【日本:杜王町郊外】
PM6:00
杜王町。
噂によると、此処には顔を別人に変える事が出来る『魔法使い』が居たらしい
尤も──
バッジョ「今は亡き、か。やれやれだぜ……」
鉄塔で生活する酔狂な男を視界の端に捉えながら、ロベルト・バッジョは溜め息混じりに呟いた
バッジョ「アテが外れたな。さて、どうしたもんか」
ハンチングを被り直し、両手をトレンチコートのポケットに突っ込んだところで
「──ん?」
【ローマ:『組織』のビル】
AM10:00
???「あの程度のレベルでは返り討ちも当然、か」
???「あの…『ボス』…」
???「なんだ?」
???「俺ら朝早いっすね」
???「都合上仕方無いんだよ……」
【杜王町:郊外】
PM6:03
バッジョ「……俺は何も『見なかった』。良いな、俺は誰も『見なかった』んだ」
???「誰に話しかけてるんですか、それ?」
バッジョ「悪いな、夕暮れ時に路上で寝ている女性にかける言葉は持ち合わせていない」
???「持ってるじゃないですか」
【ローマ:『組織』のビル】
AM10:05
???「それで『ボス』、次はどうします?」
???「安心しろ、既に手は打ってある」
???「おお」
???「先の刺客が黒板を爪で引っ掻くクラスなら、今度の奴は『爪の間の紙をシュッとする』くらい恐ろしいぜ。ククク……」
???「うわぁショボい……」
【杜王町:商店街】
PM6:45
バッジョ「望みは何なんだ……(組織の回し者ではないようだが……)」
???「夕御飯と寝るところです」
バッジョ「俺はホテルか何かか……」
???「それにしても日本語お上手なんですね」
目の前をスキップで歩く少女は、端的に言うと美人だ
だから発言が余計に目立つ
バッジョ「語学に堪能なんだよ」
???「あ、私の名前は村上静香(ムラカミ シズカ)って言います。絶賛お散歩中です」
バッジョ「そうか、良かったな」
静香「貴方の名前は?」
バッジョ「………」
静香「貴方の名前は?」
無視だ、無視
静香「………」
バッジョ「………」
静香「………」
バッジョ「悪かったよ涙目になるなよ。ロベルト・バッジョだ、二度言わせるなよ、嫌いなんだ」
静香「えー?とても良い名前じゃ──」
プツン──と
まるで白熱灯のスイッチを切った様に、辺りが暗闇に包まれた
バッジョ&静香「「ッ!!」」
一般人の驚いた様な声が聞こえる
日食でもあるまいに、こんな現象は『有り得ない』
当然の帰結として行き着く思考の先は
バッジョ「もう追っ手が来やがったのかッ!」
そして、二人は同時に叫んだ
バッジョ「『ワム!』ッ!」
静香「『ティアーズ・オブ・マグダレーナ』ッ!」
バッジョの背後にはガスマスクを被った人型のスタンドが
静香の背後には、両手の甲の十字架が入った美しい人型のスタンドが現れた
バッジョ「(この娘、『スタンド使い』だとッ!?)」
静香「『何か』来ますッ!気をつけて下さい!」
┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛.....
バッジョ「(『本能』が告げているッ!こいつは『ヤバい』ぞ……ッ!!)」
凄まじい悪寒が全身を駆け巡る
静香「危ないッ!」
ドンッ、と、軽い衝撃と共に、体が横合いに吹っ飛んだ
それが静香に突き飛ばされたのだと理解するのに、一瞬の間を置く事となった
バッジョ「(今、『何か』が足元から現れた。十中八九『敵スタンド』だッ!)」
闇が晴れる
暮れ行く太陽と仄かに光る街頭の光で、商店街は満たされた
ふと足元を見ると、先程まで立っていたのであろう地面に、小さな穴が空いている
バッジョ「少なく見積もっても『二人』…一人はサポートでもう一人は攻撃役って訳か」
静香「………」
バッジョ「おい、危ないから伏せて――」
静香「『分かり』ました」
バッジョ「何?」
静香「敵『本体』の位置です」
確証を得た声が、バッジョの思考を加速させる
会ったばかりのこの少女の言う事を信用するべきなのか
静香「私の『ティアーズ・オブ・マグダレーナ』の能力は、人の行いを一分先まで読む事です」
迷っていても『始まらない』
そう考えて、俺は彼女へ頼ることにした
バッジョ「その『中で』、『挙動』の可笑しな奴等が居たって訳か」
静香「はい。暗闇の中でも全く動揺していない人が、二人」
バッジョ「位置を教えてくれ」
何よりも、そのカリスマすら感じる笑みに惹かれて
【日本:杜王町】
PM7:00
???「ッチ」
商店街の一角、ベンチに腰掛けるサングラスの男は軽く舌を鳴らした
???「まさか俺とお前のコンビネーションがあんな娘に破られるとはな」
瞳を閉じた男は静かにサングラスの男へ話しかける
???「黙ってろニック。俺の『サブウェイ』に狂いは無かった、次は殺れる」
ニック「しかしなモール、『確実に殺った』と言う確固たる『自信』が我等にはあったのだ」
モール「………」
ニック「それが破られた以上、作戦も考え直さねばなるまい。一先ずは私の『ケイブ・ストーリー』で離脱を――」
そういって立ち上がったニックの肩を、誰かが叩いた
ニック「……?」
盲目のこの男は、音で確認するしか他人を認識する術が無い
故にその声はよく聴こえた
バッジョ「Nizza per incontrarLa(会えて嬉しいぜクソ野郎共)」
『ワム!』の拳がニックの腹部へ減り込む
ニック「ゲボブゥワァーーーッ!?」
ニックの体が上空へ跳ね上がる
異常に気づいたモールも、また盲目であった
モール「なッ!?『サブウェ――」
バッジョ「遅いッ!」
地面から飛び出して来た土竜の様なスタンドを『ワム!』が掴んで放り投げる
バッジョ「残念だったな、俺は『戻らない』ッ!」
ゆらりと蠢いた『ワム!』の拳を、モールは知覚出来ない
握り締めた両拳が、自らを打ち据えるまで
バッジョ「フラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラフラ、フラゴーレッ!!(震えて眠りなッ!)」
モール「ギャァァァァァスッ!!」
派手に打ち上げられたモールとニックは、互いに空中で衝突し、弾かれて近くの八百屋と魚屋に突っ込んでいった
【日本:杜王町】
PM10:00
ホテルの一室にて
携帯電話を耳に当てながら、バッジョは困り果てていた
相手は静香である
バッジョ「何度も言うが、今日ので分かっただろう?俺に構うと怪我するぞ」
静香『大丈夫です。自分の身は自分で守りますし、今日だってバッジョさんを助けました』
バッジョ「………」
命の恩人、と言っても過言では無かったかもしれないのは確かだが
バッジョ「分かった。明日の買い物に付き合ってやるからその『バッジョさん』というのを止めろ」
静香『自分の名前、お嫌いですか?』
バッジョ「反吐が出る程な」
静香『じゃあ――「ジョジョさん」、なんてどうです?』
バッジョ「――は?」
静香『私の名前、「村上静香」って、「上」と「静」で「ジョウジョウ」って読めるでしょう?』
バッジョ「ああ」
静香『それに、バッジョさんの「ジョ」だけを取って「ジョジョさん」です』
バッジョ「いや意味が分からん」
静香『それとも「バッジョさん」と呼びましょうか?』
バッジョ「……分かった、『ジョジョ』で良い」
静香「よろしい。それでは、また明日」
ピッ、プープー
バッジョ「…………」
【ローマ:『組織』のビル】
???「ボス、大変です!」
???「え、何?今マインスイーパやってんだから邪魔しないでよ」
???「送り込んだ刺客が返り討ちにされました!」
???「嘘ォッ!?マジかよあの組み合わせならヌルゲーだったろ……」
???「どうにも相手はバッジョ一人では無かった様です」
???「――へぇ、詳しく聴こうか」
この時のバッジョは知る由も無かった
この日知り合った少女と、『スタンド戦争』の渦中に放り込まれる等とは――
【スタンド名:ケイブ・ストーリー】
【本体:ニック】
【スタンド名:サブウェイ】
【本体:モール】
共に全身粉砕骨折で再起不能
【スタンド名:ティアーズ・オブ・マグダレーナ】
【本体:村上静香】
バッジョに買い物に付き合う約束を取り付ける
To Be Continued.......
使用させていただいたスタンド
No.510 | |
【スタンド名】 | ケイブ・ストーリー |
【本体】 | ニック |
【能力】 | 射程範囲内の空間を一時的に真っ暗闇にする |
No.434 | |
【スタンド名】 | サブウェイ |
【本体】 | モール |
【能力】 | 地中か人間が立っている位置を見つけて脚に侵入する |
No.565 | |
【スタンド名】 | ティアーズ・オブ・マグダレーナ |
【本体】 | 村上静香 |
【能力】 | この世にいる『人』の行動の全てが、1分先まで読める |
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