ヒラ役人やって1500年、魔王の力で大臣にされちゃいました(漫画版)の第1話

ベルゼブブ「お断りします」
上司「・・・ベルゼブブさん・・また昇進しないんですか?1500年も農業政策機構でヒラ役人のままって・・・偉大な魔族の名が泣きますよ?」
ベルゼブブ「実家は地方の青果店ですし、偉そうな名前ですが正直名前負けです」
「それに私は、地味に、地味に・・・地味~にヒラで働いていきたいんです!」
上司「そんな力込めて言われても・・・」


第1話 ヒラから大臣にされてしまったのじゃ


上司「まあ、なんだ・・・もし気が変わったら声をかけてください」
ベルゼブブ「はい」
(気が変わることなんてない。私は責任が伴わないヒラで、ダラダラと目立たず静かに働く!)

ベルゼブブ「それでは失礼します」
ベルゼブブが部屋から出た。
上司(成績も勤務態度も悪くないのに・・・困ったなぁ・・・)

ベルゼブブ(これで今年の人事査定も乗り切った!私のヒラ生活は安泰・・・勝ちパターン死守だ)

同僚「あの・・・ベルゼブブさん」
ベルゼブブ(ただヒラ生活唯一の誤算は)

同僚「ベラドンナの生息地域分布を知りたいのですが・・・」
ベルゼブブ「それなら438番の資料棚の一番右のファイルですよ」
同僚「ありがとうございます!助かりました。プリンどうぞ!!」

ベルゼブブ(地味であるがゆえにヘルプを頼まれやすいことだ。まぁいいけどね。その分、部署での好感度は結構高い気がするし。あっ、このプリンうま~)


ベルゼブブ「ただいま・・・」

家に帰ったベルゼブブは、スーツを脱ぎ捨てパジャマに着替えた。
ベルゼブブ「やっぱりこのゆるゆるなパジャマが落ち着くな。さて」
「は~、お疲れ私。床が冷たくて気持ちいい・・・」
「今日も微妙に人の手伝いで残業になったし・・・明日は昼前まで寝・・・」

ベルゼブブが手を広げると、積まれた本に当たって、落ちた。

部屋は、本やらゴミやらで散らかっていた。
ベルゼブブ「この部屋には家族すら呼べないな・・・呼ぶ気もないけど・・・」

ベルゼブブのお腹が鳴った。
ベルゼブブ「とりあえず何か食べるか。そうだ、作り置きしておいた地獄鍋があった」
「あ・・・もうすぐ新しい魔王様が即位するんだっけ。娘に継がせるみたいだけど・・・」
(まぁ私には関係ないな。これからもヒラで地味にやってくだけだし)
(お酒と・・辛いものを食べてれば幸せだしね・・・)


即位式当日

ペコラ「新魔王のプロヴァド・ペコラ・アリエースです。みなさんと一緒に魔族の国家をよりよいものに変えていければと思います」

ベルゼブブ(テンプレって感じの挨拶。思ったよりも若いな)

一瞬、ペコラの視線とベルゼブブの視線が合った。

ペコラ「続いて新しい閣僚人事を発表いたしますね~」
ベルゼブブ(今、目が合った気が・・・気のせいか)

ペコラ「まず外相はナスタスさん。続いて内相はヴェルツさん、経済省はベクトールさん」

呼ばれた一人であろう角の生えた男性魔族が拳を握りしめた。

ベルゼブブ(ガッツポーズ・・・関係者にも知らされてなかったのか。さすが大臣いかにも強そうだ)
ペコラ「労働相にシャノワさん、医療相にミクスさん。そして農相に・・・」
「ベルゼブブさん!」

周囲の魔族達の視線がベルゼブブに集まった。

ベルゼブブ(え・・・)
ベルゼブブは驚愕し、ハエの羽根が出た。

同僚たち「こんなこともあるんだ・・・」
「先輩何階級昇進になるんですか?」
ベルゼブブ「ええ!?本当に私・・・!?なんで!?」
(冗談じゃない、ヒラ生活が・・・)

ベルゼブブがペコラの前に出てきた。
ベルゼブブ「魔王様!ベルゼブブです!今回の人事には無理があると思います!」

ペコラ「フフ・・・」

ベルゼブブ(予想としていた状態・・・目が合ったのは気のせいじゃなかったのか・・・)

ペコラ「その様子だと不服があるようですね」
ベルゼブブ「あるに決まってますよ!大臣というのは偉い人がつくポストです!」
ペコラ「なるほど、あなたのおっしゃることはもっともですね。ではその疑問点にお答えしましょう」

ペコラ「あなたは勤務1500年ほどになりますね?」
ベルゼブブ「はい。元々は実家の青果店を手伝っていたので、役人の試験を受け合格したのは千歳を過ぎた頃でした」
(なんでこんなところで身の上話を・・・)

ペコラ「それならば身分上ヒラの役人ということはありえないはずですが・・・」
ベルゼブブ「それは・・・私の能力に余るので昇進をずっと断ってきたせいです」

魔族たち「1500年ヒラの奴なんているのか」
「任期付き職員じゃないんだから」

ペコラ「はい!わたくしの方で1500年間、もしあなたの成績で昇進し続けていたらどうなるかのか、計算をしてみました」


~もしベルゼブブさんが昇進していたとしたらどこまで地位が上昇したかの予想図~
係員→主任→係長→課長補佐→課長→部長→農業政策局長など→事務次官などなど→大臣(ゴール!)

ペコラ「成績と年数、同僚の評判を総合した結果、大臣になっても問題ないと判断しました!おめでとうございます!」

ベルゼブブ(な、な、な・・・・)

魔族たち「なるほど、ヒラの状態を長期間維持して、評判を高めまくって大ジャンプするって作戦もあるのか」
「スライムを倒し続けて最強を目指すみたいなやり方ね」

ペコラ「本当はもっと普通の人事を考えていたのですが、不正が発覚したりで誰を農相にするか難航を極めたんです」

ベルゼブブ(この人はイタズラ好きだ・・・これは私というヒラを使った盛大な実験・・・勘弁してくれ!)
「ハッ・・・」
「しかし魔王様!大臣は貴族の地位を有することが決められております!」

ペコラ「それは困りましたね~」
ベルゼブブ「ホッ・・・」
ペコラ「では今、貴族に任命します。空いてる元貴族の邸宅も差し上げます。はい!解決ですね!!」

逃げ道を塞がれ、ベルゼブブは固まった。

ペコラが玉座を降り、ベルゼブブの方へ向かう。

ベルゼブブ「ハッ、羽!!」
ベルゼブブは羽をしまい、ペコラにかしづいた。

ペコラ「ベルゼブブさん、無茶振りに見えたかもしれませんが、ずっと頑張ってきたあなたは本当に大臣に類いするところにいた人材ですよ」
「人事課がつけたあなたの点数、不気味なくらいの高点数なんです。他部署からの山のような引き抜き要望を農業政策局長が止めていました」
ベルゼブブ「そ、それはヒラの仕事が楽だから・・・」
ペコラ「ベルゼブブさん、顔を上げてください」
「人間との戦争は前の魔王の代で解決しました。ですが問題は山積みです。今は一切のしがらみない新しい力が必要なのです」
「この魔王、プロヴァド・ペコラ・アリエースからのお願いです。どうか農相を引き受けてください」
ペコラは頭を下げた。

ベルゼブブ(断る道は完全に消えた・・・ここで突っぱねたら魔王の顔を潰すことになる)
「謹んで拝命いたします・・・」

ベルゼブブも頭を下げた。

ベルゼブブ(こうして、私のヒラ役人をダラダラ続ける作戦は崩壊した)


その後、ベルゼブブは与えられた邸宅に向かった。
ベルゼブブ「こ・・こんな大邸宅が私の家・・・?明日クーデターが起こって早速殺されたりしないかな・・・?大丈夫かな・・・」

ベルゼブブ「ダンスホールまで・・・」
「ここは浴槽か」
「でかい鏡・・・・」

その鏡に映るベルゼブブの格好は・・・
  • ダテメガネ
  • ちょっとダサイ服
  • 縛っただけの髪
といった具合だった。

ベルゼブブ「これはまずい」
「キャラを変えよう」

ベルゼブブは色んな服を買ってきた。

ベルゼブブ「ふぅ・・・これだけあればなんとかなるだろう」
(魔界セレブ御用達の店で大人買いしてしまったが・・・)


役人たち「大臣どこ・・・?」
「まだ来てないっぽい~」
ベルゼブブ「あの、私・・・」

ベルゼブブ(こうならないためにも必要な出費だ)

ベルゼブブ(ダテメガネは外す)
(服でボス的な存在感を出し・・・)
「次は喋り方か・・・身分によって言葉づかいは変わるものだし」
「大臣らしい言葉というものを覚えないとな」

ベルゼブブ(そんな謎の特訓を私は行った。私は変わる・・・変わるんだ!)

ベルゼブブ「はっはっは!わらわの名はベルゼバブじゃ!あの偉大なハエの王とはわらわのことじゃ!貴様らには今から農業というものがどういうものか、嫌という程わからせてやるから覚悟しておくようにな!」
特訓を重ねたベルゼブブの格好と喋り方は、本編のものとなっていた。

ベルゼブブ「・・・・・・・」
「ああ・・・こういうしゃべり方じゃが、部下を圧迫しないように注意しますのでなにとぞ・・・」
(あっ、また口調が戻ってる・・・)

ベルゼブブ(これくらいの劇的な変化がなければ、今後の仕事を果たせる自信はない・・・)
(両肩が出ている服。強そうな感じを出すために、髪もストレートに。あとは自信のある表情をして胸を張る)

ベルゼブブ「わらわが農相ベルゼブブじゃ、わらわが農相ベルゼブブじゃ、わらわが農相ベルゼブブじゃ。今日からこのキャラでいくからの」


ベルゼブブ(そしてわらわは新生ベルゼバブとして、農業政策機構に初出勤したのじゃ)

ベルゼブブ「おはようなのじゃ、元気にやっとるかの?」
(農相デビューなのじゃ!)
(同僚たちがぽかんとしておるのじゃ。わらわの高貴さを知ってびっくりしたかのぅ・・・)

元同僚「あの・・・ベルゼブブさん大臣なので・・・出勤場所違うと思います」

ベルゼブブ「・・・ついいつもの癖でミスったのじゃ」
(やっぱり私なんて・・・)
元同僚たち「ベルゼブブさん!」
「いつも助けてくれてありがとうございましたー!」
「大臣頑張ってください!」
「書類の書き方を一から教えてもらったこと忘れません!」
「頼りになるベルゼブブさんが抜けてこれから大変になりそう」
「やっと昇進してくれて安心しましたよ。昇進しすぎですが・・・」
「ベルゼブブさんなら大臣の仕事もパパッとこなせちゃいそうですね!」
「私たち応援してますから!」

ベルゼブブ「当たり前じゃ」
「わらわはベルゼブブじゃ!いってくるからの!おぬしらも頑張るんじゃぞ!」
元同僚たち「「「ハイッ」」」


(続く)

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最終更新:2020年05月30日 06:29