森の奥には願いのかなうチョコレート屋があるのよーーー・・・
森の近くの公園で、少女、阿部まりあが歌っていた。
女の子「ねえねっ、あれって歌手の阿部まりあじゃない!?」
「えっ!?どこどこ!?」
まりあ(やばいっ)
まりあがその場から離れていく。
女の子「あれ?気のせいかなーーー」
まりあ(いけない、いけない。こんなところで歌ってらバレちゃう。私が歌手だってことーーーー・・・)
まりあは黒猫を見つけた。
まりあ「わ!ノラ猫かな、おいで♡」
まりあは黒猫を膝に乗せて、ベンチに座ってまた歌い始めた。
まりあ(あーっ、やっぱり歌うのって楽しい!歌手になれてサイコーにうれしいっ)
?「カカオ、こんなところにいたの」
そこに、黒ずくめの服装をした少女が来た。
まりあ(わ・・・・・不思議な雰囲気の女の子・・・芸能界にもいないうよ、こんな子・・・)
少女「その子・・・・私の猫なの・・・・」
まりあ「えっ、あっ、ごめんなさい」
少女「かまわないわ、遊んでくれていたのでしょ。よければ、このお店にいらっしゃい。飲み物でもごちそうするわ」
少女がまりあにハート型のチラシを渡した。
『願いのかなうチョコレート屋 ショコラ・ノワール』
まりあ「「願いのかなう・・・チョコレート屋」?あの・・・これって・・・」
少女は既に姿を消していた。
マネージャー「まりあ!仕事に行くぞ!」
まりあ(もういないーーーーー・・・)
TV局では、同じ歌手の中州亜矢が待っていた。
亜矢「まりあーーーっ、こっちこっちーっ」
まりあ「あっ、亜矢さん。亜矢さんもMバラ出るんですねっ」
亜矢「そーなの!グーゼン」
、ありや「よかったぁ」
亜矢「えーーー、なんで?
まりあ「亜矢さんと一緒なら安心だなって。私の大ソンケーするセンパイですからっ」
亜矢「こいつーーーっ、かわいいこと言ってくれるじゃん」
AD「本番はじめまーーす」
司会「はじまりました、Mパラダイス!今日もごうかゲストをお呼びしています」
「さあ!まずは今週のヒットチャートからまいりましょう!」
「1位、阿部まりあちゃん「ピエタ」。そして4位に中州亜矢ちゃんの「HOLD!」ランクイン」
「デビュー曲が10曲連続1位ですね!」
まりあ「あ・・・ありがとうございます」
客席からまりあへの歓声が飛ぶ中、亜矢は険しい顔をしていた。
番組終了後。
まりあ「おつかれさまでしたー」
亜矢「まりあ!このあと一緒に食事に行かない?」
まりあ「わぁ!行きます!」
亜矢「決まり!じゃあ、あとでスタジオ前のレストランで待ちあわせね」
まりあ「はい!」
その後、まりあはレストランに行った。
まりあ(亜矢さんおそいなー)
早川「「あれ?阿部まりあちゃん?だれかと待ちあわせ?」
まりあ(えーーーーと・・・俳優の早川翔さん!)
「はい、中州亜矢さんと・・・」
早川「えっ、マジで。俺も亜矢ちゃんに呼ばれてきたんだけど・・・」
まりあ「えっ、そうなんですか?」
亜矢は、レストランの外からまりあと早川が談笑している所を携帯のカメラで撮って、ニヤリと笑った。それから、何食わぬ顔で二人の席に行った。
亜矢「まりあー、翔さーん、おまたせっ」
まりあ「亜矢さん」
亜矢「翔さんも実は呼んでたんだー、3人の方がたのしーしー」
まりあ「なぁんだ、そうだったんですかー」
翌日。まりあは寝ていたところを事務所からの電話で起こされた。
まりあ「はい・・・」
マネージャー「まりあ!?TVつけろTV!!」
まりあ「え?」
キャスター「モーニングワイドの時間でーす。な、なんと!!歌手の阿部まりあさんと俳優の早川翔さんのデートをキャッチ!超ビッグカップルの誕生でーーーーす!」
まりあ「な・・・何これ」
社長「まったくとんでもないことをしてくれたね!!この大事な時期にスキャンダルなんて!!」
まりあ「そんな・・・私は亜矢さんに食事にさそわれたんです!早川さんはたまたま・・・・」
社長「じゃあ、このスキャンダルはどう説明するんだ」
亜矢「失礼します」
まりあ「亜矢さん!」
亜矢「申し訳ありません!元々3人で会う予定に私がおくれたんです。まりあが、どうしても早川さんに会いたいって言ってたから、会わせてあげたくてーーーーーー・・・」
まりあ(えーーーーーーーーーー・・・・)
副社長「そういうこと。まりあ、もっと慎重に行動してね」
社長「でも、このスキャンダルがおさまるには時間がかかるぞ・・・」
まりあ「亜矢さん、どーしてあんなうそを・・・」
亜矢「あの場はおさまったし、いいじゃない!」
マネージャー「まりあ・・・仕事に行こう・・・」
まりあ(でも、それじゃあなんの解決にもならないよ・・・)
「!?」
まりあが事務所から出た所に、待ち構えていた相川のファンが生卵を投げてきた。
ファン「いた!阿部まりあ」
「翔君にやらしーことすんな!!」
まりあ「きゃあ」
マネージャー「まりあ、早く車に乗って!」
まりあ(どうして、どうしてこんな目にーーーー・・・)
スタッフ「控え室に着がえがあるから、元気出してまりあ・・・」
まりあ「・・・はい」
まりあが入った控え室は、酷い落書きがされて、着替えも破かれていた。
まりあ「きゃあああっ」
(どうしてここまでされなきゃいけないの)
マネージャー「まりあ!しっかり!」
まりあが倒れた。
マネージャー「まりあ!」
AD「本番いきまーす。生放送ですのでよろしくお願いしまーす」
タレント「阿部まりあって、男を何人もとっかえひっかえしてるらしーよ」
「翔君、遊ばれちゃってじゃわいそーー」
AD[まりあちゃん、次です]
まりあ(こわい・・・みんなが私を嫌ってるんじゃないかって思ってしまう)
(こ・・・声が、出ない・・・・)
マネージャー「な、何してるんだ、まりあは!生放送だぞ!ああっ、曲がはじまってるのに・・・!!」
「阿部まりあは、もうおしまいだーーーーーー・・・」
亜矢「ふふっ、まさかこんなにうまくいくなんてね。あとから来たくせに私を追い抜くなんてーーーー・・・許せないのよーーー!!」
まりあ(だれか、だれか助けてーーーーー!!お願いーーーー・・・)
逃げ出したまりあは、「チョコレート ノワール」の前に来た。
まりあ「ここは・・・っ、私、無我夢中で走って・・・願いのかなうチョコレート屋、ショコラ・ノワールって・・・!」
少女「来ると思っていたわ・・・」
まりあ(―――あ!!)
そこには、冒頭の少女がいた。
まりあ「あなたは・・・あの時の・・・!」
ショコラ「私はショコラティエの哀川ショコラ・・・さあお入りなさい。かなえたい願いがあるのでしょう?」
まりあは、店内に入った。
まりあ(部屋中にただようチョコレートの香り・・・すごい・・・こんなにたくさんの種類のチョコレートがあるなんて・・・・)
ショコラ「ホットチョコレートを入れるわ。こっちにいらっしゃい。カカオと遊んでくれたお礼」
まりあ「あ・・・ありがとうございます」
「あ・・あの、願いのかなうチョコレートって本当にあるんですか・・・?」
ショコラが微笑をもって、肯定を返した。
まりあ「だったらお願いします!もう一度歌えるようにしてください!歌がない私なんて―――――――・・・生きてるイミないんです!!」
ショコラ「では、この「トリュフ」を食べなさい。「トリュフ」は生クリームがとじこめられたチョコレート・・・なめらかなクリームがあなたの声と心をいやしてくれるわ」
「ただし、チョコレートは甘いだけじゃない。奥にひそむ苦みがあなたから何かをうばう。それが願いをかなえるかわりにいただく代償。私のチョコは高いわよ」
まりあ「願いがかなうかわりに・・・何かを失うってことですか?」
ショコラ「ええ、そうよ。ある者は富、ある者は若さ、身体の一部を失った者もいるわ」
まりあ「えっ、そんな!」
ショコラ「それでもかなえたいなら食べなさい」
まりあ(かまわない・・・どうなっても、私には失うものなんてないもの!!)
まりあが、トリュフチョコレートを食べた。
まりあ(――――――えーーーーーー・・・)
ショコラ「どう?お味は」
まりあ「あ・・・とってもおいしいです」(あれ・・・?私・・・・)
「ごちそうさまでした・・・・」
(ここはどこ?どうしてチョコレート屋なんかにいたのかしら・・・・)
まりあは、「ショコラ ノワール」から出た。
ショコラ「キズついた心をいやす「トリュフ」、お代はいただいていくわね、あなたの「悲しい記憶」・・・・・」
マネージャー「まりあ!!」
まりあ「マネージャーさん・・・・?これ以上仕事に穴をあける気か!?行くぞ!!」
まりあ(え?仕事に穴!?どういうこと!?)
まりあは、ステージに引き戻された。
まりあ「?、?」
タレント「生放送に穴あけたのに平気な顔して」
「図々しいっていうか――――」
まりあ「?、?」(私、仕事に穴なんてあけた?)
マネージャー「まりあ大丈夫か!?いけるか!?」
まりあ「はいっ、バッチリですっ」
タレント「な・・・・・何あれ」
亜矢「・・・・・・・」
マネージャー「な、何があったんだ、まりあ・・・・ずいぶんスッキリした顔してる・・・・」
まりあが、ステージで歌いだした。
まりあ(私が、歌うことが大好きーーー!!)
マネージャー「まりあ、今日はすごくいい声が出てる!」
社長「まりあ見つかったのか!どこにいたんだ?」
マネージャー「いつも歌のレッスンをしてる森の・・・チョコレート屋の前にいたんスよ。あいついつも外でレッスンしてるから」
社長「そんなところにチョコレート屋?」
スタッフ「うわさで聞いたことあります!あの森には願いをかねてくれるチョコレート屋があるらしいんです。もしかしてその店のことですか?」
亜矢「――――ねぇ、そのチョコレート屋、くわしく教えてくれますか―――?」
その後、亜矢が「ショコラ ノワール」に来た。
ショコラ「いらっしゃい・・・・・・中州亜矢さん・・・・よね?」
亜矢「願いのかなうチョコをちょうだい。あの子にも売ったんでしょ、歌えるようになるチョコ。あの子よりももっとうまく、もっと目立てるように・・・そんなふうに歌えるチョコを出して!!」
ショコラ「―――――だったら、これはいかがかしら。歌姫の美声をとじこめた「ガトーオペラ」、コーヒーリキュールの香りがあなたの眠れる才能を目覚めさせるでしょう・・・」
亜矢「あるんじゃない。じゃあこれもらってくわ」
亜矢がガトーオペラを持って、「ショコラ ノワール」から出て行った。
ショコラ「行き急ぐあわれな者・・・・・黒き闇に堕ちていきなさい・・・」
ガトーオペラを食べた亜矢が歌った。
亜矢「・・・すごい、すごいわ!こんな歌声が出せるなんて・・・!!これでまりあに勝てる!!」
社長「亜矢!今の歌声、お前か?」
亜矢「ええ」
社長「聞こえたぞ、ずい分上達したじゃないか!次のライブ大トリはお前にしよう!」
亜矢に拍手を送るファンの中には、まりあもいた。
亜矢「まりあ、さっきの私の声聞いた?あんたより何倍も上手だったでしょ」
まりあ「ええ!本当に上手でした、さすが亜矢さんですねっ」
笑顔でそう言うまりあに、亜矢が逆上して掴みかかった。
亜矢「もっとくやしそうな顔しなさいよ、いつもヘラヘラしてるあんたなんかつぶれちまえばいいんだよ!!」
まりあ「きゃあ!?」
社長「亜矢!」
マネージャー「よせ!!」
その拍子に亜矢はセットの柱を蹴り壊してしまい、セットが亜矢の上に落ちてきた。
亜矢「きゃあああぁ・・・・」
看護師「ここの病室の患者さん、元歌手だよね」
「顔を大ケガして再起不能らしいわ・・・」
「えー、かわいそーー」
顔の右半分を包帯で覆った亜矢はベッドの上に、力なく座り込んでいた。
その病室の前を、ショコラが通り過ぎていった。
ショコラ「お代にいただいていくわね・・・あなたのその「美しさ」」
森の奥には願いのかなうチョコレート屋があるのよ
マネージャー「まりあ、急げ。次の仕事があるぞ!」
まりあ「はいっ、いそげー」
ショコラは、まりあとマネージャーとすれ違いながら、「ショコラ ノワール」に帰った。
願いをかなえるには代償がいるの
客「ここがーーーー・・・願いのかなうチョコレート屋・・・」
「あの・・・私、美しい顔になりたいんです。そんなチョコありますか?」
ショコラ「ええ、たった今できあがったわ。とびきりの「美しさ」をとじこめたチョコレートが・・・」
それでもあなたは食べますか――――――――・・・?
最終更新:2017年03月25日 23:32