街中に突如として、巨大な怪物が出現する。
建物が砕け、人々が悲鳴をあげて逃げ惑う。
そのとき。
空間を超えて、装甲服に身を固めたヒーローが、車椅子姿で現れる。
彼がこの物語の主人公、森宮大志くん。
信じられないかもしれないけど、彼は今
宇宙から来た、めっちゃ強い怪物と戦ってるの。
大志のコーチ、深井 京が応援している。
京「大志くん、しっかり! がんばって!」
そして、これが私。
大志くんの車椅子レースのコーチ。
──の、はずだったんだけど……
ヒーロー姿の大志は、怪物の攻撃をかわしつつ、矢のように突き進む。
京「やったぁ!」
なんでこんなことになってるのかって?
え~…… 知りたい?
さぁ、どっから話そうか?
私が大志くんと初めて逢ったのは、1か月前。
車椅子レースの記録会の会場。
選手たちに混ざり、大志がレースの準備をしている。
客席では、父の森宮源、彼の営む自動車工場の若林裕也、赤城ミキ、外国人技能実習生のモーメン、大志の幼馴染の清名理央が、派手な垂れ幕で応援している。
源「大志──!」
一同「緊張すんな!」「かっこいい!」「大志くん、ファイト!」
理央「ただの記録会なのに、超うざ。ってか、眠……」
その玄関に、京がいる。
坂本教授に
『将来有望な選手がいるからコーチしてみない?』
って言われて、来たんだけど……
京「遅いなぁ……」
大学教授の坂本元男がやって来る。
坂本「ごめん、ごめん、遅くなっちゃって」
この人が坂本教授。
私の大学院の指導教授で、時間に超ルーズ。
京「おはようございます」
坂本「ほんっと、ごめん! 出かけようとしたら、うちのワンコが逃げちゃってさ」
いつも同じ言いわけ。
坂本「あっ、あっち」
正直、このときはまだ乗り気じゃなかった。
選手をあきらめてから、競技場に来るのも
なんとなく避けてたし。
コーチになるには、まだ早いかなって。
坂本が京を連れて、場内へ。
坂本「良かった、間に合った」
京「まさか、紹介したい選手って、パラ陸上の?」
坂本「そうだよ。あっ、言ってなかったっけ?」
京「(絶対、言ってない……) あの、帰ってもいいですか?」
坂本「えっ? 何何、どうしたの?」
京「だって、無理ですよ! 私にパラのコーチなんて」
坂本「……なんで、パラだと無理なの?」
京「それは……」
坂本「あっという間に終わっちゃうから。見るだけでも、ね? ほら、あの5番の子」
坂本が大志を指す。
ピストルの音で、大志ら選手6人がスタートを切る。
大志が一気に、先頭に躍り出る。
源「よっしゃぁ! 行けぇ、大志!!」
京「速っ!」
坂本「よし、いいスタートだ」
他の選手たちも追い上げ、大志はたちまち、先頭を奪われる。
坂本「あ~っ! やっぱ、初レース1500はきついかぁ」
京「でも…… あの子、楽しそう」
大志の奮闘の様子に、京は次第に魅了される。
抜きつ抜かれつの攻防戦。
大志が隣の選手と接触しそうになり、バランスを崩す。
その拍子に、大志は次々に他の選手に抜かれ、下位へと追いやられる。
大志は結局、6人中の5位でゴールする。
競技場を出た大志を、源たち一同が迎える。
源「よく最後までがんばったなぁ、大志! 偉いぞ、お前!」
大志「みんな、ありがとう」
理央「ビリから2番目だけどね」
坂本と京が現れる。
坂本「源ちゃ~ん!」
源「おぉ、元男! よく来てくれたな! 変わってねぇな、お前は。この人は?」
坂本「えっと、うちの院生の、深井京さん」
源「はじめまして。大志の父親の、森宮源です。坂本から話は伺ってます。国体の陸上選手だったって」
京「えぇ、まぁ…… 成績はイマイチでしたけど」
源「そんな方が、大志のコーチを引き受けてくれるなんて、なぁ?」
大志「うん!」
京「あの…… 大志くんのコーチ、お引き受けすることはできません」
坂本「深井さん?」
大志「えっ!?」
源「なんで?」
京「それは……」
大志「俺が障害者だから、ですよね? いいですよ、気を遣わなくて。慣れてますから」
京「あなたが障害者かどうかは関係ない。私が引き受けないのは、あなたに選手としての素質が無いからよ」
大志「……えっ?」
京「体幹が定まってないとか、技術的なことは練習で直せる。でもあなたには、選手として一番大切なものが欠けてる」
大志「一番…… 大切なもの?」
京「『どうしてもレースに勝ちたい』っていう、強い気持ち。闘争心よ! さっきバランスを崩したの、隣にいた選手とぶつからないよう、ハンドルをきったからでしょ? そんな弱い気持ちじゃ駄目。勝つためには道を譲るんじゃなくて、ぶつからないよう前に出るくらいの、強い闘争心がないと! 私は、ゴールしただけで喜ぶような選手を育てる気は無い」
京が立ち去る。
あくる日、京の大学院。
「ちょっと言いすぎなんじゃない?」
とか、思ってるでしょ?
でも、これは私の作戦。
彼をちょっとだけ、試してみただけ。
私の見込みが間違ってなければ、
彼ならきっと……
窓の外に、大志の姿が見える。
ほらね!
大志「あの、すみません。坂本研究室の場所って、どこですか?」
通行人「向こうの突き当りを、右です」
大志「ありがとうございます」
京が自ら、大志の前に進み出る。
京「どこ行くの?」
大志「深井さん! 良かったぁ、逢えて」
京「1人で来たの?」
大志「はい。深井さんにどうしても、俺のコーチになってほしくて」
京「……」
大志「本当は俺、レースで失敗して、すっげぇ悔しかったんです。でも、応援してくれるみんなに、気を遣わせたくなくて……」
わかってた。
無理して笑ってたんだよね。
大志「だから、『ゴールしただけで嬉しい』とか、俺、そんな奴じゃありません! マジで、マジでレースで勝ちたいって思ってます! 本当です!! だから、お願いします!! コーチを引き受けてください!!」
京「なんで…… 私なのかな」
大志「……あんなにはっきり駄目出ししてくれる人、今までいなかったから。本気で俺のことを選手として見てくれて、嬉しかった……」
京「本気で、勝ちたいって思ってるのね?」
大志「はい!」
京「──合格!」
大志「えっ?」
京「『コーチを引き受ける』って言ってるの。その代わり、私の練習は超厳しいから、覚悟してよ」
大志「……はい!」
こうして私は、
大志くんのコーチになったんだけど
それはまだ、
この物語の始まりに過ぎなかったのです。
遥か宇宙、どこかの別の惑星。
森の中で、2人の男性が逃げ惑っている。
1人が倒れる。
もう1人が助けようとするが、倒れた方は、「先に行け」といった仕草で、手を払いのける。
やむを得ず彼は、走り去る。
仮面をかぶった兵士たち、そして赤い角の女が現れる。
女が光線を放ち、倒れた男を縛り上げる。
その頭上で宇宙船が飛び立ち、空へ飛び去って行く。
大志が理央と、神社に参拝している。
理央「アレット・タエラ── アレット・タエラ── 行こう」
大志「うん」
理央「ふぅん。あの人、引き受けてくれたんだ」
大志「うん。でも『練習、超厳しい』って脅された」
理央「それってさ、『超無理じゃね?』みたいな練習やらせて、あんたに陸上あきらめさせようとしてんだよ、きっと」
大志「なんでいつも、そうネガティブに考えるかなぁ」
理央「期待しない方が傷つかないからだよ…… 大志もそろそろ、学んだ方がいいよ。そういうの」
大志「そんなの、とっくに学んでるし! でもさ、期待してもしなくても、どうせ駄目なら落ち込むじゃん? だったら、思いっっきり期待して、わくわくした時間があった方が、人生ハッピーじゃない?」
理央「何それ? ……てか、あんたのその超ポジティブなとこ、マジむかつく」
源が営む自動車工場に面した練習場。
京のコーチのもと、大志の猛特訓が始まる。
京「がんばって、ラストスパート! はい、残り10秒! スピードキープして、5、4、3、2、1、はい、今日はここまで! お疲れ様」
大志「はぁ、はぁ…… ありがとうございます、コーチ」
京「深井さんでいいよ。コーチって、なんか照れ臭いし」
大志「はい! ありがとうございます、深井さん。……うっ!」
京「待って。どっか痛いの?」
大志「いや…… 別に」
京「そこにうつぶせになって」
大志「えっ?」
京は大志を寝かせて、マッサージを始める。
大志「うっ!」
京「やっぱり。なんで黙ってたの? 『ちょっとでも痛いとかあったら、すぐに言って』って言ったでしょ?」
大志「これくらい、大丈夫ですから」
京「全然大丈夫じゃない! いい? 本気でレースで勝ちたいって思うなら、まず第一に、自分の体を大事にすること。それにこういう痛みは、体の歪みを教えてくれるサインでもあるの。教えてくれた方が、次の練習を考えるときの参考になる」
大志「……」
京「これからは、いいことだけじゃなくて、悪いことも全部教えて。私は大志くんのコーチだけど、一緒に戦うバディなんだよ。そのことを忘れないで」
大志「……はい」
京「体、触るよ」
工場では、一同が作業に勤しんでいる。
源は気が気でなく、練習場を覗こうとする。
若林「そんなに気になるなら、見に行けばいいのに」
源「大志に『絶対来るな』って、釘刺された」
赤城「あ~あ、社長、可哀想に」
モーメン「アッ、コーチのヒト、すごいキレイです」
赤城「嘘! モーメン、好み?」
若林「俺的には、男のコーチが良かったなぁ。細マッチョな」
赤城「私はムキムキ派。シャザム並みの」
若林「シャザム? 良かったぁ、好みかぶらなくて。社長は?」
源「ん? 俺は、そりゃ…… 馬鹿!」
京「どう? 少しは良くなった?」
大志「全然、違います! ありがとうございます」
京「良かった」
声「大志──! 夕飯できたよ」
理央が現れ、京がマッサージしている様子に一瞬、言葉を失う。
大志「えっと…… こいつ、幼馴染の清名理央です。練習で腰、痛めちゃってさ」
理央「別に何も聞いてないけど…… あっ、先生」
京「私?」
理央「先生も良かったら、夕飯一緒にどうぞって、源さんが」
大志「はぁ? いや、マジかよ、親父……」
京は森宮家に招かれる。
源「大志の母親は9年前、大志と車に一緒に乗っていて、事故に遭って亡くなりました。理央は母親がシングルマザーで、まぁ、帰りも遅いんで、こうやって夕飯作ってもらって、一緒に食べてるんです」
理央「バイト代、くれるって言うんで」
京「大志くんの足も、その車の事故で?」
源「えぇ。もう歩けないってわかったときは、あいつも私も、本当にショックでした…… でもあいつは、私より立ち直りが早いんで、私も随分、励まされました」
源「よし! それでは、いただきます」
タコとパンを独特すぎる感覚で盛りつけた料理。
京が箸をつけて口に運び、言葉を失う。
大志「あの…… 無理して食べなくて大丈夫ですよ」
理央「なんか言った!?」
大志「う、うぅん、別に」
京「そういえば、大志くんはどうして、車椅子レースを始めたの?」
大志「あぁ…… 実は俺、宇宙飛行士になりたいんです」
京「えっ、宇宙飛行士?」
源「こいつの、子供の頃からの夢なんです」
京「そうなんだ……」
大志「事故で入院してたときに、親父から、ある星の話を聞かされて──」
大志の幼い頃の回想。
源は大志に、宇宙の本を読んで聞かせる。
(源『よーし、大志、よく聞けよ。遠い宇宙の向こうに、地球とそっくりな、アラート星っていう双子星があるんだ』)
(大志『うん』)
(源『そこにはな、大志とそっくりな男の子と、あとは、お母さんがいる』)
(大志『僕とお母さん?』)
(源『あぁ!』)
大志「それから宇宙に興味を持つようになって──」
再び、大志の幼い頃の回想。
大志は夢中で、宇宙の本を読んでいる。
(源『おぉ、大志。また、その本見てんのか』)
(大志『父さん』)
(源『うん、なんだ?』)
(大志『僕、決めた。宇宙飛行士になる!』)
(源『えっ、宇宙飛行士!? ……あぁ、そうか! 宇宙飛行士かぁ!』)
(大志『僕だって、なれるよね? だって、宇宙なら無重力だし、歩けなくても関係ないでしょ?』)
(源『……あぁ、もちろんだよ! お前は絶対、宇宙飛行士になれる! 絶対なれるぞぉ!!』)
大志「今でも親父の話を信じてるわけじゃないけど、でも、宇宙飛行士になりたいって思いだけは消えなくて。それで、本気で目指そうって、体鍛えるために、車椅子レース始めたんです」
京「そうなんだ……!」
理央「なれるわけないじゃん、宇宙飛行士なんて」
源「理央!」
理央「だって、車椅子の宇宙飛行士なんて……」
大志「わかってるって。でも、今までいなかったからって、俺がなれないって決まったわけじゃないでしょ。だいたい、挑戦もしないで最初からあきらめるなんて、俺の辞書には無い!!」
源「うん、無い!! ハハハ、いいぞ、大志!! その調子だよ! がんばんなきゃなぁ!!」
理央「うざい親子……」
後日、京は大学院で、大志の練習メニューを検討している。
京「やっぱり、健常者の練習をアレンジしたものじゃ、体に負担かかりすぎるのかな……」
そこへ、陸上選手の永山杏耶が顔を出す。
杏耶「パラ陸上のコーチ、引き受けたんだって?」
彼女は永山杏耶、かつての私のライバル。
現役バリバリ、陸上競技・中距離の特待選手。
京「……うん、車椅子レースの」
誰が彼女に言ったかは、
だいたい想像がつくから聞かない。
別の席で、坂本がくしゃみしている。
杏耶「また中途半端なことするのだけは、やめなよ」
私と杏耶の話はちょと置いておくとして、
その頃、森宮家では、
大志くんの運命を大きく変える出来事が
起ころうとしていたのです。
源の工場。
源「じゃあ、はい頼むわ」
一同「はい」
源が自宅に戻ろうとすると、理央がいる。
理央「なんか、先生、急に風邪ひいて、休校とかでさ……」
源「……今からちょうど、昼飯にしようと思ってたんだ。食ってくか?」
理央「うん!」
源と大志の昼食に、理央も加わる。
大志「お前、また学校さぼったのかよ」
理央「だから、休校だって」
大志「はいはい、休校。お前の学校、休校ばっかだな」
理央がムッとして、大志のおかずを奪う。
大志「ちょ! 何すんだよ、これ、俺の!」
突然の衝撃で、家が激しく揺れる。
理央「びっくりしたぁ!」
源「えっ、なんだ!?」
大志「雷!?」
大志たちが家の外へ飛び出す。
工場一同も集まってくる。
源「なんだ、あれ?」
空が厚い雲に覆われ、あの宇宙船が姿を覗かせる。
脱出ポッドが落下してくる。
源たちが慌てて逃げ出すものの、大志は車椅子のために一足遅れる。
脱出ポッドが地上に突き刺さり、その中から1人の青年が飛び出し、大地にぶつかる。
火花が飛び散り、大志が地上に投げ出される。
父「大志!?」
大志「痛ぁ……」
源「大丈夫か、大志!」
大志「俺は、大丈夫だけど……」
若林「うわ、誰!? この美男子!」
その青年は見たこともない服装で、倒れたまま気を失っている。
先ほど、どこかの惑星で逃げまどっていた2人の内、逃げ切った1人である。
突如、青年の体から謎の光球が浮かび上がり、また青年の体の中へと戻る。
青年が目を覚ます。
大志「え!?」
京はその頃、パラ陸上トップアスリートの樋口政幸のもとを見学している。
樋口「僕の練習を見学するのはいいんですけど、それがその選手にとって参考になるかどうかは、わからないです」
京「えっ、どうしてですか?」
樋口「障害の程度が、人によってそれぞれ違うんですよね。同じ車椅子の選手でも、できることが全部一緒ってわけじゃないんです」
京「はぁ」
樋口「腹筋や背筋に麻痺がある選手もいれば、足まで動かせる選手もいます。体の使える範囲が違えば、練習メニューも変わってきますよね」
京「はい」
樋口「だから選手1人1人の特性を、しっかり見極めることが大事なんです。何ができて、何ができないのか」
森宮家。
理央は謎の青年に、食事を勧める。
昨晩と同様、タコとパスタを珍妙に盛り付けた料理。
青年はおずおずと口にするや、無我夢中で食べ始める。
大志「だいぶ元気そうだけど…… 本当に病院つれてかなくて大丈夫かな?」
理央「これだけ食べれてたら、大丈夫でしょ」
青年は理央の料理を食べつつ、いかにも満足げな表情を浮かべる。
大志「ってかさ、お前、味覚ないの?」
理央「なんか言った?」
大志「う、うぅん、何も」
理央「タコ、大好きなんだね! 私も好きなんだよ、タコ」
赤城ら工場一同が覗いている。
赤城「思い出しますね…… 『地球に落ちてきた男』」
若林「そうそう! あの美しきデヴィッド・ボウイ…… あ、赤城!?」
赤城「何やってんスか! 源さんに、彼のことは気にせず仕事しろ、って言われたじゃないっスか」
若林「メンゴメンゴ。通りかかったもんだから、つい」
理央「いいなぁ~、たくさん食べる人って。美味しい?」
青年「グー……」
理央「えっ? もしかして、喋れないの?」
青年「グー……」
理央「うっそ! なんか、超かわいいんですけど!」
源「大志、ちょっと」
大志「えっ、何?」
青年「グー、グー!」
理央「いいよ、もっと食べて!」
源は大志を別室に招き、密かに話す。
大志「えっ!? あいつが宇宙人!?」
源「シーッ! 声がでかい! そもそも、そんなに驚くことないだろ、お前。空から降ってきてんだし」
大志「それは、そうだけどさ……」
源「じゃあ、逆になんだよ!? あいつが着てるもんとか、乗ってるもんとか、地球のもんじゃないだろ!?」
大志「まぁ、そう言われれば確かに……」
源「とにかく、深井さんにはこのこと、絶対に言うなよ」
大志「えっ、なんで?」
源「当たり前だろ! 『空から宇宙人降ってきました』なんて話、誰がまともに聞いてくれると思ってんだよ!? 『また頭おかしいこと言ってる』って、お前、コーチ断られるぞ!」
大志「いや、でも……」
(京『いいことだけじゃなくて、悪いことも全部教えて。私は大志くんのコーチだけど、一緒に戦うバディなんだよ』)
大志「でもさ、親父……」
突如、激しい衝撃音が響く。
大志「えっ!? 何これ!?」
大志と源が、理央らのもとへ。
大志「大丈夫!?」
源「どうした!?」
謎の青年の表情が一変し、不意に立ち上がる。
理央「どうしたの、グー?」
大志「グーって、何?」
理央「だってこの人、グーしか言わないから、取敢えず」
その青年 = グーが、自分の荷物の中から、何かアイテムを取り出す。
そして大志の車椅子を押して、駆けだす。
大志「えっ!? えっ、何!? どうした!? ちょ、ちょちょちょ!」
そのまま外へと飛び出す。
大志「ちょっと! 何、どうしたの!? 危ないって!」
目の前には、巨大な怪物が現れている。
大志「は…… はぁ?」
源と理央も外へ飛び出してくる。
源「理央! なんだ、ありゃあ!?」
理央「何!?」
大志「何なんだよ、あいつ!?」
赤城ら工場一同も、その状況に仰天する。
一同「わぁ~!?」「何これ!?」「やばいやばい!」
グーは先ほど手にしたアイテムを、大志の手に握られせる。
そして自らは、物陰に身を隠す。
大志「えっ? 何? 俺にどうしろっていうの!?」
怪物が大志の姿を認め、次第に近づいてくる。
大志「いや、無理だって! 向って来てるよ!? 無理無理!!」
怪物が襲いかかり、思わず大志が身構える。
アイテムを手にした手から、光の壁が広がり、怪物を跳ね返す。
大志「え……!?」
怪物が激しく吠え、さらに大志に襲いかかってくる。
大志はそのアイテムを手にして、構えをとる。
全身が無数のツタのような触手に覆われて、大志は装甲服に身を固めたようなヒーローの姿へと、変身を遂げる。
大志「なんだ、これ……!?」
グーが静かに頷く。
大志「グー……!?」
怪物の舌が伸びて、槍のように大志を襲う。
源「大志、危ない!」
大志が思わず手をかざす。
光があふれて、怪物の攻撃を跳ね返す。
大志「凄い……!」
大志が決意を構え、車椅子を走らせる。
矢のような勢いで、怪物めがけて突進してゆく。
大志「うおおぉぉ──っっ!!」
最終更新:2021年07月23日 21:12