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アドミラル・レールウェイ(仮)

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orisuta

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ロシア極東部ウラジオストク。国内では数少ない不凍港があるこの港町は
国際都市と軍事都市、二つの顔を併せ持っている。
そして、物語はそんな港町の片隅の小さなカフェから始まる。――――

窓際の明るい席。だが言葉を発している男の顔は険しく、とても明るいものとは言えない。

「どうしても、引き受けて欲しいのですが。」
「断る。」

答えたのはマフラーで顔を半分隠した女。それだけでも奇妙だったが、
見た感じかなり幼い彼女が立派な軍服を着た軍人と話をしているのが何より奇妙だった。

「出来れば話だけでも・・・。」
「断る。」
答えは素気無く、元より軍人と話をする気はないらしい。
(随分と嫌われたものだ・・・)少々勢いが削がれるが
それでも男は食い下がる。


「いいですか。これは我々の祖国ロシアに関わることで。―――」
「二度断ればいいものを三度も断らなくちゃいけないってことは
 そいつがバカ野郎だからだ。」

・・・正面からバカ野郎と言われた男はかなり落ち込んだ。
頭を抱え、周囲にドヨ―――ンという効果音が立ち上がる。
「ひ・・・ひどい。」

流石に言いすぎたか、と少し彼女は戸惑ったようだった。
黙りこみ、彼をじっと見つめている。
顔を上げた男はその様子を見て少しため息をつき、言う。
「・・・わかりました。じゃあ」
「スタンドについて。こう言えば聞いてもらえますね?」
 
 
 




彼女は表情を変えない。だがその両手は明らかに硬く握られていた。
「・・・どこでそれを。」
「聞いてもらえますね。」
先ほどとは打って変わった真剣なまなざしで問われる。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

しばらく緊張した空気が続き、やがて彼女が言葉を発した。
「・・・コーヒー二つ。」
ウェイトレスに向かって。




コーヒーが運ばれてくる前に男は口を開いた。

「あなたがスタンド使いということは普通、軍の上層部にしか知らされません。
 下っ端の私が知ってるということは、私がそれだけ重要な任務を任されてるということです。」
「自慢か?」
「真面目に聞いてください。アレクサンドラ・ニコラエブナ・プーシュキナ。」
本名を言われた女、アレクサンドラ――サーシャは軽く息を吐く。

少し椅子を座りなおして男は続けた
「この話は他言無用です。誰にも話さないと誓いますね?」
「・・・」
「・・・では続けましょう。単刀直入に言います。我がロシア軍はウラジミル・プーチンの命により
 本格的にスタンドの研究に着手することとなりました。」
「・・・」
 
 
 




サーシャは驚かない。大体予想は着いていたからだ。
元々ロシア軍は装備・兵力は充実してるものの個々の兵の能力はかなり低い。
それを補うため、私のような超能力者に目を付けたとしても不思議ではない。
だが、次に出てきた言葉は流石に予想外だった。

「そして我々はスタンドを極秘に研究しているというSPW財団から独自のルートで、
 スタンドを発現させる矢じりを手に入れることに成功しました。今ごろは大騒ぎになっていることでしょう。」
「っ・・・!」
絶句する。彼女の持つスタンド能力は生まれ付きであったが、
それ以外にもスタンドを得る方法があるだろう事は薄々と知っていた。
その方法を奪い取っただと・・・・・!?

「これです。意外とちっぽけなものでしょう?」
テーブルに置かれたのは確かに矢じり。
ただの人間がみても、ただの小石ぐらいにしか思わないだろう。
「ですが、それは世界を変えるだけの可能性を秘めている。」
謳うように男は続ける。
その目は今や尋常ならぬ輝きを見せていた
「では、本題です。それをモスクワ軍管区まで届けてください。「運び屋サーシャ」として。」




コーヒーが来た。
「何故私が・・・。」
「軍人が嫌いだというのは大方その能力を恐れた上層部に疎まれたからではないですか?」
「・・・」
「知りたくないのですか?自分の能力のことを。
 我々に協力をすれば研究結果を貴女にも報告させていただくつもりです。」
ニコニコと、笑顔でそう言った。

この男を甘く見ていたかもしれない。軽く後悔したが、
それは彼女が昔から抱いていた疑念を抑えることはできなかった。
 
 
 




「分かった。」


答えると同時に彼女は思い浮かべる。
軍を抜ける前、彼女が搭乗していた軍艦の名前を。

「アドミラル・クズネツォフ!!」


バ  ────z______
                    ン



黒色本革の大型トランクケースが、
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
ごく自然にまるで当たり前のように出現した。

男が顎に手を当てた。
「・・・なるほど。スタンドとしては少し変わった形ですね。」
「見えて・・・いるのか?」
「私も一応スタンドに目覚めています。危うい賭けでしたが。」

ヒラヒラとかざす矢じりをひったくり、サーシャはトランクケースの中に入れた。

《一番機、搭乗シマシタ》

抑揚のない機械音声がしたのを確認し、トランクケースの蓋を閉じる。
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 次の瞬間には出てきた時と同じ自然さでそれは消えていた。

そして彼らは会話を続ける。何事もなかったかのように。
「実体の物を保管しておくことが出来るスタンド、ですか。」
「違う。」
「違う?」
男は怪訝な顔をする。今のだけを見ていると無理はない。

「間違いではない。だが半分。」
「・・・?」
「いまのトランクケースは航空母艦。実体の物を戦闘機として収容しただけだ。」
「戦闘機!?ちょっと待って下さい。それは大切に持ってもらわないと・・・。」
男が焦った顔をする。
少し溜飲が下がったが、サーシャは表情を変えずに答える。
「私が命令しない限り飛ぶことはない。」

男は少し落ち着き、コーヒーをぐっと飲んだ。
「なるほど・・・何にせよ、物を運ぶのにはうってつけという訳ですか。
 重いものでもスタンドの中に入れておけば平気でしょう。」
「容量には限りがある。」
「十分です。流石にミサイルを運べなんて言えませんし。」
 
 
 




「それで後は確か・・・そうそう。海路と空路は使えません。」
「?」
「SPW財団がこれ以上入ってこれないようにするためですよ。
 ロシア発のウイルスという捏造を流し、我が国への交通網は全て封鎖しましたから。」
サーシャは少し眉をひそめる。
こんなえげつないことを平気でやる所も彼女が軍が嫌いな理由の一つだった。

そんな彼女の様子を知ってか知らずか、男は彼女に何か手渡した。
「シベリア鉄道の切符です。今日の夕方五時発ですね。確認してください。」
「・・・」
「あ、それとロシア国内のSPW財団が矢じりを取り返そうとしてくるかもしれません。
 こちらも何とか防ぎますが、もしかしたら戦闘もあり得るかもしれませんのでお気を付けて。」
「運ぶのは私一人か。」
「ええ、大勢でゾロゾロ行くと目につきますので。
 もちろんご連絡くだされば人員は送らせていただきます。」
そういって、連絡先のメモを渡してきた。
出来れば使いたくないと思いながらもコートのポケットにしまう。

「そろそろ行く。」
サーシャは服装を整えて立ち上がった。傍目には何も持っていない姿で。
「あの、コーヒーは?」
「やる。」
引き受けたからにはさっさと済まそう。ぐずぐずしてはいられない。

カウンターで代金を支払い、そのまま出て行こうとした時、
「・・・では祖国ロシアのために。」
男が立ち上がり、こちらを見送ろうとした。

振り返り、応える。
 ・  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「私、サーシャのために」

呆然とする男を無視して店を出て行く。
発車時刻まで四時間。

その間に何を準備するか、除雪された歩道を歩きながら
サーシャは考えを巡らせていた。




使用させていただいたスタンド


No.1093
【スタンド名】 アドミラル・クズネツォフ
【本体】 サーシャ(アレクサンドラ・ニコラエブナ・プーシュキナ)
【能力】 トランクの中に入れたあらゆる物を発進させ戦闘機のように自在に操ることが出来る









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