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恋文日和 その⑤

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orisuta

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だれでも歓迎! 編集




前回、謎の外国人ハシムとの会話の中で自らの語学力の無さを思い知らされたエミリアナ・セブロ・メサ。
スペイン人の血が流れていながらスペイン語が全く聞き取れない失態を胸に留め、
エミリは語学トレーニングを始めることを決意する。





エミリ
「そしてエミリはこの失敗から新たな恋文のアイデアが浮かび、
 その準備のために図書館を訪れていたのだった……」


司書さん
「図書館では静かにしてください」


エミリ
「はい」









 ――休憩室    




エミリ
「はあ、いきなり怒られちゃった」


NFG
「図書館ニ入ルナリイキナリものろーぐミタイナヒトリゴトシ始メルカラナ、当然ダゼ」


エミリ
「はあぁ……なんか出鼻くじかれちゃった感じ。
 もう帰ろうかなあ」


NFG
「ソモソモオマエ何シニキタンダヨ」


エミリ
「さっきも言ったでしょ。
 新しい手紙のアイデアが浮かんだの!
 その手紙を書くためにここへ来たんだから」


NFG
「エ?
 イツモ手紙ハ家デ書イテルジャンカ。
 ナンデ今回ハココニ?」


エミリ
「えー……私の想い人はキミも知ってのとおり、

 イタリアに留学しに行ったりなどグローバルな視野を持った人です」


NFG
「ハイハイ」


エミリ
「その点においてスペイン人の血が流れる私というのは、
 彼にとって興味をひかれる人間であるはずです」


NFG
「ハイ、ソースネ」


エミリ
「しかしその実私は日本語しか話すことの出来ないウエンツみたいなヤツなのです」


NFG
「ソウダナ、ソノセイデ今マデ色ンナ人タチヲガッカリサセタッケナ」


エミリ
「そこで、グローバルな彼のため、
 そして語学力のない私のための一石ニ鳥の手紙を思いつきました~」


NFG
「ホー、ソレハ?」


エミリ
「…………外国語で書かれた手紙を書くことです」


NFG
「ソリャア……大変ナコトダゼ……」


エミリ
「彼はきっとイタリア語、そして英語にも堪能なはず」


NFG
「ソウカ……

 トイウコトハエミリモイタリア語デ手紙ヲ書イテ彼ニアピールスルワケダナ……」


エミリ
「フッフッフ……甘いねニュー・ファウンド・グローリー。
 それだと私が苦労して手紙を書き上げても彼はそれをスラスラーっと読んでしまうだけ……

 今までの手紙と何も変わらないよ!」


NFG
「チャント手紙ガ届イタコト一度モナイケドナ」


エミリ
「この作戦はね……

 私はもちろんのこと、彼も知らない言葉で書くからこそ意味があるんだよ!」


NFG
「ナ、ナンダッテェ……」


エミリ
「知らない言語で書かれた手紙を私から送られて、
 はじめに彼は私に尊敬を抱くと共にプライドも刺激されるのです。

 『ゆくゆくはグローバルマーケットに立つ俺がこんな手紙ひとつ読めないでどうする!
 いいぜエミリ、俺はこれをキミの挑戦状と受けとった!』ってね」


NFG
「ソンナ熱血主人公ミタイナヤツダッケ?

 アイツ」


エミリ
「そして彼は!
 辞書を片手に一文一文をじっくりと解読していくわけだ!

 しっかぁーし!

 彼はすでに私の術中にはまっていた!
 彼がじっくりゆっくり読み込んでいたのは私のラブレター!

 一字一句読み込むにつれて、彼の目に、心に!
 私の想いがひとつひとつ刻まれていくのです!」


NFG
「オオ……ナンダカイツニナク面白ソウナ作戦ダナ……」


エミリ
「名付けて……『辞書と共にリーディング・ナウ!

 ~いつしか、ボクが読んでいたのはキミの心だった~』大作戦!!」


NFG
「毎度思ウケド、ソノ作戦名ハハズカシクナイノカ」


エミリ
「そうと決まれば、早速戻るよ!」









エミリ
「そんなわけで
 冷めやらぬ興奮のまま
 ホイホイと私は再び図書館へと
 静かーに戻った訳なのだが」


エミリ
「ぐぬぬ……辞書がみつからないよ」


NFG
「トコロデ、何語ニスルンダ?
 オサレニフランス語トカ……コナイダ失敗シタスペイン語カ?」


エミリ
「ヘタしたら彼はフランス語も知ってるかもしれないんだよね。
 芸術に造詣もあるし。
 スペイン語は、もうこりごりだよ」


NFG
「アノ外国人ダッテ、
 スペイン語ハ世界デ多ク話サレテイルッテ言ッテタジャネエカ……」


エミリ
「あっ、見て!」


NFG
「ン?」


クリームヒルド
「………………」


エミリ
「あの机に頬杖ついて本読んでるおねーさん、ドイツ語の辞書持ってるよ!」


NFG
「日本語ノ本トドイツ語ノ辞書ヲ照ラシアワセナガラ読ンデルミテーダナ。

 デ、ソレガドーシタ?」


エミリ
「わかってないねえ、
 あのおねーさんに手紙書くのを手伝ってもらうんだよ!」


NFG
「エ? ナンデ?」


エミリ
「ほら、辞書じゃ文法とかはわからないでしょ。
 あのおねーさんがドイツ人なら、ちゃんとした文章で手紙を書いてもらえるってもんだよ!」


NFG
「オマエガ外国語ヲ学ブッテ話ハドーシタノ?」


エミリ
「すいまっせーん、おねーさん!」


クリーム
「…………」


エミリ
「ムムム、気づいてないのかな?
 あ、日本語じゃわからないか。

 えーと…………ジャンボ!」


NFG
「ソノ挨拶気ニイッタノ?」


クリーム
「…………」


エミリ
「ううう……ぜんぜんこっちむいてくれない」


NFG
「ッテイウカ本ニ集中シマクッテルヨウダナ。

 本ノ虫ニナッテルゼ」


エミリ
「ねーおねえさ~ん、私の手紙書くの手伝ってくれませんか~~」


NFG
「オイオイ、エミリ……」


クリーム
「…………」

 ペラ


エミリ
「ん?
 辞書のページをめくった……?」


クリーム
「…………」




 "了解する【einverstanden】"




エミリ
「こっ……これは、単語のところを指し示している……!」


クリーム
「…………」


エミリ
「これは、オッケーってことですね!
 ありがとうございます!!」


NFG
「エッ、コレソーイウコトナノカ?
 タマタマ読ンデルトコノ単語ヲ調ベタダケジャ……」


エミリ
「そっそれじゃあさっそくお願いします!
 まずは書き出しなんですけど……

 私はいつも時候の挨拶のかわりに、最近あった共通のできごとなんかをはじめに書くようにしてるんです。
 私と一緒の、楽しかったことを思い出してもらって……」


クリーム
「…………」

 ペラ


NFG
「ン?
 マタ辞書ノページ開キハジメタゾ……」




 "クリスマス【das Weihnachten】"




エミリ
「そ、そうです!
 今年のクリスマスは彼といっしょに過ごせたんですよ!

 ……といっても、クラスのクリスマス会だったんですけど。
 でも、いっぱい話せて楽しかったなあ」


クリーム
「…………」


エミリ
「よし、新しめの話題だしそれを書くことにします!

 でもうーん……文章を作るのが……」


クリーム
「…………」

 ジー


エミリ
「あれ、どうしたんですか?
 辞書をじーっと見つめて…………あっ、そうだ!

 例文があるじゃないですか!!
 これをそのまま使えば、文法を間違えずに書くことができるよね!」


NFG
「デモ、ソンナ都合ノイイ例文ガアルノカナア」


エミリ
「大丈夫!
 ちょっと飛躍していても彼は頭イイから私が書きたいことを理解してくれるって!」


NFG
「大雑把ダナア」


エミリ
「えーと、【クリスマス】のいい例文はと……」




 "『Vorige Weihnachten waren sie zu Hause』【この前のクリスマスには彼らは家にいた】"




エミリ
「……よし、これでオッケー!
 書き出しはこれでいいや!」


NFG
「ナンダコノ悲シイ例文」


エミリ
「たぶん

 『僕らの知らない誰かは家にいたんだろうけど、僕たちは一緒にいたよね』

 って解釈してくれるよ」


NFG
「スゴイ嫌ナ解釈ダ」


エミリ
「よし……それじゃあ次は、
 大切な私の気持ちをアピールしなくちゃ。

 私が彼のことをどう思ってるかってことをね」


クリーム
「…………」


エミリ
「うーん……
 でもどういうふうに表現したらいいかな……

 むー…………」


クリーム
「…………」

 ペラ




 "ひそかな【heimlish】"




エミリ
「……そ、そうなんです!

 私はひそかに彼のことを想い続けているんです。
 彼にとって私は明るい女友達にしか見えないんでしょうけど、
 ホントはいつも私は心の中でぐるぐるぐるぐるといろいろな感情があふれているんです!」


クリーム
「…………」


エミリ
「……ノーリアクションですか、
 さすがは経験豊富そうなだけありますね。
 私の心のうちは見透かしていたということですか……」


NFG
「……ッテイウカ気ヅイテスライナイヨウナ」


エミリ
「そこまでの洞察力をお持ちであるなら……
 良い例文もここにあるということですね!

 どれどれ……」




 "『Sie kommt immer heimlich, still und leise』【彼女はいつもこっそり音も立てずにやってくる】"




NFG
「怖ッ」


エミリ
「これはきっと、

 『私はあなたを想う気持ちを悟らせずに今まで接してきたんだよ』

 ってことを表しているんだよ。
 いやーさすがだわーおねーさん、さすがー」


NFG
「オマエ自身ハコレデイイノカ」


クリーム
「…………」


エミリ
「さあ次はラブレターのキモだよ!
 私が、彼を好きだってことをはっきりと示すんだ!!」


クリーム
「…………」

 ペラ




 "炎【Flamme】"




エミリ
「そ……そう!

 そのとおりなんです!!
 まさに私にぴったり、私の愛は燃え上がる炎なんです!」


NFG
「エミリ、無理シテナイ?」


エミリ
「外国人ってみんな表現がオーバーなもんでしょ、大丈夫大丈夫」


クリーム
「…………」


エミリ
「ほら、その証拠におねーさんは平然そのものだよ」


NFG
「コノ人ハズットコンナンダケドナ」


エミリ
「よーし、ここで書く文章は大切だよー。

 えーと、例文は……」




 "『Das Gebaude steht in Flammen』【建物が炎に包まれている】"




エミリ
「…………」


NFG
「エー……エミリサン、解説ヲ」


エミリ
「……ホ、ホラこれは手紙だからさ、

 『この手紙に込められた私の熱い想いは便箋をも燃え上がらせ、あなたの家までも包むようだ』

 …………ってね、こー……」


クリーム
「…………」


エミリ
「だ、大丈夫だって!
 もし文章の意味が伝わらなくてもさ、異性に手紙を送る理由なんて、ひとつしかないでしょ!
 きっとわかってくれる……」


クリーム
「…………」

 ペラ ペラ


エミリ
「だ、大丈夫……だよね。

 よし、最後は締めの言葉だ!
 終わりよければすべてよし!」


クリーム
「…………」

 ペラ




 "直接【direkt】"




エミリ
「そう、直接ね!

 ……え?」


クリーム
「…………」

 ペラ




 "素直な【folgsam】"




クリーム
「…………」

 ペラ




 "言葉【die Sprache】"




エミリ
「直接……素直な……言葉で…………」


クリーム
「…………」


エミリ
「……おねーさん」


クリーム
「…………」


エミリ
「そう……そうですね、私やり方を間違っていました。

 なにかの言葉を借りずに自分の言葉で伝えることが大事なんですね。
 おねーさんは、最初からわかってたんだ……」


クリーム
「…………」


エミリ
「ありがとーございますっ、
 おねーさあああああああん!!!」

 ガシッ


クリーム
「………………」

 ガクガクガクガク


NFG
「ウワワワ、エミリ、アマリ揺ラシテヤルナッテ!!」


エミリ
「…………はっ、ごめんなさいおねーさん!

 つい嬉しくって!」


クリーム
「…………」


NFG
「ウワー服ハダケチャッテルゾ」


エミリ
「お、怒ってないかなあ」


クリーム
「…………」

 ペラ




 "『Viel Erfolg!!』【成功を祈る】"




エミリ
「あっ、ありがとーございますうううう!!」


 ガクガクガクガク


NFG
「ワワワワ、ヤッ、ヤメロエミリ!」


クリーム
「…………」


NFG
「ココマデ無反応ナノモ尊敬スルゼ」


エミリ
「よし、それじゃあ出直そうニュー・ファウンド・グローリー!

 今度こそがんばるぞー!!」


クリーム
「…………」


エミリ
「ばいばーい、おねーさん!!」




 ダ ダ ダ ダ ダ ダ









クリーム
「…………はっ、

 いけないいけないまたやってしまったようだ」


クリーム
「いやしかし日本の本にもいい読み物はたくさんあるなあ。
 またまた悪癖がでちゃったようで、ずーっと読みふけってしまった」


クリーム
「……?
 えーと、まわりは散らからずに私の上着だけが不自然に乱されているこの状況は……」

 キョロキョロ


クリーム
「…………はっ、あれは!」


アンテナさん
「んんwwwwこれはwwwwwついにwwwww
 『女の子の体の描きかた』の本がwww並びましたぞwwwww

 グプwwww筆跡を変えwww
 100人分のリクエストを出した甲斐がwwあったでwwwござるwwwwwブフwww」


司書さん
「図書館では静かにしてください」


アンテナさん
「はい」


クリーム
「明らかに性犯罪者予備軍のようなアノ男……」


アンテナさん
「絵の勉強www
 絵の勉強でござるwwwww

 小生決してwww
 下心などwwwwないのでwwwwんんwwwwww」


クリーム
「私が本に集中しているのをいいことに、好き勝手に私の体をまさぐった

 ……そんなところか。

 外国人旅行者なら泣き寝入りするかと思ったかな……?
 だが、報いは受けてもらう……『エロティカル・クリティカル』!!」

 ビュッ


アンテナさん
「ムムッwwww
 7時の方向にww
 スタンド使いの反応wwwww」

 クルッ



――その時小生が見たのは、本の森の中で真っ直ぐ向かい来る一本の白い小瓶だった。
だが、文字通り小生に降りかかった災いはこの小瓶のあとにやってきたのだった。
刹那に見た小瓶のラベル、そこにははっきりと『1.次の部位は使用しないこと (1)目の周囲、粘膜など』と書かれていた……。


~ アンテナさん自伝『二次元と三次元のあいだ』より抜粋 ~




つづく


出演トーナメントキャラ


No.4971
【スタンド名】 ニュー・ファウンド・グローリー
【本体】 エミリアナ・セブロ・メサ
【能力】 スタンドが描いたものを具現化する

No.6552
【スタンド名】 エロティカル・クリティカル
【本体】 クリームヒルド・ブライトクロイツ
【能力】 自分が投擲した物を絶対に命中させる




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