死竜将軍討伐事変

当時の皇(櫻華光道の先代)率いる軍勢と、死霊払いを専門とする仙人集団『御霊天浄衆』による死竜将軍ヨモツマガツチノミコト討伐戦の最中、別の魔王候補が出現して皇国の軍を蹂躙したという出来事。

皇より協力を頼まれ、これを受託した御霊天浄衆。
夥しい数の死霊が這いずり回る墨染墓石群に到着するや否や、屈強な達に守られながら迫りくる死者を次々と除霊術で土へと還していく。
突き進む鎧武者達にも呪いや憑依を防ぐ防護術を施し、武者達も臆す事なく果敢に骸の兵を切り伏せていった。

勢いのまま進軍する皇国軍の前に遂にヨモツマガツチノミコトがその姿を前線に現す。
広範囲攻撃魔術が放たれるも、天浄衆の長たる老子筆頭に皇国の陰陽師総出で防壁を張って跳ね返す事に成功。
これまで幾つもの軍勢を消し炭としてきた自らの魔術を跳ね返し、自軍に大打撃を与えてきた此度の生者達に流石の死竜将軍も目を剥いた。

戦況は皇国側に優勢のまま進み、このまま命ある者の勝利かと思われた。

しかし突如、皇国軍の背後に魔界門が出現。
門から現れた魔物の大軍勢が皇国軍に襲い掛かったのである。

その魔物達の先頭に居たのは、巨大な鬼馬に跨った魔将ノブナガであった。
彼は圧倒的な力で皇国の武者を尽く轢殺し、道士達をも次々と討ちとっていく。

混乱に満ちた戦場で武者も道士も次々と果てていく中、最早これまでかと覚悟を決めた皇は最期の意地とばかりに単身でノブナガに向かっていこうとした。
だが白銅老子は秘術を持って咄嗟に皇を始めとする残った者達を遠くへ転移させると、死した同胞と誇り高き侍達がヨモツマガツチノミコトの軍門に下らぬよう己の命を持って最大の広範囲浄化術を発動させたのである。

周囲の死した全ての者の魂を昇天させ、力尽きる白銅老子。
そして老子の亡骸も死霊として歪に蘇らぬよう、瞬く間に白い灰となって風に乗り散っていったのであった。



+ 何故魔将ノブナガが突然戦場に乱入してきたのか。
時は少し前、魔界にてノブナガ陣営は既存の魔界金属を超える、より強力な素材となる新しい合金の開発を進めていた。

結果、金とスズとチタンに複雑な闇の術式を施す事で凄まじい頑強さを誇る特殊な魔法合金の精製に成功する。
ダークミーズエビルオリハルコンすらも上回る剛性と闇と炎の魔術に高い親和性を持つ合金にノブナガも満足する程。

だが、精製出来たは良いものの、そのあまりの剛性に肝心の武器への加工が難航。
自軍の魔術に長けた配下総出で取りかかっても一向に進展しない状況に苛立つ日々が続いていた。
打開策を考えるノブナガが自軍以上に深い魔術の知識に精通している存在を探す中、強大な魔力と膨大な魔導知識を持つヨモツマガツチノミコトを思い当たる。

しかし、相手もまた魔王候補。
ただ頼んだところで素直に頷く筈もなく、力ずくで従わせようにも流石に正面から戦えば自軍も少なくない損害が出る。
思案しながらとりあえず使い魔を飛ばし墨染墓石群の様子を伺うと、なんと丁度良く相性の悪い仙人達と皇国の侍達相手に手を焼いている死竜将軍の姿が。

ノブナガは迷わず魔界門を抉じ開け自らヨモツマガツチノミコトの眼前に歩み出る。
そして『自分の武力で仙人達を一掃してやるから代わりにお前の魔術と知識で最強の妖刀を打て』と交換条件による交渉に出た。

無論ヨモツマガツチノミコトも忙しい戦闘中にいきなり出てきて偉そうに一方的に条件を突き付けてきたノブナガに憤慨した。
しかし実際自分の陣営の戦況が芳しくない上にここで断ればノブナガ側からも攻められ皇国の連合軍と挟撃を受ける事になる為、不服ながらも承諾。
その結果があの魔王候補二体掛かりによる圧倒的魔力と武力による蹂躙だった。

その後、約束通りヨモツマガツチノミコトはノブナガから受け取った新たなる闇の金属素材“堕天白金”の加工に着手。

膨大な魔術の知識をもつヨモツマガツチノミコトですらその加工に長い時間をかけた。
が、一度引き受けた以上竜族としての誇りに加え自身の叡智と技を総動員して取り掛かる。

そして遂に加工に成功すると、妖しく紫色に輝く刀身を持つ凄まじい瘴気を放つ最強最悪の大太刀の妖刀を“二振り”( ・・・ )完成させた。
だがそのうちの一振り、『妖刀魔鏖』は完成直後に忍びこんだ当時の皇たる櫻華 光道の手によって奪われてしまう。

そしてもう一振りの魔鏖の兄弟刀( ・・・・・・ )は約束通りノブナガの手に収められたとの事。


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最終更新:2025年07月11日 10:30