~都内某ホテル・ロビー 某時刻~
プツッ
先生「・・・・・・・」
平田「なんだったんだ?」
先生「貴様がヘマをこいてくれたお陰で面倒くさいことになった。立派な仕事ぶりだな、この疫病神」
平田「おい、俺を責めるのは違うだろう。アンタんとこの下っ端が勝手にやったこと。
俺は関係ない。むしろ部下の監督もロクに出来ないアンタ自身に問題があるんじゃないか?」
先生「ふっ、そう言われると言い返す言葉がないな。もう消えろ、お前にようはない」
平田「ああ、そうするよ。金をありがとう。会えてよかった。」
スタスタスタスタスタスタスタ・・・
先生「・・・・・・・さて、どうしたものか」
護衛1「携帯の電源は切っていないようです。探知できます。」
先生「誘っているな、どうやら本気で私の首を狙っているらしい」
護衛2「我々で追跡、殲滅しますが。」
先生「いや、いいよ。仕方ない、案内してくれ」
護衛1「! まさか直接出向くおつもりで?」
先生「向こうはそれがお望みだ。久々にやってやることにするよ」
~都内某所 某時刻~
丈二「話してくれ。お前達誰なんだ」
未来「僕たちも同じですよ。『組織』を潰すために動いてる」
丈二「なんだって・・・?」
カズ「お前の正体にも気付いてたよ。怪しまれないためにアジトではわざとらしく驚いたフリしてたけど」
那由多「あなたが『ナイフ』のすり替えなら私達はその『中身』・・・『水』のすり替えをしてたのよ
そういうのに向く能力を持つ仲間がいるの。二つしか取れなかったけどね」
丈二「何故そんなことを?『組織』に忠誠を誓っていたんじゃあないのか」
カズ「俺達が信頼してたのは阿部さんだけだよ」
未来「・・・僕らも家族を亡くしてるんです。『組織』のおかげでね」
丈二「!」
那由多「阿部さんは身寄りの無い私達を自分の下に引き入れてくれたの。『組織』は憎いけど、阿部さんは別。
彼には心の底から感謝してるわ。」
丈二「だが、阿部への裏切りだろうそんなの。彼は『組織』に忠実だった」
未来「ええ、心苦しかったですよ。でもやらざるを得ない。いずれ阿部さんには話す予定でした。」
丈二「俺は阿部を殺したんだぜ、憎くないのかよ」
カズ「憎いよ。でも仕方ないよな、殺らなきゃ殺られる状況だったんだろ。
マジにムカついてんのは阿部さんをそういう状況に追い込んだ『組織』の方さ」
丈二「・・・・・・」
那由多「私達とあなたはもう仲間同士には戻れないけど、『敵の敵は味方』・・・・お互い有益な関係を結べるかもしれない。
まだ『組織』と闘う気があるなら、ついてきて。会わせたい人がいる」
丈二「誰だ?」
那由多「私達に『組織』と闘う術を授けてくれた人よ。『ナイフ』や『水』のこと、教えてくれるわ。なにもかもね」
~都内某廃倉庫 某時刻~
未来らに連れられ、丈二は都内の某廃倉庫へやってきた。
コンクリートの床と、壁、高い屋根以外は何もない場所だ。
丈二「ここがお前らのアジトか?」
那由多「まさか。アジトは別の場所にある」
スッ・・・
男「僕が頼んだんだよ。ここに『組織』の連中を誘い出す」
丈二「!? 誰だ」
未来「僕らの『仲間』ですよ。『組織』を潰すために僕たちに知恵を貸してくれた」
男「『天野』だ。よろしく丈二」
丈二「なんで俺の名前を?」
天野「君の事は何でも知ってる。誕生日も、飼っていた犬の名前も、5歳のときに住んでいた住所も
君が好きだった戦隊ヒーローの番組も、なにもかもな」
丈二「なんだって・・・?」
天野「色々聞きたいことはあるだろうが、時間が無い。直に連中がここへやってくる。
とりあえず今は2つだけ質問に答える。好きなことを聞け」
丈二「・・・あの『ナイフ』は何なんだ?容器に入っていた『水』も」
天野「あれは『実験器具』にすぎない。やつらが『水』の効果を知るため作ったものだ」
天野「あの『ナイフ』は、刃が何かに刺さると中の容器が押されて『水』が漏れ出し、刃に滴る構造になってる。
君は『ナイフ』の傷口から『水』を体内に取り入れたんだ。そうして『スタンド』が目覚めた。」
丈二「なんなんだ?あの『水』は人を『スタンド使い』にするのか?」
天野「なれない者もいる。むしろそっちの方が圧倒的に多い。君は幸運だった。
1000人刺して1人が『スタンド』に目覚めれば御の字だ」
丈二「残りの999人はどうなる?」
天野「死ぬ。体が『水』に適応できずにな」
丈二「!!」
天野「『水』は今から10年ほど前に北極で発見されたものだ。『新種のウイルス』としてな」
天野「1000万年以上前から地球に存在していたその『ウイルス』・・・それを発見したのが当時の科学調査隊のメンバー、
『組織』のトップと、君のお父さんだよ」
丈二「親父が・・・?」
天野「当時は大分騒がれたよ。なんたって新種の『ウイルス』を氷の中から発掘したんだ。
結局学会には報告されなかったがな。」
丈二「どういうことなんだ・・・親父は何をしてたんだ」
天野「『組織』が何故あれほど強大な権力を持っているかわかるか?」
丈二「奴らには協力者がいる・・・財政界や、警察機構にも繋がりがある」
天野「その通り。では『組織』のトップスポンサーが誰かは?」
丈二「いや、知らない・・・・誰なんだ」
天野「世界で活動する環境保護団体、『グリーン・アース』だ。」
丈二「『グリーン・アース』・・・?」
天野「話が見えてきただろ?『グリーン・アース』の現CEO・・・『柏 龍太郎』
この男が『組織』の創設者であり『オリジナル・メンバー』・・・・・・」
天野「君が見た『先生』だよ。やつが『組織』のトップだ」
丈二「・・・・・・!」
天野「それだけじゃない。『オリジナル・メンバー』には君のお父さんも含まれていたんだ。
君のお父さんと、環境保護団体のCEOが、『組織』を産み出したんだ。あの怪物をな」
丈二「そんな・・・!ウソだッ!親父がそんな・・・!」
天野「君のお父さん・・・城嶋教授はいつも家にいなかっただろう?何故だか考えたことはあるか?」
丈二「親父は考古学の学者だ・・・研究で忙しかった」
天野「確かに彼は考古学に熱心だったが、有能な学者ではなかった。
研究に費やす時間なんてごくわずかさ。大半は我々とともに働いていたんだ」
丈二「やめろッ!そんなの信じないッ!アンタの話には確証がない!」
天野「・・・・・・」
丈二「信じてほしいなら証拠を―――――――――――――――――――
!!・・・・・・・・・ま、待て・・・・・・・・・・・・・・・・・・『我々』?」
天野「・・・・・・・」
丈二「まさか・・・・・・」
天野「そうだ、僕も『オリジナル・メンバー』の一人だ。教授と、柏と、僕の三人で『組織』を創設した。」
丈二「・・・・・・・・・・!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
丈二「いいのかよ、こんなことベラベラ喋って。あんたは何故『組織』と戦う?」
天野「環境を守ることは大事だ。最初はただそれだけだった。そのひたむきな情熱に胸を打たれて・・・・・・」
丈二「・・・・・・」
天野「でも地球のために、『組織』はどんどん血に染まっていった。僕は見ていられなくなったんだ。
『組織』は『DDT』だ。地球に巣食う害虫を駆除するためのグループなんだよ。『人間』というな。」
丈二「奴らの目的は・・・・」
・・・・ブロロロロ
天野「・・・もう時間だ。僕はアジトに戻る。那由多、未来、一樹!頼んだよ」
那由多「はい」
丈二「何するんだ!?」
那由多「あなたの携帯を探知させてわざとここへ呼んだの。『組織』の連中をね。」
カズ「俺らでボコボコにして『ウイルス』の在り処を吐かせるんだ」
天野「そういうこと。君も協力してくれると嬉しい。『ウイルス』はちゃんと持ってるな?」
カズ「ああ、ここにあるよ」
天野「よし、それをわた―――――――」
天野が『ウイルス』を受け取ろうとしたそのとき、倉庫の入口の方から聞きなれぬ『足音』が響きわたる。
音の方向に振り向くと、知った顔がこちらに歩いてきていることに天野は気付いた。
スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタ・・・・・・・・
天野「!?」
スタスタスタスタスタスタスタスタスタスタ・・・・・・・
男「・・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
天野「あ、アイツは・・・!向こうから歩いてくるアイツは!・・・・・・・・」
那由多「! まさか、『本当に来るなんて』・・・・・・・・!自ら直接ッ!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
柏「『取りに来い』と・・・言われてね。呼んでくれてありがとう。『ウイルス』は?」
天野(マズイ、僕は顔を見られるわけにはいかない!死んだことになってるんだ!先に戻ってるぞ!)ボソッ
タタタタ・・・・
カズ(!? おいちょっと『ウイルス』は?・・・・って行っちまった)
那由多「護衛はいないの?一人で来るなんて正気の沙汰とは思えないわ」
先生「私は時間が無い。はやくしてくれ」
未来「こちらは『スタンド使い』が四人・・・『四対一』だ。ここから逃げられると?」
柏「『逃げる』?・・・それはこちらのセリフだ。
お前達に『逃げられたら』困る・・・煩わせるなよ、死ぬ時は大人しく死んでくれ」
丈二「せいぜい余裕こいてろ・・・・・・」
ドバァァーーーーーン!
四人が『スタンド』を展開させ、『先生』・・・・・・『柏 龍太郎』を囲む。
柏は少しも動揺した素振りを見せず、『スタンド』も出さずにその場に突っ立ったままだ。
未来「行くぞッ!」
一同「オオッ!」
柏「・・・・・・・・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
第7話 終了
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