超者ライディーンの第1話 (漫画版)
学生サッカー大会の試合場。主人公・鷲崎飛翔の所属するチームが、一方的に押されている。
「くそっ!」「飛翔はまだか!?」「遅刻しやがって! ぼこぼこにしてやる!」
飛翔は試合の場にはおらず、未だに街中で試合場への道を急いでいた。
飛翔「はあ。はあ。まずい! ぼこぼこにされちまう! サッカー部のけりは痛いぞ!」
1枚の羽根が宙を舞い、飛翔を追っていく。
その様子をサングラス姿の金髪男性、エース羽田が陰から見ている。
試合場では、飛翔側のチームの選手たちが、敵選手のラフプレイで次々に痛めつけられている。
「く……」
「がまんしろ!」
「でも……、あいつら、きたない手ばかり……」
「それでも、おれたちはきたない手はしない! 正々堂々と強いチームをめざそうってちかいあったじゃないか!」
「……」
「もうしばらくのしんぼうだ。飛翔さえくれば、逆転できるさ」
とある民家の庭で、主婦が家事をしている。飛翔が庭に飛び込み、塀を乗り越える。
主婦「ちょ、ちょっと!」
飛翔「すみません。ここ、近道なんです!」
主婦「あなた、そこは!」
飛翔「え!?」
塀を超えると、そこは川。
飛翔「わあああああ!」
そこへ飛んできた先の羽根が、飛翔の腕に貼りつく。
飛翔は川に落ちることなく、体が宙に浮く。
飛翔「う!?」「こ…、これは!?」
突如、羽毛の表面に眼球が見開く。
飛翔「うわあああ!」「ああああ!」
エース「始まったか……」
飛翔「うああああ」「おおおおおお!」
飛翔の肉体に変化が起きる。服がはじけ飛び、次第に肉体が姿を変えてゆく。
「ラ…、ラ、ラ……、ラーイッ!!」
飛翔は鋼鉄の肉体と翼をもつ異形の戦士、ライディーンイーグルへと変身を遂げる。
エース「おお! 新たなライディーンの復活だ」
そのままイーグルが、川のほとりに落下。
エース「じき変身が解けても、体がショック状態で二、三日は動けまい。救急車でも呼んでやるか」「む!」
イーグルが全身汗だくで、立ち上がる。
イーグル「うう……。うぬうう……」
エース「ばかな! 復活したばかりだというのに!」
イーグル「し……、試合ぃ!」
エース「な…、なんてやつだ!」
脱兎のごとく、街中へ駆け出すイーグル。
イーグル「どいた、どいたーっ!」
街を行く人々は、イーグルの異形の姿にも見向きもしない。
突如、目の前にトラックが迫る。
イーグル「ひ! うわぁ!」
トラックのほうが砕け散る。イーグルはまったくの無傷。
イーグル「え? え?」「ラ、ラ、ラッキィィ!?」
エース「自分の変化に気づいていないのか。それともバカなのか… しかし、そのうちいやでも気づくことになる」
今度は目の前に、ベビーカーを押す女性。
イーグル「うわわわわ! どいて、どいてーっ!」
咄嗟にイーグルが大ジャンプし、女性を避ける。
イーグル「セーフ! しかし……、おれ、こんなにジャンプ力あったっけ?」
イーグルは、ビルの高さにまで跳躍している。そばのビルの窓ガラスに、自分の姿が映る。
イーグル「げ!!? な…、なんじゃ、こりゃ。おれ!? なんか、羽までついてるし……。はっ! んなことやってる場合じゃねーんだ! 試合ぃぃ!」
空の彼方へ飛び去るイーグル。
エース「試合やってる場合じゃないと思うがね。そんなんじゃ…。その体には、世界じゅうの軍隊と互角に戦えるほどの力があると言っても、信じないだろうな」
ようやく試合場に、イーグルが到着。
イーグル「ちぇっ。負けてんじゃん! みんな、お待たせ! スーパーフォワード大到着!! かんとく、交替だ!」
突如、試合会場が光に包まれる。
イーグル「ああっ!?」
会場が大爆発。火柱が上がる。
イーグル「う……。みんな……」「あ……、あああああああ!?」
無傷のイーグル1人を残し、会場に居た人々は選手も観客も倒れている。
イーグル「うわああああ! 銀城! 松葉! ああ。きゅ…、救急車! いや……、病院持ってこい!」
しかし皆はすでに変わり果てた姿で、ピクリとも動かない。
イーグル「だめだ……。黒こげ。もう死んでる!! ああ……、生きてるやつ、いないか!」
突然、無数の光弾が降り注ぎ、イーグルに突き刺さる。
イーグル「ぐああああ!」
空の彼方から、異形の魔物が舞い降りてくる。
魔物「カ! カ! カ! カ! カーッカッカッカッカッ! ライディーンといえども、目覚める前だとちょろいのねん。仲間を殺してやっただけで、すきだらけなのねん」
イーグル「き……、きさまがみんなを!?」
魔物「チッ! チッ! チッ! 『きさま』じゃないのねんん。超魔バーサーカーさまなのねん!!」
魔物の鋭い爪が、イーグルに炸裂。
イーグル「ぐは!」
魔物「そろそろ死ぬのねん。エレクトリカルクラッシャー!」
強烈な攻撃がイーグルを苦しめる。
イーグル「ぐわああああああ!」
次の瞬間。飛翔は体一つで、宇宙空間に漂っている。
飛翔「な……、なんだ、ここは。宇宙?」
イーグル「おれの心の中だよ」
飛翔「えっ!?」
目の前に、ライディーンイーグルがいる。
飛翔「あ。さっき、おれがなってた……」
イーグル「なんだよ、お前 今の戦いは!」
飛翔「はぃ?」
イーグル「ライディーンの中でもよ、スーパー強ぇおれの体使って、あのざまは、なんだっつってんだよ! 弱っちすぎるぜ、てめー。ったく、ライディーンの名が泣くぜ」
飛翔「す、すんません」
イーグル「わかりゃいいんだよ」
飛翔「ところで、あのー」
イーグル「なんだよ」
飛翔「『ライディーン』って、なんすか?」
イーグル「……。笑うなよ」
飛翔「へ?」
イーグル「おれたちは天使だ!」
ポカンとする飛翔。
イーグル「笑いたいんだろう。がらの悪い天使だなーとか思ってんだろう」
慌てて飛翔が、首を横に振る。
イーグル「まぁいい。超古代── 『聖創世大戦』と呼ばれる戦いで、超魔から世界を守った天使の一族。それがおれたちライディーンよ。しかし、超魔どもはよみがえり、今また世界を闇でおおいつくそうとしてやがる!! おれたちライディーンも目覚めて、超魔どもをぶちのめさにゃならねぇ」
飛翔「そ…、それで、おれの体を乗っとったんすか」
イーグル「ばかやろー! もともとてめぇはおれなんだよ」
飛翔「へ?」
イーグル「すっかり忘れちまってるみてぇだが、ライディーンの魂まで忘れることはできねぇ。見ろ」
黒焦げのサッカーボール。
飛翔「そ、それは!」
イーグル「さっきまでおまえの仲間が必死でけっていたボールだ。そいつらといっしょに黒こげにされちまった」
飛翔「みんな……」
イーグル「おれぁ、こんなことされてだまっちゃいねぇ。こんなことをするやつはたたきつぶす! ライディーンはそういう戦いを続けてきたんだ!」
魔物に苦しめられていたイーグルが、力を振り絞る。
魔物「ねん!? ば…、ばかな。動けるはずないねん!」
イーグル「やっと……、思い出したぜ!!」
魔物「め、目覚めたのねん!? ヒィ!」
イーグル「オラオラオラオラ、にがすか! オラオラオラオラ!!」
イーグルの連続パンチが、容赦なく魔物へ炸裂。
魔物「な……、なんか、ガラも悪くなってる……」
さらにイーグルが、小さな武器を手にする。
魔物「う!? 武器? でも、なんかたいしたことなさそーねん」
剣身が伸び、その武器が巨大な剣と化す。
魔物「うわああ! ず、ずるぃぃ! バーサーカーバリヤー!!」
イーグル「うおおお! イーグル・ソード!!」
イーグルの剣が一閃。魔物をバリヤーごと叩き斬る。
魔物「核攻撃をもふせぐ、おれのバリヤーを…」
大爆発──! 魔物は最期を遂げた。
イーグル「わが剣に切れぬものなし!!」
やがて消防車が到着。消防士たちが鎮火にあたる。
消防士たち「急げ!」「ガスのチェックは!」
イーグル「消防の人! もう爆発はねぇからよ。犠牲者を収容してやってくれねぇか」
消防士たちはその言葉に耳を貸さず、作業を続けている。
イーグル「おい! 人の話聞いてんのかよ!」
そこへ、エースが現れる。
エース「やめとけ。ライディーンや超魔は人間の眼には見えないんだ」
イーグル「な…、なに!? てことは、おまえも……」
エース「そう。人間じゃあない」
イーグル「仲間なのか?」
エース「さぁ?」
エースが変身。その姿は、イーグルと同じライディーン──
「それは、これから決まる!」
最終更新:2013年12月24日 04:01