに天使が現れる。その顔は、渋川にそっくり。
ジェッタ「あぁ…… 天使って、渋川さんみたいな顔してるんだな……」
瓦礫を掻き分け、本物の渋川が現れる。
渋川「おい! 大丈夫か!? 助けにきたぞ!」
ガイがマガタノオロチ目がけて駆ける。
ガイ「ウルトラマンさん!」
『ウルトラマン!』
ガイ「ティガさん!」
『ウルトラマンティガ!』
ガイ「光の力、お借りしま──す!!」
『フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオン!』
ガイがウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオンに変身し、マガタノオロチに立ち向かう。
オーブ「俺の名はオーブ! 闇を照らして悪を撃つ!」
ジェッタとシンは、渋川やビートル隊員たちに救出される。
渋川「おい、おい! サイトの情報を、もっと詳しく教えてくれ」
シン「つまり、こういうことですよ。マガオロチが地中に照射したエネルギーが完全体になったものが、マガタノオロチと仮定します。だがこのご神木の部分だけ聖なる気に阻まれ、エネルギーが届かなかった。マガタノオロチはこの部分のみ、不完全なのではないでしょうか」
渋川「おい! 怪獣のニュートリノ分析は?」
隊員「顎の下の一点、物質の構成が違うようです」
隊員がマガタノオロチのニュートリノ分析結果を聞いて、ジェッタとシンは笑顔になる。
一方でウルトラマンオーブがマガタノオロチと戦い続ける。
しかしスペシウムゼペリオンでの攻撃も、バーンマイトでの攻撃も一向に通用しない。
ナオミが不安げに、戦いの様子を見上げる。そばではジャグラーが項垂れている。
ジャグラー「何なんだよ…… 何がしてぇんだ? 俺……」
ナオミ「あんた、いい加減にしなさいよ!」
ジャグラー「……?」
ナオミ「私と夜明けのコーヒー飲むとか言ってたよね? でも今戦わないとさぁ、二度と夜明けなんか来ないんだよ!」
ジャグラー「……」
ナオミ「あなたがいなかったら、私は生きてなかった。さぁ、立って!」
ナオミの差し伸べる手を、ジャグラーが握り返し、立ち上がる。
『覚醒せよ! オーブオリジン!』
ガイ「オーブカリバー!」
オーブがオーブオリジンに変身、オーブカリバーでマガタノオロチに挑むものの、依然、攻撃は通用しない。
マガタノオロチの強烈な攻撃が、オーブに迫る。
危ういと思われたそのとき、魔人態となったジャグラーの攻撃がマガタノオロチに炸裂。
ジャグラーの差し伸べた手を、オーブが握り返して立ち上がり、共にマガタノオロチに立ち向かう。
マガタノオロチの攻撃が迫る。
オーブがオーブカリバーで防ぎつつ、ジャグラーがオーブの背を蹴って大ジャンプし、攻撃を浴びせる。
ジャグラーがマガタノオロチの反撃を食らいそうになるが、すかさずオーブがそれをふせぎつつ斬撃。
しかし、依然として攻撃は通じず、マガタノオロチの反撃で2人まとめて吹っ飛ばされる。
渋川が菅沼のもとに連絡をとっている。
渋川「はい! 間違いありません。確かな情報です」
菅沼「勝算はあるのか?」
渋川「情報特務隊隊長、渋川一徹が全責任を負います」
菅沼「よし。頼んだぞ!」
渋川「ゼットビートル全機に告ぐ!」
ジェッタ「もしかして渋川さんって偉い人だったの?」
渋川「攻撃目標25・37、怪獣の顎の下を、一斉攻撃せよ!」
隊員「了解。こちらビートル1、攻撃を開始する」
ゼットビートルの編隊の攻撃が、マガタノオロチの顎の下に注ぎ込まれる。
これまで攻撃がまったく通用しなかったマガタノオロチが、苦悶の声を上げ、顎の下が赤熱化する。
ジェッタ「オーブ! マガタノオロチの弱点はそこだぁぁ!」
シン「そこが不完全なんです!」
オーブとジャグラーが、渾身の拳をマガタノオロチの弱点に叩きこむ。
マガタノオロチが激しい声を張り上げ、弱点からおびただしい体液があふれ出す。
ジャグラー「よし、ありったけの光線を奴にぶち込んでやれ」
しかしマガタノオロチが無数の触手を伸ばし、ジャグラーの体を縛り上げる。
ジャグラーは体の自由を奪われながらも、必死にマガタノオロチの巨体を押さえつける。
ジャグラー「ぐぅっ! 俺と一緒に撃て!」
オーブ「……」
ジャグラー「撃てぇ! ウルトラマンオーブぅぅ!!」
ガイ「──諸先輩がた! 光の力、お借りします!」
オーブ「オーブスプリームカリバ──!!」
すべてのウルトラマンの必殺光線、そしてオーブ自身のオリジウム光線が炸裂──!!
ジャグラー「フッ…… じゃあな」
最強攻撃を浴び、マガタノオロチが大爆発── 最期を遂げる。
ジェッタ「よっしゃぁ!」
シン「やったぁ!」
菅沼「よし! 作戦終了、お疲れ様」
マガタノオロチは跡形もなく消滅。そしてジャグラーの姿もなく、愛剣が墓標のように突き立っているのみ。
勝利を収めたウルトラマンオーブが、空の彼方へと飛び去る。
夕陽の照らす海辺で、ガイとナオミが見つめ合う。
ナオミ「私、気がついてた。ガイさんが、星から来た人だって。でも、怖くて言い出せなかった…… それを言ったら、ガイさんがいなくなっちゃいそうで」
ガイ「……」
ナオミ「行ってしまうの?」
ガイ「あぁ。海の向こうでも、大変なことが起きている。俺の旅はまだ終わらない」
ナオミ「……私も連れてって」
ガイ「えっ? フフ、バカ言うなよ。俺は銀河の流れ星だぜ」
ナオミ「フフッ、冗談に決まってるでしょ」
ガイ「フッ…… じゃあ、達者でな」
ナオミ「待って! 最後に、あの曲を聴かせて」
ガイがオーブニカでいつもの曲を奏でつつ、去ってゆく。
ナオミがハミングでその曲を奏で、夕陽の中に2人のハーモニーが流れる。
その様子を彼方で、死んだはずのジャグラーが微笑んで見届けつつ、自らもどこかへと立ち去る。
ナオミのもとへ、ジェッタ、シン、渋川が駆けて来る。
渋川「おぉい! ナオミちゃん、大丈夫か?」
ナオミ「うん」
ジェッタ「キャップ、やったよ! SSPのサイトが、世界中で2億4千万アクセスだって!」
ナオミ「わあ!」
ガイさんはどこです?
ナオミ「もう…… 行っちゃった」
ジェッタ「そんな…… ひどいよ。さよならも言わずに……」
渋川「おぉい! クレナイ・ガイ! あばよ」
ナオミ「でも…… きっとまた会える。だって、地球は丸いんだもの」
第1話のガイと同じ台詞を語るナオミが、ようやく笑顔になる。
夕陽の照らす中を、ガイがどこかへと去ってゆく。
最後にOP「オーブの祈り」がEDとして流れると同時に今までのシーンが映されていく。
応援ありがとうございました! あばよ!クレナイ ガイ! |
最終更新:2023年03月08日 12:34