【杜王町:郊外】
AM10:00
『チーム』を結成してから一週間。
『殲滅チーム』の次なる刺客とはまだ遭遇していない。
一先ず、『スタンド使い』成り立ての明美と智恵はこの一週間、自分の『スタンド』の扱い方を掴んでもらう期間とした。
そして現在、ジョジョこと俺、ロベルト・バッジョは、鴉が鳴く鳴く道を歩いていた
バッジョ「うーむ、結局現れなかったか」
一人で出歩けば『殲滅チーム』も姿を現すかと思ったが
バッジョ「そう上手くは行かないか」
それにしても、随分と間隔が長い
バッジョ「……俺が『組織』に居たころは、あのチームの総数は三人。だったか」
そう、『たったの』三人
バッジョ「その内一人は、既に仕留めた。となると、残りは二人……」
だが、増えている可能性もある
バッジョ「まぁ…あまり心配しすぎるのもアレか……ん?」
男性が一人、地図を片手にキョロキョロと辺りを見回している
バッジョ「……迷ってんのか?」
茶色いジャンパーを着た青年だ。年も自分と近いだろう
バッジョ「おい、アンタ――」
???「あ――」
鴉が一羽、横から青年の地図を掻っ攫う
ガァガァと鳴くその姿は、まるで人間を馬鹿にしているようだ
上空の鴉を見上げ、青年に声をかける
バッジョ「災難だったな。アンタ、何か探してるのかい?何なら道案内を」
青年の背後に何か、人型が――
バッジョ「(何ッ!?『スタンド使い』かッ!)」
身構えたバッジョを他所に、青年は右手をバッジョに向け、制するように前後させる
???「あーっと。ちょっと失礼。『ワン・ショット・アット・グローリー』、鴉の『マーカー』を撃ち抜けッ!」
青年の背後、『ワン・ショット・アット・グローリー』の持つリボルバー拳銃から放たれた弾丸が、寸分軌跡を違うことなく、鴉の翼へと吸い込まれていく
その翼に貼り付いた、星型の模様へ向かって
???「危ない危ない。大事な地図が持っていかれるところだったぜ」
バッジョ「絶対命中の能力か…?アンタ…『スタンド使い』だな」
???「うん?ってことは君も……?」
バッジョ「ああ」
???「そうか!いやァ~『スタンド使い』に会うのは久しぶりだなァ」
バッジョ「久しぶり?その地図もそうだが、アンタもしかして…」
???「ああ、旅をしているんだ。俺はワイアット。ワイアット・アープだ」
バッジョ「俺は――『ジョジョ』だ」
暫し逡巡して、そう答えた
ワイアット「ジョジョか、よろしくな」
バッジョ「ああ、よろしく。それで、何処へ向かおうとしていたんだ?」
ワイアット「ああ、杜王町って所にな」
バッジョ「何だ、それなら此処だぜ」
ワイアット「ホゲェー!マジかよ、ちょっと案内を頼んでいいかい?」
バッジョ「勿論だ」
【杜王町:郊外】
AM10:13
バッジョ達から100m程離れた場所に佇む男
???「へへ……今日はこの『ナイフ』で行ってみようかァ~――『ウェポンズ・ベッド』ッ!」
W・B「――ッチ」
???「え?今舌打ちした?ねぇ今舌打ちした?」
W・B「…………」
???「………気のせいか」
W・B「………クソガッ」
???「えええええええ」
【杜王町:郊外】
AM10:15
ワイアット「それでな、そのパッケージに何て書いてあったと思う?」
バッジョ「さぁ。何て書いてあったんだ」
ワイアット「何とパッケージには『Sサイズ』って書いてあったんだよ!ヒィー!ギャーハッハッ!!」
バッジョ「そいつぁユニークなジョークだな!」
ワイアット「ヒィーヒィーッ――おい、ジョジョ」
バッジョ「じゃあ俺も一つ小話を――何だ?」
ワイアット「アレ、見てみ」
バッジョ「?」
訝しがりながら、ワイアットの指差す方向へ目を向ける
そこには『スタンド』に(恐らくそうだ、宙に浮かぶ人間はいない)何か怒鳴り散らしている男が居る
???「俺の『殲滅チーム』としての初仕事なんだよ!やっとあの『組織』で出世らしい出世が出来たんだって!」
W・B「…………」
???「だァーーーーッ!お前は自我があるのか無いのかハッキリせんかーい!」
と、そこで肩を叩かれた
???「ん?」
バッジョ「近所迷惑なんだよ」
綺麗に左フックが決まった
???「まそっぷ!」
無様に地面を転がる『殲滅チーム』の男
バッジョ「(知らん顔だが、新人か……)」
ワイアット「お、おい。何もそこまで……」
バッジョ「面倒くさいので九割の説明を省くが、俺は今ぶん殴った男が所属する『組織』に命を狙われていてな」
ワイアット「じゃあ仕方ないな」
バッジョ「ああ仕方ない」
???「ぐぎぎぎ…ば、馬鹿にしやがって」
W・B「………」
スス、と、スタンドが男を庇う様に前へ出る
???「ハッ!?お、お前俺を護って……」
W・B「何殴ラレテンダヨ、クソッタレ」
振り上げられた拳は、男に振り下ろされんばかりに握り締められている
???「ごめんなさい!頼むからあいつら殺して!っていうかやっぱお前自我あるよね!」
ナイフを構えたスタンドが、ゆらりとした動きで二人に肉薄する
バッジョ&ワイアット「(本体は大した事はないが――『スタンド』のほうは厄介だな)」
バッジョ「『ワム!』ッ!」
ワイアット「『ワン・ショット・アンド・グローリー』ッ!」
二人のスタンドが敵スタンドを迎え撃つ
が
???「その『ナイフ』はァ~、元はルーマニア生まれのイカれた男のもんでなァ~」
バッジョ「……?」
ワイアット「奴らを撃ち抜けッ!『ワン・ショット・アンド・グローリー』ッ!」
???「ソイツは弾をよォ~…『弾く』んだよなァ~」
W・B「シッ!」
ワイアット「――何ッ!?」
ズガンッ――キィンッ
リボルバーから放たれた弾丸が、敵スタンドの持つナイフに弾かれる
???「俺のスタンド、『ウェポンズ・ベッド』は武器が『記憶する』最も優れた使い手の動きを『体現』することでなァ~」
W・B「――FUCKッ!」
ナイフが振るわれるッ
ワイアットのスタンドが、抵抗するように腕を振るったが、腕を浅く切り裂かれる
そのまま、ナイフはワイアット本体へと迫り――
ワイアット「チィ…」
ヒュオンッ――ゴシァカン!
バッジョ「成る程…随分と『他人に依存する』スタンドだ」
それを防ぐように振るわれた『ワム!』の拳が、『ウェポンズ・ベッド』の肘を打ち込まれ、衝撃でナイフが空へ飛び出す
W・B「――グェッ!」
???「や、やりやがったな……」
恐らく折れたのだろう。腕を庇いながら、男が叫ぶ
素早く、本体とスタンドがバッジョ達から距離を取る
???「お、覚えてやがれッ!」
身を翻し、一目散に駆け出す男
バッジョ「逃がすかッ!」
ワイアット「いや、逃がせばいい」
男へ向けて、ワイアットは『ワン・ショット・アンド・グローリー』の体に張り付いていた星型のバッジを剥がし、投げる
それは男にダメージを与えることも、男を足止めすることも出来なかったが、張り付いた脇腹の部分に、溶けるように馴染んでいった
バッジョ「……?」
ワイアット「暫くしたら、後を追おうか」
腑に落ちないバッジョを見て、『ワン・ショット・アンド・グローリー』が手にしたリボルバーを揺らしながら、笑った
ような気がした
【杜王町】
AM10:30
あるビルの屋上で、男は足を止めた
???「ハァ…ハァ…畜生…今に見てやがれ…ッ!」
最初から此処に用意していたのだろう。隅の方にケースが転がっている
小さなケースから入っていたのは――カプセルだ
???「ククク…これで全員死んじまえ…」
後はこれを落としてしまえば――
と、その時、屋上の入り口から、メキャン、という怪音が響いた
???「ンン…?なんの音」
――バスッ!
???「ぐォォォーーーッ?!」
脇腹に浮かび上がった『星型』の模様が、爆ぜた
???「い、いや違う。コイツは――」
“弾丸だ”と言う呟きは、他の声に掻き消された
ワイアット「我が『ワン・ショット・アンド・グローリー』の能力は――」
屋上の入り口
其処には二人の『スタンド使い』が立っている
一人は男を威圧するようにスタンドに拳銃を構えさせ
一人はスタンドの拳を地面へ打ち付けさせている
ワイアット「――『絶対命中』。その“マーカー”を絶対に撃ち抜くことさ」
???「ぐッ……!『ウェポンズ・ベッド』ッ!」
素早くナイフを構えたスタンドが肉薄するが――
バッジョ「『メイク・イット・ビッグ』ッ!」
突如、振動が地面に亀裂を走らせながら男とそのスタンドを吹き飛ばす
???「グゴォァーーーッ!?」
吹き飛ばされ、転がり、男は何とか屋上の縁を掴み、落下を免れる
???「(く、クソッ!クソッ!俺の出世街道がッ!)」
途端、縁を掴む手に激痛が走る
バッジョ「“Arrivederci”(それじゃあな)」
手を踏まれていた
そして、『ワム!』の拳が男の命綱を砕き
???「た、た、た、たす――」
断末魔の悲鳴と共に、男は下へ落ちていった
???:『テロリスト』達のアジト】
ペーペー「………」
男は『赤い部屋』に一人佇む
周囲にゴミのように転がる人間、人間、人間、人間、人間
――『返り血』だ
この部屋は、『返り血で染まっている』
死体の傍に転がる黒い塊。拳銃だ
どの死体も、『自分に銃口を向けて』死んでいる
ペーペー「……ボス」
携帯に耳をあて、ようやっと声を出す
???「――回収は済んだかな?」
ペーペー「ええ。滞りなく。――『抹殺チーム』の始末も、完了しました」
【スタンド名:ワン・ショット・アット・グローリー】
【本体名:ワイアット・アープ】
暫く杜王町に留まることに
バッジョ達に力を貸す
【スタンド名:ワム!(Wham!)】
【本体名:ロベルト・バッジョ】
新たな仲間を得る
【スタンド名:ウェポンズ・ベッド】
【本体名:アランチーニ】
ビルから転落し、再起不能
To Be Continued.......
使用させていただいたスタンド
No.525 | |
【スタンド名】 | ワン・ショット・アット・グローリー |
【本体】 | ワイアット・アープ |
【能力】 | 相手に弾丸が絶対当たるようになるマーカーを設置する |
No.285 | |
【スタンド名】 | ウェポンズ・ベッド |
【本体】 | アランチーニ |
【能力】 | 武器が記憶する"最も優れた使い手"の動きを体現する |
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