【日本:杜王町】
AM11:00
家具屋前。
不覚にも静香の『お買い物』に付き合わされるハメとなったバッジョは、家具屋『アンダー』の前で腕を組んで立っていた
(静香曰わく「新装開店したお店だそうですよー」との事だ)
バッジョ「家具屋ね……『買い物』って家具の事だったのか」
そりゃあ男手もいるって訳か
しかし、新しく独り暮らしでも始めるのか?あの娘は
静香「ジョジョさーん!お待たせしてすみません」
パタパタと走り寄ってくる静香を視界に捉える
今になって気がついたが、コイツ背が高い
バッジョ「問題ない。で、『何なんだ』、この店は」
静香「……?家具屋さんですけど……」
バッジョ「それは分かるんだがな……」
入り口の横にある『蹂躙します』って看板は何なんだよ……
大型店、と言う程大きくも無く
しかし中型とも小型とも言えない『無難』な大きさの店内には、まだ自分達以外の客は居ないようだ
バッジョ「(一通りは物が揃ってんだな……って当たり前か。それにしても客居ないな……)」
静香「私ちょっと向こうの方を見て来ますねー」
と、手を振りながら食器棚群の奥へと消えて行く
軽く手を振って応答しながら、そういえば彼女は何を買いに来たのだろう?と、首を上に傾ぎながら思案を巡らせ店内を歩く
バッジョ「──ん?」
はた、と足を止め、5m程前の天井に張り付いている何かとその下に置かれた椅子が目に入った
天井に張り付く顔の様な『模様』の付いたアレは
そして上から圧し掛かられた様に軋むあの椅子は、『何だ』?
バッジョ「アレは──『絨毯』か……?」
それに、何故あの『絨毯』の下方の床だけへこんで──
┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛┝゛.....
バッジョ「――ハッ!?」
直後、異様な視線を感じて振り返る
それに合わせて、バキッと音を立て、『椅子』が『壊れ』た
???「おやおや……いらっしゃいませ『奴隷』様。何をお探しですか?『椅子』をお探しですね?」
Yシャツにベストを重ねた、中年の男だ
近くの本棚に寄りかかり、此方を見ている
バッジョ「な……ッ」
???「おや失礼。私店長の重松重一(シゲマツ シゲイチ)と申します」
『絨毯』を見上げながらバッジョへ歩み寄り、驚くバッジョを『絨毯』の真下へと促した
バッジョ「おいアンタ――」
『絨毯』を見上げていた重松が、数歩下がると、視線を下げ、バッジョの双眸を真正面から見据えた
そして
バッジョ「――ぬおおッ!?」
ガクン!!と
体が『動かなく』なった
バッジョ「(い、いや違う!『重い』んだ!まるで“漬物石でも乗せられた様に”体に『負荷』が掛かっているッ!)」
何とか顔だけでも持ち上げようと体を動かすと
重松「おっとォ、動くんじゃーねェぞッ!ヒキガエルみて~にペシャンコに成りたくなかったらなァ~」
それをスイッチに、重松の態度が豹変した
重みが、少しづつ増して行く
顔も上げられないので、重松の様子を窺う事も出来ない
バッジョ「くっ──『ワム!』ッ!」
バッジョに覆い被さる様に現れたスタンドは、近くの棚を叩こうと拳を振り上げ
重松「貴様『スタンド使い』だったかッ!だが無駄だ。『アンダー・プレッシャー』ッ!ソイツの『スタンド』を『重く』しろォーーーッ!!」
ドグシャアッ!!と
バッジョ「(『組織』の人間では、無いようだ…がッ!)」
『重さ』が増し、床を砕きながら『ワム!』の右手は根太にまで減り込んだ
飛び散った床の破片が、カラカラと乾いた音を立てる
バッジョ「クソッ……」
スタンド共々床に這い蹲る様を見て、重松は満足気に頷いた
重松「うむ。『椅子』はこうでなくては」
そう言うと、床に両手をついて重みに耐えるバッジョに歩み寄り、『椅子』にでも座る様な挙動でその背に座った
重松「──人を『蹂躙』するのは実に気分が良い。自らの『位置』を限りなく高めてくれる」
よく磨かれた床に、僅かだが重松の恍惚な表情が見て取れる
天井の『絨毯』を見上げ、講釈を続けている
バッジョ「(ヤツは『重み』の対象にはならない。そして一瞬だが、『ワム!』も『重み』の影響は受けてはいなかった)」
ならば、アレは対象を細かく『選択』出来ると言う事か
と、そこでバッジョは一つの疑問を心の中で呟いた
バッジョ「(何故──さっきから『上を』向いている?)」
そうだ、さっきコイツは『絨毯を見上げながら』俺をこの位置へ誘導した
その時は『重み』は感じなかった筈だ
バッジョ「(そして、『絨毯から目を離した』途端、『重み』が襲い掛かった)」
今『絨毯』を見上げる重松は『重み』の効果を受けていない
バッジョ「(試す価値は――あるな)」
重松「――故に、私は人の上に『座る』のが大好きでね、分かって頂け」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.......
重松「な、何だ!?」
突然の揺れに慌てた重松が、『絨毯』から目を離し辺りを見回す
重松「――ハッ!」
途端、バッジョを戒めていた『重み』は消え去り、重松はゴロリと床を転がり距離をとった
何時の間にか、『絨毯』は重松の背後へ移動していた
バッジョ「やはり、『視界に入れていないと』細かい指示を送れない様だな」
重松「ッチ!『アンダー・プレッシャー』ッ!ヤツをもう一度押しつぶ」
静香「『ティアーズ・オブ・マグダレーナ』ッ!」
重松「ウボァッ!?」
背後から思い切り殴り飛ばされた重松が、スタンドごとバッジョの足元へ滑り込んで来る
重松「い、何時の間に…助けを呼んだ様子も無かったのに…」
バッジョ「『揺れ』だよ」
重松の頭を足で押さえ付けながら、バッジョは答える
重松「ゆ、揺れ……?」
バッジョ「そう、『揺れ』だ。小さな『異常』を蒔いたんだよ」
静香「『振動』する棚、お気付きになりませんでしたか?」
重松「な、何……?」
殆どは間隔を空けて物が配置されているが、唯一隙間無く置かれた、食器等の細かい商品を陳列する『棚』
それが今や、音を立てて『揺れて』いる
バッジョ「俺のスタンドの能力は触れたものを『振動』させる事なんでな」
重松「だ、だが!あの時確かに『棚』には触らせなかった」
バッジョ「破片だよ」
重松「へ?」
バッジョ「砕いた破片だ。床のな」
重松「ま、まさか……あんな細かい破片の『振動』で無理矢理『棚』を揺らしたと言うのかッ!」
見れば、破片達が棚の足元でブルブルと震え、その『振動』を『棚』へ伝えていた
バッジョ「幸い、お前が長々と変態的な講釈を垂れ流してくれいたおかげで、たっぷりと『振動』する時間が取れたからな」
まぁそれで異常に気が付いて貰えるかどうかは賭けだったが、と続ける
静香「貸し二つ、ですかね?」
バッジョ「馬鹿言え。一つはもうチャラだろう」
重松「ぐ、ぐぐぐ……」
バッジョ「さてとそれじゃあ――」
頭を踏ん付けていた足を外し、重松を見下ろす
バッジョ&静香「お客様に無礼を働いた『罰』を与えてやろう(やりましょう)」
重松「アッー!」
【???:アジト】
AM:???
???「奴等が保有する『地図』の数は?」
???「ざっと四枚ですね」
???「此方が一枚、あちらが四枚となると残る一つは……」
???「『ヨーロッパエリア』を例の『組織』から盗んだ馬鹿が『アジアエリア』のジャッパーンに逃げ込んだ様ですね」
???「そいつは面白い。あそこを敵に回すとは、痺れるね」
???「具体的に、どうしましょう?」
???「『抹殺チーム』を呼べ。何としてもその一つを奪おうじゃないか」
【ローマ:『組織』のビル】
PM2:00
???「ボス、『テロリスト』共が動き始めた様です」
???「――ふぅん?ねぇ、ペーペー」
ペーペー「…はい?」
???「『未来を読む力』、欲しいよねぇ」
ペーペー「え、ええまぁ…」
???「欲しいなぁ欲しいなぁ…良し、『殲滅チーム』を出そう」
ペーペー「奴らを…ですか」
???「少しくらい元気過ぎる方が良いんだよ。『地図』を使ってパパーっと行って来ちゃってよ」
ペーペー「ハッ、了解しました」
【杜王町:ホテル前】
PM:10:00
静香「そう言えば」
バッジョ「何だ?」
静香「何時まで此処に居られるんですか?」
バッジョ「……さぁな、直ぐ出て行くかもしれんぞ」
静香「もういっそ、此処で暮らしちゃうとか」
馬鹿を言え、俺は追われているんだ、どうせ何時かとんでもない迷惑をかける
そうは思ったのだが
バッジョ「――そうだな。それも、良いかもしれない」
静香「あ、いいましたね。それ、忘れないで下さいよー」
手を振り笑顔で去っていく少女を見送りながら、何を考えているんだろうな俺は、と、ため息を吐いた
【ロベルト・バッジョ】
家具屋『アンダー』での商品90%オフ券(∞)ゲット
【村上静香】
同上
小さな本棚を購入
【重松重一】
今では『座る』より『座られる』方が好きらしい
To Be Continued........
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