特捜チームW.I.N.R.アメリカ支部に所属するジュリー・ヤング隊員の姉・パティ。
彼女の夫・ジャミラは宇宙飛行士として木星探査船に搭乗したのだが、突如消息を絶ち、ずっと音信不通の状態が続いている。
以来、娘のカレンは自室に閉じこもり、ジャミラからのボイスレターを聞き続けていた。
ジャミラの声『ああ…… キャビンの窓の外に宇宙ホタルが飛んでいる…… とっても綺麗だ。お前たちにも見せてあげたいな…… パティ…… カレン…… これが最後のメッセージになるだろう。あとどれくらい生きられるかわからない…… カレン…… お前が大きくなって、このテープを聞いたら、きっとわかってもらえると思うが…… パパだってお前やママとサヨナラしたくないんだよ…… もう一度会いたい。だがお別れだ…… 愛してるよ……』
不意に、外で犬が吠えだした。
窓から外を覗くカレン。
巨大なものが落ちたような音。
カレンが目を見張る──人間に似たようなシルエットの怪獣が街の片隅にたたずんでいる!
数日後、ヤング隊員はパティの家を訪ねていた。
リビングにいるヤング隊員とパティはアイスクリームをつついている。
パティ「もっとカレンの傍にいてやれたらと思うんだけど、最近忙しくて…… ほったらかしなの。だからあの子、作り話なんかであたしの気を引こうとするんだわ……」
黙って頷きながら姉の話に耳を傾けるヤング隊員。
パティ「どう接していいかわからないの。難しい年ごろだし、わかり合おうにもゆっくり話す時間がないんだもの」
ヤング「大変ね…… 今だから言うけど」
パティ「何?」
ヤング「子供の頃ね、あたし、姉さんにすごく憧れてたの。本当よ? 姉さんは綺麗で、できないことは一つもなかったわ。クラス委員だったし、成績はいつもトップだったじゃない。それに比べてあたしときたら、まるで不器用だった……」
パティ「だけどジュリー、今はどう? あたしは女手一つで娘を育てなきゃならなくてもがいてるけど、あなたは世界の平和を守るために、空を飛び回って大活躍してるじゃないの。憧れるのはこっちの方だわ」
ヤング「違う。姉さんの方があたしよりもずっと偉いわ。とても真似できないぐらい頑張ってる」
パティ「……人生が音を立てて崩れてくって、こういうことなのね。カレンはもっとかわいそうよ…… せめて父親が帰ってこないことだけでも理解してくれたら……」
2人の会話を立ち聞きしたカレンが外に飛び出していく。
パティ「カレン、まだ起きてたの!? カレン! 待ちなさい!」
後を追うヤング隊員とパティ。
車道に飛び出すカレン。前方からは車が来ている。
ヤング「カレン、待って! 危ないじゃないの!」
車に轢かれる寸前、カレンを羽交い絞めにするヤング隊員。
カレン「もう! 離してよ! 呼んでるんだから!」
ヤング隊員が振り向く──ボロをまとった人影が木の後ろに身を隠したように見える。
カレン「戻ってきたの。あたしを呼んでるのよ」
ヤング「誰が? 誰が呼んでるの!?」
カレン「今見なかった? パパがいたのよ!!」
驚き、もう一度振り向くヤング隊員。しかし、もう人の気配は全くない──。
翌日、W.I.N.R.アメリカ支部基地。
ベック隊員「ジャミラ・ミラー空軍少佐は、木星への初の有人飛行の指揮官でした。みんなも知っているように、木星到着の直前に、探査船は一切の連絡を絶ちました。確かなことはわかっていませんが、軌道を外れ、漂流したものと推察されています」
エドランド隊長「そのジャミラ・ミラーがなぜか、突然地球に戻ったと言うのか」
ヤング「ええ、姪のカレンはそう言ってます。でも、あたしにわかるのは、夕べ、何かがいたこと…… そして、その“何か”は、必ずしも人間ではなかったということです」
エドランド「……他に、木星探査船についての情報はあるのか」
ベック「あるにはあるんですが」
エドランド「なんだ、どうかしたのか?」
ベック「
SSAは木星探査船に関するいかなる情報も公開できないと言うんです。事件のファイルは全て、
国家保安局が重要機密としてしっかり押さえています。Oレベルか、それ以上の権限を持つ人間でないと、情報には全くタッチできないんです」
サンダース隊員「重要機密ったって、あの事故のことはテレビのニュースでもう散々やってたじゃないですか。今さら何を隠すってんです?」
エドランド「Oレベル以上か…… よし、私から保安局に問い合わせよう。なんとかなるかもしれん」
ベック「お願いします」
その時、支部基地に備え付けられた電話が着信を知らせる。
ケンイチ・カイ隊員が受話器を取った。
カイ「W.I.N.R.本部…… ヤング」
ヤング隊員が受話器を受け取る。
エドランド「とりあえず、当時メディアで報じられた木星飛行に関するあらゆるデータを集めてくれ。すでに公開済みの情報をつなぎ合わせてみれば、もしかして何かわかるかもしれん」
ベック「はい、キャップ」
神妙な面持ちで受話器を置くヤング隊員をエドランド隊長が認める。
エドランド「どうした?」
ヤング「あの…… カレンの言ってることを裏付けるような、別の目撃者が現れたんです。話を聞きに行きたいんですが」
エドランド「……いいだろう。カイを連れていけ」
ヤング隊員とカイ隊員は特捜車両・ローバーで移動を開始。
カイ「ねぇ、さっきの電話…… 君のお姉さんからだろ?」
ヤング「……カレンが今日、学校を無断欠席したのよ。もしかしたら家出したんじゃないかって、姉は心配しているの」
頭を抱えるヤング隊員。
カイ「警察に電話しろよ。その方がきっと……」
ヤング「ダメよ! あたし、あの子が心配なの。夕べ、『パパが戻ってきた』っていつまでも言い続けてた。引っかかるわ……」
ヤング隊員はやり場のない苛立ちをぶつけるかのように、ローバーのドアを何度も拳で叩く。
ヤング「もしそれが本当だとしても、一体何がそうさせたのかわからない。ジャミラがどう変わってるかも…… カレンを一人にしときたくないの! それに、行き先に心当たりがあるのよ? あの子が小さい頃、ジャミラがよく連れてったとこよ」
カレンは町はずれの展望台にいた。
2人組の男が、駐車場に停めた車の中でバックミラー越しにカレンを見張っている。
やがて男たちは車から降り、カレンに近付いてきた。
その様子を、昨夜ヤングが垣間見た人影がじっとうかがっている──ジャミラだ。
黒人の男「ねぇ、君…… カレンだろ? カレン・ミラーだね?」
カレン「おじさんは?」
黒人の男「すぐわかった! パパから写真見せてもらったからね。おい、ダン」
黒人の男が連れの男を呼ぶ。
白人の男「なんだ?」
黒人の男「カレンだよ」
カレン「パパに会ったの? 今どこにいるの!?」
黒人の男「会いたい? 会わせてあげようか? 連れてってもかまわないよな?」
白人の男「俺はいいと思うけど」
カレン「それじゃ…… やっぱりパパは戻ってきたのね!? ママに知らせなくちゃ……」
走り出すカレンを男たちが捕まえる。
その様子を鋭く見つめるジャミラ。
白人の男「ダメだダメだ、電話は無理だな」
黒人の男「そんな時間はない」
カレン「離してよ! パパに会ったっていうのは嘘なのね!?」
その時、ヤング隊員とカイ隊員が現場に到着。
ヤング「その子を放しなさい!」
白人の男が拳銃を取り出す。
ヤング、カイ両隊員もウィナーショットを抜こうとするが──
白人の男「おっと、動くんじゃねぇよ!」
緊迫した事態を察して、展望台にいた一般市民がその場から避難し始めた。
ヤング「カレンを…… 放しなさい」
黒人の男「W.I.N.R.さんはなんでもすぐ首を突っ込むなぁ? だが撃ち合いはやめときなよ。子供が怪我するぜ」
ジャミラ「よせ……」
ずっと物陰に隠れていたジャミラが姿を現す。
カレン「パパ!!」
ヤング「ジャミラ……」
ジャミラは何も言わず、ゆっくりと男たちに近づいていく。
黒人の男「麻酔弾を用意しろ」
白人の男が速足で車のトランクに向かう。
ジャミラ「その子を放せ……」
黒人の男「娘を放してほしけりゃ、ここまで来てみな!」
ジャミラ「その子を…… うぁぁああぁっ……!!」
ジャミラの声色が変わり、苦しみ始める。
カイ「どうしたんだ……!?」
ジャミラ「ソノ子ヲ放セ──ッ!!」
咆哮と共にジャミラが巨大な怪獣に変貌。
あまりのことに、ヤング隊員もカイ隊員も呆然と怪獣を見上げるしかできない。
カレン「パパ……!?」
黒人の男がカレンを連れて車に逃げ込む。
カイ隊員はヤング隊員を下がらせ、支部基地に通報。
カイ「こちらカイ、緊急事態です! ヒルクレスト展望台に怪獣が出現!」
ベック「こちらベック、どうしたの?」
カイ隊員のヘルメットに付いているビデオカメラを通して、支部基地のモニターに怪獣化したジャミラの姿が映し出される。
サンダース「なんなんだい、こいつは……」
カイ「ジャミラだ! ジャミラ・ミラーが怪獣になったんだよ!」
ベック「怪獣に!?」
ジャミラは駐車場の車を手当たり次第に踏みつぶしている。
ジャミラの下へ向かおうとするヤング隊員をカイ隊員が引き止める。
カイ「待て!」
ヤング「離して!! 誰かを傷つける前になんとかしなくちゃ!」
カイ「むやみに近付いたら、こっちが殺されるぞ!」
ヤング隊員はカイ隊員を無視して走り出す。
カイ「待てヤング、戻れ!!」
暴れるジャミラの前にヤング隊員が立ちはだかる。
ヤング「やめて、ジャミラ! お願い!!」
動きを止め、うなだれるジャミラ。
ヤング「ジャミラ…… ねぇ、聞こえる? あなたにまだ心があるなら、人を傷つけるのはやめて!」
ジャミラは何も言わない。
そうこうしている間に、カレンを連れ去った男たちの車が現場から逃走。
カレンが車の窓を叩いて助けを求める。
ヤング「あの車を追って!」
しかし、カイ隊員がローバーを出すよりも早く、連れていかれるカレンを見たジャミラが再び暴れ出した。
カイ「ヤング、危ない!」
ついにカイ隊員がウィナーショットを抜き、ジャミラに突き付けるが、ジャミラは一瞬だけ発光すると、煙のように消え失せてしまった。
その頃、支部基地の隊長室を黒服の老人が訪れていた。
老人「元気そうだな、隊長」
エドランド「エセックス大佐…… いつから保安局は、W.I.N.R.の活動に興味を持たれるようになったんです?」
エセックス「状況の許す限り我々は、あらゆる機関に関わっていくことにしている。ところで君は、木星探査船の事故に関するある機密情報へのアクセスを希望してるようだが…… なぜだ? 失敗に終わった宇宙飛行に、どうしてこだわってる」
いやらしい目つきでエドランド隊長を睨むエセックス大佐。
言葉に詰まるエドランド隊長。
司令室の隊員たちはジャミラの話題で持ちきり。
サンダース「ちょっと待てよ、人間が怪獣に変身したって? そんなバカな、よく言うぜ! どう考えたって無理な話だよ!」
カイ「説明がつかないからって、必ずしもあり得ないとは言い切れないと思うけどな」
ベック「ウルトラマンと同じよ。ウルトラマンも、現れたり消えたりするじゃない? ジャミラが同じようなことをするまで、深く考えたことはなかったけど…… もしかしたら、ウルトラマンとジャミラは、同じ種類かもしれないわ。いつもは人間の間に紛れているけど、実は巨大化する能力があるとか……」
サンダース「ウルトラマンは人間を助けてくれるけど、ジャミラは俺たちの敵だろ」
ヤング「そうとは限らないわ! あの時ジャミラはカレンを助けようとしただけよ!」
サンダース「駐車場の車を全部踏みつぶしたんだぞ!」
ヤング「でも誰も傷つけなかったわ! ジャミラとウルトラマンの違いはたった一つよ。それは、ウルトラマンには戦う相手がいること。
バルタン星人を倒すのに力を貸してくれたから、あたしたちは彼を信じたの! でもジャミラには敵になる
侵略者がいないから、人間を倒そうとしていると思っちゃうのよ。とても怖いことだと思うわ…… 怪獣を見るとすぐに、敵としか考えないのはね」
どうにも納得いかなそうな表情のサンダース隊員。
ベック隊員も、ウルトラマン当人であるカイ隊員も、何も言い返すことができない。
そこにエドランド隊長が来る。
エドランド「みんな聞いてくれ…… ジャミラについての調査は、ただちに中止する。我々の関知するところではなくなった」
ヤング「そんな、どうしてですか!?」
エドランド隊長は何も言わない。
カイ「でもキャップ、ジャミラを野放しにするわけにはいかないんじゃないですか? 一般の人々の命が危険にさらされることになります!」
エドランド「なるほど? では私が間違っていて、この調査を続行すべきだと思う者は前に出ろ」
ヤング隊員、カイ隊員、そしてベック隊員が進み出る。
エドランド「よろしい。ベック、ヤング、カイ、君たち3人は上官である私からの直接命令に背いた。それゆえ、追って連絡あるまで停職処分とする」
ヤング「なんですって……!?」
エドランド「ここを出ていく前にバッジを返しておくように」
ベック「キャップ、バッジを返した後はどうすればいいんですか?」
エドランド「停職中に何をしようと勝手だ。ただし、私の耳には入れるな」
腹立たしさを隠そうともせずにヤング隊員が支部基地を退出。ベック隊員、カイ隊員も後に続く。
ジャミラは人知れぬ廃屋にいた。
自分が怪獣になった時を思い返すジャミラ──
木星探査船「ジュピターⅣ」の中で息絶えるのを待つだけだったジャミラ。
その時、前方から青い光が迫ってきた。
ジャミラの中に光が入り込んでいく。
それはまるで、カイ隊員がウルトラマンと一体化した時のように──
「俺はどうなるんだ──っ!?」
もがき苦しみ、叫び声をあげるジャミラ。
気が付いた時、彼は怪獣に変わっていた。
ジャミラは気がふれたように笑い出し、やがてすぐに泣き崩れる。
ジャミラ「カレン…… もう一度お前に会いたい…… 人間の心が失くなる前に……」
カレンは小屋の中に軟禁されている。
窓をいじり回すカレン。
白人の男「無駄だ、よしなって。外側から鍵がかかってるんだ」
白人の男が食事を持って入ってくる。
カレンが男を睨む。
白人の男「喜べよ、もうすぐパパに会えるぞ。お前さんに会いにのこのこやって来るぜ」
白人の男が扉を閉める。
食事が乗ったままのトレーを扉にぶつけるカレン。
エドランド隊長に言われた通り、カイ隊員、ヤング隊員、ベック隊員は独自に調査を開始していた。
カイ「ジャミラが怪獣になった時、大量のチタン反応が出たんだ。ジャミラの体を乗っ取っているものがチタンでできているとすると、このスキャナーを使って追跡・探知できるはずだ」
ベック「果たしてそんな理屈通りにうまく見つかるのかしら?」
ベック隊員が言った直後、スキャナーが反応を示す。
カイ「うまく見つかったみたいだよ?」
ヤング「どこ?」
スキャナーの反応を辿り、カイ隊員、ヤング隊員、ベック隊員が廃工場に踏み込む。
ベック「ジャミラ…… あたしよ、ジュリー。いるんでしょ? 話があるの……」
ジャミラが姿を現す。
ジャミラ「来るな…… 来るんじゃない、ジュリー……」
ヤング「大丈夫……? なんだか…… 声が変よ……」
ジャミラ「近寄るな…… これ以上コントロールできない……!」
ヤング「あたしが助けてあげるわ!」
ジャミラと彼に同化した宇宙生物の意識は、ますます混濁の一途をたどっている。
ジャミラ?「……助ケル? 助ケル、ダト?」
ジャミラ「……最後にもう一度カレンに別れを言いたかったんだ。そしたら家に帰っていいと、あいつがそう約束してくれたんだ。こんなことになろうとは思わなかった…… 助けてくれ!」
だが、その叫びもむなしく、宇宙生物が再び主導権を奪い返す。
3人とジャミラをあざ笑う宇宙生物。
ジャミラ?「フハハハハハ…… 助ケルダト? ドウヤッテ助ケヨウトイウノダ!? ワタシノチカラハ、オマエラノ想像ヲ超エテイルノダゾ!?」
カイ「ご立派…… さぁ、一体どうする?」
そこにエセックス大佐も部下の男2人を連れて現れる。
エセックス「またW.I.N.R.か。おせっかいはやめろと隊長に釘を刺したはずだがな」
ジャミラ「貴様…… カレンはどこだ! 娘に何をした!?」
黒人の男がジャミラにカレンを突きつける。
カレン「パパ、どうしちゃったの!?」
ジャミラ「その子を放せ」
エセックス「よーし、それなら取引だ。おとなしくついてくれば、娘に危害は加えないと約束しよう。嫌だと言うなら、どうなっても知らんぞ。まぁ結局のところ、小さな子供が都会で生きていくのは危険…… ということだな」
エセックス大佐がカレンの頭を乱暴に撫でる。
ヤング「どうして…… どうしてこんなことをするんです!?」
エセックス「わからんのかね、君も相当鈍いな。こいつの力を見たろう? なぜこうなったかを研究するんだよ。そして、うまくいけば同じような怪物を再現できるかもしれん」
あまりにも勝手なエセックス大佐の主張に、ヤング隊員は一度顔を背け、そして怒りと軽蔑のまなざしを向ける。
エセックス「ジャミラのような力を持った人間を1小隊分持てればアメリカは無敵だ。世界を支配できる」
ヤング「……あなたは異常だわ」
エセックス「いいや? 野心があるだけさ」
エセックスが白人の男に指示じ、ジャミラに麻酔弾を撃ち込ませる。
駆け寄ろうとするヤング隊員に黒人の男が銃を向ける。ヤング隊員を制止するカイ隊員。
エセックス「心配はいらん、ほんの2・3時間眠らせるだけだ。もう少し聞き分けをよくするためにね」
ジャミラ?「フフフフ……」
だが、ジャミラに麻酔弾は通用しなかった。再び宇宙生物の意識が表面化し、急速にジャミラの意識と融合していく。
ジャミラ?「バカメ…… オマエノ言イナリニナルカ! オレハモハヤ無力ナ人間デハナイ!! 遥カニ偉大ナ存在ダ!! サァ、大イナル『ジャミラ』ノ怒リヲ、思イ知ルガイイ!!」
カレン「パパ!!」
カレンの叫びを受け、ジャミラが一瞬だけ宇宙生物を抑え込んだが──
ジャミラ「……すまなかった、カレン。パパを許してくれ」
直後、ジャミラの体が青い光に包まれ、再び怪獣に変わる。
白人の男「おい、やばいぞ!」
黒人の男「大佐、逃げましょう!」
カレンを連れて外に飛び出すエセックス一味。
剣道の面のような怪獣ジャミラの顔からは、昼間展望台に現れた時には見えなかった青く光る目だけが覗いている。
カイ「早く外へ出るんだ!」
ジャミラが廃工場の屋根を突き破りながら巨大化していく。
カレンは自分を掴んでいるエセックス大佐の手を噛んで逃げ、ジャミラの下へ。
カレンを追おうとする黒人の男をエセックス大佐が制止する。
エセックス「もういい、ほっとけ!」
ヤング隊員とベック隊員は廃工場の外に出たが、カイ隊員はジャミラに崩された瓦礫の下敷きになってしまう。
ベック「カイは!?」
ヤング「わからない……」
ヤング隊員とベック隊員がカレンと合流。カレンを抱きしめるヤング隊員。
ヤング「走って、早く!」
3人は物陰に避難。ジャミラはエセックス一味を目指して動き出した。
急いで車を出すエセックス一味だが、ジャミラの片足に行く手を塞がれる。
一味を見下ろし、怒りの叫びをあげるジャミラ。
エセックス「うわーっ!!」
部下たち「ああーっ!!」
ジャミラは右足でエセックス一味を車ごと踏みつぶした。
本能のまま暴れるジャミラ。
一方、カイは足が瓦礫に挟まれて動けない。
必死になって懐から落ちた変身アイテム・フラッシュプリズムを掴み、そして点火する──!
ウルトラマン登場!
ジャミラの前に立ちはだかり、思いきり突き飛ばすウルトラマン。
ジャミラはすぐさま立ち上がると、近付いてきたウルトラマンを大きな手ですくい上げるように張り飛ばす。
カレン「やめて!!」
馬乗りになり、ウルトラマンの頭を両手で押しつぶそうとするジャミラ。
脱出しようともがくウルトラマンだが、ジャミラの腕力はそれを上回る。
ベック「ウルトラマンでも敵わないのかしら……」
カラータイマーが点滅を開始。ウルトラマンの青い目も、いつの間にか赤く変色している。
カレンがジャミラの下へ飛び出す。
ヤング「カレン、ダメよ!!」
カレン「お願い、パパ、やめて!!」
ジャミラの動きが止まる。
カレン「なんでこんなことするの? ねぇ、パパ、どうしてなの!?」
カレンに向き直るジャミラ。その青い目が、オレンジ色に変わる。
ジャミラの脳裏を、妻子との幸福だった日々の思い出がよぎる。
涙を流すカレン。ジャミラも悲しげな遠吠えをあげる。
跪き、ウルトラマンに自分を殺すよう懇願するジャミラ。
それを拒み、首を横に振るウルトラマン。
しかしジャミラは譲らず、幾度目かのやり取りの末、ついにウルトラマンがメガ・スペシウム光線を撃った──。
カレン「さよなら、パパ……」
ウルトラマンはカレンに少し視線を向けた後、夜空の彼方へ飛び去っていった。
ヤング隊員がカレンを優しく抱きしめ、額にキスをする。
ヤング「カイは大丈夫かしら……」
カイ「大丈夫だよ」
さりげなく3人の前に現れるカイ隊員。
ベック「どうしてジャミラは死を選んだのかしら?」
カイ「わずかに残された人間の心が…… このまま怪獣として生きることに、耐えられなくなったんだろうな」
ヤング「……大丈夫、カレン?」
カレン「あたし、大きくなったら宇宙飛行士になる。パパが怪獣になった理由を調べて、二度とそんなことが起きないようにする」
カイ「……そうだね。パパもきっと喜んでくれるよ」
カレンの目は決意に満ちていた。
最終更新:2020年11月03日 00:33