黒羊のアジトである
廃城に幾重もの包囲網が張り巡らされたが、彼等の主な犯罪行為は密漁や
海賊である。
これらの事から陸よりも海上戦力こそが彼等の主力と考えられ、これらに対抗するべく十全な戦力が準備される事となった。
しかし
帝国から新型の巨大戦艦が黒羊に強奪されていたという情報が届き、この事から巨大戦艦が敵の戦力と化している可能性が示唆されたのである。
これに対し、海戦のエキスパートたる
シードリア共和国の支援を追加で取り付け、
アリダ・シャルトリューズ率いる
シードア型戦闘艦を中心に帝国海軍との連合艦隊を編成。
以上の戦力を以って海上方面からも黒羊の拠点を包囲する運びとなった。
そして作戦開始時刻と共に廃城から爆炎や噴煙が上がり、討伐艦隊も突入しようとしたその時。
城の崖下に隠されたドッグから
赤黒い巨大戦艦が出現、両艦隊に向けて攻撃を仕掛けてきたのである。
当初はシードリア艦隊、グリル艦隊合わせた数で勝る討伐軍が断然有利と思われた。
だが黒羊の巨大戦艦は本来その大きさからは考えられないような加速で海面を滑る様に旋回し、討伐軍側の砲撃を回避。
同時に圧倒的な火力をもってグリル艦を一隻沈めてしまう。
風魔法を帆に当てるだけでは不可能と思える程の速力で海を突き進む巨艦に討伐艦隊の攻撃は当たらず、続けて現れた小回りの利く
敵小型艦艇群からの
火薬樽投合によって次々と被害を出し予想外の苦戦を強いられた。
彼等は甲羅を借りている大亀の気分次第で移動している為、本当に偶然泳いできた先でこの戦いに遭遇しただけなのだが、元々エンカラーの嫌う“無法者の海賊”の最たる例であったブラックシープが暴れているのを見過ごせず討伐連合軍に加勢したのである。
『亀の進む方に出てきちまった以上は仕方がねぇ』
『嫌な思い出のある連中だが、俺の流儀に反する奴らを野放しには出来ねぇ。手を貸してやるよ!』
(戦闘中、甲板越しにシードリア戦闘艦にいる
アリダ・シャルトリューズに向けて放ったエンカラーの言葉より)
勝手が違う海上戦でありながら乗船してる構成員達は手持ちの
大筒で砲撃し、フック付きロープでデスカウント・シープを拿捕しつつ激しく交戦。
爆薬を仕掛けては着実に敵船を沈めていったのだ。
敵小型艇の妨害が無くなった事でシードリアとグリルの軍艦は再び
ブラッディ・メリー号への攻撃に集中。
やはり素早く旋回する巨艦だが、すぐ傍を泳ぎ始めた
アイランドタートルの巨体が邪魔となり先程の様には動き回れなかった。
一斉砲撃を
アイランドタートルに浴びせる事で怯ませ海中へと退けさせたものの、エンカラー海賊団は
ガレオン船を切り離し戦闘を続行。
そして遂にシードリア艦の放った砲撃が黒いマストの一本に直撃して破壊し、動きが乱れた所に巨艦の後部付近が爆発した。
それは傭兵として参加した
海洋民族ネフタミと、帝国の
内海探査隊による
水妖族工作部隊の働きであったのだ。
海中から接近して多数のシップキラーを設置し、巨大戦艦の頑強に補強された船体に横穴を開ける事に成功したのである。
そして動きが止まったところにグリルとシードリア、エンカラーの海賊船と
ワッリィ一家の大筒が一斉に砲弾の雨を浴びせかけ、赤黒い巨艦は轟音と共に爆発炎上し轟沈したのであった。
(なお海賊達はこの直後、戦闘域から即座に撤収したようだ)
【余談】
回収は出来なかったものの、戦闘時の様子から
ブラッディ・メリー号には
謎の推進装置等の改造が数多見受けられたとの報告がなされていた。
その報告書にはそれらの技術は遥かに先進的であり、巨大組織とは言え一介の犯罪ギルドによる改造だけでは説明がつかないとも記載されている。
これに関しての関連性は不明だが、廃城に突入していた兵士達が隠し部屋を発見。
そこには
金属製の
竜の頭蓋を被った黒ずくめの男が存在しており、多数の『図面』や部品類が並んでいたと言う。
兵士達はその人物を拘束しようとしたが、連続した炸裂音と共に数名の重装兵が無数の
マスケットで掃射されたかの様に死亡。
後続の兵達が退避した隙を見て、その不審人物は
転移の
スクロールらしき物を使用したようだ。
兵士達が再び突入した時には室内に物品等は残っておらず、内容不明なメモの切れ端のみが散乱していたとの事。
後に証言から描かれたスケッチを
スタートゥの
異世界人達に見せた所、
その内の一人から興味深い証言が得られた。
『昔マンガで見た“手回し式のガトリング砲”にそっくりだ』
逃亡した黒ずくめの人物の調査は現在も続いていると云う。
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最終更新:2025年07月23日 10:17