オリスタ @ wiki

第06話『アップル シナモン キャラメリゼ(Apple Cinnamon Caramelisee)』その①

最終更新:

orisuta

- view
メンバー限定 登録/ログイン



  ―B Part 2024―  



◇????? ???

四方を木々に囲まれた、森の中の閑静な洋館。
六つの棟からなる、広大な敷地面積をほこるその洋館の、南西の棟。
そこの一室、床一面に大理石を用いた、煌びやかなダンスホールに、二人の女性がいた。
一人は、セーラー服を着た少女。
彼女の整った顔立ちや立ち振る舞いには、西洋人形を連想させる気品があったが、
同時に形容しがたい不気味さも備えていた。あえて言うなら、見た目の年齢に反した“成熟”があった。

少女「・・・・・・」

少女はダンスホールの中央に設置されたテーブルで、紅茶を飲みながら、ホールの隅で縫い物をするもう一人の女性を見た。
物静かで、知的な雰囲気を醸すその美女は、常に時間を気にしていた。かたわらの懐中時計をちらちら見ながら、
彼女は寡黙に、ただじっとミシンを走らせた。
かたかたと音を立てて作業を進める女性の背中に、少女が声を掛けた。

少女「『アップル シナモン キャラメリゼ』を知ってる?」

女性「・・・・・・存じません」

少女「あら、知らないのね。恋愛漫画の傑作よ」

女性「・・・漫画、読まれるのですね。少し意外です」

少女「女子高生ですもの。漫画くらい読むわ。
   とにかくね、その漫画に出てくる女の子たちがすごく可愛いの」

少女「デパートの屋上で、どうぶつの着ぐるみのバイトをしているのよ」

そういって、少女はまた一口、紅茶を啜った。女性は、手元の生地に目を落としながら、

女性「もしかして、いま作ってるこれはその漫画の?」

と訊いた。

少女「そう。『アップル シナモン キャラメリゼ』の着ぐるみよ」

女性「なるほど。一つ伺ってよろしいですか?」

少女「どうぞ?」

女性「コスプレパーティーでもするのですか? 貴女が着ぐるみなんて、珍しい」

少女「まあ、そんなところね」

少女「人を迎えにいくの」
 
 
 




◇新宿駅・東口出口 某時刻

ドォォォォン!

丈二「うぐッ! だあああああああああッ!!!」ドゴォ!

未来「がふッ! うおおおおおおおッ!!!」バキィッ!

互いの拳がそれぞれの腹と胸を打ち据え、その衝撃が体を後方に吹き飛ばす。
丈二の体はメガネ店のウインドウを突き破ってショーケースを叩き割り、未来は道路を横断中の
通行人をクッションにし、衝撃を殺した。
二人の顔面には、無数の生傷と青あざが散らばっていた。鼻の穴から零れる鼻血を拭って、丈二はダガーナイフを構えなおした。
店が荒らされたのに、店員は裏で怯えるだけで、表には出てこなかった。
バラバラに砕けた店先のガラスの向こうに、悪鬼の如く暴力を振りかざす未来の姿が見えた。
未来は口元の血を拭ってから、クッションにした通行人の男性の死体を、丈二に投げつけた。
クッションにした際の衝撃で体中の骨が砕け、死亡したのだった。

ブオオオオオッ!

丈二「くッ! 『アークティック・モンキーズ』ッ!」
A・モンキーズ『ムヒィッ!!』ズパァッ!

『アークティック・モンキーズ』の手刀が、男性の死体を四つに切り裂いた。
死体に気を逸らした隙に一気に距離を詰めた未来が、鉄色に変色した『ウエスタン・ヒーロー』の拳を放つ。
未来の腰には、同じく鉄色をした、“ベルト”が巻かれていた。

未来「『ウエスタン・ヒーロー:鉄のベルト』ッ!」
W・ヒーロー『ハァァァァァァァァァァァァァッ!!!」シュバァァッ
未来「鉄の拳ッ!」

丈二「くそッ! やばいッ!!」
A・モンキーズ『ムヒィィィーーーーーーーーーーーーッ!!!』

咄嗟に、切り裂いた死体から溢れる血液の“赤”に逃げ込んだ丈二。
『ウエスタン・ヒーロー』の鉄拳は、空中に散らばる多量の血液を吹き飛ばして終わった。

未来「どこだッ!?」
 
 
 




メガネ店の前の通りは、数多の人の欠損した死体で赤く散らかっていた。
これは全て、二人の戦いに巻き込まれた犠牲者である。
丈二は真っ赤に染まったアスファルトからぬっと姿を現すと、拳銃を構えて引き金を引いた。
銃口の先の、全身鉄色の未来は避けたり、スタンドを使って弾を防ぐこともせず、ただ立っていた。
やがて弾丸は未来の体に命中したが、鋼鉄に変質したその体には傷一つ付かなかった。

チィィン!

未来「・・・ムダだ! そんなモノ!」

丈二「ッ!」

ババババババババババババババ!

二人の上空を、テレビ局や警察のヘリが飛ぶ。
ふと辺りを見回した丈二は、数分前までは溢れかえっていた人が、ほとんど姿を消していることに気が付いた。
みんな逃げ隠れた。そうしなかったものは、肉片と化して地面に転がっている。
彼らの代わりに見えるのは、チャンスをうかがう武装した機動隊の群れだった。

丈二(ちくしょう、なんでこんなことに・・・)

丈二(未来・・・憶えてないのか・・・。“前”のこと・・・)

未来「・・・・・・」ザッ

丈二(新宿・・・こんなにしちまって・・・・・・!)

丈二(たくさん死んだ・・・! 俺たちが殺したんだ・・・ッ!)

未来「丈二・・・・・・!」

丈二「未来ッ!」

損壊した乗用車が、轟音を響かせて爆散した。
立ち上がる炎。風に流れる黒煙が、二人の姿を覆い隠した。
煙が引く次の瞬間は、お互いスタンドを出現させ、それを互いに突撃させていた。
 
 
 




◇『組織』アジト・作戦司令室 同時刻

阿部「なんだこれは・・・ッ!」

新宿が血で赤黒く染まり行くそのとき、『組織』アジトでは最高責任者である阿部が、
作戦司令室のモニターに映る惨状を見、絶句していた。
巨大モニターには『組織』のヘリから空撮した映像と、隅に小さくニュース番組が映っている。
ニュース番組では女性キャスターが、次々と更新される情報に、翻弄されつつもアナウンスを続けていた。

キャスター<えー、続報です! 現在新宿でテロリストによる無差別テロ攻撃が発生している模様です!
      なお、同時期に発生した駅構内での銃乱射事件との関連は不明です。
      繰り返します、現在新宿でテロリストによる無差別テロ攻撃が・・・・・・>

阿部「一体ッ! なんなんだこれはッ! 誰か説明しろォォッ!!」

阿部の怒号に、司令室にいた全員が体を竦ませた。
ニュースが表示した映像には、互いにスタンドを激しくぶつけあいながら街を壊していく、
未来と丈二の二人の姿がばっちり映しだされていた。

阿部「丈二、未来ッ! あのバカども・・・・・・一体なにしでかしてくれてるんだぁぁ!!!」

工作員「せ、先生!」

阿部「あ? なんだ!?」

工作員「構内での銃乱射ですが・・・・・・暗殺チームの川崎と三上が行ったようです!」

阿部「くッ・・・・・・・・ど、どいつもこいつも・・・・・・・・・・・!」

阿部「なにが暗殺チームだああああああああああああああああああ」

キャスター<繰り返します、ただいま新宿で無差別テロ攻撃が発生している模様です。
      みなさんどうか落ち着いて行動を。駅周辺には近づかないでください>

阿部「役員会を開くッ!! 緊急だッ!! 幹部どもを集めろッ!!
   防衛省と内閣情報調査室にも連絡するんだッ!!」
 
 
 




◇新宿・新宿デカペリー 同時刻

スタッフ<みなさん落ち着いて行動してください! 外へは出られません!
     劇場スタッフの誘導に従い、避難を開始してください!>

新宿三丁目、靖国通りの一際目を引く巨大なビル。大型シネコン『新宿ピカデリー』は、
現在たくさんの人々がひしめきあい、混乱の最中にあった。全スクリーン、上映は中止。
入口は全て封鎖され、外から逃げ込んだ人々を抱え込み、外界と遮断された。
呻きや悲鳴であふれる劇場内に、女子大生の『虹村 那由多(にじむら なゆた)』と、大学教授の
『柏 龍太郎(かしわ りゅうたろう)』二人の姿があった。
彼女らは不運にも、今日と言う日をゼミの課外活動の日に選んでしまっていた。
柏は那由多のほか四名のゼミ生を連れ、ここ新宿デカペリーに映画を見に来ていたのだった。

那由多「せ、先生・・・・・・どうなってるんですか、怖いです・・・・・・」

柏「大丈夫だ、安心して。彼らの指示に従おう」

ゼミ生1「電話も全然繋がんないし・・・・・・」

ゼミ生2「お母さん・・・・・・ううっ」

繋がらない電話を握り締め、涙を零すゼミ生の一人の肩を柏が抱きとめる。
それぞれが不安に押し潰され、いまにも決壊しそうなそのときだった。
それまで沈黙していた那由多のケータイが、突然ポップな音を奏でて着信した。

那由多「電話だ!」

柏「親御さんか?」

那由多「あッ・・・えと、彼氏さんです。・・・・・・もしもし!?」ピッ

琢磨<繋がった! 那由多! 無事か!?>



◇織星メモリーズ球場 同時刻

那由多<琢磨! ううッ・・・・・・>

琢磨「!? なにかあったのか!?」

那由多<ううん、大丈夫・・・・・・大丈夫だから・・・・・・>

琢磨「ニュースを見たんだ。君がいま新宿にいることを思い出して、ゾッとした。
   無事なんだな!? ケガはないんだな!」

那由多<平気・・・・・・でも、怖いよ琢磨・・・・・・>

琢磨「今劇場か!?」

那由多<うん・・・・・・外危ないから、中にみんな閉じこもってる>

琢磨「屋上に出られるか!? これから迎えにいく! 20分で着くから、合図したら屋上に来てくれ!」

那由多<えッ、はッ!? 迎えにッて・・・・・・え!?>

琢磨「あとで会おう、那由多! ・・・・・・・・・ヘリを用意しろォ! 新宿へ行くッ!」

那由多<ちょッ、たく・・・・・・>ブツッ
 
 
 




◇新宿駅東口・改札 panKing panQueen前 同時刻

地上が血で染まるころ、また地下でも、同時に勃発した争いが、駅構内に死の空気を漂わせていた。
文字通り“死の空気”が改札前に充満し、三上と川崎の二人は、それを吸引しないように酸素マスクを付けていた。
抗う術なく、呼吸器官にその空気を取り込んだ比奈乃と忍が、体調に異常をきたし、地に膝を付いた。

クラクラ・・・

比奈乃「ふッ・・・・・・うッ」フラッ

忍「くッ・・・・・・!」フラァッ

忍「な、なにを・・・・・・・・・した・・・・・・てめえら・・・・・・!」

川崎「俺のスタンド『メタル・ジャスティス』は・・・“武器を持っていた”。
   金属を操る能力・・・それによって、得た“武器”を」
M・ジャスティス『・・・・・・・・・』

比奈乃(手足がしびれて・・・・・・)ビリビリ

川崎「“水銀”を持ち歩いてたんだ。液状の球にしてな・・・・・・
   それをこの場で、“気化”させた・・・・・・!」

メタリックカラーで細身。両肩に天秤の受け皿を乗せ、左手で天秤ごと自らの上体を吊り上げるそのスタンド
『メタル・ジャスティス』の周囲に浮かんでいた金属液の球が、一つ蒸発した。
それは、“水銀”で構成された球だった。
気化した“水銀”は呼吸器官から二人の体内に入り、中枢神経・内分泌器・腎臓などの器官にダメージを与えたのだった。

忍「くそッ・・・・・・水銀だぁ・・・・・・!? なめてんじゃね・・・・・」

ドゴォ!!!

つきかけた悪態を遮って、女性のウエストほどある三上の太い腕が、忍の顔面を打ち抜いた。
強烈な重さの拳を受け止めた忍の体は吹っ飛び、数メートル後方に宙を舞った。

忍「ぶ・・・ぐ・・・・・・」

三上「やかましいぞォ、チンピラがぁ」

そう言って三上は拳についた血をふき取り、傍らに金色の鬣(たてがみ)を持つ、
人の四肢をもつ獅子のスタンドを出現させた。

ドバァァァン!

K・O・L『・・・・・・・・・・』

三上「『キングス・オブ・レオン(獅子座の暗示)』ッ!
   ククク・・・よく聞けよォ、これから行われるのは・・・・・・」

三上「一方的な“蹂躙”だッ!」

忍「ぐ・・・・・・ッ!」ドバドバ
 
 
 




比奈乃(とりあえず、ここを離れないと・・・・・・!)フラァ

ふらつく膝をなんとか立たせると、比奈乃は長いマフラーの人型スタンド、『ダーケスト・ブルー』を
出現させ、その右手に“藍色の電撃”を纏い、川崎に向かって飛び上がった。

比奈乃「『ダーケスト・ブルー』ッ!」
D・B『ウオオオオオオ』バチバチバチバチッ!

『ダーケスト・ブルー』はバチバチと電撃を爆ぜさせて、その鋭い拳を川崎の『メタル・ジャスティス』に突き出す。
『メタル・ジャスティス』は宙に浮かぶ液状の金属を眼前に集めると、それを固めて盾を作り、
『ダーケスト・ブルー』のパンチをガードした。金属製の盾はすぐに液体に戻り、敵スタンドの腕を絡めとりながら、
イソギンチャクのような無数の触手に変化し、比奈乃の体に巻きついた。
忘れてはいけないのが、自由自在に姿を変えるそれが“金属である”ということである。『ダーケスト・ブルー』の
“藍色の電撃”が、イソギンチャク形に変形した金属の、表面を伝い――

比奈乃「わああああああああああああああああああああ」バチバチバチバチィッ!!

川崎「バカな女だ」

触手に接する比奈乃の体を感電させた。

川崎(『ダーケスト・ブルー』の電撃の威力は知ってる。さすがにひとたまりもあるまい)

川崎「自分のスタンド能力で死ぬとはなんとも皮肉だな・・・・・・」

比奈乃の体を絡めていた金属が液状に戻り、彼女を解放すると、焦げた臭いを漂わせて比奈乃は倒れた。
川崎が比奈乃から顔を背け、三上と戦闘中の忍の方へ向き直したときだった。
一瞬、右の人差し指、中指、薬指の三本に、なにか熱いものが触れた。
それは“熱”と知覚する前になにか別のものへ変質し、次の瞬間、三本の指が付け根から粉々に吹き飛んだ。
しばらくすると、“痛み”がじわじわと明瞭になった。

パァァァン!!

川崎「!!」

比奈乃「死んでねーよ、カス!」バリバリバリバリバリ

“紺碧の電撃”を爆ぜさせながら、闇に沈んだ瞳の少女が、そう言った。

バリバリバリバリバリバリ

川崎「・・・・・・!」ゴクリ

比奈乃「最近電撃浴びてばっかだよ。もう慣れっこ・・・・・・」シュッ

川崎「!」

比奈乃「だよッ!!」
D・B『ドラァッ!!!』バリィッ!!

瞬間移動したように、一瞬で川崎の背後を取った比奈乃だったが、『ダーケスト・ブルー』の蹴りは川崎には達しなかった。
川崎は咄嗟に液体金属全てを集め、自分の周りにドーム形に固めて、防御壁を作り出したのだった。
金属は『ダーケスト・ブルー』の右脚を取り込んだまま固形化し、“紺碧の電撃”はドームの内部の川崎には触れずに、
ひたすらドームの表面を滑り続けた。

川崎「ふゥッ、あ、あぶなかった・・・・・・。いきなり全開モードか、藍川 比奈乃・・・」

比奈乃「ハァ? なにしてくれてるわけ? さっさと出てきてよクズ」

固められ、ドームから抜けない『ダーケスト・ブルー』右脚を必死に動かしながら、比奈乃がいかにも不機嫌そうに言った。
 
 
 



  ―A Part 2027―  



◇児童養護施設『虹の園』 AM4:50

砂場に開けた穴の下は、小さな個室だった。
信じられない光景だが、『雨宮 天斗(あまみや てんと)』という少年が、その部屋で生活していた。
陽の光も届かない、外界から完全に遮断されたその空間で・・・・・・。

丈二「天斗くん。俺は城嶋 丈二。君を助けにきた、さあここから出よう」

天斗「ボク・・・・・・外に出ていいの・・・?」

丈二「ああ、これから君は自由だ。手を取ってくれ」

穴を覗き込み、丈二は穴の底へ手を伸ばした。天斗は若干戸惑った表情を見せ、少し考えてから丈二の手を取った。
丈二が天斗を引き上げると、同時に彼らの背後で「やめなさい!」という職員の女性が叫んだ。

職員「その子を部屋に戻しなさい、今すぐに!」

丈二「・・・こんな穴倉に子どもを閉じ込めて・・・・・・閉館じゃあすまねえぜ」

職員「私たちが好き好んで虐待を行っていると? そう思ってるのなら大間違いよ!
   私たちは、“封印”してるのよ!」

航平「“封印”・・・・・・?」

職員「その子は“危険な力”を持ってる・・・・・・“悪魔の子”よ!
   私はその子の悪魔の力を何度も見てきた・・・・・・外に出すのは危険なの!」

未来「悪魔って・・・」

丈二「子どもを監禁するような大人のが、よっぽど危険だろうが!」

天斗「・・・・・・」

丈二「行くぞ天斗くん。車に乗ろう」

職員「待って! だめよ、行かないで! お願い!」

職員「お願いよぉぉ!」
 
 
 




◇児童養護施設『虹の園』園外 AM4:57

四人が園を飛び出して、裏の駐車場に向かう途中だった。
未来と航平が天斗の手を取り、先に車内に入ってエンジンをかけているとき、丈二はふいに、後ろから声を掛けられた。
それはどこかで聞いた憶えのある穏やかな声色で、男性のものだった。
振り返ると、以前街で出会った、赤茶髪の中年男性がそこにいた。航平が拉致されたとき、情報をくれた男性だ。

赤茶髪「やあ」

丈二「!? あ、あんたは・・・」

赤茶髪「時間がないから、手短に話すよ。よく聞いて」

丈二「は!?」

赤茶髪の男は、小さなメモを丈二に手渡した。丈二がそれを開き中を見ると、
そこにはある地名が書かれていた。

赤茶髪「まずは天斗を助け出してくれてありがとう。礼を言うよ」

丈二「!? 天斗!? 知ってんのか? あんた誰だ!?」

赤茶髪「いまは説明してる暇はない。またあとで会おう、そのときに全て話す。
    急いでそのメモに書かれてる場所まで、天斗を送り届けて欲しいんだ」

丈二「どういうことだ!? なんで!」

赤茶髪「天斗はいま、危険に晒されている。彼の命を守ってくれ。その場所なら安全だ」

そう言って、赤茶髪の男は丈二から後ずさり、闇に溶けいくように去ろうとしていった。

丈二「待てよ! あんた誰だッ! この場所に何があるッ!?」

赤茶髪「僕は『神宮寺 樹(じんぐうじ いつき)』だ・・・。
    そこには、“彼女”を呼んである・・・・・・」

樹「ミシェル・ブランチ・・・・・・。『ホテル・ペイパー』の中なら安全だ・・・・・・。
  匿ってもらえ・・・・・・急ぐんだ・・・・・・・」フッ・・・

『神宮寺 樹』と名乗った男はそれきり完全に闇に消え、丈二の前から消え去った。

丈二「・・・・・・ミシェルだと?」
 
 
 




駐車場で車のエンジンをかけた航平と未来が、クラクションを鳴らして丈二を呼ぶ。
気付いた丈二が車に乗り込むと、後部座席の天斗が小さな肩を震わしていた。

丈二「どうした?」

天斗「ボ、ボクは・・・・・・」

丈二「大丈夫だ、俺たちは君を守りにきただけだ。怖いことはしない」

天斗「ボクは・・・ご、ごめんなさい・・・・・・・・・」

丈二「なんで謝るんだ? 君は何も悪くない」

天斗「よ、呼んじゃうから・・・・・・・・・」

丈二「呼ぶ?」

天斗「“悪い人たち”・・・・・・」

航平「ンだ、あいつら!」

突然、助手席の航平が前方を見て叫んだ。身を乗り出して覗くと、車の前方、50メートルほど離れた距離のところに、
男が十数名、進路を塞ぐように立っていた。全員、片手に武器を持ち―――

未来「・・・・・・丈二、あいつらは・・・・・・」

丈二「・・・・・・ああ」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

男たち「・・・・・・・・・・・・」

丈二「・・・・・・全員、スタンド使いだ」

傍らに、自身のスタンドを屹立させていた。

未来「どうします、丈二」

丈二「どうするって、やるしかないだろ。戦闘経験のある俺たちだけで・・・・・・」

二人は航平と天斗に車内にいるよう忠告すると、ドアを開けて車外に出た。
敵は全部で十四人。全員がナイフや鉄パイプなどの近接武器を持ち・・・そしてスタンド使いである。

丈二「お前は『ウエスタン・ヒーロー』がないから大変だろうが・・・・・・
   もう『ハムバグ』は使えないから、ケガできないぞ・・・・・・」

未来「・・・・・・ええ」

丈二と未来の二人はふぅっと深く息を吐き出すと、それぞれ懐からダガーナイフを抜き取って、それを構えた。

丈二「行くぞッ!」

一人のスタンド使いと一人の非スタンド使いが、ナイフ片手に、十四人のスタンド使いの固まりへ、突っ込んだ。







< 前へ       一覧へ戻る       次へ >





当wiki内に掲載されているすべての文章、画像等の無断転載、転用、AI学習の使用を禁止します。




記事メニュー
ウィキ募集バナー