勇者ディアスはユリアと仲間達と共に、魔女カマラとカマラ自身を生け贄として召喚された魔王ギールを打ち倒した。
ギール「我はおまえを愛し、憎む・・・」
ギールが消滅していった。
ディアス「これは、いったいどうなっているんだ?」
ユリア「魔女カマラの悪霊が王女に取りついていたのです」
「あなたの魂を魔王ギールの鎧に封じ込めることで、カマラはあなたを永遠に生かそうと考えたようです」
ディアス「俺の、魂を使って・・・?ギールを復活させようと?なんとおぞましいことを・・・」
「おい!ということは・・・俺が刺し違えた魔王ギールにも誰かの魂が封じられていたのか?」
ユリア「そうです。彼女は、呪われた鎧に魂を囚われ、魔王ギールの依り代とされたのです」
ディアス「依り代・・・?まさか、その彼女は・・・」
ユリア「ええ、私ですよ。ですが、記憶違いがひとつ。刺し違えたのではありません」
「あなたは、自分が倒した魔王が私であったことに気づき自ら命を絶ってしまった・・・」
ディアス「なぜだ!なぜ俺はそのことを覚えていない!?」
ユリア「神様は、あなたを憐れまれすべての人々の記憶から私の存在を消し去ったのです」
ディアス「なんということを・・・教えてくれ、ユリア!俺の恋人というのはキミなのか?」
ユリア「フローラ王女が目覚めますわ。話の続きは、もう少しあとにしましょ」
「彼女を責めないでね。悪いのは、心の隙に付け込んだカマラなのですから」
「もう元の心優しい王女に戻っているはずよ・・・・ではまた、のちほど」
フローラ「ああ、ディアスさま・・・私は、取り返しのつかない過ちを犯してしまいました」
「あなたを英雄にするために魔王ギールを召喚し、その結果多くの人々が苦しみました」
ディアス「そうだな・・・死者は愛する人のもとに二度と帰らない。ひどい話だ」
フローラ「ああ、ディアスさま・・・」
ディアス「泣くな。泣いたって今さら、どうしようもない・・・誰しも過ちは犯す」
「間違いに気づいてからどう、つぐなうかだ・・・俺もキミもな」
フローラ「ああ、ディアスさま・・・私は、どうすればいいでしょう?」
ディアス「悪いけど、自分のことは自分で考えてくれ。俺は、俺のことで頭が一杯なんだ」
フローラ「・・・そうですか・・・わかりました」
土曜の夜明けとともにディアスは、意識を失い静かに息を引きとった。
それから五日間、英雄の死を悼むように夜の闇が国中を包んだ。
そして次の土曜・・・
グランダムの王宮でディアスの葬儀がしめやかに行われた
人々が別れの言葉を継げている。
その様子をディアスは天使ユリアとともに眺めていた
サラ「おふたりが天国で結ばれることを心から祈っています」
「ディアスさま、お幸せに!」
ナオミ「なあ、あんた・・・この国は少しずつだけど今よりマシになると思うんだ」
「だからこれからも雲の上であたしらのこと、見守っていておくれよ」
リュー「貴様の魔王討伐を手助けできたこと、私は生涯誇りに思うだろう」
「さらばだ、ディアスよ。またいつか会おう」
メリーアン「いちおう言っておくけど魔女の悪霊を倒したくらいじゃこの国は平和にならないよ」
「ま、みんなで何とかするわ。だからディアスくん、安心して天国に行くといいよ」
ピピ「勇者のお兄ちゃん、あなたのおかげでこの国は面白いことになりそうですよ」
「どんな時代になるのかな。ボクは、やる気満々なので~す」
ヨナ「私が勇者の力を得てもひとりじゃ何もできません」
「でも、みんなの力を借りればこんな私も役に立つことが何か見つかるといいなって・・・」
「あの・・・えっと・・・一生懸命がんばります!」
トーマス「じきにワシもそちらに行きますから、そのときはまたよろしくお願いします」
ゾロ「なぜおまえが英雄で俺が英雄になれなかったのか、今ならよくわかるぜ」
「あばよ、ディアス。おまえこそが本物の英雄だ」
フローラ「未だ自分が何をすべきか国のために何ができるのか、私にはわかりません」
「ですから、さまざまな人に助けを求めました」
「サラさんには信仰の尊さを、リューさんとサラさんからは私たちと異なる文化を」
「ビビさんには金融や流通を、メリーアンさんには科学を教えていただくつもりです」
「ディアスさまも私が道に迷ったときは天国から導いてくださいませ」
「3年後、フローラは女王就任と
同時に議会制を導入した。
また周囲の反対を押し切り
閣僚に、人種、身分、性別に
かかわらず広く人材を登用。
フローラの死後、
王制は次第に形骸化したが、
ロビリア国は発展を続けた。
世界で最も豊かで平和な国
ロビリアは、ディアスの死から
1000年栄えたと伝えられる」
ディアス「ユリア、そろそろ本当のことを教えてくれないか。キミなんだろ、俺の恋人は?」
ユリア「ごめんなさい。実は私自身、自分が何者であったのか思い出せないのです。ただ・・・・」
ディアス「ただ・・・?ただ、何だい?」
ユリア「たとえ過去の記憶は失ってもこれから思い出を作ることはできると思います」
「えーっと、あのぉ・・・・もちろん、あなたさえよければ・・・・ですけどね」
「だから、あのぉ・・・・いつもと同じことをおたずねします」
「ディアスさま、愛する人は・・・見つかりましたか?」
「この世に思い残すことはもうありませんよね?」
「あなたのために天国の門が開かれました。さあ、ともに参りましょう」
二人が手を取り合って、空から射す光の方へ昇っていった。
(END)
最終更新:2020年05月18日 16:25