暴太郎戦隊ドンブラザーズの最終回

はるかの授賞式が行われていた。

記者「先生! 新作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』日本マンガ大賞、おめでとうございます!」
はるか「ありがとうございます……」
記者「先生、今のお気持ちは?」
はるか「目に余る光栄です…… (苦楽をともにしてきた仲間たち…… でも、私が1番会いたい人がいない。私の漫画の主人公である桃井タロウが、なぜこうなったかと言うと……)」



ドン最終話
えんができたな



数ヶ月前
シロクマ宅配便。

同僚A「そういえばタロウ、昨日畑中さんちの配達に行ったら文句を言われたよ。なんでお前がこないんだって」
タロウ「畑中さん?」
同僚B「ほら、お前が配達ついでに家の掃除をしてやってる……」
タロウ「そうだったかな? (畑中…… 誰だったかな?)」


女子生徒「じゃあね、盗作」
はるか「バイバイ!」

はるかの前にタロウが現れる。

はるか「タロウ?」
タロウ「お前、どう思っている? ドンブラザースに入ったこと……」
はるか「何それ?」
タロウ「後悔しているか?」
はるか「……全然! そりゃ最初は死ぬかと思ったし、地獄だったけど、タロウとかみんなと知り合えてさ、みんな変な人ばっかでほんと笑えるし。私、ドンブラザースに入って、前より人間が好きになった気がする、かな?」
タロウ「そうか…… よかった」
はるか「今ね、ドンブラザーズのことを漫画に描いてるんだ…… 必ずカムバックするんだから!」
タロウ「なら、もう盗作とは言われないな……」
はるか「それはいいの、いいの。かわいいじゃん……」
タロウ「それはお前のいいところだな…… じゃあな、すまなかった」
はるか(タロウ、ちょっと変……)


今度は真一にドンブラザーズのことを聞いていた。

真一「ではドンブラザーズに入ったことについて私が後悔してるか知りたいと…… どうしたのかな? 急に」
タロウ「答えろ。聞きたい」
真一「こんなことを言うのは少々照れるが、いい勉強をした。ほら、あの雲…… 風のままに流れ、消える。まさに理想の境地だな…… いくら手を伸ばしても雲には届かない。そう思い知った、だから感謝しているよ」
タロウ「そうか…… ならよかった」

タロウが去る。

ソノゴがフードを被った人物に駆け寄る。

ソノゴ「おい、この世で1番美しい女は誰だ?」
フードを脱いだのはソノナだった。

ソノナ「私だ……」
ソノゴ「ソノナ…… なぜお前が?」
ソノナ「相変わらずくだらない美人ごっこか。ああ、いいの、いいの…… 好きにして。どうせもう死ぬんだから……」


同じくフード被った人物がジュースを開けようとしていた。

ソノロク「貸せ! 俺が開けてやろう……」

ソノロクはジュースの缶を潰してしまう。

ソノロク「どうだ、俺は親切だろう!」

フードを脱がせるとそれはソノヤだった。

ソノロク「お前は、ソノヤ!」
ソノヤ「相変わらずグダグダだな、ソノロク…… 処刑する」

ソノゴはソノヤから逃げていた。

ソノゴ「いや、来ないで……」

ソノヤはソノゴに追いつき、彼女からクロスを奪い、装着。

ソノゴ「そんな……」

ソノヤの剣がソノゴを突き刺し、切り裂く。


ソノヤもソノロクからクロスを奪って装着。
一瞬でソノロクを処刑する。


夏美「ねぇ、まだ話してくれないの? 翼がなぜ指名手配されてるのか……」
翼「話しても信じないさ……」
夏美「私は信じてないってこと? でもやっぱりいいわ。翼の話を信じても信じられなくても無理だから……」

翼は夏美とのこれまでの思い出を振り返る。

夏美「ねぇ、私、聞いて欲しい話があるんだけど……」
翼「いや、話さなくていい…… 言いたいことはわかってる。お前のことならなんだってわかる……」
夏美「などと……」
翼「文字通り……」
夏美「ごめんなさい、翼……」

夏美が翼の元を去る。
タロウはそれを見届ける。

タロウ「あの女は?」
翼「夏美だ。忘れたのか?」
タロウ「そうだったか……」
翼「呆気ないもんだ。あれほど求めた女なのに、結局手が届かなかった…… はぁ——っ。何もいいことがないぜ、俺の人生…… これもドンブラザーズのせいか。だが、不思議だな…… 俺はドンブラザーズでいたい。俺は戦う…… 誰かを愛しているもののために。誰かに愛されてるもののために……」

するとムラサメが飛び去っていく。

翼「ムラサメ……」


つよしは引越しの準備をしていた。

つよし「桃井さん? びっくりした……」
タロウ「ちょっと顔が見たくなってな…… 引っ越すのか?」
つよし「はい。ここにいると、みほちゃんのことを思い出して……」
タロウ「辛いな……」
つよし「やめてくださいよ、そんなの。僕はドンブラザーズなんですから……」
タロウ「好きなのか? ドンブラザーズが……」
つよし「はい。僕の誇りです…… これからも人々を守るために生きようって。それが自分を救うことになるような気がして…… 構いませんよね? 自分のために戦っても」
タロウ「ああ…… 全然いい……」


ソノシが結婚式を襲撃していた。

ソノシ「汚い、汚い!」

そこにソノナとソノヤがやってくる。

ソノナ「相変わらずね、ソノシちゃん…… どうでもいいけど」
ソノヤ「お前、ぐにゃぐにゃだな。ぐにゃぐにゃのナヨナヨだ……」
ソノシ「お前たちは…… まさか処刑しに? ちょっと待って」
ソノナ「いいの、いいの。頑張らなくて…… もう終わりよ」

ソノシが逃亡。

ソノヤ「そういえば、ムラサメが何処かにいるはず。使ってみるか…… ムラサメ!」

ムラサメが飛来。
ソノヤはそれを掴んで去っていく。


喫茶「どんぶら」。

はるか「ねぇ、ねぇ。何か知らない? マスター……」
介人「ああ……」
真一「桃井タロウの様子が少々おかしいんだが?」
介人「知ってるよ。彼の記憶は今、リセットされつつある」


タロウがバーチャル空間にやってくる。

タロウ「ここは……」
陣「座れ……」

陣がおひつを持って出てくる。
さらに、おにぎりを握り始める。


介人「ソノイたち脳人がドンブラザーズに入り、後継者であるジロウが成長した今、彼の仕事は終わった……」
つよし「でもだからと言ってなぜ記憶を?」
介人「彼は休む時なんだ。記憶を1周して、戦いとは無縁の人生を送る……」
はるか「じゃあ、今までのことも全部?」
つよし「僕たちのこともみんな?」
真一「そっか。それでマスターは早めに桃井の誕生日を……」

ソノイがやってくる。

ソノイ「バカな…… タロウが、全てを忘れる?」


タロウがおにぎりを食べる。

タロウ「うまい……」

陣も食べ始める。

陣「うまい……」
タロウ「だが、誰だったかな? あんた…… 確か前にあったような気がするんだが」
陣「気にするな!」

タロウが消える。
陣はおにぎりをキャッチして食べる。

陣「ご苦労だったな、タロウ……」


ソノイ「仲間たちの記憶が薄れていく?」
タロウ「ああ……」
ソノイ(やはりそうなのか? タロウ……)
タロウ「あんたに頼みがあってな。これからお供たちに誘われてるんだが……」


ソノシがソノザとソノニの元に駆け寄る。

ソノシ「助けて……」
ソノザ「ソノシ!」
ソノシ「助けて……」

上空からソノヤがムラサメでソノシに斬りかかる。
ソノシは消滅してしまう。

ソノニ「お前たちは……」
ソノザ「ソノナ、ソノヤ!」


おでん屋。

ジロウ「どうしたんですか? 皆さん…… なんかしんみりして…… ねぇ?」
タロウ「桃谷ジロウ……」
ジロウ「はい」
タロウ「あとはよろしく頼む……」
ジロウ「ちょっと、やだなぁ、タロウさん。まるでどっか遠くに行ってしまうみたいに……」
主人「はい、タロウちゃん。サービス……」
はるか「タロウ、いっぱい食べてね。目一杯……」
ソノイ「鬼頭はるか。漫画を描いてる……」
ジロウ「はるか。お前の漫画を楽しみにしている……」
はるか「うん」
つよし(桃井さん……)

つよしが泣き始める。

ソノイ「雉野つよし。気が弱い……」
タロウ「雉野つよし…… 泣くな。名前のように強く生きろ」
つよし「うわあーん……」
真一「ゆっくり休んでくれ…… 桃井タロウ」
ソノイ「猿原真一。俳句を詠む」
タロウ「猿原真一…… 俺はいつか、お前の句集が読みたい」
翼「俺は…… 俺は、もっとお前と……」
ソノイ「犬塚翼……」
タロウ「誰だ? あんた。確かどこかで会ったことが気がするが」
ソノイ(タロウ…… 忘れたというのか? 私のことまで! そんな)

主人はソノイに卵をサービスする。

ソノイ「いいものですね、おでんというものは。こうして偶然同じ席について、心が和む……」
タロウ「ああ…… いいもんだ」

すると屋台に矢が刺さる。

ソノイ(これは、ソノニの矢……)


ソノニとソノザはソノナとソノヤの猛攻に苦戦していた。
そこにソノイがやってくる。

ソノイ「お前たち!」
ソノニ「ソノイ!」
ソノナ「あらソノイちゃん…… ドンモモタロウはどこなの? まぁ、どこでもいいけど……」
ソノイ「タロウは今、仲間たちと最後の時間を過ごしている! 邪魔はさせない‼︎」

ソノイたちはクロスを装着する。

ジロウたちがタロウを見送る。

ジロウ「タロウさん! 本当にどこか遠いところに……」
はるか「タロウ……」
真一「よせ。タロウは、これから新しい時間を生きるんだ……」


ソノナたちの猛攻がソノイたちを襲う。
そこへジロウたちがやってくる。

ソノイ「こいつらは脳人最強の処刑人! 逃げろ‼︎」
ジロウ「そうはいきませんよ。僕はタロウさんから後を託されたんですから!」

『ドンドン、ドラゴン』

一同「アバターチェンジ‼︎」

『ドンブラコ!』『超一流! アチョー』

ジロウたちがアバターチェンジを遂げる。

ドラゴクウ「行きますよ!」
オニ「オニ!」


喫茶「どんぶら」。
介人がタロウに封筒を渡す。

介人「君に読ませてくれと、作者から頼まれた……」

中に入っていたのは漫画だった。
内容はドンブラザーズになっている。

荒野。

ソノヤ「甘いわ!」
サル「まだまだ‼︎」
イヌ「いくぞ、雉野」
キジ「はい、犬塚さん!」

『ワッツアップ』

ソノヤ「何?」

ムラサメが刀から人型に変形。

『ドンムラサメ』

ムラサメ「僕はあなたが気に入らない。だから反抗します…… いいですよね? マザー」
マザー「思うとおりにしなさい、ムラサメ……」


漫画を読み続けるタロウ。
かつての自分と仲間との記憶を思い出していた。

ソノヤ「頃合いか?」
ソノナ「だな……」

ソノイ「世の中には、きっと美しい嘘がある……」
タロウ「美しい嘘?」
ソノイ「例えばあの月。月は嘘つきです…… でも太陽より月の方が信用できる。見つめることができるんですから」

タロウ「お前たち、何をしている?」
一同「カブトムシのギィちゃんが帰ってきた!」
タロウ「えっ? ギィちゃん、ギィちゃん!」

最後には吹き出しのないドンモモタロウが描いてあった。


ドンブラザーズがソノヤとソノナの猛攻によってピンチに陥っていた。

ソノヤ「ボロボロのボロだな。お前ら……」
ドラゴクウ「こんなところで……」
声「わーはっはっは!」
オニ「この声は……」

そこへやってきたのはドンモモタロウだった。

オニ「タロウ!」
イヌ「お前は……」
キジ「桃井さん!」

モモタロウはエンヤライドンに跨ったまま女神たちに神輿で担がれていた。

モモタロウ「さぁ、笑え! 祭りだ祭り! わーはっはっは‼︎」
ソノヤ「きたか……」
モモタロウ「情けないぞ、お供たち。立て、名乗りだ!」
サル「こんな時に……」
イヌ「名乗りだと?」
キジ「やりましょう!」
ソノイ「清廉潔白完璧主義。ソノイ!」
ソノニ「美しい花には棘がある。愛を知りたい。ソノニ!」
ソノザ「思い込んだら一直線! ソノザ!」
ムラサメ「上手に目覚めたドンムラサメ!」
ドラゴクウ「筋骨隆々、ドンドラゴクウ!」
トラボルト「トラボルト!」
サル「浮世におさらば。サルブラザー!」
オニ「漫画のマスター、オニシスター!」
イヌ「逃げ足ナンバー1。イヌブラザー!」
キジ「鳥は現実、キジブラザー!」

最後はモモタロウだけだが。

オニ「タロウ……」
キジ「桃井さん」

吹き出しに名乗りが浮かび上がる。

モモタロウ「桃から生まれたドンモモタロウ! 暴太郎戦隊!」
一同「ドンブラザーズ‼︎」

『よっ、暴太郎戦隊ドンブラザーズ』

ソノナ「これがドンモモタロウの力……」
ソノヤ「ビリビリくる……」
モモタロウ「さぁ、楽しもうぜ!」

モモタロウはザングラソードのダイヤルをぐんぐん回す。

ソノイ「何を……」
ソノニ「ソノイ」
サル「回しすぎではないか?」
ソノナ「ソノヤ……」

『ドンブラコ! 必殺奥義‼︎』『モモタロウ斬』

ザングラソードの必殺技が炸裂。
ソノナとソノヤが大爆発。
モモタロウが消える。

ソノイ「まさか……」
オニ「タロウ……」
ドラゴクウ「タロウさん」


こうして、タロウは私たちの前から姿を消した……


番組エンディングテーマに乗せて一同のエピローグ。
翼とソノニが逃亡生活を続けていた。


翼「ソノニ!」
ソノニ「はい、翼!」

2人の指名手配書も貼られていた。
懸賞金は1500万円である。

引っ越し中のつよしの後ろには夏美がいた。

夏美「あの…… 2人で夢の続きを見ませんか?」

つよしは段ボールを落とす。

真一「ここで一句。『去る君の、足音見えず、雪の夜』……」


数ヶ月後
冒頭の続き。

はるか「みんな!」

真一たちがステージに上がる。

はるか「『ドンブラザーズ』は私の漫画の全てです。なぜなら、『ドンブラザーズ』は私が生きた真実の物語です!」

そうして私は、私は私たちの物語を描き続ける……

ソノザ「もうちょっと盛り上げようか……」
はるか「ええっ? 編集長、厳しい……」

呼び鈴が鳴る。

はるか「叔母さん!」
ゆり子「ごめん! 今、手が離せないの……」
はるか「はーい……」

はるかが出る。

声「お届けものです。サインかハンコをお願いします……」

訪れた宅配員はなんとタロウだった。

タロウ「縁ができたな……」



(終)

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最終更新:2023年09月18日 06:24