ハットリくんの故郷、伊賀の里。
猿飛猿助・雲隠才蔵・石川五助の3人の少年忍者が、ハットリくんの父・ハットリジンゾウのもとに参上する。
五助「猿飛猿助 雲隠才蔵 石川五助の三名 まいりましたでござりまする」
ジンゾウ「三人の者 ごくろうである この三つの密書をカンゾウのもとにとどけてほしい! ただし三名とも それぞれわかれて行動すべし! それぞれ別べつの道を走って カンゾウのもとへ行くのじゃ!」
猿助「ハハーッ 承知しましたでごサル では……」
一同「では……」「では……」「では……」「ハットリくんのとこでおちあおう!」
夜、眠りについていたハットリくんが、何かに気づく。
近所では、ケムマキが忍者猫・影千代を引き連れ、忍法修業に励んでいる。
ケムマキ「甲賀忍法『豹走り』!」
影千代「とっとっと…… とっとっ…… 足がもつれたニャ~」
ケムマキ「ばかっ! 猫のくせに『豹走り』ができなくてどーする!?」
影千代「あ~っ!!」
ケムマキ「ン!?」
五助が、夜空から舞い降りて来る。
ハットリくんはすでに、屋根の上で待ち受けている。
ハットリ「ム!」
五助「やあ ハットリく──ん!」
ハットリ「お── 五助くん 待っていたでござる」
五助「ハットリくん どうして ぼくがくるのがわかったの?」
ハットリ「いや~ 勘でござる しのび谷から三匹の忍者がこっちへむかった…とひびいたでござる」
五助「さすがハットリくんだ 予知能力がすごいね!」
ハットリ「いや~ それより用は何でござる?」
五助「これを父上からあずかったでござる」
五助が、密書を渡す。
ハットリ「あとの二つは?」
五助「まもなく才蔵と猿助が持ってくるはず!」
ハットリ「ム!」
猿助が到着する。
猿助「やあ!」
ハットリ「猿助くん 遠路はるばる ごくろーさまでござる」
猿助「ハットリくんこそ 元気でなによりでごサル 父上よりたのまれ 密書を持ってきたのでごサル」
ハットリ「これで密書が二巻! しかしこの密書は三巻そろわないと解読できないのでござる!」
猿助「才蔵が三巻目を持ってくるはずでごサル また あいつは道草をくっているのかも……」
五助「おれの勘では 才蔵はノンビリしてるから明日になると思うよ」
ハットリ「それではとにかく 明日まで待たないといかんでござるな」
五助「それではハットリくん おれたちはこれで……」
ハットリ「今晩とまっていってはいかがでござるかな」
猿助「いや すぐ帰れという指令でごサルから」
五助「では……」
猿助「失礼するでごサル」
ケムマキたちは、陰から様子を窺っている。
ケムマキ「う~ん ハットリのやつ 雲隠才蔵のくるまで待つ気だぞ なんとか三つそろったところであの密書をうばいたいものだ!」
影千代「このままの姿勢で待ってるのかニャ~」
翌朝、才蔵が到着する。
才蔵「あっ ハットリくーん お・は・よ ハットリくん これ あずかってきたよ」
ハットリ「待っていたでござる これで三巻そろった!」
ケムマキ「よーし! 今だ!」
影千代「あっ ボス! ちょっとあれを!」
ハゲタカ忍者のハゲベエが、空の彼方から飛んで来る。
ケムマキ「ややっ! あれはもしかしたら 甲賀のハゲタカ忍者ハゲベエ!!」
ハゲベエ「クワッ クワッ クワッ」
ケムマキ「なにっ!? 甲賀から密書を持ってきたって!?」
ハットリくんは3つの密書を揃え、内容を読み取る。
ハットリ「ム! つ ついに! ク・ク・ク…」
一方でケムマキも、ハゲベエの持って来た密書を見て──
ケムマキ「ウッ ウ・ウ・ウ…」
影千代「ボス! いったいどうしたというニャ~?」
2人とも密書を前に、涙をこぼしている。
三葉家の朝。
ケン一が目覚めると、目の前にハットリくん、シンゾウ、獅子丸が揃っている。
ハットリ一「ウーン あっ!」
ハットリ「ケン一氏 おはようでござる!」
獅子丸「ワン!」
シンゾウ「ケンちゃん おはよう!」
ケン一「どうしたの? みんなそろって!」
獅子丸「ちょっとケンちゃんにあいさつをと思ってワン」
ケン一「あいさつ…? なんのことだい?」
ハットリ「それよりケン一氏 時間が……」
ケン一「ワ── チコクする~」
ハットリ「心配めさるな せっしゃがおくってあげるでござる」
ケン一「しかし おっかしいな いつもはおくってくれないのに!」
ハットリ「今日はとくべつでござる」
獅子丸「わしもおくっていくワン」
ハットリくんはケン一を背負い、風のように駆けだす。
シンゾウたちも続く。
ケン一「ウヒョー これから毎朝たのむよ」
その途中に、ケムマキと影千代がいる。
ケン一「あっ」
ケムマキ「ケン一くん おはよう」
ケン一「ケムマキくん こんなとこで何しているんだ?」
ケムマキ「いや! ちょっと君の顔を見ておきたくて……」
影千代「ニャリ~ン」
ケムマキは、わずかに涙ぐんでいる。
ケムマキ「じゃ さようなら……」
ケン一「へんなやつ……」
ケン一は、ハットリくんのおかげで遅刻することなく、学校に到着する。
ケン一「やあ おかげでたすかったよ またたのむよね」
ハットリ「いや 今日が最後でござる」
ケン一「またまた~ そんなかたいこといって……」
授業が始まるが、教室にケムマキがいない。
夢子「ケムマキくん 今日はおやすみかしら…」
ケン一「それが今朝 ケムマキくんもハットリくんも なんかへんなんだよ…… あーっ! も もしかしたら!」
ケン一が授業を放り出し、教室を飛び出す。
先生「こらーっ! ケン一くん どこへ行くんだ!?」
ケン一が自宅へ急ぎ、自室に駆けこむ。
ハットリくんからの置き手紙がある。
ケン一「あーっ!!」
突然のことでござるが 父より
ただちに帰国するようにと密書がとどいたゆえ、
シンゾウ、獅子丸ともども伊賀へ帰るでござる。
ほんとうに長い間ありがとうござる。
万感胸にせまりて、これ以上かけないでござる。
父上、母上にはくれぐれもよろしく
おつたえくだされ。
ケン一の手がワナワナと震え、涙があふれ出す。
ケン一「ハットリく~ん ハットリく~ん ハットリく~ん」
ハットリくん、シンゾウ、獅子丸は涙ながらに東京を去り、伊賀の里へと旅立つ。
そしてケムマキと影千代もまた、甲賀の里へ──
ハットリ「さらばでござる ケン一氏…… またいつかどこかで」
シンゾウ「ケンちゃん 元気でね~ しのび谷へ遊びにこいよ~」
獅子丸「ワン!」
影千代「ニャリ──ン」
最終更新:2024年11月30日 13:25