超神ビビューンの第1話


妖怪退治だ!!
超神(ちょうじん)登場!!




夜。団地の一室で眠っている少女が、ふと目覚める。
窓から巨大な一つ目が覗き、光を放っている。

「きゃあっ!? お母さぁん!」

少女が両親の部屋へ駆け込む。

「怖いよぉ、お母さん!」
「どうしたの、ジュンコ?」

親子3人の頭上に、大きな一つ目が現れる。

「うわ! 何だ、あれは!?」「あぁっ!? あなた!」

彼方から1人の老人・妖怪研究者ダイマ博士が、マンションのほうを見ている。

ダイマ「東南20メートルの地点に妖気漂う…… わしの計算に狂いはなかったか。暗くてよく見えんのぉ、赤外線スコープを使うとするか」

スコープを団地に向けると、親子3人が無数の目玉に襲われる光景が見える。

ダイマ「やっ、こりゃいかんぞ」

夜空に巨大な一つ目、妖怪バックベアードが浮かび上がり、ダイマを睨みつける。

ベアード「貴様、そこで何をしている!?」
ダイマ「むっ! 出たな、妖怪!」
ベアード「貴様、何者だ!?」
ダイマ「ダイマ超神研究所所長、ダイマ大三郎じゃ! 妖怪め、名を名乗れ!」
ベアード「俺の名はバックベアード。我が存在を知る人間を生かしてはおけん! こやつを殺せ!」

雑兵妖怪・妖鬼(ようき)たちが無数に襲いかかるが、ダイマ博士が小さな鏡をかざすと、妖鬼たちが退き始める。

ダイマ「古代中国に伝わる破邪の鏡。どうじゃ、近づけまい」
ベアード「味なことをば…… ギヤマン砕き!」

バックベアードが光線を放ち、鏡を砕く。

ダイマ「おぉ、こりゃいかん!」

再び妖鬼たちが襲い掛かる。
そこへ警視庁捜査官の明智リサが駆けつけ、妖鬼たちを牽制しつつ、ダイマと共に逃げ出す。
何とか逃げ切ったかと思ったとき、公園では主人公の青年・月村圭が、鉄棒の練習をしている。

月村「どうかしたんですか?」
リサ「見ればわかるでしょう?」
月村「参ったなぁ。見ればわかる、か」

妖鬼たちが追いかけて来る。

月村「よぉし。僕に任せて、お逃げなさい。さぁ!」

ダイマたちを逃がし、月村が体操技で妖鬼を蹴散らす。
妖鬼たちが姿を消し、退散してゆく。

月村「消えた? へへっ、ちょうどいいトレーニングだった。それにしても…… 今の連中、一体何だったんだろう?」
ダイマ「妖怪バックベアードの手先の妖鬼じゃ」
月村「あっ、どうも。まだいらしたんですか。一緒のお嬢さんは?」
ダイマ「うむ、無事に逃げたらしいな。重ねて言うが、君が今追い払ったのは妖怪ですぞ」
月村「ははっ、冗談はやめてくださいよ。妖怪なんてバカバカしい」
ダイマ「信じられまいが、わしは真実を述べておる。この世界は、いつの間にか妖怪たちに侵略されつつあるのじゃ」
月村「ほぉ、何の目的ですか?」
ダイマ「いや、そいつはまだわしにもわからんが…… むっ、ややっ?」

ダイマ博士がルーペで青年の目を覗きこむ。

ダイマ「瞳の中に運命の十字星! どうやら君は、妖怪と戦う宿命を背負っているようじゃ」
月村「え? とんでもない! 妖怪と戦ってる暇があったら、オリンピック優勝を目指してトレーニングに励みますよ」
ダイマ「失礼じゃが、お名前は?」
月村「太陽大学2年生、月村 圭。まぁ、がんばってください」

月村が去る。

ダイマ「わしの目に狂いはないはず…… あの青年・月村圭こそ……!」

夜道を走る月村を、夜空からバックベアードが睨みつける。

ベアード「大魔王ガルバーの名のもとに、あの若造に呪いを!」


翌日。月村は大学で体操部員たちと共に、トレーニングに励んでいる。

ベアード「呪いを…… バックベアードの呪いを!」

月村が鉄棒を練習していると、鉄棒がひとりでに折れ、月村は床に激突する。

月村「うわっ!?」
部員たち「月村!?」「大丈夫ですか!?」「おい、どうした?」

跳馬の練習。
月村が助走するが、踏み台が砕け、月村は跳馬に激突する。

月村「痛……っ!」
部員たち「おい、月村!」

平行棒の練習。
またもや棒がひとりでに折れ、月村は床に激突する。

月村「うわっ!? ……い、一体どうなってんだ!?」

「おい、月村。お前1人のために部員全体が迷惑するんだぞ?」「これじゃ、練習にならんぞ」「本当だよ」
「今日は中止だ。おい月村、元通りにしとけよ」「頼むぞ」「早くやっとけよ」

部員たちが去った後、月村は1人で後片付けを始める。

月村「……誰かが俺を見ている?」

窓から、バックベアードの巨大な一つ目が覗いている。

月村「何だ、ありゃ!?」

ボールを拾って窓に投げつけると、一つ目が消える。

月村「何だ…… 気のせいだったのか」

昼休み。月村が弁当を広げる。

月村「はぁ、腹ペコだ」

一口食べるや、慌てて口の中身を吐き出すと、米粒が砂と化している。
弁当箱の中身もすべて、砂に変わっている。

月村「べ、弁当が砂に!? ……はっ、見ている。確かに俺を見ている……」

視線を感じて周囲を見渡す。
宙に浮かぶ巨大な一つ目。
慌てて逃げ出してトイレに駆け込み、息を切らしつつ洗面所で水を飲む。
途端に吐き出す。炎があがる。

月村「ガソリン!?」

洗面所の鏡に一つ目が現れる。

月村「ま、まただ!?」

コップを鏡に投げつけると、一つ目は消える。

月村「どういうことなんだ?」

そこへ、ダイマ博士が現れる。

ダイマ「思った通りじゃ、月村くん」
月村「あなたは、夕べの……?」
ダイマ「妖怪の呪いが君にかかったのじゃ」
月村「そんな、バカな!?」
ダイマ「一度かけられた者は逃れられん。呪いじゃ」
月村「じゃ、僕は一体どうなるんです!?」
ダイマ「飢えと渇きで死ぬ。それが君の宿命じゃ」
月村「……なぜ! なぜ僕がそんな目に遭わなければならないんです!?」
ダイマ「君の瞳の中の十字星がそれを示しておる。どうするかね? 果たしてこのまま死を待つか、妖怪の呪いを解いて戦うか、いずれを選ぶかね?」
月村「こうなるのが宿命だったんなら…… 死よりも戦いを選びます」
ダイマ「そうじゃ。それでこそ男じゃ!」
月村「それで、その妖怪の呪いはどうやって解けます?」
ダイマ「うむ。まず南天に輝く破軍星(はぐんせい)に身を捧げるのじゃ。七星壇(しちせいだん)を築いて……」
月村「あの、早いとこ頼みます。は、腹減っちゃって……」
ダイマ「来るんじゃ。我がダイマ超神研究所へ」
月村「ダイマ超神研究所?」

ダイマ博士が作る七星壇とは、七曜星(しちようせい)
つまり7つの星を全宇宙に見立てる祭壇である。
その祭壇に向かって八門遁甲・降魔の印を唱えれば、
全宇宙の最も輝ける星・破軍星が地に下ると
伝えられているのだ。

ダイマ超神研究所。
祭壇の前でダイマ博士が呪文を唱え、月村は縄で繋がれている。
その様子を、ダイマ博士の孫・三太少年が覗き見ている。
月村がそれに気づく。

三太「いけねぇ……」

三太が外に出る。

三太「お爺ちゃん、果たして成功するかなぁ?」

そこへ、リサが駆けて来る。

リサ「坊や、博士は? ダイマ博士は?」
三太「お爺ちゃんは今、儀式の最中。僕は孫の三太。お姉ちゃんは?」
リサ「私、明智リサ。そんなこと、どうでもいいの。大変なの。妖怪が襲って来るのよ!」
三太「妖怪が? そりゃあ大変だ!」

リサが三太と共に研究所内に駆け込み、祭壇の部屋のドアを叩く。

ダイマ「輝ける星よ、来たりて妖怪を……」
リサ「博士! ダイマ博士! 博士!」
月村「あの声は……?」
リサ「開けてください! 夕べの妖怪が押しかけて来ます!」
月村「大変だぞ。博士! ……聞いてるんですか? 博士!」
ダイマ「来たれ、破軍星! 輝ける星!」
リサ「早く開けてください! 逃げてください、博士!」
月村「この縄を解いてくれ! こんなところでみすみす殺されてたまるか! 博士!」
リサ「開けてください!」
三太「あきらめな、お姉ちゃん。お爺ちゃんの耳には今、何も聞こえないのさ」
リサ「……仕方がないわ。私が1人で守ってやるわ」
月村「博士!」

窓からベアードの目が覗き込む。

三太「で、出たぁ!」
リサ「ば、化け物!」

バックベアードが研究所目掛けて光線を放つ。
その衝撃で、リサたちの目の前のドアが砕ける。

月村「来たな!」
ベアード「月村圭、死ね!」

空に立ち込める暗雲の中で3つの星が輝き、星の光が赤い光球と化して研究所へと降りてゆく。

月村の姿が、忽然と消える。

ベアード「えぇい、ダイマ博士! 七星壇を作り、破軍星を呼ぼうとしたな? 二度とさせん! それ、妖鬼ども!」

ダイマ博士の周りに、妖鬼たちが現れる。

ダイマ「お前たち妖怪は、必ず滅びるのじゃ!」

ダイマ博士が杖を振るうと、妖鬼たちが消える。
研究所の外へと逃げ出すダイマ博士。
しかし、バックベアードの目玉が迫る。

ベアード「逃がさんぞ!」

そのとき、空から星のような光が瞬き、月村の変身した真紅の超神、ビビューンが舞い降りる。

ダイマ「おぉっ!」
ベアード「誰だ!? 何者!?」
ビビューン「破軍星に招かれた、超神ビビューン!」
ベアード「超神ビビューンだと!? 妖鬼ども、まずこいつを倒せ!」
ビビューン「行くぞ! スカイ剣!」

襲い来る無数の妖鬼たちを、ビビューンは剣を振るい、次々に斬り払ってゆく。

ビビューン「行くぞ、バックベアード! スカイ剣!」

空中のバックベアード目掛けてビビューンが大ジャンプし、目玉に剣を突き立てる。

ベアード「ぐぉぉっ!? くっ、おのれぇっ!」

巨大な目玉だったバックベアードが人間並みの大きさとなり、地上に降りる。

ベアード「おのれ、貴様ぁ!」
ビビューン「覚悟!」

さらに剣で斬りつけるビビューン。

ビビューン「よし、とどめだ!」

とどめを刺そうとしたとき、監視役妖怪のシンドとビリンが現れ、ビビューンを抑え、バックベアードをかばう。

ビリン「ほら、どいたどいた」
ビビューン「こいつ!?」
シンド「逃げろや、逃げろ」
ベアード「わ、わかった」

バックベアードたちが姿を消す。

ビビューン「しまった……」

そこへダイマ博士とリサがやって来る。

ダイマ「おぉ、ビビューン」
リサ「三太くんがさらわれたの」
ビビューン「何? バックベアードめ…… 博士、お任せ下さい」

ビビューンが地面に剣を突き立て、耳を近づける。

ビビューン「この足音を辿っていけば」
ダイマ「乗り物を使うんじゃ。わしが作り上げたマシン、名づけてビビューンカーじゃ!」

スーパーバイク・ビビューンカーを駆り、ビビューンがバックベアードの足音を追跡する。

ビビューン「足音が止まった…… よぉし」

滝のそばで、気絶した三太が妖鬼たちに縛り上げられている。
ビビューンが、あっという間に妖鬼たちを一掃する。

ビビューン「しっかりするんだ、三太くん!」

滝の上にバックベアードが現れる。
その腕には三太が抱かれている。

ベアード「そこまでだ、超神ビビューン。子供はもらった!」

ビビューンの救ったはずの三太は、ただの木の棒に変わっている。

ビビューン「三太くん!? 卑怯な!」
ベアード「動くな! 一歩でも動いてみろ、三太の命はない!」
ビビューン「くッ……!」
ベアード「それ、ゆっくりとなぶり殺してやるか。落ちろよ岩石! 熱湯よ注げ!」

バックベアードの激しい反撃。
そのとき地面から煙が吹き上がり、地中から新たな超神、ズシーンが出現する。

ズシーン「超神ズシーン!」

さらに川の水が吹き上がり、3人目の超神、バシャーンが現れる。

バシャーン「同じく、超神バシャーン!」
ベアード「やや、お前ら!?」
バシャーン「それ、ピピートだ!」
ズシーン「超神棒モンケーン!」

バックベアード目がけ、水流攻撃を撃ち出す超神銃ピピート、大地を震わす超神棒モンケーンでの反撃。
三太が宙へ放り出され、ビビューンがそれを受け止める。

ベアード「おのれぇ! 妖鬼ども、かかれぇ!」
ビビューン「さぁ、隠れてろ」
三太「うん!」
ビビューン「ビビューン!」

群がる妖鬼たちを、ビビューンが風のように宙を舞って倒してゆく。

ズシーン「ズシーンボール! ズシーン!」
バシャーン「バシャーン滝登り! 食らえ、ピピートだ!」

ズシーンとバシャーンもそれぞれの技で、妖鬼たちを次々に仕留めてゆく。

ベアード「おのれ、ビビューン!」
ビビューン「行くぞ、バックベアード!」
ベアード「俺の力を思い知れぇ!」

バックベアードは巨大な目玉から放つ術で、ビビューンを翻弄する。

ビビューン「くっ、あれが呪いの目か! 行くぞ、スカイ剣!」

空中戦の応酬の末、ビビューンの剣がバックベアードの目を斬りつける。

ベアード「おのれぇ、俺の急所を!」
ビビューン「バックベアード、最後のとどめだ! 火の玉アタ──ック!」

ビビューンが巨大な火の玉と化し、バックベアードに炸裂。

ベアード「ぐわぁぁっ!? 助けてくれぇ──っ!」

バックベアードの体が無数の光の粒子となり、消滅する。

ビビューン「そうか…… バックベアードは光の妖怪だったのか」
ズシーン「行くぞ、ビビューン!」

ズシーンとバシャーンが変身を解く。
月村と同じく超神となった青年、渡部 剛、菅 一郎。

渡部たち「おい、降りて来いよ」

ビビューンも変身を解く。

月村「やぁ!」
三太「やったんだ! お爺ちゃん、大成功だ!」
月村「僕は、月村圭」
渡部たち「俺は、渡部 剛!」「菅 一郎です!」
月村「超神になったのは、君たちもこれでか?」

月村が胸をはだけると、そこにはカプセルが埋め込まれている。
それは、かつてアクマイザー3のザビタンの魂が封印されたものだった。
渡部と菅の胸にも、それぞれガブラ、イビルのカプセルが埋め込まれている。

ザビタンたち「新しく生まれた、3人の超神諸君」「拙者ら、アクマイザー3からのプレゼントがあるんじゃ」「そやそや、もういいもんやで。見てみぃ」

大地を震わせ、巨大な生体戦艦のベニシャークが出現する。

ベニシャーク「わしの名はベニシャーク~ 超神がたの仲間入り」
ザビタンたち「頼んだぞ!」「拙者らに替ってしっかりと」「正義と平和を、守ってなぁ」



アクマイザー3の命はダイマ博士の努力により
3人の超神となって甦った。

その名は超神ビビューン、
超神ズシーン、超神バシャーン。

彼ら超神の目的は、世に住み悪をはびこらす
妖怪退治なのである。



つづく

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最終更新:2014年01月10日 19:43