バトルフィーバーJの第50話

暗黒武道「邪心流」の宗家・鬼 一角の屋敷に数名の忍者が忍び込んだ。
忍者たちが一角の部屋へ突入し、刀で布団を突くが、中には誰もいない。

忍者「いない!」「ううむ、逃したか!」

周囲を探す忍者たち。
その頭上から、あらかじめ天井に飛び上がっていた一角が落下する。
たちまちのうちに乱戦になる。

一角「何者だ!?」

忍者たちを率いる覆面男が、刀を手に一角と対峙。
覆面男は問答無用で切りかかっていく。
つばぜり合いの末、覆面男の刀を弾き飛ばす一角。だが次の瞬間、覆面男の眼から強力な光が発せられ、一角の目をくらませてしまう。
隙を突き、覆面男が右腕の鉤爪を一角の喉笛に突き刺した。崩れ落ちる一角。
それを認め、覆面男がおもむろに覆面を外す。男の正体は──秘密結社エゴスのヘッダー指揮官。

一角「ヘッダー…… なぜ、わしの命を……」
ヘッダー「先生と一度、真剣勝負がしたかった」
一角「勝つためには、手段を択ばぬ…… それが、邪心流の極意。見事であった……」

ヘッダーがとどめの一撃を見舞い、一角が力尽きる。
ヘッダーの高笑いが響く──。



将軍を狙う
__覆面鬼




エゴス本部──

ヘッダー「サタンエゴス様、邪心流を究めて参りました」
サタンエゴス「お前の師・鬼 一角を超えたか」
ヘッダー「はい。鬼 一角先生は、倉間鉄山以上の実力者です」
サタンエゴス「倉間鉄山を斬れると申すのだな?」
ヘッダー「必ず!」
サタンエゴス「倉間鉄山はバトルフィーバーの頭脳だ。頭脳を斬れば後はガラクタ同然!」
ヘッダー「出発いたします」
サロメ「ヘッダー様」

女幹部サロメがヘッダーに2枚の写真を渡す。

サロメ「この2人──倉間将軍の武術の師・藤波白雲。また、これが兄弟弟子の尾上竜山です」
ヘッダー「フフフ…… 手始めにこやつから血祭りにあげてやる」

白雲の写真にヘッダーの鉤爪が突き刺さる。


山伏に扮したヘッダーとカットマンの一団が東京の街を行く。
一方、白雲が率いる流派「一光流」の道場では、白雲自ら子供たちに剣道を教えている。

白雲「ああ、やたらに竹刀を振り回してはいかん。相手の目を見て、相手の呼吸を読んで打ち込むんじゃ」

そこへヘッダーたちが入室。

ヘッダー「藤波白雲斎!」
白雲「なんだ、君たちは」
ヘッダー「邪心流の者だ」
白雲「邪心流? すると一角の……」
ヘッダー「左様。30年前、お前が破門した鬼 一角先生が編み出した流派だ」
白雲「もはや一角とは何の関係もない! 帰ってもらおう」
ヘッダー「鬼 一角先生は、一光流を恨みながら亡くなられた。先生に代わって、わしが恨みを晴らす!」

白雲が子供たちを促す。

白雲「危険だ。君たちは帰りなさい」
子供たち「はい!」

子供たちが全員退出するかしないかのうちに、ヘッダーが錫杖を振るって襲い掛かる。
竹刀で応戦する白雲。
一瞬の交錯で、白雲がヘッダーの錫杖を叩き落とす。
すかさず両眼を光らせるヘッダー。白雲がまぶしさに目を背けた隙を突き、ヘッダーの鉤爪が白雲を貫いた。
ヘッダーが白雲の亡骸に「邪心流 二代目鬼 一角 参上」の書置きを残して立ち去る。


しばらくして、鉄山が弔問のため一光流道場を訪れた。
白雲の弟子たちがむせび泣いている。

白雲の弟子「先生……」「私たちがいれば、こんなことには……」
竜山「倉間将軍、どうして今頃邪心流が!?」
鉄山「…………」

鉄山将軍は、その時すでに、藤波白雲の死の向こうに、
何かどす黒い陰謀が渦巻いていることを感じ取っていた。

エゴス本部──

サロメ「ヘッダー様は、藤波白雲の暗殺に成功いたしました」
サタンエゴス「そうか。倉間鉄山は、火のような行動力と水のような思考力を兼ね併せ持つ男。斬り合いに持ち込むにはまだまだ…… そろそろバトルフィーバーが動き出すぞ」
サロメ「はっ」
サタンエゴス「息子・オニヒゲ怪人よ、今ヘッダーが倉間鉄山暗殺計画を進めている。バトルフィーバーに邪魔させぬよう、身辺警護せよ!」
オニヒゲ怪人「承知!」

と言いつつも、オニヒゲ怪人は自分の髭の手入れに余念がない。


ビッグベイザー内の道場にて、バトルジャパン・正夫とバトルコサック・神、そして鉄山が顔を突き合わせている。

神「邪心流とは、ずいぶん憎悪に満ちた流派ですね」
鉄山「うむ。『勝つためには手段を択ばず』『卑怯もまた兵法の(ひとつ)』…… 鬼 一角はそう主張していた。(まこと)の実力を見るには、真剣に限るとな。白雲先生を襲ったのは、エゴスの暗殺団に違いない」
正夫「エゴス……」

顔を見合わせる正夫と神。

鉄山「邪心流の鬼 一角なら、エゴスとつながっていても不思議はない。ただ怪しいのは、その二代目鬼 一角を名乗る男だ」
神「二代目鬼 一角……」


早速バトルフィーバー隊の捜査が始まった。
夜間パトロールを行うバトルフランス・京介とバトルケニア・四郎の前に、山伏に扮したカットマンの一団が立ちはだかる。
山伏カットマンを蹴散らす2人。そこへヘッダーも現れた。

京介「ヘッダー!」
四郎「貴様が白雲先生を!?」
ヘッダー「フフフ……」
京介「ケニア!」
四郎「おう!」

2人が変身しようとした瞬間、ヘッダーの両眼が光る。2人がまぶしさに目を背けた隙を突き、ヘッダーが鉤爪で切りかかった。
傷を負い、倒れこんだ2人を山伏カットマンたちが六角棒で押さえ込む。

ヘッダー「雑魚に用はない」

ヘッダーが果たし状を置いて立ち去る。


ビッグベイザー指令室──

果し状
貴殿の一光流が勝つか
私の邪心流が勝つか
日時、明朝六時
場所、(あら)()

京介「まるで時代劇だね」
鉄山「ヘッダーの狙いは、このわしだ」
神「将軍、決闘に応じてはいけません。敵の思うつぼです」
正夫「我々に手を焼いて、将軍暗殺をもくろんでいるんです」
九太郎「逃ゲルガ勝チ、逃ゲルガ勝チ」
鉄山「逃げるが勝ちか…… なるほどな」

鉄山が不敵な笑みを浮かべる。


翌日、荒野峠、午前六時。
ヘッダーとサロメはすでに現場に到着していたが、鉄山は一向に姿を見せない。

ヘッダー「ええい、遅い! 鉄山はいったいどうしたんだ?」
サロメ「あっ、来ました」

バトルフィーバー隊のパトロールカーがやって来る。
まず、今回も山伏カットマンたちが最初に出撃。パトロールカーを取り囲み、ドアを開けるが、中はもぬけの殻。

カットマン「いないぞ!」「逃げられたか!」
ヘッダー「ぬうっ、謀られたか!」

そこへ変身したバトルフィーバー隊が立ちはだかる。

ジャパン「ヘッダー!」
ヘッダー「バトルフィーバー……!」
ジャパン「将軍に代わり、我々バトルフィーバーが相手になる!」
オニヒゲ怪人「待て~! ヘッダー、俺に任せろ」
ヘッダー「余計なことを! 我々の目的は鉄山ひとり。雑魚に用はない、退け!」

ヘッダーたちが撤退。

ジャパン「逃げられたか」
ケニア「ちっくしょう……」

竜山を乗せ、国防省関東本部基地を出発した1台の車が、トラックに道を遮られる。
もちろんエゴスの仕業だ。

竜山「貴様だな、白雲先生を襲ったのは!」
ヘッダー「一光流は、我が邪心流の宿敵……」

ヘッダーが眼を光らせる。まぶしさに倒れ伏す竜山。


ビッグベイザーでは、白装束に着替えた鉄山が出撃の準備を整えていた。
それを必死に止めようとする正夫たち。

正夫「待ってください、将軍!」
鉄山「これ以上奴らの勝手にはさせん!! 尾上はわしの弟も同然だった。許すわけにはいかん!」
正夫「尾上参謀を暗殺したのも、将軍を刺激して決闘をするためです!」
鉄山「ならばわしが応じてやろう」
正夫「いけません!!」
神「将軍!!」
九太郎「逃ゲルガ勝チ、逃ゲルガ勝チ」
鉄山「…………」
神「あなたはバトルフィーバー隊の頭脳だ。頭脳が剣を振り回してはいけないと思います」

鉄山と神がにらみ合う。
神はたとえ一戦交えててでも鉄山を行かせない覚悟だ。
鉄山は引き下がり、ビッグベイザー内の道場で素振りを始める。

恩師に続き、兄弟弟子まで殺されてしまった鉄山将軍の胸は、
張り裂けそうであった……。

程なくして、都下で遊んでいた連絡員・ケイコとその弟・マサルがエゴスに拉致された。
ケイコが鉄山に電話させられる。

鉄山「何、修験者の一団に!?」
ケイコ「将軍、そうなんです。マサルも一緒なんです」

ヘッダーが電話を取り次ぐ。

ヘッダー「明朝、荒野峠へ迎えに来い。ただし、1人で来ること」

ヘッダーが電話を切る。

鉄山「もしもし!? おい!! もしもし!!」
四郎「くそぉ、なんて卑怯な奴なんだ! 何もマサル君まで……」
京介「今度こそ逃がさんぞ! 叩きのめしてやる」
鉄山「……明日は、わし1人で行くぞ」
マリア「えっ!?」
神「将軍! ダメです!」
鉄山「これ以上、我慢ができるか?」
正夫「将軍は…… 我々の命です」
鉄山「……命か。命は、大事にせにゃいかんな……」

鉄山が指令室を去る。

マリア「よかった、思いとどまってくれて」

数分後、マリアが鉄山の自室に茶を持っていく。
しかし、そこに鉄山の姿はない。

マリア「将軍!?」


指令室──

マリア「大変よ、将軍が!! 見て……」

一光流の名誉を守るためにも
是非とも邪心流を倒さなければならない

荒野峠にはケイコとマサルが磔にされている。

サロメ「来るでしょうか、倉間鉄山は」
ヘッダー「来る、必ず来る。命を賭けても子供を救う、そこがあの男の弱点だ」

そこへ白装束姿の鉄山が現れた。堂々たる立ち振る舞いだ。

ケイコ「鉄山将軍……」

ついに鉄山とヘッダーが相対した。

ヘッダー「よく来た、鉄山」
鉄山「あの2人を逃がしてやれ。約束だ」

ヘッダーが無言でサロメに指示を出し、ケイコとマサルを解放させる。
拘束を解かれた2人が鉄山に抱き着く。それを受け止め、マサルの頭を優しく撫でる鉄山。

鉄山「さぁ、早く行きなさい」
ケイコ「でも……」
鉄山「行くんだ! 急げ!」
ケイコ「……はい」

ケイコが泣きじゃくるマサルを促し、物陰へ向かう。
ヘッダーの目配せを合図に、山伏カットマンたちが鉄山を取り囲み攻撃を開始。
鉄山の猛攻に、1人、また1人とカットマンが切り捨てられていく。
鉄山の刀とヘッダーの鉤爪、お互いの視線と視線がぶつかり合う。
鉤爪で腕を傷つけられる鉄山だが、それを気にも留めない。

ヘッダー「かぁっ!!」

ヘッダーが必殺の眼光を放って勝負をつけようとする。
すかさず刀を盾にして、光を反射させる鉄山。
ヘッダーの眼光はヘッダー自身の眼を焼いた。

ヘッダー「うわぁーっ!!」

坂を転がり落ちるヘッダー。
そこへオニヒゲ怪人が加勢する。

ヘッダー「御子! 鉄山は私めが!!」

視力を回復させたヘッダーは、意趣返しに煙球を投げつけた。

鉄山「卑怯な……」
ヘッダー「たわけ! 卑怯も兵法なり、これが邪心流だ!」

目を封じられた鉄山は、耳を頼りにヘッダーの位置を探る。

ヘッダー「死んでもらうぞ、鉄山!!」

鉤爪を振りかざして襲い掛かるヘッダーに、起死回生の一太刀が決まった。
鉤爪を切断され、返す刀で切り伏せられるヘッダー。
しかし、鉄山の肩口にも鉤爪が突き刺さる。

サロメ「ヘッダー様!!」

ヘッダーに駆け寄るサロメ。

サロメ「やれ!!」

カットマンたちが鉄山に襲い掛かる。
そこへコマンドバットが飛来。

ジャパン「バトルジャパン!」
コサック「バトルコサック!」
フランス「バトルフランス!」
ケニア「バトルケニア!」
ミスアメリカ「ミスアメリカ!」
ジャパン「アメリカ、将軍を頼む」
アメリカ「はい!」

バトルフィーバー隊とカットマンの戦いが始まったのもつかの間、巨大なオニヒゲロボットが姿を現した。

ケニア「また出やがった!」
オニヒゲ怪人「弟よ、やれ~!」

オニヒゲロボットの容赦ない攻撃がバトルフィーバー隊を襲う。
負傷した鉄山をかばって走るミスアメリカ。
オニヒゲ怪人も杖を振り回してバトルフィーバー隊を攻撃。
鉄山を退避させ、戻ってきたミスアメリカも戦闘に加わる。
オニヒゲ怪人は放り投げた杖を遠隔操作してバトルフィーバー隊を苦しめる。
バトルジャパンが杖を掴んで投げ返し、飛び蹴りで応戦。

ジャパン「スクラムだ!」
一同「ペンタフォース!!」
オニヒゲ怪人「ぐわぁ──っ!」

合体武器のペンタフォースが炸裂。
オニヒゲ怪人は爆死したが、オニヒゲロボットの攻撃はなおも続く。

ジャパン「バトルシャーク!!」

ビッグベイザーからバトルシャーク、そしてバトルフィーバーロボが出撃。

ジャパン「ジェット・オン!」

5人がバトルフィーバーロボに乗り込み、オニヒゲロボットとの一騎討ちが始まった。
オニヒゲロボットの投げつけた杖を難なく払い落とし、槍「スティックアタッカー」を投げつける。
スティックアタッカーに腹部を貫かれるオニヒゲロボット。

ジャパン「電光剣・唐竹割り!!」

とどめの必殺剣が炸裂。オニヒゲロボットが真っ二つに斬り裂かれて大爆発、もうもうと爆煙があがる。


エゴス本部では、鉄山の剣に倒れたヘッダーが手厚く弔われていた。
一方、ビッグベイザー指令室では、バトルフィーバー隊がヘッダーの鉤爪を調べている。

正夫「見事な切り口だ。さすが鉄山将軍」

神が鉄山の刀を抜く。

神「刃こぼれ1つしてない」
京介「ヘッダー指揮官を斬ったっていうのにな」
四郎「丈夫な刃だなぁ」
鉄山「いやいや…… ケニアの()には、敵うまいよ」
四郎「それじゃあ俺の歯は、怪獣みたいじゃないですか!」
マリア「怪獣以上でしょ?」
四郎「あ~、泣ける~」

ついに大幹部・ヘッダー指揮官を打ち倒し、ようやく鉄山にもバトルフィーバー隊にも笑顔が戻った。
だが、ヘッダーを失った今、サタンエゴスは次にどんな手を打ってくるかわからない。
バトルフィーバー隊の戦いも、いよいよクライマックスを迎えようとしている。



つづく



※ この続きはバトルフィーバーJの第51話をご覧ください。

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最終更新:2024年05月29日 01:18