校庭で、みほ達大洗Aチームの乗るⅣ号とまほの乗る黒森峰フラッグ車ティーガーⅠが相対していた。
優花里「ゴク・・・」
先に動いたのはティーガーだった。
優花里(ティーガーが先に動いた!)
みほ「冷泉さん左回りに旋回!」
優花里「黒森峰のフラッグ車は、戦車の王様ティーガー戦車」
(砲塔前面装甲は100ミリ、主砲は56口径8・8センチ砲。多くの伝説的な戦いとヴィットマンやカリウスなどのタンクエースを輩出したほどの優秀な戦車)
(真正面からでは絶対に倒せない相手です!何とかこちらに有利な状況にしないと・・・)
Ⅳ号はティーガーから離れていく。
みほ「冷泉さん、できる限りコーナーを使って回り道をして下さいっ!ティーガーの正面に車体をさらさないで!」
麻子「なかなか難しい注文だな」
優花里「冷泉殿さすがです!ティーガーの射界を避けてます!」
みほ「何とか冷泉さんのおかげで敵の攻撃のタイミングをそらしてはいる。けど・・・」
優花里(確かに・・・)
(ティーガーは重戦車でその重量は57トンもありますが―――マイバッハHL230P45ガソリンエンジンの叩き出す馬力は700馬力!時速38キロ)
(一方、我々のⅣ号は重量25トンあまり、エンジン出力300馬力で時速38キロ)
(なんとより軽量なⅣ号と機動力において互角なのです。冷泉殿の運転技術がなければ逃げ切れていません)
みほ「お姉ちゃんがこのままの状況にしておくはずがない・・・」
ティーガーが発砲した。
みほ(砲撃音!)
ティーガーの砲撃は壁を貫き、Ⅳ号の進む先を瓦礫で塞いだ。
みほ「!!」
華「ガレキで道がふさがれてます!」
みほ「後退して下さい!」
Ⅳ号が後退している所にティーガーが追いついてきた。
みほ「全速、後退っ!!」
Ⅳ号がティーガーとぶつかると同時に、ティーガーの主砲が撃たれ、Ⅳ号の左側の装甲がもがれた。
みほ「冷泉さん右に退避!速度全速!」
麻子「了解!」
沙織「危なかったー!」
優花里「8・8センチ砲(アハト・アハト)を資金で受けたらひとたまりも」
その8・8センチ砲が再度放たれ、今度はⅣ号の右側の装甲がもがれた。
優花里「いよいよ敵が攻めてきた!」
みほ「華さん!少しでもかまいません。相手に撃ち返して下さい!」
華「え?」
みほ「西住流は攻める事に真髄を置いた流派です!攻撃に移れば一気呵成に来ます!相手の攻撃に呑まれないで!」
華「はい!」
みほ「撃てっ!!」
その頃、自動車部チームのポルシェティーガーは、校庭への道を塞ぎながら戦い、
黒森峰の戦車を撃破していた。
ナカジマ「よし!これで3輛目」
エリカ「くっ!!失敗戦車風情が思い上がるなっ!」
「ターレットリングを集中攻撃ィ!」
ポルシェティーガーは、黒森峰の集中砲火を喰らった。
自動車部チーム「わああ!」
みほ「冷泉さん左へ!」
麻子「了解!」
優花里「次弾装填!」
みほ「砲塔右に旋回!」
華「次撃ちます」
Ⅳ号がティーガーが射線に捉えるも、ティーガーも砲塔を向けていた。
みほ「!!」
互いの砲撃は相手の間近に着弾した。
優花里「次弾装填!」
みほ「撃てっ!」
優花里「次弾装填」
みほ「冷泉さんブレーキ!」
ティーガーの砲撃が、Ⅳ号の進んでいた方に着弾した。
みほ「くっ!」
「全速っ!」
優花里(どちらかが片方を・・・呑み込みかねないほどの・・・砲撃戦!!)
(ティーガーを相手に絶対退かない!ここが意地の張り所!)
みほ「撃てっ!」
優花里(まさに一進一退の攻防!)
「次弾装填完了!」
(細いロープを渡るかのような意地の張り合い)
沙織「みぽりん!敵が近づいてるっ!急いで!」
エリカのティーガーⅡが、仲間の戦車と撃破したポルシェティーガーを踏み越えて、校庭に向かっていた。
ナカジマ「アンタ達ゴーインだって!!」
エリカ「隊長!今行きます!」
みほ「優花里さん、装填時間をさらに短縮できますか!?」
優花里「! お任せ下さい!」
(一瞬で分かる西住殿の感覚)
みほ「冷泉さん、全速力で正面から一気に後部まで回り込めますか?」
麻子「履帯切れるぞ!」
みほ「大丈夫、ここで決めます!」
優花里(もの凄く濃厚で・・・・)
華「行進間射撃も可能ですが0,5秒でもいいので停止射撃の時間を下さい」
「確実に撃破してみせます!」
優花里(貴重な時間を共有している・・・そして・・・ここが・・・・)
(わたし達の正念場!)
撃破された大洗の仲間達も、Ⅳ号の戦いを見守っていた。
みほ「前進!」
Ⅳ号が迂回しつつ前進し始めた。
みほ「撃てっ!」
Ⅳ号が発砲したが、ティーガーの装甲に弾かれた。
みほ「冷泉さん!」
ティーガーが撃ち返し、Ⅳ号はかわした。
優花里「装填っ・・・」
Ⅳ号の右の履帯が千切れた。
優花里「完了!」
Ⅳ号は履帯が切れながらも、ティーガーの前に迫り――――
Ⅳ号とティーガーは同時に発砲し、互いに爆発に包まれた。
駆けつけたエリカや小梅達はその様に立ち尽くした。
爆煙が晴れると、白旗が立っていたのはティーガーだった。
実況「黒森峰フラッグ車走行不能!よって大洗女子学園の勝利っ!」
沙織「やったー!みぽりん!勝ったよ-!」
優花里「西住殿!わたし達勝ちましたよ-っ!」
華「勝ちました!」
みほ「勝った・・・んだよね・・・」
優花里「ハイ!」
「あっ先輩!」
「隊長っ!」
牽引されてきたⅣ号に仲間達が駆け寄ってきた。
桃「西住・・・この度の活躍・・・感謝の念に堪え倍・・・本当に、本当に・・・ありが・・・うわああああっ」
優花里「河嶋殿号泣・・・」
柚子「桃ちゃん泣きすぎ~」
杏「西住ちゃんこれで学校廃校にならずにすむよ・・・」
優花里(わたし達の学校・・・)
みほ「はい!」
杏がみほに抱きついた。
みほ「会長さ・・・」
杏「ありがとうね・・・」
みほ「いえ・・・わたしこそ・・・ありがとうございました・・・
優花里(やっと実感が持てた・・・わたし達学校を守ったんだ・・・)
杏「よーし!じゃあ行くぞーっ!」
みほ「ちょっとだけすいません・・・」
優花里「西住殿?」
華「みほさん・・・」
麻子「そっちは・・・」
みほが向かったのは、まほの所だった。
みほ「お姉ちゃん・・・」
まほ「優勝おめでとう、みほ・・・・完敗だな・・・」
みほとまほが握手を交わした。
みほ「ありがとう・・・・」
まほ「みほらしい戦いだった。「西住流」とはまるで違うが」
みほ「そうかな」
まほ「そうだよ」
まほの後ろにエリカがいた。
みほ達「「「!?」」」
エリカ「負けたわ・・・でも次はわたし達が勝つ番よっ!」
優花里(えっ!?)
エリカ「次戦う日を楽しみにしているわっ!」
優花里(エリカ殿!?)
みほ「わたしの方こそありがとうございました!」
みほ「お姉ちゃん、やっと見つけたよ。わたしの、「戦車道」!!」
まほ「全員乗車!」
黒森峰の隊員達は、エリカの運転するトレーラーで帰路に着いていた。
まほ「エリカ・・・」
エリカ「はいっ」
まほ「さっきはよく言えたな」
「素直に負けを認める・・・心が強くないとそれさえままならない・・・」
「それでこそ、次の黒森峰の主将だな・・・」
エリカ「わたし・・ここまで引っ張っていただした西住隊長と・・・一緒に優勝したかったんです!」
エリカは涙を零していた。
小梅「副隊長・・・運転代わります」
他の隊員達も涙を零していた。
主審「優勝!大洗女子学園!」
そして・・・・
優花里(戦車道が始まる前・・・)
アナウンス「戦車道チーム緊急招集!戦車倉庫に集合!」
優花里(西住殿に会うまでのわたしは)
優花里「みなさんー」
沙織「ゆかりんー何だろうね」
みほ「秋山さん」
優花里(ずっと一人でした・・・でも・・・)
麻子「オハヨー」
優花里「冷泉殿もう昼ですよ・・・」
優花里(今はたくさんの友達がいます!)
みほ「みんなそろったし行こうか」
優花里「ハイっ!」
沙織「気合十分・・・」
優花里(みなさんと戦車に乗って)
(みなさんと同じ時間を共有して)
(そこで得たかけがえのない瞬間と思い出)
(それがわたしの「戦車道」!!)
――――おわり――――
最終更新:2020年06月27日 18:40